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Online edition:ISSN 2758-089X

川崎医科大学附属病院での双極性障害に対するルラシドンの使用状況

背景:双極性障害は,躁病・軽躁病・抑うつなどのエピソードが交代・反復して出現する気分障害であり,正確な診断と治療が困難な疾患である.特に双極Ⅱ型障害では,軽躁状態が見落とされやすく,初診時に単極性うつ病と診断される例も多い.また,双極性障害では抑うつエピソードが長期間を占め,自殺リスクや社会的機能障害が大きいことが知られており,抑うつ期の適切な治療が求められる.ルラシドンは2020年に我が国で双極性障害の抑うつエピソードに対して承認された非定型抗精神病薬であるが,その使用実態に関する報告は少ない.本研究では,双極性障害の抑うつエピソードに対して使用されるルラシドンについて,当院での実臨床における使用状況,有効性,認容性を明らかにし,好適症例や,使用時の留意点を検討することを目的とした. 対象と方法:川崎医科大学附属病院心療科におけるルラシドンの使用実態を,診療録を用いて後方視的に調査した.2020年10月から2023年5月までの間にルラシドンが処方された双極性障害患者76例を対象とし,患者背景,診断,経過,併存疾患,併用薬,有効性,継続率,副作用等を検討した. 結果:対象者は,男性27例,女性49例,平均年齢48.6歳であった.23.7% は当初単極性うつ病と診断されていた.併用薬としては気分安定薬が44.7%,抗うつ薬が50.0% に使用されていた.「効果あり」と評価された患者は52.6% であり,20 mg 投与例が多かった.「効果なし」と判定された患者は31人(40.7%)であった.副作用は30.3% にみられ,アカシジアが最も多かったが,71.1% は3か月以上継続できていた. 結論:ルラシドンは,鑑別が困難な双極性障害の抑うつエピソードや併存疾患を有する症例に使用され,一定の有効性と比較的良好な認容性を示し,双極性障害の新たな治療選択肢として有用である可能性が示唆された.より大規模かつ前向き研究が今後求められる.
著者名
後藤 信太郎, 他
52
1-8
DOI
10.11482/KMJ-J202652001
掲載日
2026.3.19

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