Online edition:ISSN 2758-089X
落下胃石により腸閉塞を来した一例
症例は70歳代の女性.平成4年に糖尿病と診断され食事療法を行っていた.平成17年1月18日頃から胸焼けと上腹部痛が出現したため,1月25日に当科を受診した.上部消化管内視鏡検査にて,胃角から前庭部にかけて一部に露出血管を伴う多発性の潰瘍及び多量の凝血塊を認めたため,内視鏡的止血術後に当科に入院となった.止血確認の目的で上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃内に楕円形で暗褐色,表面粗造な胃石を3個認めた.精査中に嘔気と嘔吐が突然出現したため腹部単純X線検査を施行したところ小腸ニボーが認められ,腹部超音波検査では骨盤腔内小腸に音響陰影を伴う長径40mmと30mm程度の高エコー腫瘤を2個認めた.臨床所見および画像診断から落下胃石による腸閉塞と診断し,保存的治療で改善しなかったため開腹手術を行った.術中所見ではトライツ靭帯から約290cmの空腸内に嵌頓する胃石を認め,切開摘出後腸切除を行った.切除腸には胃石によるものと思われる潰瘍を認めた.胃石は2個で大きさは長径45mmと35mmであった.また,胃内の長径65mmの胃石も同時に摘出した.平成16年10月頃からしぶ柿の汁と搾りかすを摂取しており,結石の成分分析でタンニンが98%で柿胃石と診断した.
(平成20年5月19日受理)
- 著者名
- 西 隆司,他
- 巻
- 34
- 号
- 3
- 頁
- 217-222
- DOI
- 10.11482/2008/KMJ34(3)217-222.2008.jpn.pdf