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Online edition:ISSN 2758-089X

適応障害患者におけるWechsler 式知能検査所見と臨床的特徴の検討

近年,職場ストレスにより抑うつ状態をはじめ心身の不調を来し休職したり,学校や社会に不適応を起こし不登校,ひきこもりになったりする適応障害患者が増えている.診断基準上,適応障害を引き起こす要因であるストレスの大きさは問われないが,一方でどのような人が適応障害になりやすいかという研究はこれまでない.本研究では,適応障害患者に対する成人用Wechsler 式知能検査第3版(Wechsler Adult Intelligence Scale Third Edition; WAIS-Ⅲ)の所見と臨床的特徴からそれらを検討した. 適応障害と診断されWAIS-Ⅲを施行された患者50名(14歳~48歳,男性29名,女性21名)を対象とした.IQ が70未満の精神遅滞と診断された者は除外した.臨床評価として,初診時年齢,発症年齢,精神主訴の有無,身体主訴の有無,初診時における社会参加の有無,初診時GAF(Global Assessment Scale)を用いた.WAIS-Ⅲは言語理解(Verbal Comprehension; VC),作動記憶(Working Memory; WM), 知覚統合(Perceptual Organization; PO), 処理速度(Processing Speed; PS)の4つの群指数に分類される.対象者を群指数パターンによってクラスタ分析を行った. その結果,3つのクラスタパターンに分類された.群指数に関しては,クラスタ1はWM がVCとPS よりも有意に低く,クラスタ2はPS がVC とWM よりも有意に低く,クラスタ3はPS がVC,WM,PO よりも有意に低かった.また,IQ に関しては,クラスタ3> クラスタ1>クラスタ2の順に高くそれぞれ有意差が認められた.クラスタ間の臨床的特徴を検討したところ,クラスタ3は身体主訴が有意に少なかったが,他の項目で有意差は認められなかった.さらに,対象者全体で見ると,GAF とWM において正の相関が認められた. 以上から,適応障害患者においてはWM とPS という認知機能低下が認められる可能性があり,特に社会適応の観点からWM に注目して診療を行うことが大切であると考えられた.
著者名
和迩健太
43
1
43-55
DOI
10.11482/KMJ-J43(1)43
掲載日
2017.6.21

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