h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

髄膜癌腫症による頭蓋内圧亢進症に対する脳室腹腔短絡術の有用性

髄膜癌腫症は,がんの集学的治療の進歩による生存期間の延長に伴い,診断される機会も増加している.髄膜癌腫症は患者のQuality of life(QOL) を著しく低下させ,生命予後に直結することが多い.神経症状の軽減によるQOL の改善を考えると,髄膜癌腫症に対する外科治療の介入を検討し直す必要があると思われる. 我々は,髄膜癌腫症に対し外科治療を施行した3症例経験した.外科治療の適応に関し,過去の症例も交え,文献的考察を加え報告する. 【症例1】56歳男性.肺癌を原発とする多発脳転移を伴う髄膜癌腫症と診断された.全脳照射後に全身化学療法を行うも,意識障害をきたし,全身化学療法の継続が困難となった.髄液排除によりPerformance Status(PS)が改善したため,脳室腹腔短絡術を施行した.術後,意識障害は改善し,治療を再開した.PS は改善し,比較的良好な日常生活を送れQOL は改善したと考えられたが,Nivolumab の副作用により,全身状態は悪化し,術後3か月で死亡した. 【症例2】55歳女性.肺腺癌と診断され,頭痛が出現し,髄膜癌腫症と診断された.EGFR-TKIを含む全身化学療法を行い,症状は改善傾向であった.その後,頭痛,嘔気が増悪しPS は低下した.脳室ドレナージ術により,PS は改善し,嘔気・疼痛のコントロールが可能となったため,脳室腹腔短絡術を施行した.術後,緩和医療に移行し,残された時間を有意義に過ごすことができ,QOL は改善したと考えられたが,全身状態の悪化により術後4か月で死亡した. 【症例3】66歳女性.頭痛が出現し,肺癌に伴う,髄膜癌腫症と診断された.疼痛コントロールが困難であり,PS も低下していたため,脳室ドレナージ術を施行したところ,疼痛コントロールが可能となった.PS の改善に伴い,Erlotinib による治療を開始することができた.しかし,間質性肺炎による全身状態の悪化により,脳室腹腔短絡術は施行できず,脳室ドレナージ術から44日で死亡した.
著者名
田尾 良文, 他
45
147-153
DOI
10.11482/KMJ-J201945147
掲載日
2019.12.23

b_download