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Online edition:ISSN 2758-089X

当科運転免許外来受診者の現状と課題

当院では平成29年3月12日の道路交通法改正を踏まえて平成29年4月より,もの忘れ外来とは別に「運転免許外来」を新設し,時間をかけた丁寧な診療と告知,指導,運転免許返納後の生活確保・支援ができるよう,多職種で受診者に対応している.平成31年4月までの運転免許外来受診者は31人で,平均年齢80.07±3.91歳.第一分類該当者19人,交通違反での紹介3人で,その他は自発的な受診であった.10例は既に事故を起こし,6例は既に抗認知症薬を内服していた. 受診者のほとんどが,通院,買い物,農作業など運転中止後の生活が困るとの理由から,運転継続を希望した.神経心理検査では,MMSE-J 22.32/30±3.87, Kohs IQ 66.42±11.87, DASC-21 29.53±7.07, CDR 0.58±0.19と比較的認知機能低下が軽度な者が多かった.頭部MRI では20例に陳旧性脳梗塞や脳挫傷,12例に脳萎縮を認め,123I-IMP 脳血流SPECT では14例にアルツハイマー病を示唆する脳血流低下を認めた.診断後,全例に運転免許返納を推奨したが,自発的に運転中止に至った例は9例のみであった.かかりつけ医による診断書作成が普及し自主返納事例も増加したためか,当院の受診者数ならびに運転免許取り消し処分となる事例は外来開設当初の予想より少なかった.認知機能低下は認めるものの明らかな認知症に至っていないMCI 症例については,診断書提出後も運転継続している事例が多かった.運転継続希望者に丁寧に現制度の意義を説明し,移動手段の確保や生活支援について地域で相談できる体制作りが必要である.
著者名
久德 弓子, 他
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1-7
DOI
10.11482/KMJ-J202046001
掲載日
2020.2.17

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