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Online edition:ISSN 2758-089X

自然排泄したリチウムイオン充電式補聴器の誤飲

認知機能障害がある高齢者は,異物誤飲を生じるリスクとなりうる.これは認知症の併存によって誤飲の事実を患者本人が認知していないことや異物誤飲による症状が非特異的,もしくは無症候性であることが多いことと関係している.このため認知機能障害のある高齢者において異物誤飲は発見が遅れる可能性がある.リチウムイオン充電式電池を内蔵した補聴器の誤飲がMRI の撮像を契機に発覚し,その後合併症なく自然排泄が得られた症例を経験したので報告する.症例は82歳女性,尿路感染の診断で入院となった.入院時から不穏行動があり,感染症によるせん妄が疑われた.入院2日目に補聴器を紛失したと訴え捜索を行ったが発見できなかった.入院4日目に腰椎圧迫骨折の精査目的で行ったMRI 検査において腹腔内に強いアーチファクトを認め,補聴器の誤飲が疑われた.腹部CT 検査を行い,補聴器であることを確認した.補聴器が充電式であることやトライツ靭帯を超え横行結腸に存在していることから外科的摘出を行わず自然排泄を待つこととした.その後,異物・電池誤飲に伴う腸管症状をきたすことなく経過し,入院5日目に補聴器が自然排泄された.精神疾患患者や高齢患者など,誤飲を生じうる患者が嚥下可能なサイズの装着物を紛失した際には,X線検査を行うことで発見できる可能性がある.異物誤飲に伴う腸閉塞や腸管損傷に加え,補聴器に使用されている電池がボタン型電池であるのか内蔵型の充電式電池であるのかによって,誤飲に伴う合併症の有無を評価し,対応する必要がある.
著者名
宮本 颯真, 他
48
65-71
DOI
10.11482/KMJ-J202248065
掲載日
2022.11.21

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