Online edition:ISSN 2758-089X
腹部不快感を呈し,体外式腹部超音波で指摘された進行空腸癌の1例
はじめに:原発性小腸癌は全消化管悪性腫瘍の1-2%程度と稀である.診断時には非特異的な症状(腹痛や嘔気嘔吐,腹部膨満など)を呈していることが多い.近年ではダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡の普及により発見数も増加しているが,発見時には進行癌であることが多く,予後は依然不良である. 症例:50歳台,女性.心窩部不快感で近医受診し,保存的加療が行われたが症状が持続し当院を紹介受診した.上部消化管内視鏡検査が行われ,軽度の逆流性食道炎(ロサンゼルス分類A)が認められた.食道胃逆流症や機能性ディスペプシアとして内服加療が行われたが症状は治療抵抗性であった.そのため体外式腹部超音波検査(US)が行われた.その結果,十二指腸水平脚から上部空腸に拡張を認め,トライツ靭帯から約10~20 cm 肛門側の空腸に約45 mm の輪郭不整で表面不整な隆起性病変を認め,進行空腸癌とそれによる消化管通過障害と診断した.ダブルバルーン内視鏡検査が行われ,空腸に2型病変が認められた.生検では高度異型腺腫か高分化型腺癌の所見であった.通過障害を来していることもあり進行空腸癌の診断で開腹空腸部分切除術とリンパ節郭清が行われた.手術標本の病理組織学的検索では高分化腺癌(pStageⅡA)であり,US 所見と一致していた.術後に補助化学療法が行われた.約2年後に腹腔内再発が出現し,各種治療が行われたが徐々に全身状態は悪化し,診断から約5年後に自宅で永眠された. 結語:USにより指摘した進行空腸癌の1例を報告した.治療抵抗性の腹部不快感が持続する場合は,小腸癌を鑑別に挙げることが重要で,その際にはUS によるスクリーニングが有用である.
- 著者名
- 中藤 流以, 他
- 巻
- 50
- 号
- 頁
- 65-76
- DOI
- 10.11482/KMJ-J202450065
- 掲載日
- 2024.10.28