2024.10.09
A case of poorly differentiated Barrett’s esophageal adenocarcinoma, curative resected via endoscopic submucosal dissection.
緒言:本邦におけるBarrett食道腺癌(Barrett’s adenocarcinoma; BAC)は食道癌のうち7.1%とされ稀である.その組織型は,深達度が深くなるにつれて低分化・未分化癌を認める割合が増加するとされるものの,深達度が 粘膜固有層(lamina propria mucosae; LPM)までの症例で低分化~未分化癌を認めた症例の報告はない.今回,内視鏡で治療し得た低分化BAC の1例を報告する. 症例:60歳台後半,女性.逆流性食道炎に対し,1回 / 年の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy: EGD)による経過観察が行われていた.定期検査のEGD でBarrett’s 食道(Barrett’s esophagus: BE)領域内に径10 mm の陥凹性病変を認めた.生検でsignetring cell carcinoma が検出され,紹介受診した.当院でのEGD で,BE 領域内,右側前壁に10 mm の白色調の陥凹性病変を認めた.狭帯域光観察(narrow band imaging: NBI)を用いた観察では,未分化癌に矛盾しない所見であった.癌の粘膜下層深部浸潤を疑う所見に乏しく,内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)の方針となった.病理組織学的検索の結果,病変部は低分化癌が主体で,印環細胞癌も混在しており,深達度はLPM と判断した.検索範囲の脈管およびリンパ管に浸潤を認めず,治癒切除と診断した. 結語:非常にまれな低分化~未分化成分が主体のBAC症例で,ESDにより切除し得た1例を報告した.BE 症例で,発癌リスクを伴う場合は,定期的なEGD がBAC の早期発見に重要である.
2024.08.19
Identifying the risk factors for radiation-induced liver disease and radiation nephropathy in radiation therapy for gastric extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma.
目的:胃粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue:MALT リンパ腫)の放射線治療成績の算出と,急性期肝障害例や晩期腎症例の線量評価とリスク因子の探索. 材料方法:2014-2021年に三次元原体放射線治療を受けた16例の腎疾患のないLugano分類Ⅰ-Ⅱ期の胃MALT リンパ腫を後方視的に検討した.成績は,3年全生存率と無病生存率で評価し,肝障害の評価はalanine aminotransferase(ALT)値,aspartate aminotransferase(AST)値をCommon Terminology Criteria for Adverse Events version 5.0を用い,腎症はestimated glomerular filtration rate(eGFR)値を用い,Kidney Disease Improving Global OutcomesのChronic Kidney Disease(CKD)分類で評価した.また,計画標的体積,肝,腎や各重複部の線量分布,線量体積ヒストグラムより平均照射線量や最大照射線量を肝障害,腎症の有無の群にわけ検討し,さらに,年齢,性別などの患者因子と,総線量や照射門数などの治療因子を用いて,リスク因子を統計学的に解析した. 結果:観察期間中央値は46.5ヵ月.3年全生存率,無再発生存率は100%.治療後1ヵ月でGrade2 のALT とAST 値上昇を1例で認め,5-10 Gy の低線量が肝の広範に照射されていた.また,CKD 分類Grade3a 以上の4例では,多変量解析で年齢が有意な変数であった. 考察:急性期肝障害例は,低線量域が誘因と考えられ,また晩期腎症では,治療時の年齢がリスク因子であった.
2024.08.06
An adult case of EBV-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis (EBV-HLH) diagnosed early in the course of disease onset and treated with early intervention
Epstein Barr virus(EBV)関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-HLH)はCD8陽性T 細胞EBV が感染し,モノクローナルに増殖し,高サイトカイン血症の状態となり,血球貪食性リンパ組織球症を発症する.治療は早期介入すれば,T細胞が制御されるが,診断が遅れたり,治療が不十分な場合は致死的な経過をたどる.今回末梢血と骨髄フローサイトメトリー(FCM)検査,TCR(T 細胞受容体)レパトア解析で早期診断,治療介入し得た成人例を経験したので報告する.症例は30歳代男性.腹痛,発熱にて前医受診し,急性肝炎疑いにて入院.翌日全身状態増悪し,穿孔性腹膜炎による敗血症性ショック疑いにて当院転院となった.入院時血液検査で肝酵素の著明
な上昇に加え,末梢血の塗抹標本に異常細胞を検出し, 血球貪食症候群を疑った.また,EBV-IgM 陽性,EBNA 陰性でEBV 初感染パターンで,EBV-DNA は6.12 log copies/mL と著明な高値を認めた.骨髄像では血球貪食像を認め,FCM でリンパ球はCD5陰性HLA-DR 陽性のCD8陽性T 細胞が優位,TCR レパトア解析でCD8陽性T 細胞はVβ4への偏りを認め,EBV-HLH と診断した.診断後,メチルプレドニゾロン(mPSL) パルス療法を開始し,以降は血液検査を確認しながら漸減を行った.治療開始後,肝酵素はAST,ALT ともに速やかに低下を認めた.また,1-2週間後から血球回復も認め,治療が奏功した.
2024.07.31
Surgical intervention of dysphagia caused by Ossification of the Anterior Longitudinal Ligament
2024.07.18
A case of gynecomastia with rapid bilateral breast enlargement
短期間に急速に腫大した両側女性化乳房症で,両側乳頭温存乳腺全切除術を施行し,改善した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は37歳男性.X年6月頃より両側乳房腫大を自覚した.X年7月に前医を受診し,超音波検査や左乳房の穿刺吸引細胞診の結果より悪性所見はなく経過観察となっていた.その後約2か月間で両側乳房が急速に腫大するため当院へ紹介受診となった.視触診で両側の著しい乳房腫大を認め,超音波検査では,均質に腫大した乳腺と左乳房腫瘤(17mm×10mm)を認めた.両側乳房の増大が持続していることと,本人の強い希望により切除の方針となった.術式は両側乳頭温存乳腺全切除術を行った.術後の乳輪の陥没を避けるため,両側とも乳頭直下に1cm 厚程度の乳腺組織を温存した.術後出血なく,4日後に退院となった.切除標本は腫大した乳腺組織であり割面では左側のC 領域には境界明瞭な淡褐色調な結節病変を認めた.組織学的に両側の乳腺は2相性を伴って増生した乳管を認め,女性化乳房の病理所見であり,左側の結節は線維腺腫の所見であった.一部に乳腺偽血管腫様過形成(pseudoangiomatous stromal hyperplasia)も伴っていた.術後約1年間経過したが再発は認めない.
2024.06.17
The antimicrobial susceptibility of Streptococcus pneumoniae and Haemophilus influenzae isolated from the sputum of pediatric inpatients with lower respiratory infections during-COVID-19 pandemic based on descriptive observational studies.
背景:COVID-19の流行下でのStreptococcus pneumoniae(SP)とHaemophilus influenzae(HI)の薬剤感受性薬剤感受性のデータが日本国内においてほとんどない. 方法:2020年1月~2022年3月(コロナ流行下)の当院小児科における下気道感染症入院例の喀痰から分離されたSP とHI の薬剤感受性について検討した. 結果:コロナ禍で計188の株を調査し,SPではペニシリン耐性菌の割合は約半数で,HIではβラクタマーゼ非産生アンピリシン耐性(BLNAR: β -lactamase negative ampicillin resistance)の割合が約6割であった.抗菌薬使用例は,SP 検出例に比べHI 検出例で有意に多く,HI 検出例ではペニシリン系抗菌薬使用例でBLNAR の検出が有意に高くなっていた. 結論:コロナ流行下においても,SPとHIにおいて一定の割合でペニシリン耐性菌が検出されており,抗菌薬適正使用のためには継続的な疫学調査が必要である.また,HI においては,ペニシリン系薬の使用が薬剤感受性に影響を与えた可能性が示唆された.