h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2024.07.18

A case of gynecomastia with rapid bilateral breast enlargement

短期間に急速に腫大した両側女性化乳房症で,両側乳頭温存乳腺全切除術を施行し,改善した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は37歳男性.X年6月頃より両側乳房腫大を自覚した.X年7月に前医を受診し,超音波検査や左乳房の穿刺吸引細胞診の結果より悪性所見はなく経過観察となっていた.その後約2か月間で両側乳房が急速に腫大するため当院へ紹介受診となった.視触診で両側の著しい乳房腫大を認め,超音波検査では,均質に腫大した乳腺と左乳房腫瘤(17mm×10mm)を認めた.両側乳房の増大が持続していることと,本人の強い希望により切除の方針となった.術式は両側乳頭温存乳腺全切除術を行った.術後の乳輪の陥没を避けるため,両側とも乳頭直下に1cm 厚程度の乳腺組織を温存した.術後出血なく,4日後に退院となった.切除標本は腫大した乳腺組織であり割面では左側のC 領域には境界明瞭な淡褐色調な結節病変を認めた.組織学的に両側の乳腺は2相性を伴って増生した乳管を認め,女性化乳房の病理所見であり,左側の結節は線維腺腫の所見であった.一部に乳腺偽血管腫様過形成(pseudoangiomatous stromal hyperplasia)も伴っていた.術後約1年間経過したが再発は認めない.

2024.06.17

The antimicrobial susceptibility of Streptococcus pneumoniae and Haemophilus influenzae isolated from the sputum of pediatric inpatients with lower respiratory infections during-COVID-19 pandemic based on descriptive observational studies.

背景:COVID-19の流行下でのStreptococcus pneumoniae(SP)とHaemophilus influenzae(HI)の薬剤感受性薬剤感受性のデータが日本国内においてほとんどない. 方法:2020年1月~2022年3月(コロナ流行下)の当院小児科における下気道感染症入院例の喀痰から分離されたSP とHI の薬剤感受性について検討した. 結果:コロナ禍で計188の株を調査し,SPではペニシリン耐性菌の割合は約半数で,HIではβラクタマーゼ非産生アンピリシン耐性(BLNAR: β -lactamase negative ampicillin resistance)の割合が約6割であった.抗菌薬使用例は,SP 検出例に比べHI 検出例で有意に多く,HI 検出例ではペニシリン系抗菌薬使用例でBLNAR の検出が有意に高くなっていた. 結論:コロナ流行下においても,SPとHIにおいて一定の割合でペニシリン耐性菌が検出されており,抗菌薬適正使用のためには継続的な疫学調査が必要である.また,HI においては,ペニシリン系薬の使用が薬剤感受性に影響を与えた可能性が示唆された.

2024.05.31

Characteristics of Patients With Subjective Cognitive Decline Who Visited Our Memory Clinic

目的:当院もの忘れ外来を受診した(主観的認知機能低下;SCD)患者の臨床的特徴, 神経心理検査, 画像検査結果との関連を考察する. 方法:2018年1月~2022年9月に当院もの忘れ外来を受診した患者のうちHDS-R > 20/30かつDASC-21 < 30/84の患者106人(男性34人, 平均年齢72.8 ± 9.3歳)の診療録の情報(患者背景, 神経心理検査, 画像所見)を後方視的に検討し,患者本人のみが認知機能低下を自覚している群(A群:26人)と家族も認知機能低下を感じている群(B群:80人)に分け,2群間の違いを検討した(カイ二乗検定,対応のないT検定). 結果:記憶障害を主訴とした患者が83%であった.併存疾患はHT 53.8%,DL 50.9%,DM 28.3%,精神疾患 17.9%といずれも一般的な有病率より高かった.神経心理検査ではHDS-R 25.8±3.0,MMSE-J 26.0±2.8,DASC-21 25.4 ± 2.4であったが,頭部MRI では約半数に脳血管障害や脳萎縮を認め脳血流SPECT では後部帯状回の集積低下は19.1%に認めた.再診した患者38人のうち28.9%が認知症に進展した.両群間差の検討では患者背景,画像検査では両群に有意差を認めなかったが,B群では家族は記憶障害以外に意欲低下や易怒性に気づいており,全般的認知機能, 生活障害,介護負担,精神症状の評価で有意差を認めた. 結論:既報どおりSCD患者は一定数認知症へ進展した.本人のみならず家族も何らかの認知機能低下を少しでも感じている場合はより認知機能が低下している傾向にあるため,認知症への移行リスクが高いと考えられた.これらの患者群は疾患修飾薬のターゲットになりうることが推測できるため積極的にバイオマーカー検査などを行うべきである.

2024.05.30

Immunonutritional index in patients with end-stage cancer in palliative care ward

背景:癌患者における炎症や免疫,悪液質状態を反映する免疫栄養指数として,Glasgow prognostic score(GPS),neutrophil-lymphocyte ratio(NLR),platelet-lymphocyte ratio(PLR),lymphocyte-monocyte ratio(LMR)などが報告されているが,緩和ケア病棟における終末期癌患者に対して評価した報告は少ない.今回,緩和ケア病棟における癌終末期患者において免疫栄養指数の意義を明らかにするため検討を行った. 方法:対象は2020年11月から2021年6月までに当院緩和ケア病棟に入院し死亡退院した癌患者,187例である.NLR,PLR,LMR については,入院後30日以内の死亡例を陽性としたそれぞれのROC 曲線からカットオフ値を求め,群別した. 結果:悪液質であるGPS2の患者は152名(81.7%)であった.生存期間中央値(Median Survival Time: MST)はGPS0,1群は17.0日,GPS2群は11.9日で,GPS2群は有意に生存期間が短かった(p = 0.0094).NLR 低値群で19.0日,NLR 高値群で10.0日で,NLR 高値群が有意に予後不良であった(p < 0.0001).LMR 高値群で15.0日,LMR 低値群で12.0日とLMR 低値群が有意に予後不良であった(p = 0.0006).予後に有意差を認めたGPS,NLR,LMR で多変量解析したところNLR のみが独立した予後因子であった(p = 0.0226, hazard ratio 1.5048,95%(1.06, 2.13)). 考察:8割以上の例でGPS2であり,緩和ケア病棟での癌終末期患者の悪液質状態を反映しているものと考える.NLR は,癌終末期患者の短期予後を予測する因子として一定の意義を認めた.

2024.05.30

A case of huge thyroid cyst with colorless and transparent fluid

甲状腺嚢胞は臨床上よく遭遇し,その嚢胞液は褐色であることが通常であるが,今回無色透明の嚢胞液を貯留していた腺腫様甲状腺腫の1例を経験したので報告する.90歳の女性.他院入院時のCT 検査で巨大な甲状腺腫瘤を認めたため当科紹介となった.頸部超音波検査で右葉に巨大な嚢胞性腫瘤を認め,嚢胞液細胞診を施行した.良性の嚢胞と診断されたが,無色透明であったため嚢胞液の生化学検査を施行したところwhole PTH は4 pg/mL 未満,サイログロブリンは5,432 ng/mL であったため,甲状腺由来の腫瘤と診断した.術後病理結果は腺腫様甲状腺腫の診断であった.腺腫様甲状腺腫を中心とした甲状腺内の嚢胞液は淡黄色や褐色調であることが一般的で,嚢胞液が無色透明の場合は副甲状腺嚢胞を最も考える.甲状腺由来の嚢胞で貯留液が無色透明であった大変珍しい症例を経験した.

2024.01.22

Parathyroid adenoma diagnosed following a more than 10-year disease-free interval after initial treatment

原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)は,腺腫,過形成,癌によって引き起こされる.多くは腺腫が原因となり,通常は単発であるが,稀に多腺腺腫を伴うことがある.今回我々は,初回治療から10年以上の無病期間を経て発症した副甲状腺腺腫の1例を経験した. 症例:45歳,女性.家族歴に特記事項なし.X-12年,原発性副甲状腺機能亢進症 (PHPT) に対し,左上下副甲状腺摘出術施行.左下副甲状腺腺腫の診断であった.以降は他院にて,血液検査で経過観察を行っていた.X年から高Ca 血症の再燃を認め,同年,右上下副甲状腺摘出術+副甲状腺自家移植を施行した.病理組織学検査,臨床経過から右下副甲状腺腺腫の再燃と診断した.既往歴に直腸神経内分泌腫瘍があることなどから,MEN 1遺伝子検査を行ったが,変異は認めなかった.副甲状腺腺腫はPHPT の原因で最も一般的であるが,ほとんどが単発で発生し,多腺腺腫は稀である.また,本症例は初回治療から10年以上経過し出現しており,極めて稀な症例と考える.

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