h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2024.11.29

A case of primary squamous cell carcinoma of the submandibular gland

唾液腺癌は頭頸部癌の約1%とされ,なかでも顎下腺を原発とする扁平上皮癌は非常に稀である.今回われわれは,顎下腺原発扁平上皮癌の1例を経験したので,その概要を報告する.症例は68歳,男性.右下臼歯部の違和感と右顎下部の腫脹を主訴に3か月間複数の歯科医院を受診し,歯科治療や抗菌薬の投与を受けたが症状は改善せず,精査目的で当科紹介となった.当科初診時,右顎下部に硬結を伴う腫瘤を認め,造影CT にて顎下腺腫瘍の診断を得た.口腔内に異常所見は認めなかった.耳鼻咽喉・頭頸部外科に院内紹介し,穿刺吸引細胞診にてclass Ⅴ,組織型として扁平上皮癌が示唆された.右顎下腺癌の診断の得,外科的治療,化学放射線治療による集学的治療を行ったが,初診から約1年3か月後に原病死となった.顎下腺原発扁平上皮癌は非常に予後が不良であるが,顎下部の腫脹や硬結以外に特異的な症状がないため,歯科治療や消炎治療で症状が改善しない場合は顎下腺の悪性腫瘍も鑑別に考慮する必要がある.

2024.11.19

Examination of background factors in patients with severe lower limb ischemia undergoing hemodialysis

透析患者における末梢動脈疾患(PAD)の悪化は,生命も脅かすリスクである.外科的治療目的のPAD による重症下肢虚血(CLI) の背景について検討を行った.維持透析を行っているCLI 患者32名およびPAD 既往のない患者23人を対照(C)群とした.CLI(P)群は19名の糖尿病患者と13人の非糖尿病患者に分けられた.評価項目は,P群は入院後初回の血液透析施行時の年齢,透析歴,性別,糖尿病(DM)の有無,身長,ドライウエイト,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,Hb,血清Alb,血清Cr,CRP,HDL-C,non HDL-C,血清P,血清補正Ca(CCa),グリコアルブミン,HbA1C,BNP,intact PTH とした.対照群は2018年1月の第1週の血液透析開始時のデータを用いた(研究1).CLI 加療目的にて受診した32名についてDM 群と非DM 群とで再検討を行った(研究2).拡張期血圧(mmHg)(P群66.7,C群75.6),Hb(g/dL)(P群9.38,C群10.91),血清Alb(g/dL)(P群2.95,C群3.62),血清Cr(mg/dL)(P群8.05,C群9.61),CRP(mg/dL)(P群3.97,C群0.12),HDL-C(mg/dL)(P群36.1,C群47.6)に有意差を認めた.P群をDM の有無で検討した結果は,平均年齢(歳)(DM 有67.7,無76.0),平均透析歴(年)(DM 有8.5,無19.4)と年齢,透析歴ともにDM 有の方が若く短かかった.CLI 発症時の患者背景としては,感染症を含む炎症状態およびHb 低値,Alb 低値といった低栄養状態,HDL- C低値,拡張期血圧低値といった動脈硬化の存在が強く関与していると考え,糖尿病CLI 患者ではより若年で,かつ透析歴が短期間で発症していたことからより積極的な関与が重要と考えた.

2024.10.28

A case report of advanced jejunal cancer presenting with abdominal discomfort detected by transabdominal ultrasonography

はじめに:原発性小腸癌は全消化管悪性腫瘍の1-2%程度と稀である.診断時には非特異的な症状(腹痛や嘔気嘔吐,腹部膨満など)を呈していることが多い.近年ではダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡の普及により発見数も増加しているが,発見時には進行癌であることが多く,予後は依然不良である. 症例:50歳台,女性.心窩部不快感で近医受診し,保存的加療が行われたが症状が持続し当院を紹介受診した.上部消化管内視鏡検査が行われ,軽度の逆流性食道炎(ロサンゼルス分類A)が認められた.食道胃逆流症や機能性ディスペプシアとして内服加療が行われたが症状は治療抵抗性であった.そのため体外式腹部超音波検査(US)が行われた.その結果,十二指腸水平脚から上部空腸に拡張を認め,トライツ靭帯から約10~20 cm 肛門側の空腸に約45 mm の輪郭不整で表面不整な隆起性病変を認め,進行空腸癌とそれによる消化管通過障害と診断した.ダブルバルーン内視鏡検査が行われ,空腸に2型病変が認められた.生検では高度異型腺腫か高分化型腺癌の所見であった.通過障害を来していることもあり進行空腸癌の診断で開腹空腸部分切除術とリンパ節郭清が行われた.手術標本の病理組織学的検索では高分化腺癌(pStageⅡA)であり,US 所見と一致していた.術後に補助化学療法が行われた.約2年後に腹腔内再発が出現し,各種治療が行われたが徐々に全身状態は悪化し,診断から約5年後に自宅で永眠された. 結語:USにより指摘した進行空腸癌の1例を報告した.治療抵抗性の腹部不快感が持続する場合は,小腸癌を鑑別に挙げることが重要で,その際にはUS によるスクリーニングが有用である.

2024.10.09

A case of poorly differentiated Barrett’s esophageal adenocarcinoma, curative resected via endoscopic submucosal dissection.

緒言:本邦におけるBarrett食道腺癌(Barrett’s adenocarcinoma; BAC)は食道癌のうち7.1%とされ稀である.その組織型は,深達度が深くなるにつれて低分化・未分化癌を認める割合が増加するとされるものの,深達度が 粘膜固有層(lamina propria mucosae; LPM)までの症例で低分化~未分化癌を認めた症例の報告はない.今回,内視鏡で治療し得た低分化BAC の1例を報告する. 症例:60歳台後半,女性.逆流性食道炎に対し,1回 / 年の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy: EGD)による経過観察が行われていた.定期検査のEGD でBarrett’s 食道(Barrett’s esophagus: BE)領域内に径10 mm の陥凹性病変を認めた.生検でsignetring cell carcinoma が検出され,紹介受診した.当院でのEGD で,BE 領域内,右側前壁に10 mm の白色調の陥凹性病変を認めた.狭帯域光観察(narrow band imaging: NBI)を用いた観察では,未分化癌に矛盾しない所見であった.癌の粘膜下層深部浸潤を疑う所見に乏しく,内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)の方針となった.病理組織学的検索の結果,病変部は低分化癌が主体で,印環細胞癌も混在しており,深達度はLPM と判断した.検索範囲の脈管およびリンパ管に浸潤を認めず,治癒切除と診断した. 結語:非常にまれな低分化~未分化成分が主体のBAC症例で,ESDにより切除し得た1例を報告した.BE 症例で,発癌リスクを伴う場合は,定期的なEGD がBAC の早期発見に重要である.

2024.08.19

Identifying the risk factors for radiation-induced liver disease and radiation nephropathy in radiation therapy for gastric extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma.

目的:胃粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue:MALT リンパ腫)の放射線治療成績の算出と,急性期肝障害例や晩期腎症例の線量評価とリスク因子の探索. 材料方法:2014-2021年に三次元原体放射線治療を受けた16例の腎疾患のないLugano分類Ⅰ-Ⅱ期の胃MALT リンパ腫を後方視的に検討した.成績は,3年全生存率と無病生存率で評価し,肝障害の評価はalanine aminotransferase(ALT)値,aspartate aminotransferase(AST)値をCommon Terminology Criteria for Adverse Events version 5.0を用い,腎症はestimated glomerular filtration rate(eGFR)値を用い,Kidney Disease Improving Global OutcomesのChronic Kidney Disease(CKD)分類で評価した.また,計画標的体積,肝,腎や各重複部の線量分布,線量体積ヒストグラムより平均照射線量や最大照射線量を肝障害,腎症の有無の群にわけ検討し,さらに,年齢,性別などの患者因子と,総線量や照射門数などの治療因子を用いて,リスク因子を統計学的に解析した. 結果:観察期間中央値は46.5ヵ月.3年全生存率,無再発生存率は100%.治療後1ヵ月でGrade2 のALT とAST 値上昇を1例で認め,5-10 Gy の低線量が肝の広範に照射されていた.また,CKD 分類Grade3a 以上の4例では,多変量解析で年齢が有意な変数であった. 考察:急性期肝障害例は,低線量域が誘因と考えられ,また晩期腎症では,治療時の年齢がリスク因子であった.

2024.08.06

An adult case of EBV-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis (EBV-HLH) diagnosed early in the course of disease onset and treated with early intervention

Epstein Barr virus(EBV)関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-HLH)はCD8陽性T 細胞EBV が感染し,モノクローナルに増殖し,高サイトカイン血症の状態となり,血球貪食性リンパ組織球症を発症する.治療は早期介入すれば,T細胞が制御されるが,診断が遅れたり,治療が不十分な場合は致死的な経過をたどる.今回末梢血と骨髄フローサイトメトリー(FCM)検査,TCR(T 細胞受容体)レパトア解析で早期診断,治療介入し得た成人例を経験したので報告する.症例は30歳代男性.腹痛,発熱にて前医受診し,急性肝炎疑いにて入院.翌日全身状態増悪し,穿孔性腹膜炎による敗血症性ショック疑いにて当院転院となった.入院時血液検査で肝酵素の著明
な上昇に加え,末梢血の塗抹標本に異常細胞を検出し, 血球貪食症候群を疑った.また,EBV-IgM 陽性,EBNA 陰性でEBV 初感染パターンで,EBV-DNA は6.12 log copies/mL と著明な高値を認めた.骨髄像では血球貪食像を認め,FCM でリンパ球はCD5陰性HLA-DR 陽性のCD8陽性T 細胞が優位,TCR レパトア解析でCD8陽性T 細胞はVβ4への偏りを認め,EBV-HLH と診断した.診断後,メチルプレドニゾロン(mPSL) パルス療法を開始し,以降は血液検査を確認しながら漸減を行った.治療開始後,肝酵素はAST,ALT ともに速やかに低下を認めた.また,1-2週間後から血球回復も認め,治療が奏功した.

older entries →