h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2024.08.19

Identifying the risk factors for radiation-induced liver disease and radiation nephropathy in radiation therapy for gastric extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma.

目的:胃粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue:MALT リンパ腫)の放射線治療成績の算出と,急性期肝障害例や晩期腎症例の線量評価とリスク因子の探索. 材料方法:2014-2021年に三次元原体放射線治療を受けた16例の腎疾患のないLugano分類Ⅰ-Ⅱ期の胃MALT リンパ腫を後方視的に検討した.成績は,3年全生存率と無病生存率で評価し,肝障害の評価はalanine aminotransferase(ALT)値,aspartate aminotransferase(AST)値をCommon Terminology Criteria for Adverse Events version 5.0を用い,腎症はestimated glomerular filtration rate(eGFR)値を用い,Kidney Disease Improving Global OutcomesのChronic Kidney Disease(CKD)分類で評価した.また,計画標的体積,肝,腎や各重複部の線量分布,線量体積ヒストグラムより平均照射線量や最大照射線量を肝障害,腎症の有無の群にわけ検討し,さらに,年齢,性別などの患者因子と,総線量や照射門数などの治療因子を用いて,リスク因子を統計学的に解析した. 結果:観察期間中央値は46.5ヵ月.3年全生存率,無再発生存率は100%.治療後1ヵ月でGrade2 のALT とAST 値上昇を1例で認め,5-10 Gy の低線量が肝の広範に照射されていた.また,CKD 分類Grade3a 以上の4例では,多変量解析で年齢が有意な変数であった. 考察:急性期肝障害例は,低線量域が誘因と考えられ,また晩期腎症では,治療時の年齢がリスク因子であった.

2024.08.06

An adult case of EBV-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis (EBV-HLH) diagnosed early in the course of disease onset and treated with early intervention

Epstein Barr virus(EBV)関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-HLH)はCD8陽性T 細胞EBV が感染し,モノクローナルに増殖し,高サイトカイン血症の状態となり,血球貪食性リンパ組織球症を発症する.治療は早期介入すれば,T細胞が制御されるが,診断が遅れたり,治療が不十分な場合は致死的な経過をたどる.今回末梢血と骨髄フローサイトメトリー(FCM)検査,TCR(T 細胞受容体)レパトア解析で早期診断,治療介入し得た成人例を経験したので報告する.症例は30歳代男性.腹痛,発熱にて前医受診し,急性肝炎疑いにて入院.翌日全身状態増悪し,穿孔性腹膜炎による敗血症性ショック疑いにて当院転院となった.入院時血液検査で肝酵素の著明
な上昇に加え,末梢血の塗抹標本に異常細胞を検出し, 血球貪食症候群を疑った.また,EBV-IgM 陽性,EBNA 陰性でEBV 初感染パターンで,EBV-DNA は6.12 log copies/mL と著明な高値を認めた.骨髄像では血球貪食像を認め,FCM でリンパ球はCD5陰性HLA-DR 陽性のCD8陽性T 細胞が優位,TCR レパトア解析でCD8陽性T 細胞はVβ4への偏りを認め,EBV-HLH と診断した.診断後,メチルプレドニゾロン(mPSL) パルス療法を開始し,以降は血液検査を確認しながら漸減を行った.治療開始後,肝酵素はAST,ALT ともに速やかに低下を認めた.また,1-2週間後から血球回復も認め,治療が奏功した.

2024.07.18

A case of gynecomastia with rapid bilateral breast enlargement

短期間に急速に腫大した両側女性化乳房症で,両側乳頭温存乳腺全切除術を施行し,改善した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は37歳男性.X年6月頃より両側乳房腫大を自覚した.X年7月に前医を受診し,超音波検査や左乳房の穿刺吸引細胞診の結果より悪性所見はなく経過観察となっていた.その後約2か月間で両側乳房が急速に腫大するため当院へ紹介受診となった.視触診で両側の著しい乳房腫大を認め,超音波検査では,均質に腫大した乳腺と左乳房腫瘤(17mm×10mm)を認めた.両側乳房の増大が持続していることと,本人の強い希望により切除の方針となった.術式は両側乳頭温存乳腺全切除術を行った.術後の乳輪の陥没を避けるため,両側とも乳頭直下に1cm 厚程度の乳腺組織を温存した.術後出血なく,4日後に退院となった.切除標本は腫大した乳腺組織であり割面では左側のC 領域には境界明瞭な淡褐色調な結節病変を認めた.組織学的に両側の乳腺は2相性を伴って増生した乳管を認め,女性化乳房の病理所見であり,左側の結節は線維腺腫の所見であった.一部に乳腺偽血管腫様過形成(pseudoangiomatous stromal hyperplasia)も伴っていた.術後約1年間経過したが再発は認めない.

2024.06.17

The antimicrobial susceptibility of Streptococcus pneumoniae and Haemophilus influenzae isolated from the sputum of pediatric inpatients with lower respiratory infections during-COVID-19 pandemic based on descriptive observational studies.

背景:COVID-19の流行下でのStreptococcus pneumoniae(SP)とHaemophilus influenzae(HI)の薬剤感受性薬剤感受性のデータが日本国内においてほとんどない. 方法:2020年1月~2022年3月(コロナ流行下)の当院小児科における下気道感染症入院例の喀痰から分離されたSP とHI の薬剤感受性について検討した. 結果:コロナ禍で計188の株を調査し,SPではペニシリン耐性菌の割合は約半数で,HIではβラクタマーゼ非産生アンピリシン耐性(BLNAR: β -lactamase negative ampicillin resistance)の割合が約6割であった.抗菌薬使用例は,SP 検出例に比べHI 検出例で有意に多く,HI 検出例ではペニシリン系抗菌薬使用例でBLNAR の検出が有意に高くなっていた. 結論:コロナ流行下においても,SPとHIにおいて一定の割合でペニシリン耐性菌が検出されており,抗菌薬適正使用のためには継続的な疫学調査が必要である.また,HI においては,ペニシリン系薬の使用が薬剤感受性に影響を与えた可能性が示唆された.

2024.05.31

Characteristics of Patients With Subjective Cognitive Decline Who Visited Our Memory Clinic

目的:当院もの忘れ外来を受診した(主観的認知機能低下;SCD)患者の臨床的特徴, 神経心理検査, 画像検査結果との関連を考察する. 方法:2018年1月~2022年9月に当院もの忘れ外来を受診した患者のうちHDS-R > 20/30かつDASC-21 < 30/84の患者106人(男性34人, 平均年齢72.8 ± 9.3歳)の診療録の情報(患者背景, 神経心理検査, 画像所見)を後方視的に検討し,患者本人のみが認知機能低下を自覚している群(A群:26人)と家族も認知機能低下を感じている群(B群:80人)に分け,2群間の違いを検討した(カイ二乗検定,対応のないT検定). 結果:記憶障害を主訴とした患者が83%であった.併存疾患はHT 53.8%,DL 50.9%,DM 28.3%,精神疾患 17.9%といずれも一般的な有病率より高かった.神経心理検査ではHDS-R 25.8±3.0,MMSE-J 26.0±2.8,DASC-21 25.4 ± 2.4であったが,頭部MRI では約半数に脳血管障害や脳萎縮を認め脳血流SPECT では後部帯状回の集積低下は19.1%に認めた.再診した患者38人のうち28.9%が認知症に進展した.両群間差の検討では患者背景,画像検査では両群に有意差を認めなかったが,B群では家族は記憶障害以外に意欲低下や易怒性に気づいており,全般的認知機能, 生活障害,介護負担,精神症状の評価で有意差を認めた. 結論:既報どおりSCD患者は一定数認知症へ進展した.本人のみならず家族も何らかの認知機能低下を少しでも感じている場合はより認知機能が低下している傾向にあるため,認知症への移行リスクが高いと考えられた.これらの患者群は疾患修飾薬のターゲットになりうることが推測できるため積極的にバイオマーカー検査などを行うべきである.

2024.05.30

Immunonutritional index in patients with end-stage cancer in palliative care ward

背景:癌患者における炎症や免疫,悪液質状態を反映する免疫栄養指数として,Glasgow prognostic score(GPS),neutrophil-lymphocyte ratio(NLR),platelet-lymphocyte ratio(PLR),lymphocyte-monocyte ratio(LMR)などが報告されているが,緩和ケア病棟における終末期癌患者に対して評価した報告は少ない.今回,緩和ケア病棟における癌終末期患者において免疫栄養指数の意義を明らかにするため検討を行った. 方法:対象は2020年11月から2021年6月までに当院緩和ケア病棟に入院し死亡退院した癌患者,187例である.NLR,PLR,LMR については,入院後30日以内の死亡例を陽性としたそれぞれのROC 曲線からカットオフ値を求め,群別した. 結果:悪液質であるGPS2の患者は152名(81.7%)であった.生存期間中央値(Median Survival Time: MST)はGPS0,1群は17.0日,GPS2群は11.9日で,GPS2群は有意に生存期間が短かった(p = 0.0094).NLR 低値群で19.0日,NLR 高値群で10.0日で,NLR 高値群が有意に予後不良であった(p < 0.0001).LMR 高値群で15.0日,LMR 低値群で12.0日とLMR 低値群が有意に予後不良であった(p = 0.0006).予後に有意差を認めたGPS,NLR,LMR で多変量解析したところNLR のみが独立した予後因子であった(p = 0.0226, hazard ratio 1.5048,95%(1.06, 2.13)). 考察:8割以上の例でGPS2であり,緩和ケア病棟での癌終末期患者の悪液質状態を反映しているものと考える.NLR は,癌終末期患者の短期予後を予測する因子として一定の意義を認めた.

2024.05.30

A case of huge thyroid cyst with colorless and transparent fluid

甲状腺嚢胞は臨床上よく遭遇し,その嚢胞液は褐色であることが通常であるが,今回無色透明の嚢胞液を貯留していた腺腫様甲状腺腫の1例を経験したので報告する.90歳の女性.他院入院時のCT 検査で巨大な甲状腺腫瘤を認めたため当科紹介となった.頸部超音波検査で右葉に巨大な嚢胞性腫瘤を認め,嚢胞液細胞診を施行した.良性の嚢胞と診断されたが,無色透明であったため嚢胞液の生化学検査を施行したところwhole PTH は4 pg/mL 未満,サイログロブリンは5,432 ng/mL であったため,甲状腺由来の腫瘤と診断した.術後病理結果は腺腫様甲状腺腫の診断であった.腺腫様甲状腺腫を中心とした甲状腺内の嚢胞液は淡黄色や褐色調であることが一般的で,嚢胞液が無色透明の場合は副甲状腺嚢胞を最も考える.甲状腺由来の嚢胞で貯留液が無色透明であった大変珍しい症例を経験した.

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