2025.11.19
Sex Differences in Obstructive Sleep Apnea
背景:閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)は睡眠中に上気道が閉塞することにより無呼吸,いびきや日中の眠気を認める疾患である.臨床的には男性に多いと考えられているが,一般住民を対象とした研究では男女差は無いとする報告も認められ,女性のOSA が過小診断されている可能性も指摘されている.今回,女性OSA の臨床的特徴を把握するために,男性との比較検討を行った. 方法:川崎医科大学附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科を受診し OSA が疑われ睡眠ポリグラフィー(PSG)を施行しApnea-Hypopnea Index(AHI)が5以上でOSA と診断された18歳以上の症例747例(男性527例,女性220例)を対象とした.PSG の結果に加えて,各種睡眠問診票[Japanese Epworth Sleepiness Score (JESS), Athens Insomnia Scale (AIS), Pittsburgh Sleep Quality Index (PSQI)]の結果を男女間で比較検討した. 結果:女性よりも男性の方がPSG各種パラメーターは悪かったが,PSQIは女性の方が高かった.50歳以下および51歳以上にわけてOSA の男女間の比較検討を行ったところ,50歳以下では女性の方がBMI は高く,ESS 高値,PSQI のカテゴリーでは入眠障害および眠剤使用が有意に高かった. 結論:女性 OSA の臨床的特徴として,50歳以下の女性は,OSA の4つの要因のうち,主に肥満による上気道の解剖学的狭窄と入眠障害などから推測される低い覚醒閾値が影響している可能性が示唆された.
2025.10.09
Evaluation of C-reactive protein levels influencing nutritional interventions in patients with preoperative gastrointestinal malignant tumors
消化管悪性腫瘍に対する術前の栄養学的介入効果を認めるCRP 値の設定とその妥当性を検証する. 消化管悪性腫瘍患者115名を対象とした.介入後のAlb ≧ 3.0 g/dLまたはChE 値(男性 ≧ 240 U/L,女性 ≧ 200 U/L)をOutcome としたROC 曲線によりCRP 値のcut-off 値を設定し,低CRP 群(A群)と高CRP 群(B群)に分けて栄養学的指標の推移を検討した. 介入前CRP のcut-off 値は,0.82 mg/dL であった.A群(低CRP 群)では介入後,有意にAlb 値,ChE 値が上昇したが,B群(高CRP 群)ではChE 値の上昇を認めたのみであった.A群では栄養学的介入後にPNI が有意に上昇し,CONUT スコアの改善が認められた. 栄養学的介入による栄養状態の改善の見込めるCRP 値は0.82 mg/dL 以下である.今後,術前高CRP 患者に対する集学的な栄養療法の検討が必要である.
2025.09.19
A Case of MEN2A Presenting with Pheochromocytoma 38 Years after the Diagnosis and Treatment of Familial Medullary Thyroid Carcinoma
家族性甲状腺髄様癌(familial medullary thyroid carcinoma:FMTC) と考えられていた甲状腺髄様癌(medullary thyroid carcinoma:MTC) と診断してから38年後に褐色細胞腫(pheochromocytoma:PCC) を発症した多発性内分泌腫瘍症2 型(multiple endocrine neoplasia type 2:MEN2)の1例を経験した.症例は58歳,女性で他院にてMTC と診断され甲状腺全摘術を施行された.家族内に複数のMTC の発症を認めたためFMTC と考えられていた.術後に肝転移・頸部リンパ節再発があり,化学療法および手術施行し,その後は骨および縦隔リンパ節再発に対して経過観察を行っていた.MTC 発症から36年目に当院へ転院,38年目にPCC を発症したことでMEN2A と診断された. FMTC はMEN2A のPCC や副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism:PHPT)の浸透率が低いMEN2A の亜型と考えられている.本症例は,MTC の家族歴もありFMTC と考えていたが,MTC 発症後38年でPCC を発症した稀な経過をたどった症例である.




