h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2023.12.21

Preoperative suspicion of parathyroid carcinoma based on clinical findings in a patient with primary hyperparathyroidism

副甲状腺癌は臨床頻度が少なく穿刺吸引細胞診も禁忌とされている事から術前診断に苦慮する場合がある.今回,臨床所見から術前診断時に副甲状腺癌による原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)を疑って手術を行った症例を経験したので報告する.症例は73歳女性.発熱と熱中症のような全身倦怠感にて前医受診.採血検査にてCa 14.0 mg/dL. intact PTH 748.と上昇あり当院糖尿病内分泌内科紹介受診.当院受診時採血検査では,intact PTH 896 pg/mL, Alb 3.8 g/dL, IP 2.1 mg/dL, Ca 14.1 mg/dL. PHPT の診断にて当科紹介受診.頸部超音波検査(US)で左下副甲状腺は辺縁不整,内部粗造,一部に嚢胞様構造を伴い,内部血流の増多を認めるとともに,17.6×27.7×32.4 ㎜と著明に腫大していた. その他の副甲状腺には腫大を認めなかった.99mTc-MIBI シンチグラフィでは,上縦隔に認める腫瘤に一致し強い集積亢進があり,頸部造影CT では縦隔上部に内部LDA を伴う腫瘤性病変を認め,周囲組織や血管と接しているが,明らかな浸潤は指摘できなかった.血清Ca 値の異常高値と辺縁不整で一部被膜外へ突出するUS 所見から,副甲状腺癌を疑い手術を勧め左下副甲状腺摘出術を行った.術後病理組織検査で,腫瘍成分が線維性被膜内に浸潤する像や,被膜外に浸潤傾向を示す部位があり,部位によっては明らかに結節外に進展していると認識できる成分もみられ被膜浸潤と認識できる病変があり,副甲状腺癌の診断であった.原発性副甲状腺機能亢進症における副甲状腺癌の発生頻度は低いが,根治を図る上でも初回手術時に周囲組織を含めたen bloc 切除を行う必要があり,術前診断の時点で副甲状腺癌の診断基準を考慮し的確に診断する事が重要であると考える.

2023.11.07

Three cases of gastric metastasis from breast cancer with findings resembling type 4 advanced gastric cancer

緒言:転移性胃腫瘍は全胃腫瘍のうち0.3%と比較的稀である.転移性胃腫瘍の原因として,乳癌は悪性黒色腫と並び多く,乳癌症例では剖検例も含めると2~18%に胃転移を認められている.上部消化管内視鏡(EGD)所見は4型進行癌類似が最多とされている.生検ではHE 染色のみでの診断は困難で,GATA3 等の乳癌マーカーおよび原発胃癌特異的マーカーとされるHNF4A 等による免疫組織学的検討が鑑別に重要とされている.乳癌による転移性胃腫瘍と診断した3例を報告する. 症例1:60歳台,女性.202X 年9月に左乳癌(浸潤性乳管癌),骨転移の診断で薬物治療が開始された.202X +1年9月から心窩部痛が出現しEGD の結果,体上部に4型胃癌類似の所見が認められた.生検で低分化~未分化腺癌,GATA3 陽性,HNF4A 陰性で乳癌による転移性胃腫瘍と診断した. 症例2: 50歳台,女性.201X 年10月に右乳癌の診断で外科的治療が行われた(浸潤性小葉癌)後,薬物療法が行われたが,その後胸膜,骨転移が出現した.保存的治療が続けられ,201X +4年9月のPET-CT で胃壁の集積が出現した.EGD の結果,胃体上部~中部に4型進行癌類似の所見が認められた.生検で低分化腺癌,GATA3 陽性,HNF4A 陰性で乳癌による転移性胃腫瘍と診断した. 症例3: 60歳台,女性.200X 年7月に左乳癌の診断で,薬物治療後,200X 年+1年11月に外科的治療が行われた(浸潤性乳管癌で一部に浸潤性小葉癌).200X +12年11月に肝転移と骨転移が出現し薬物治療が再開され転移は縮小した.200X +16年5月から心窩部不快感が出現しEGD の結果,胃穹窿部~体下部に4型進行癌類似の所見が認められた.生検で低分化腺癌,GATA3 陽性,HNF4A 陰性で乳癌による転移性胃腫瘍と診断した. 結語:乳癌の転移性胃腫瘍は4型胃癌類似の所見となることがある.乳癌既往のある症例では転移性腫瘍の可能性を考慮し,免疫組織学的検討を行うことが重要である.

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