h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2025.03.05

A case of postoperative fungal endophthalmitis identified as Purpureocillium lilacinum

白内障手術後に生じたPurpureocillium lilacinum による真菌性眼内炎の1例を報告する.症例は73歳の男性.近医にて左眼白内障手術を施行され,術後8日目より左眼痛を自覚した.近医にて,術後の感染性眼内炎と診断された.抗菌点眼薬での治療を開始されたが,眼内炎が増悪し,白内障手術の創部に角膜浸潤を認めたため,当院に紹介受診となった.同日に,左眼の前房洗浄を行った.前房内から採取した検体の培養検査にてPurpureocillium lilacinum が検出された.真菌性眼内炎と診断して,抗真菌薬であるボリコナゾールの点眼および点滴の治療を開始したが改善を認めなかった.ポサコナゾールの内服に切り替えて眼所見の改善を認めたため,内服を中止したところ,2ヶ月後に感染の再発を認めた.ポサコナゾール内服を再開したが効果不十分であったため,ボリコナゾールの角膜実質内注射を施行し,改善を得られた.

2025.03.05

A case of spontaneously regressed thymoma

症例は36歳男性.前胸部痛を主訴に近医を受診し,胸部異常陰影を指摘され当院に紹介となった.当院初診時に胸痛は軽快していたが,胸部CT で前縦隔に70×45mm の腫瘍と右胸水貯留・心嚢液貯留を認め,胸腺腫の疑いで当科に紹介となった.当院紹介後1ヶ月の術前CT では腫瘍径は60×35mm,約10%の縮小を認め,右胸水や心嚢液は消失していた.診断と治療も兼ねて胸骨正中切開で拡大胸腺全摘術を施行した.病理検査の結果,病変は明瞭な被膜を有し,割面では分葉状構造を呈する充実性病変と境界明瞭な壊死病変や嚢胞性病変を認め,組織学的にはTypeB1+ B2の胸腺腫で正岡分類Ⅱb期と診断された.今回我々は胸痛や胸水貯留などの胸膜炎症状を伴って発見され,経過観察中に自然縮小を認めた胸腺腫の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

2024.11.29

A case of primary squamous cell carcinoma of the submandibular gland

唾液腺癌は頭頸部癌の約1%とされ,なかでも顎下腺を原発とする扁平上皮癌は非常に稀である.今回われわれは,顎下腺原発扁平上皮癌の1例を経験したので,その概要を報告する.症例は68歳,男性.右下臼歯部の違和感と右顎下部の腫脹を主訴に3か月間複数の歯科医院を受診し,歯科治療や抗菌薬の投与を受けたが症状は改善せず,精査目的で当科紹介となった.当科初診時,右顎下部に硬結を伴う腫瘤を認め,造影CT にて顎下腺腫瘍の診断を得た.口腔内に異常所見は認めなかった.耳鼻咽喉・頭頸部外科に院内紹介し,穿刺吸引細胞診にてclass Ⅴ,組織型として扁平上皮癌が示唆された.右顎下腺癌の診断の得,外科的治療,化学放射線治療による集学的治療を行ったが,初診から約1年3か月後に原病死となった.顎下腺原発扁平上皮癌は非常に予後が不良であるが,顎下部の腫脹や硬結以外に特異的な症状がないため,歯科治療や消炎治療で症状が改善しない場合は顎下腺の悪性腫瘍も鑑別に考慮する必要がある.

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