2023.11.07
Three cases of gastric metastasis from breast cancer with findings resembling type 4 advanced gastric cancer
緒言:転移性胃腫瘍は全胃腫瘍のうち0.3%と比較的稀である.転移性胃腫瘍の原因として,乳癌は悪性黒色腫と並び多く,乳癌症例では剖検例も含めると2~18%に胃転移を認められている.上部消化管内視鏡(EGD)所見は4型進行癌類似が最多とされている.生検ではHE 染色のみでの診断は困難で,GATA3 等の乳癌マーカーおよび原発胃癌特異的マーカーとされるHNF4A 等による免疫組織学的検討が鑑別に重要とされている.乳癌による転移性胃腫瘍と診断した3例を報告する. 症例1:60歳台,女性.202X 年9月に左乳癌(浸潤性乳管癌),骨転移の診断で薬物治療が開始された.202X +1年9月から心窩部痛が出現しEGD の結果,体上部に4型胃癌類似の所見が認められた.生検で低分化~未分化腺癌,GATA3 陽性,HNF4A 陰性で乳癌による転移性胃腫瘍と診断した. 症例2: 50歳台,女性.201X 年10月に右乳癌の診断で外科的治療が行われた(浸潤性小葉癌)後,薬物療法が行われたが,その後胸膜,骨転移が出現した.保存的治療が続けられ,201X +4年9月のPET-CT で胃壁の集積が出現した.EGD の結果,胃体上部~中部に4型進行癌類似の所見が認められた.生検で低分化腺癌,GATA3 陽性,HNF4A 陰性で乳癌による転移性胃腫瘍と診断した. 症例3: 60歳台,女性.200X 年7月に左乳癌の診断で,薬物治療後,200X 年+1年11月に外科的治療が行われた(浸潤性乳管癌で一部に浸潤性小葉癌).200X +12年11月に肝転移と骨転移が出現し薬物治療が再開され転移は縮小した.200X +16年5月から心窩部不快感が出現しEGD の結果,胃穹窿部~体下部に4型進行癌類似の所見が認められた.生検で低分化腺癌,GATA3 陽性,HNF4A 陰性で乳癌による転移性胃腫瘍と診断した. 結語:乳癌の転移性胃腫瘍は4型胃癌類似の所見となることがある.乳癌既往のある症例では転移性腫瘍の可能性を考慮し,免疫組織学的検討を行うことが重要である.
2023.10.12
Characterization of coronary calcified plaque by using multimodality intravascular imaging
2023.10.10
A case of immobilization hypercalcemia with severe multiple traumas
高Ca 血症の原因の90%以上は,原発性副甲状腺機能亢進症と腫瘍随伴性高Ca 血症が占め,無動性高Ca 血症(immobilization hypercalcemia: IH)は上記の除外によって診断される.今回,我々は重症多発外傷の治療中にIH を呈した症例を経験したため報告する.症例は22歳男性で,高速自動車道を普通自動車走行中の交通事故で受傷し,ドクターヘリで当院へ搬送された.精査により,循環血液量減少性ショック,多発小腸断裂,盲腸断裂,両側血気胸,両側肺挫傷,両側多発肋骨骨折,右肘関節脱臼骨折,第4腰椎圧迫骨折と診断された.救急外来でDamage control surgery を行い,第6病日に閉腹した.急性腎障害のため,第2病日に持続的血液透析(continuous hemodialysis: CHD)を開始した.入院後,血清Ca 値は経時的に上昇し,精査の結果IH と診断した.高Ca 血症は,CHD,カルシトニン投与で改善しなかったが,ビスホスホネート製剤の投与で改善した.若年者の高Ca 血症では,IH を考慮すべきである.また,治療においては,多発外傷後であってもビスホスホネート製剤の投与を考慮するべきである.
2023.07.28
Methamphetamine concentrations in blood and gastric contents in 20 forensic autopsy cases
2023.07.06
Abdominal ultrasonography serves as a useful diagnostic tool for anterior cutaneous nerve entrapment syndrome: A case report
腹壁前皮神経絞扼症候群(anterior またはabdominal cutaneous nerve entrapment syndrome: 以下ACNES)は肋間神経の前皮枝が腹直筋を貫通する部位で圧迫されることによって腹痛を来す疾患で,その有病率は基幹病院救急外来を受診する腹痛のうち約2%とされ,決して稀ではない.しかし,身体診察,血液検査および画像検査で異常が検出されにくいこと,またその認知度の低さもあり過小診断されることも少なくない.診断は身体所見などから行われることが多く,(a)圧痛点は腹直筋の外側よりも内側で <2cm2の範囲である,(b)血液検査・画像検査で異常を認めない,(c)Carnett’s sign が陽性,(d)局所麻酔薬注入後に疼痛が軽快する,などが提唱されているものの標準化された診断基準はなく,他覚的検査による評価が困難な点が指摘されている.我々は以前からACNES の診断に体外式腹部超音波(abdominal ultrasonography: 以下US)が有用である可能性を報告してきた.US でACNES と診断した1例を報告する.症例は40歳台,女性で約1か月前から食事摂取と関連しない右下腹部痛が出現した.様子を見たが腹痛はNRS(numerical rating scale)8/10程度まで増強し,嘔気も出現したため近医救急外来を受診した.強い腹痛のため入院となり,各種検査(血液検査,造影CT,骨盤・腰椎MRI,上下部消化管内視鏡検査など)が行われたが明らかな原因を指摘されなかった.機能性ディスペプシア(functional dyspepsia: FD)や胃食道逆流症(gastro esophageal reflux disease: GERD)として内服治療が開始されたが改善せず当院紹介受診した.当院でのUS では,疼痛部位は右下腹部の腹直筋内に穿通動脈が描出される狭い範囲に一致していた.US 時に行ったCarnett’s sign およびpinch test は陽性であり,その他の腹部臓器に症状の原因を指摘しなかった.US 所見からACNES と診断し,疼痛部位に1% リドカインの局注が行われて以降,腹痛は消失した.ACNES は決して稀な疾患ではなく,適切な診断を行うことが重要であり,US はその診断に有用である.