h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2023.10.10

A case of immobilization hypercalcemia with severe multiple traumas

高Ca 血症の原因の90%以上は,原発性副甲状腺機能亢進症と腫瘍随伴性高Ca 血症が占め,無動性高Ca 血症(immobilization hypercalcemia: IH)は上記の除外によって診断される.今回,我々は重症多発外傷の治療中にIH を呈した症例を経験したため報告する.症例は22歳男性で,高速自動車道を普通自動車走行中の交通事故で受傷し,ドクターヘリで当院へ搬送された.精査により,循環血液量減少性ショック,多発小腸断裂,盲腸断裂,両側血気胸,両側肺挫傷,両側多発肋骨骨折,右肘関節脱臼骨折,第4腰椎圧迫骨折と診断された.救急外来でDamage control surgery を行い,第6病日に閉腹した.急性腎障害のため,第2病日に持続的血液透析(continuous hemodialysis: CHD)を開始した.入院後,血清Ca 値は経時的に上昇し,精査の結果IH と診断した.高Ca 血症は,CHD,カルシトニン投与で改善しなかったが,ビスホスホネート製剤の投与で改善した.若年者の高Ca 血症では,IH を考慮すべきである.また,治療においては,多発外傷後であってもビスホスホネート製剤の投与を考慮するべきである.

2023.07.06

Abdominal ultrasonography serves as a useful diagnostic tool for anterior cutaneous nerve entrapment syndrome: A case report

腹壁前皮神経絞扼症候群(anterior またはabdominal cutaneous nerve entrapment syndrome: 以下ACNES)は肋間神経の前皮枝が腹直筋を貫通する部位で圧迫されることによって腹痛を来す疾患で,その有病率は基幹病院救急外来を受診する腹痛のうち約2%とされ,決して稀ではない.しかし,身体診察,血液検査および画像検査で異常が検出されにくいこと,またその認知度の低さもあり過小診断されることも少なくない.診断は身体所見などから行われることが多く,(a)圧痛点は腹直筋の外側よりも内側で <2cm2の範囲である,(b)血液検査・画像検査で異常を認めない,(c)Carnett’s sign が陽性,(d)局所麻酔薬注入後に疼痛が軽快する,などが提唱されているものの標準化された診断基準はなく,他覚的検査による評価が困難な点が指摘されている.我々は以前からACNES の診断に体外式腹部超音波(abdominal ultrasonography: 以下US)が有用である可能性を報告してきた.US でACNES と診断した1例を報告する.症例は40歳台,女性で約1か月前から食事摂取と関連しない右下腹部痛が出現した.様子を見たが腹痛はNRS(numerical rating scale)8/10程度まで増強し,嘔気も出現したため近医救急外来を受診した.強い腹痛のため入院となり,各種検査(血液検査,造影CT,骨盤・腰椎MRI,上下部消化管内視鏡検査など)が行われたが明らかな原因を指摘されなかった.機能性ディスペプシア(functional dyspepsia: FD)や胃食道逆流症(gastro esophageal reflux disease: GERD)として内服治療が開始されたが改善せず当院紹介受診した.当院でのUS では,疼痛部位は右下腹部の腹直筋内に穿通動脈が描出される狭い範囲に一致していた.US 時に行ったCarnett’s sign およびpinch test は陽性であり,その他の腹部臓器に症状の原因を指摘しなかった.US 所見からACNES と診断し,疼痛部位に1% リドカインの局注が行われて以降,腹痛は消失した.ACNES は決して稀な疾患ではなく,適切な診断を行うことが重要であり,US はその診断に有用である.

2023.06.30

Machine Learning Models to Predict In-hospital Mortality in Burn Patients

背景:熱傷の予後予測指標には様々な指標(従来指標)が提唱されているが,機械学習を用いた予後予測と直接の比較は行われていない. 目的:熱傷患者の予後予測について従来指標と機械学習モデルとを比較検討する.また,高齢者における予後予測精度を検証する. 対象:2011年4月から2019年3月までに一般社団法人日本熱傷学会熱傷入院患者レジストリーに登録された20歳以上の患者(JSBI 群)および,川崎医科大学附属病院に2001年1月からの19年間に熱傷で入院した20歳以上の患者(KMS 群)を対象とする. 方法:JSBI 群を,JSBI-train 群とJSBI-test 群にわけ,JSBI-train 群を用いて機械学習モデルを作成し,JSBI-test 群で従来指標および機械学習モデルの予後予測能を,ROC 解析を用いて検討した.また,KMS 群を用いて外部検証を行った.JSBI-test 群を用いて高齢者における従来指標と機械学習モデルの予後予測能を検証した. 結果:従来指標ではRevised baux score(RBS)が最も診断精度が高かったが,機械学習モデルすべてがRBS を上回る精度を示した.年齢層別解析により従来指標,機械学習モデルのいずれにおいても80歳以上の患者でその精度が低下しており,Prognostic burn index(PBI)よりもXGBoost モデルの精度が高かった(P = 0.036).外部検証においても十分な予測能を有していた. 結語:熱傷の予後予測において機械学習モデルは従来指標を上回る精度を示した.また,高齢者において,本邦で一般的なPBI よりもXGBoost モデルが高い精度を示したがその差は僅かであり,併存疾患や治療撤退などの指標を投入することで,機械学習モデルの精度が上がる可能性がある.

2023.05.15

A case of Perianal basal cell carcinoma

基底細胞癌は,露出部位,特に顔面・頭頚部に好発する腫瘍で,臀部に発生することは稀である.今回我々は,肛門周囲皮膚に発生した基底細胞癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は63歳,女性.肛囲4時の方向に20×35mm 大の腫瘤を認め,皮膚科で生検を施行され基底細胞癌の診断であった.手術目的で当科紹介となった.当科にて単純切除し術後経過良好であった.肛門周囲で発生した基底細胞癌の場合,肛門管類基底細胞癌と鑑別する必要がある.肛門管類基底細胞癌は予後不良であり切除範囲も大きく異なるため,念頭に置きながら鑑別をしていかなければならない.

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