h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2019.09.03

A Case of Metastatic Breast Cancer with Gastrointestinal Perforation during Bevacizumab Combination Chemotherapy

ベバシズマブはパクリタキセルとの併用でHER2陰性の進行・再発乳癌に対する有効性が示されており,無増悪生存期間を有意に延長させる.しかし,ベバシズマブ特有の有害事象も報告されており,投与の際には注意を要する.今回,再発乳癌に対しベバシズマブを使用し,腸管穿孔を起こした1例を経験した.症例は72歳女性.右乳癌術後5年目に多発リンパ節,肺転移を認め,化学療法で治療中に8次治療としてベバシズマブとパクリタキセル(BP)療法を開始した.1年ほど奏効したが,突然,腹痛を訴え受診した.CT で腹腔内にfree air を認めたため緊急開腹術を施行した.小腸に1か所の穿孔部位を認めた.病理組織検査では,穿孔部に乳癌の転移巣が認められた.乳癌に対するベバシズマブ併用化学療法中の消化管穿孔は報告が少ない.腹膜播種を認める症例やベバシズマブ投与期間の長い患者では,腹部膨満感や腹痛を訴えた際は消化管穿孔を念頭におく必要がある.

2019.08.23

Utilizing incident notebooks to decrease nursing staff communication errors in a mixed-department ward

2011年4月より合計12科の混合病棟となったことで,看護業務が煩雑化し,医療事故・過誤の高リスクとなっていた.その改善の目的で,当該病棟の看護師22名が,コミュニケーションエラーの回避・減少を目的としたインシデントノート(【ノート】と表記)を2011年7月10日から2011年12月31日まで使用し,記入されたデータから意図の共通性を分類した.さらに【ノート】使用の前後で実施した意識調査の結果を合わせて内容分析を行った.【ノート】の内容は,3つのコアカテゴリー(『コア』と表記),その下層に計9つのカテゴリー(≪カテゴリー≫と表記)に分類された.『意識付けによる安全行動への期待』では,≪発生したインシデントの状況の記述≫および≪確認不足による間違い≫から,具体的な事実を確認でき,病棟にある潜在的リスクが情報として表在化された.そして≪厳守規則≫として,情報発信,ルールづくり,遵守徹底が図られた.【ノート】の使用によって,それらの情報をタイムリーに,アサーティブな方法でエラーを指摘することができ,意識付け,チーム間で話し合うという安全風土の形成に有効であった.『潜在リスクの表在化』では,意識調査において,経験年数9年以下では10年以上のスタッフに比べ危険を察知する割合が低いという結果が得られた.≪不慣れ・知識不足からのインシデント情報≫から,知識・経験の豊富なスタッフやリスク感性の高いスタッフが情報を提供することが,相互サポートとして活用できたことが判明した.『医師からの知識情報』では,12科32名の医師の指示に対応する必要性があり,この項目もノートに記述されエラーの低減に有効であった.当該病棟では,混合病棟による環境に影響を受けた個人要因を一番高いリスク因子と捉えており,【ノート】の使用はリスク因子を表在化し,改善策に結びつけることができた.また,【ノート】をツールとした情報共有によるコミュニケーションが,患者安全を意識した風土作りに有効と考えられた.今後は必要に応じ【ノート】を使用することにより,更なる看護業務の改善を図りたい.

2019.07.16

Characterization of Mild Cognitive Impairment patients continuing long-term visits to a memory clinic

軽度認知機能障害(MCI)は認知症の前段階として注目されてきた.今回,認知機能低下のため当院もの忘れ外来を長期通院継続しているMCI 患者の特徴を把握し,MCI 患者の認知症への進展を予測する要因について検討した.対象は2003年4月~2017年4月に当科もの忘れ外来を受診した患者1,646人のうち,初診時Mini-Mental State Examination(MMSE)20/30以上ある40歳以上のMCI 患者125人.患者背景,神経心理検査,画像所見,薬物治療の有無を検討し,さらに,これらを認知機能維持群(MMSE の変化<5)と悪化群(MMSE の変化≧5)の2群に分けてその特徴を比較した.初診時平均年齢72.8±10.5歳,教育歴は平均11.1±2.1年,基礎疾患は高血圧症48.8%,糖尿病 23.2%,脂質異常症 47.2% と生活習慣病を併存している例が多かった.初診時の主訴が記憶障害であった例が92.8%と高かった.神経心理検査ではMMSE 24.2±2.8,長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)22.5±3.8,Test Your Memory 日本語版一部改変(TYM-J川崎医大ヴァージョン;TYM-J)37.4±6.4であった.画像検査では,アルツハイマー病(AD)に特徴的な側頭頭頂連合野や後部帯状回の集積低下を認めた患者は41.6% に留まった.2017年4月の時点での臨床診断は,AD 69%,MCI 12% であった.認知機能維持群と悪化群での比較では,悪化群は初診後1年でMMSE, HDS-R ともに有意に低下した.MMSE,TYM-J 下位項目での比較では,1年後にMMSE で注意と計算,遅延再生で,TYM-J では知識と想起で減点が多かった.以上から,初診時にMCI と診断しても,受診1年間の認知機能の変化で,ある程度,認知症への進展を予想できるかもしれない.

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