h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2019.11.11

Current Status of Point-of-Care Ultrasonography (POCUS) – Assessment of Bedside Ultrasonography Cases in the Intensive-Care Unit in our Hospital –

近年point-of-care 超音波(以下POCUS)の有用性が注目されている.しかし,その定義,対象臓器や疾患,必要とされる手技などは明らかとなっていない.当施設でICU(intensive-care unit)入院患者に対しベッドサイドで腹部超音波検査(abdominal ultrasound: AUS)を施行した症例をPOCUS 症例とし,当院のPOCUS の現状をretrospective に検討した.POCUS 施行例245例で,検査依頼領域は肝胆膵領域が最多で次に消化管領域が続いた.検査依頼領域に何らかの所見が認められた症例は47.8%であった.POCUS の正診率については94.5%であった.診断困難例は全例が消化管疾患でその中でも消化管出血とくに出血性直腸潰瘍が多く,いずれも内視鏡検査で診断されていた.POCUS で緊急対応が必要と指摘した症例は28例あり,その28.6%は検査依頼領域以外の部位に病変を認めた.28例の内訳では消化管領域(60.7%)と循環器領域(17.9%)であった.POCUS では検査依頼領域以外の領域に所見を認める事もあり,腹部全体の検索が重要である.また消化管領域はPOCUS による診断が困難なこともあり,AUS 所見で症状が説明できない場合には、内視鏡検査なども検討すべきである.以上のことから,緊急疾患は消化管領域と循環器領域に多く,特に消化管領域については慎重な検索が重要と考えられた.また,AUS を用いて適切なPOCUS を行うためには,急性腹症を含めた腹部疾患の横断的かつ総合的な病態判断が必要である.

2019.11.11

A preliminary study of QOL of levocarnitine administration for patients with urologic cancer

今回我々は初の試みとして,泌尿器科領域癌における抗癌剤治療前後での血清カルニチン値を測定し,QOL への影響について検討した.さらに癌治療中の患者においてカルニチン補充が及ぼすQOL への効果について検討を加えた. 2016年6月1日から2018年9月30日までに当科で化学療法もしくは分子標的薬治療を行った泌尿器科領域癌患者17例を対象とした.抗癌剤治療前後での血清カルニチンを測定し,その後レボカルニチン1,500 mg/ 日の経口投与を行い,QOL についてprospective に評価を行った.抗癌剤治療前,治療3カ月,レボカルニチン経口投与1カ月,3カ月の4ポイントで血清遊離カルニチンを測定し,QOL については Brief Fatigue Inventory( BFI)を用いた global fatigue score(GFS)で評価した. 年齢中央値は69歳(52~82歳)で男女比は12:5であった.疾患は尿路上皮癌が10例,前立腺癌が5例,腎癌が2例であった. 治療内容は尿路上皮癌に対するgemcitabine/cisplatin が10例,前立腺癌に対するdocetaxel が3例,cabazitaxel が1例,etoposide/cisplatin が1例,腎癌に対する分子標的薬(sunitinib,pazopanib)が2例であった.血清遊離カルニチンは,抗癌剤治療前:49.0±12.1μmol/L,抗癌剤治療後:36.0±10.3μmol/L と抗癌剤治療後に統計学的に有意な低下を認めた(p<0.05). また抗癌剤治療前と比して17例中13例(76.5%)が,抗癌剤治療3カ月でカルニチンの低下を認めた.血清遊離カルニチン値が基準値未満に低下した症例(<36μmol/L)をカルニチン低値群(n=9),基準値を保っていた症例をカルニチン非低値群(n=8)として2群間について検討した.カルニチン低値群においてレボカルニチン内服3カ月で,内服前と比して統計学的に有意なGFSの低下が認められ,QOL の改善が得られた(p<0.05).一方,カルニチン非低値群では,レボカルニチン内服前後でGFS に差異は認めなかった.またレボカルニチン内服3カ月でGFS が改善した症例をレボカルニチン有効例とすると,カルニチン低値群で88.9%(8/9)が有効,カルニチン非低値群で50.0%(4/8)が有効であった. 抗癌剤治療中のカルニチン欠乏症では,カルニチン補充でQOL の改善が期待できると考えられた.レボカルニチンは泌尿器科領域癌患者の治療の際に補助薬の一端を担うことが期待される.また泌尿器科領域癌患者において,抗癌剤治療によって血清遊離カルニチン値が低下することが示唆された.

2019.10.18

A case of intrauterine fetal death after thrombocytopenia in a patient with systemic lupus erythematosus and antiphospholipid syndrome

抗リン脂質抗体症候群は,抗リン脂質抗体が産生されることで血栓症を主体とする病態を引き起こす自己免疫疾患である.動静脈血栓症に加え,習慣性流産,早産,妊娠高血圧症候群,胎児発育遅延,胎児機能不全などの妊娠合併症を高率に引き起こすとされている.また患者のうち約半数は全身性エリテマトーデスが併存していると言われている.我々は妊娠を契機に血小板減少を来たし,子宮内胎児死亡に至った全身性エリテマトーデス及び抗リン脂質抗体症候群の症例を経験した. 患者は20歳代女性,未経妊未経産.5年前に全身性エリテマトーデス及び抗リン脂質抗体症候群と診断された.プレドニゾロンとタクロリムス,アザチオプリンによる免疫抑制療法及び低用量アスピリン療法を開始され,数年間に渡りプレドニゾロン5mg/ 日+タクロリムス3mg/ 日+アザチオプリン50mg/ 日で病態は安定していた.妊娠を契機にプレドニゾロン10mg/ 日の単独治療に切り替えたが,徐々に血小板減少が進行してきたため入院し,プレドニゾロン30mg/ 日への増量及びタクロリムス3mg/ 日を再開した.また血栓予防治療として,低用量アスピリンに加えヘパリン療法を開始した.しかし妊娠16週5日で子宮内胎児死亡が判明したため,血栓予防治療を中止し児の娩出に至った. 抗リン脂質抗体症候群合併妊娠は,周産期管理に慎重を要する例も存在することを念頭に置き,特にハイリスク症例に対しては妊娠成立前から産婦人科と連携して治療にあたる必要がある.

2019.10.15

Clinical usefulness of endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration in sarcoidosis diagnosis

縦隔・肺門リンパ節病変に対する超音波気管支内視鏡ガイド下経気管支針生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration: 以下EBUS-TBNA) は,縦隔鏡や外科的な肺生検に比べ低侵襲である.肺癌のリンパ節転移の診断に対するEBUS-TBNA の有用性は確立されており,良性疾患に対する有用性や内視鏡所見についての報告は少ない.サルコイドーシスに対するEBUS-TBNA の有用性と問題点を検討した.川崎医科大学呼吸器内科に2004年5月1日から2016年11月30日に,サルコイドーシスの疑いで入院した67例(男34,女33)を対象とした.EBUS-TBNA でサルコイドーシスと診断した症例と,それ以外で診断した症例を後方視的に解析した.サルコイドーシスと診断したのは39/67例(58%),そのうちTBLB + EBUS-TBNA で診断;13/21例(62%),EBUS-TBNA のみで診断;2/2例,TBLB(transbronchial lung biopsy)のみで診断;22/41例(53%),縦隔鏡で診断;1例,皮膚生検で診断; 1例であった.受診の契機は健康診断の胸部エックス線検査で両側肺門リンパ節腫脹(bilateral hilar lymphadenopathy:以下BHL)等の胸部異常陰影の指摘によるものが約半数(31/67例)を占めていた.穿刺リンパ節は#4R と#7が多く,穿刺距離は 27.9±4.5 mm,そのうち19例は 20 mm 以上であった.EBUS-TBNA が施行できなかった15例のうち8例は病期Ⅲ,2例は病期Ⅱ,3例は病期0,1例は血流のため,1例はリンパ節が同定不可であった.また,EBUS-TBNA に関連した重篤な有害事象はなかった.縦隔・肺門リンパ節が腫大したサルコイドーシスでは,穿刺困難な事由がなければ,EBUS-TBNA による診断は有用である.

2019.10.15

Two cases of calcineurin inhibitor-induced pain syndrome during treatment for aplastic anemia

CIPS(Calcineurin-inhibitor Induced Pain Syndrome)とはカルシニューリン阻害薬を使用中に下肢を中心とした部位に疼痛または掻痒感が生じる症候群である.今回,我々は再生不良性貧血の免疫抑制療法中に生じたCIPS の2例を経験したので報告する.1症例目は,60歳代の女性.近医にて汎血球減少を認め,当院紹介.再生不良性貧血(Stage4)と診断し,ATG(antithymocyte globulin)/CyA(Cyclosporin A)併用療法を開始した.CyA 投与後,両側下肢の違和感・耐え難い疼痛を発症した.CIPS と診断し,CyA 中止にて症状改善した.その後,再生不良性貧血の増悪に対し低用量でCyA を再開.これによりCIPS が再発し,うつ症状の増強により治療継続が困難となり,原疾患悪化のため死亡した.2症例目は,60歳代の女性.貧血および血小板減少を認めたため,当院紹介.再生不良性貧血(Stage2)と診断し,CyA 療法を開始した.CyA 投与後,両側下肢の違和感・耐え難い疼痛を発症した.CIPS と診断し,CyA 中止にて症状改善した.CIPS は診断が遅れた場合,疼痛に伴うADL(activities of daily living)の低下や精神的苦痛によるうつ症状をきたすことがある.現在CIPS の報告は,臓器移植後にCyA を使用したものがほとんどであるが,それ以外でも発症する可能性があることを知っておくべきと考えられた.

2019.10.15

Multiple myeloma-associated cardiac amyloidosis in a patient treated with ixazomib.

Ixazomib は,経口のプロテアソーム阻害薬であり,特に非注射薬の組み合わせが選択される多発性骨髄腫患者の再発難治例にとって有用な治療薬である.今回,我々はIxazomib が奏効している心アミロイドーシス合併多発性骨髄腫を経験したため報告する.症例は50歳代女性で,20XX 年10月心不全精査のため当院循環器内科入院となり,精査にて洞不全症候群(type3),心アミロイドーシスと診断された.洞不全症候群(type3)に対して心臓ペースメーカー移植術が施行され,血液検査にてM 蛋白を認めたため当科紹介となった.骨髄検査では形質細胞の増加を認め,AL アミロイドーシス(心臓,消化管)合併多発性骨髄腫(IgG‐λ with BJP)と診断した.20XX 年12月から治療を開始.VRD 療法を1コース施行中に,ペースメーカー波形ではない不整脈が多発し,うっ血性心不全の併発や,心源性脳梗塞による左完全片麻痺を発症した.VRD 療法は継続困難と判断し,elotuzumab 併用RD 療法に変更し治療を施行した.2コースでPD となったため,脳梗塞の発症によるADL の低下があることから,施設入所をふまえて外来通院頻度が少ない治療法として,Ixazomib 併用RD 療法を選択し治療を開始した.治療効果および忍容性は良好で,M 蛋白の順調な低下を認め,心不全の増悪なく経過している.心アミロイドーシス合併多発性骨髄腫は,治療に伴い致死性不整脈や心不全を併発することが多い.プロテアソーム阻害剤であるbortezomib 投与にて,不整脈や心不全の併発症状が出現していたが,経口プロテアソーム阻害剤であるixazomib の投与では,不整脈や心不全を併発させることなく,治療が継続し得た.

2019.10.15

A case of pre-menopausal woman with recurrent breast cancer showing an excellent response to endocrine therapy with palbociclib

パルボシクリブ併用内分泌療法が著効した閉経前再発乳癌の1例を報告する.8年前に乳房温存手術を受け,残存乳房への放射線治療後に化学内分泌補助療法(シクロフォスファミド+エピルビシン(CE 90)を4サイクル後に毎週パクリタキセルを4サイクル施行.化学療法終了後からLH-RH アゴニスト2年間とタモキシフェン5年間)を行った.治療継続中も含め定期で外来受診を継続しており,年1回の画像検査(肺,肝,骨を標的)と3か月ごとの腫瘍マーカー測定では再発の兆候はなく経過していた.しかし,補助治療終了後約3年で発熱と肝機能障害をきっかけに多発遠隔再発(肺・骨・肝・子宮体部)を発見した.ホルモン感受性は残存している可能性はあったが,急速な再発であるために,再発後初回治療としてドセタキセルおよびデノスマブの投与を開始した.有効ではあったが投与後約半年でマーカーの再上昇と体動時呼吸困難(在宅酸素療法導入)および疲労・倦怠感の増強が出現した.有害事象と病勢進行のため再発後の二次治療としてパルボシクリブ,フルベストラント,LH-RH アゴニストを導入した.導入後1か月で体動時呼吸困難が消失し,3か月で在宅酸素療法が中止できた.半年後のPET/CT で集積が消失しており画像上は著効と判断できた.有害事象は白血球・好中球減少が出現した以外に認めなかった.再発治療としてパルボシクリブ併用内分泌治療が有用であった.

2019.10.11

A case of dyspnea successfully treated with Saibokuto

西洋医学的検査に異常を認めない呼吸困難に,柴朴湯が著効した症例を経験したので報告する.症例は,2年間続く呼吸困難を訴える68歳の男性である.胸部X線,心電図,肺機能検査に異常なく,吸入ステロイド薬,吸入β2刺激薬の効果はなかった.そこで,柴朴湯を投与したところ,1週後には,呼吸困難が軽減し,2週後には,呼吸困難は完全に消失した.柴朴湯は,気管支喘息に用いる漢方薬として有名であるが,不安神経症にも効果があるとされる.本例のように,西洋医学的に異常がなく,心身症的な要素の強い呼吸困難患者に柴朴湯が有効であると考えられた.

2019.10.04

A case of pulmonary Mycobacterium kansasii disease in a healthy young male

症例は32歳,男性.既往歴は特になく,喫煙歴もなかった.自覚症状はなかったが,定期的にとられた胸部X線写真で異常影を指摘され,当科受診となった.検査所見では,クオンティフェロン®(QFT®)が判定保留であった.CT 上,左下葉に気管支拡張を伴った小葉中心性粒状影を認めた.確定診断を得るため,気管支鏡検査を実施したところ,生検組織で多核巨細胞を含む類上皮細胞性肉芽腫がえられ,気管支肺胞洗浄液(Bronchial Alveolar Lavage fluid; BALF)から抗酸菌塗抹陽性,培養陽性,DNA–DNA hybridization(DDH)法にてMycobacterium kansasii(M.kansasii )が同定された.肺M.kansasii 症と診断後,イソニアジド(Isoniazid:INH),リファンピシン(Rifampicin:RFP),エタンブトール(Ethambutol:EB)による治療を開始し,1年間継続したところ,陰影の改善が得られた.従来,肺M.kansasii 症は喫煙男性において上葉に薄壁空洞を呈しやすいといわれてきたが,今回私共は健常な若年男性の左下葉に結節・気管支拡張型の肺Mycobacterium avium complex(MAC)症に類似した画像所見を呈した症例を経験した.非結核性抗酸菌症の治療は,菌種により治療法は異なるため,気管支鏡検査を含めた積極的な診断法を行うことにより,原因菌を同定することが重要と考えられた.

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