2021.04.22
Two cases of perforated anastomotic ulcer at the site of gastrojejunostomy after subtotal stomach-preserving pancreatoduodenectomy
当院で経験した亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(sub-total stomach-preserving pancreatoduodenectomy, 以下SSPPD)後の胃空腸吻合部に生じた吻合部潰瘍穿孔の2治療例を報告する.症例1は十二指腸乳頭部癌に対しSSPPD を施行された51歳女性.下腹部痛を主訴に救急外来を受診,腹部CT にてfree air を指摘された.穿孔性腹膜炎と診断し,緊急開腹手術を施行した.症例2は膵頭体部癌に対しSSPPD を施行された後,肝転移に対し化学療法中であった69歳男性.左側腹部痛を主訴に救急搬送され腹部CTでfree airを認めるも保存的加療にて軽快した. 2例ともSSPPD 後の吻合部潰瘍穿孔であったため術後の胃酸分泌能が術前と同等に維持されていた可能性がある.症例1はプロトンポンプ阻害薬を内服中にも関わらず発症した.症例2は腰痛に対する非ステロイド消炎鎮痛剤を常用していたことも発症の一助と推察される.SSPPD 術後の合併症として吻合部潰瘍の可能性を念頭におき予防に努める必要がある.症例に応じては保存的加療でも改善が見込める場合がある.
2021.04.21
End-of-life care provided in our palliative care ward for patients with multiple pulmonary metastatic gallbladder cancer requiring high-flow oxygen
2018年7月から当院に緩和ケア病棟が開設された.当院の緩和ケア病棟では,患者の希望を患者と家族に確認し,どのような希望であってもその目標に向けて,終末期のさまざまな苦痛に苦しむ患者の生活の質を,薬物療養,酸素療法,リハビリテーションや栄養管理などで積極的に改善させる緩和ケアを計画し実践している. 今回,我々は高流量酸素投与を必要としていた多発肺転移胆嚢癌患者へ実践できた終末期ケアについて報告する.症例は,50歳代女性.多発肺転移病変のため,重い咳症状があり,安静時は10L / 分リザーバーマスクにてSPO2 91% で,労作時は86%まで低下し呼吸苦も増悪した.全身倦怠感に対してコルチコステロイド投与を開始し,呼吸苦に対してオピオイド投与を開始し呼吸苦を調整した.調整後,「短期京都旅行」や「息子の婚約者家族との会食」をしたいという本人の思いを確認し,医療ソーシャルワーカー,リハビリセラピストを含めた緩和ケア病棟スタッフで準備計画し,関係機関と連携しながら,実現することができた.
2021.03.26
Categorization of consciousness disturbance in the recovery phase after intracerebral hemorrhage-practicality of newly-invented simplified consciousness recovery scale
脳卒中などの慢性期の意識障害スケールとして利用されているComa Recovery Scale-Revised(CRS-R)を踏襲して,簡便に障害の程度のランク付けが可能なスケールを日本語で作成し,川崎意識障害回復スケールと名付けた.これは,昏睡,植物状態,最小意識状態(2段階),最小意識状態から脱した状態,正常意識状態,からなる6ランクのスケールであり,CRS-R には表記されていない具体例を追加し,更に表情もスケールに追加した.これを実際の臨床で用いる際に,ランク付けが観察者間で大きな相違がないかを検証した.75歳以上の特発性脳内出血症例の中で,血腫減圧術を施行し,かつ退院時にmodified Rankin Scale で重度の障害(ランク5)と判定された8症例を対象に,退院時意識レベルを後方視的にランク付けした.観察者は医師3名,看護師3名,リハビリ療法士3名で,川崎意識障害回復スケールの説明を受けた後で,独立してランク付けを行った.結果は9症例中2症例で全員が同じランク,5症例で1名の観察者のみが1ランク異なったランクを付けており,2名以上が異なるランクを付けたのは2症例で,ケンドールの一致係数Wは0.871(p < 0.001)と,観察者が異なっても安定したランク付けになると考えられた.状態の改善期において観察者が同時には改善徴候に気付けないこともあり,ランク付けの相違は完全には防ぐことはできないが,少なくするためには,後方視的研究においてはカルテの見逃しを避けるために複数の観察者で行うこと,またスケールの理解不足も原因となるが,これを防ぐためには医療チームで定期的な振り返りを行い,スケールに対する共通の認識を持つ必要があると考えた.このスケールは症例間での意識レベルの比較が可能であり,高齢者への脳神経外科的な治療介入の効果を検討する際に有用と考えられた.
2021.02.01
A case of spontaneous isolated common hepatic artery dissection accompanied by acute epigastric pain
症例は69歳,男性.近医でパーキンソン病,肺気腫およびアルコール性肝障害などと診断され加療中であった.突然,心窩部痛を認め,改善しないため当院に救急搬送となった.心窩部に圧痛を認めたが腹膜刺激兆候はなく,腹部造影CT で総肝動脈解離と診断し同日入院となった. 心窩部痛は持続していたが腸管虚血所見を認めなかったことから,アセトアミノフェン点滴による疼痛コントロール,絶食による腸管安静や補液を行い翌日には症状が改善した.その後も症状の再燃なく,第8病日の腹部造影CT では総肝動脈解離の偽腔における血栓像は縮小し,末梢血管の血流は保たれていたため同日に退院となった.孤立性腹部内臓動脈解離は稀な疾患であり,特に孤立性総肝動脈解離の報告例は少ない.孤立性総肝動脈解離を含む腹部内臓動脈解離は中高年の男性に多く,強い腹痛に対し腹膜刺激兆候を認めないことが特徴である.本症例のように腹部所見が乏しく突然発症の腹痛を認める患者では,孤立性総肝動脈解離を含む腹部内臓動脈解離も急性腹症の鑑別疾患の一つとして考慮する必要がある.
2021.02.01
Two cases of laparoscopic fenestration surgery for giant liver cyst and their pathological review
当科にて腹腔鏡下開窓術を施行した巨大肝嚢胞の2例について病理学的検討を加えて報告する. 症例1は80歳代女性で右上腹部の違和感があり画像検査にて約20cm 大の巨大肝嚢胞と診断され腹腔鏡下開窓術を施行した.嚢胞壁の病理所見はBile duct cyst の診断であった. 症例2は60歳代女性で10年前から緩徐に増大する最大径13.7cm の肝嚢胞に対し腹腔鏡下開窓術を施行した.病理診断で線毛性前腸性肝嚢胞という稀な病態であった. 肝嚢胞は基本的に良性疾患であるが,有症状の場合は治療適応となる.巨大肝嚢胞の治療は経皮的硬化療法あるいは開窓術や肝部分切除などが行われる.今回我々は2例ともに腹腔鏡下開窓術を行ったが,低侵襲で整容性にも優れ,十分な症状改善が得られたことから有益な治療手段と考える.なお,症例2のような線毛性前腸性肝嚢胞の場合,扁平上皮癌合併症例の報告があり,比較的若年発症で悪性度も高い傾向のため慎重な治療選択が望まれる.




