h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2019.12.23

Usefulness of ventriculoperitoneal shunt for symptoms of increased intracranial pressure due to leptomeningeal carcinomatosis

髄膜癌腫症は,がんの集学的治療の進歩による生存期間の延長に伴い,診断される機会も増加している.髄膜癌腫症は患者のQuality of life(QOL) を著しく低下させ,生命予後に直結することが多い.神経症状の軽減によるQOL の改善を考えると,髄膜癌腫症に対する外科治療の介入を検討し直す必要があると思われる. 我々は,髄膜癌腫症に対し外科治療を施行した3症例経験した.外科治療の適応に関し,過去の症例も交え,文献的考察を加え報告する. 【症例1】56歳男性.肺癌を原発とする多発脳転移を伴う髄膜癌腫症と診断された.全脳照射後に全身化学療法を行うも,意識障害をきたし,全身化学療法の継続が困難となった.髄液排除によりPerformance Status(PS)が改善したため,脳室腹腔短絡術を施行した.術後,意識障害は改善し,治療を再開した.PS は改善し,比較的良好な日常生活を送れQOL は改善したと考えられたが,Nivolumab の副作用により,全身状態は悪化し,術後3か月で死亡した. 【症例2】55歳女性.肺腺癌と診断され,頭痛が出現し,髄膜癌腫症と診断された.EGFR-TKIを含む全身化学療法を行い,症状は改善傾向であった.その後,頭痛,嘔気が増悪しPS は低下した.脳室ドレナージ術により,PS は改善し,嘔気・疼痛のコントロールが可能となったため,脳室腹腔短絡術を施行した.術後,緩和医療に移行し,残された時間を有意義に過ごすことができ,QOL は改善したと考えられたが,全身状態の悪化により術後4か月で死亡した. 【症例3】66歳女性.頭痛が出現し,肺癌に伴う,髄膜癌腫症と診断された.疼痛コントロールが困難であり,PS も低下していたため,脳室ドレナージ術を施行したところ,疼痛コントロールが可能となった.PS の改善に伴い,Erlotinib による治療を開始することができた.しかし,間質性肺炎による全身状態の悪化により,脳室腹腔短絡術は施行できず,脳室ドレナージ術から44日で死亡した.

2019.12.09

Utility of bevacizumab plus paclitaxel therapy for patients with advanced or recurrent breast cancer treated at our hospital

抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor, VEGF)モノクローナル抗体ベバシズマブが進行・再発乳癌の治療薬として日本においても2011年から使用されている.日本乳癌学会乳癌診療ガイドライン2018年においてHER2陰性転移・再発乳癌に対する1次・2次の化学療法にベバシズマブを併用することが推奨されている.今回,当院における進行・転移再発乳癌に対するベバシズマブとパクリタキセル同時併用療法(BP 療法)の有用性の検討を行った.対象患者は2011年9月~2018年10月に当科でBP 療法を導入した79症例で,電子カルテを参照して後方視的検討を行った.年齢の中央値は58歳.ホルモン受容体(hormone receptor, HR)陽性human epidermal growth factor receptor(HER)2陰性サブタイプが45例,HR 陽性HER2陽性サブタイプが2例,HR 陰性HER2陽性サブタイプが5例,HR 陰性HER2陰性(triple negative)サブタイプが27例であった.Stage Ⅳが24例,再発が55例であり,主な転移部位(重複あり)は骨が45例,肝が34例,肺が29例,胸膜が21例であった.前化学療法レジメン数の中央値は2レジメン(範囲:0-8)であった.奏効率は63.3%,無増悪生存期間(PFS)の中央値は5.4か月であり,全生存期間(OS)の中央値は9.4か月であった.HER2陰性症例における多変量解析の結果,performance status 2以上がOS を悪化させる因子であり(ハザード比 [HR] が2.85, p=0.002),triple negative サブタイプ(HR が2.44,p=0.025)と中枢神経転移あり(HR が3.24,p=0.045)がPFS を悪化させる因子であった.重篤な有害事象としては,消化管穿孔と皮膚・軟部組織潰瘍形成,縦隔気管瘻,肺膿瘍,脳出血,上部消化管出血,血尿,鼻出血が認められた.本研究対象は2次治療以降で使用された症例が多いため,既報の臨床試験の結果と比較するとPFS は短かったが,奏効率は同等であった.一方,重篤な有害事象も10% 以上の頻度で認められ,BP 療法施行時には慎重な観察が必要である.

2019.12.09

The impact of needle number on the dose-volume parameters of high-dose-rate brachytherapy for prostate cancer

前立腺癌に対する高線量率組織内照射において,アプリケーター針の刺入本数や刺入位置は線量分布に大きく影響する.刺入方法は各施設の経験やポリシー,使用装置に依存する部分があり,最適な刺入法として確立された普遍的な方法はない.今回我々はアプリケーター針の刺入本数と線量体積因子の関連を解析し,最適な刺入本数を検討した.対象は2010年6月1日から2012年10月31日の間に同治療を受けた初発前立腺癌135例.治療計画にはOncentra® を用いた.治療前エコーによる前立腺体積,治療計画CT により算出された線量体積因子(PTV のDmin%,D90%,dose non-uniformity ratio:DNR,homogeneity index:HI,conformity index:CI,尿道最大線量,直腸最大線量),治療時期(一次解析として前期:~2011年1月,中期:2011年2月~9月,後期:2011年10月~2012年5月,さらに追加解析として直近:2012年6月〜),アプリケーター針刺入本数について,相互の関連をJMP 14,Student のt検定を用いて検討した.一次解析の結果,刺入本数は前立腺体積と相関せず,刺入本数が多い群は少ない群に比べ尿道最大線量が有意に低かった.他の線量体積因子では有意差はないものの,刺入本数が多い群でPTV のDmin% は高値,D90% は高値,DNR は低値,HI は高値,CI は高値と,本数が多いほど良好な線量分布であることを示していた.なお,治療時期が後期の症例で刺入本数が有意に増加していた.これらの結果が判明した後に治療された直近16例においては,さらに刺入本数が増加し,線量体積因子の改善が認められていた.今回の検討から,アプリケーター針の刺入本数が多いほど線量分布が改善し,とくに16-17本の刺入により良好な線量分布が得られることが示された.

2019.11.11

Current Status of Point-of-Care Ultrasonography (POCUS) – Assessment of Bedside Ultrasonography Cases in the Intensive-Care Unit in our Hospital –

近年point-of-care 超音波(以下POCUS)の有用性が注目されている.しかし,その定義,対象臓器や疾患,必要とされる手技などは明らかとなっていない.当施設でICU(intensive-care unit)入院患者に対しベッドサイドで腹部超音波検査(abdominal ultrasound: AUS)を施行した症例をPOCUS 症例とし,当院のPOCUS の現状をretrospective に検討した.POCUS 施行例245例で,検査依頼領域は肝胆膵領域が最多で次に消化管領域が続いた.検査依頼領域に何らかの所見が認められた症例は47.8%であった.POCUS の正診率については94.5%であった.診断困難例は全例が消化管疾患でその中でも消化管出血とくに出血性直腸潰瘍が多く,いずれも内視鏡検査で診断されていた.POCUS で緊急対応が必要と指摘した症例は28例あり,その28.6%は検査依頼領域以外の部位に病変を認めた.28例の内訳では消化管領域(60.7%)と循環器領域(17.9%)であった.POCUS では検査依頼領域以外の領域に所見を認める事もあり,腹部全体の検索が重要である.また消化管領域はPOCUS による診断が困難なこともあり,AUS 所見で症状が説明できない場合には、内視鏡検査なども検討すべきである.以上のことから,緊急疾患は消化管領域と循環器領域に多く,特に消化管領域については慎重な検索が重要と考えられた.また,AUS を用いて適切なPOCUS を行うためには,急性腹症を含めた腹部疾患の横断的かつ総合的な病態判断が必要である.

2019.11.11

A preliminary study of QOL of levocarnitine administration for patients with urologic cancer

今回我々は初の試みとして,泌尿器科領域癌における抗癌剤治療前後での血清カルニチン値を測定し,QOL への影響について検討した.さらに癌治療中の患者においてカルニチン補充が及ぼすQOL への効果について検討を加えた. 2016年6月1日から2018年9月30日までに当科で化学療法もしくは分子標的薬治療を行った泌尿器科領域癌患者17例を対象とした.抗癌剤治療前後での血清カルニチンを測定し,その後レボカルニチン1,500 mg/ 日の経口投与を行い,QOL についてprospective に評価を行った.抗癌剤治療前,治療3カ月,レボカルニチン経口投与1カ月,3カ月の4ポイントで血清遊離カルニチンを測定し,QOL については Brief Fatigue Inventory( BFI)を用いた global fatigue score(GFS)で評価した. 年齢中央値は69歳(52~82歳)で男女比は12:5であった.疾患は尿路上皮癌が10例,前立腺癌が5例,腎癌が2例であった. 治療内容は尿路上皮癌に対するgemcitabine/cisplatin が10例,前立腺癌に対するdocetaxel が3例,cabazitaxel が1例,etoposide/cisplatin が1例,腎癌に対する分子標的薬(sunitinib,pazopanib)が2例であった.血清遊離カルニチンは,抗癌剤治療前:49.0±12.1μmol/L,抗癌剤治療後:36.0±10.3μmol/L と抗癌剤治療後に統計学的に有意な低下を認めた(p<0.05). また抗癌剤治療前と比して17例中13例(76.5%)が,抗癌剤治療3カ月でカルニチンの低下を認めた.血清遊離カルニチン値が基準値未満に低下した症例(<36μmol/L)をカルニチン低値群(n=9),基準値を保っていた症例をカルニチン非低値群(n=8)として2群間について検討した.カルニチン低値群においてレボカルニチン内服3カ月で,内服前と比して統計学的に有意なGFSの低下が認められ,QOL の改善が得られた(p<0.05).一方,カルニチン非低値群では,レボカルニチン内服前後でGFS に差異は認めなかった.またレボカルニチン内服3カ月でGFS が改善した症例をレボカルニチン有効例とすると,カルニチン低値群で88.9%(8/9)が有効,カルニチン非低値群で50.0%(4/8)が有効であった. 抗癌剤治療中のカルニチン欠乏症では,カルニチン補充でQOL の改善が期待できると考えられた.レボカルニチンは泌尿器科領域癌患者の治療の際に補助薬の一端を担うことが期待される.また泌尿器科領域癌患者において,抗癌剤治療によって血清遊離カルニチン値が低下することが示唆された.

2019.10.18

A case of intrauterine fetal death after thrombocytopenia in a patient with systemic lupus erythematosus and antiphospholipid syndrome

抗リン脂質抗体症候群は,抗リン脂質抗体が産生されることで血栓症を主体とする病態を引き起こす自己免疫疾患である.動静脈血栓症に加え,習慣性流産,早産,妊娠高血圧症候群,胎児発育遅延,胎児機能不全などの妊娠合併症を高率に引き起こすとされている.また患者のうち約半数は全身性エリテマトーデスが併存していると言われている.我々は妊娠を契機に血小板減少を来たし,子宮内胎児死亡に至った全身性エリテマトーデス及び抗リン脂質抗体症候群の症例を経験した. 患者は20歳代女性,未経妊未経産.5年前に全身性エリテマトーデス及び抗リン脂質抗体症候群と診断された.プレドニゾロンとタクロリムス,アザチオプリンによる免疫抑制療法及び低用量アスピリン療法を開始され,数年間に渡りプレドニゾロン5mg/ 日+タクロリムス3mg/ 日+アザチオプリン50mg/ 日で病態は安定していた.妊娠を契機にプレドニゾロン10mg/ 日の単独治療に切り替えたが,徐々に血小板減少が進行してきたため入院し,プレドニゾロン30mg/ 日への増量及びタクロリムス3mg/ 日を再開した.また血栓予防治療として,低用量アスピリンに加えヘパリン療法を開始した.しかし妊娠16週5日で子宮内胎児死亡が判明したため,血栓予防治療を中止し児の娩出に至った. 抗リン脂質抗体症候群合併妊娠は,周産期管理に慎重を要する例も存在することを念頭に置き,特にハイリスク症例に対しては妊娠成立前から産婦人科と連携して治療にあたる必要がある.

2019.10.15

Clinical usefulness of endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration in sarcoidosis diagnosis

縦隔・肺門リンパ節病変に対する超音波気管支内視鏡ガイド下経気管支針生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration: 以下EBUS-TBNA) は,縦隔鏡や外科的な肺生検に比べ低侵襲である.肺癌のリンパ節転移の診断に対するEBUS-TBNA の有用性は確立されており,良性疾患に対する有用性や内視鏡所見についての報告は少ない.サルコイドーシスに対するEBUS-TBNA の有用性と問題点を検討した.川崎医科大学呼吸器内科に2004年5月1日から2016年11月30日に,サルコイドーシスの疑いで入院した67例(男34,女33)を対象とした.EBUS-TBNA でサルコイドーシスと診断した症例と,それ以外で診断した症例を後方視的に解析した.サルコイドーシスと診断したのは39/67例(58%),そのうちTBLB + EBUS-TBNA で診断;13/21例(62%),EBUS-TBNA のみで診断;2/2例,TBLB(transbronchial lung biopsy)のみで診断;22/41例(53%),縦隔鏡で診断;1例,皮膚生検で診断; 1例であった.受診の契機は健康診断の胸部エックス線検査で両側肺門リンパ節腫脹(bilateral hilar lymphadenopathy:以下BHL)等の胸部異常陰影の指摘によるものが約半数(31/67例)を占めていた.穿刺リンパ節は#4R と#7が多く,穿刺距離は 27.9±4.5 mm,そのうち19例は 20 mm 以上であった.EBUS-TBNA が施行できなかった15例のうち8例は病期Ⅲ,2例は病期Ⅱ,3例は病期0,1例は血流のため,1例はリンパ節が同定不可であった.また,EBUS-TBNA に関連した重篤な有害事象はなかった.縦隔・肺門リンパ節が腫大したサルコイドーシスでは,穿刺困難な事由がなければ,EBUS-TBNA による診断は有用である.

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