2019.10.01
Study on oral continuation rate of anticholinergic drugs and β3 adrenalin receptor agonists in women overactive bladder patients in our hospital
過活動膀胱(overactive bladder:以下OAB)は,尿意切迫感や頻尿などの下部尿路症状を有し,加齢とともに増加する傾向がある.OAB 患者の治療薬として,本邦では抗コリン薬とβ3アドレナリン受容体作動薬が推奨,使用されている.今回,女性OAB 患者に対する,抗コリン薬とβ3アドレナリン受容体作動薬の内服継続率,副作用,内服中止理由に関してretrospective に検討した.対象は,2013年1月から12月の1年間に当院泌尿器科を受診した初診の女性OAB 患者,87名とした.β3アドレナリン受容体作動薬投与群と抗コリン薬投与群の内服継続率は,β3アドレナリン受容体作動薬投与群は,12か月で38.8%,60か月で18.1%,抗コリン薬投与群は,12か月18.4%,60か月で7.9%であり,β3アドレナリン受容体作動薬投与群の方が若干継続率は良いものの,両群間に差は認めなかった.副作用に関しては,抗コリン薬投与群の方が多く,口喝が17例(44.7%),便秘が15例(39.5%)であった.薬剤中止の理由は両群とも自然寛解によるものが多かった.
2019.10.01
Clinical effect and safety of Tazobactam/Piperacillin and Pazufloxacin combination therapy on hospital-acquired pneumonia severe group (C group)
院内肺炎重症群(C群)に対するTazobactam/Piperacillin(TAZ/PIPC),Pazufloxacin(PZFX)併用療法の有効性と安全性を検討した.院内肺炎重症群(C 群)20例を対象とし,TAZ/PIPC 1回4.5g,1日3回, PZFX 1回500mg,1日2回の併用投与を行い,その臨床効果,細菌学的効果,副作用などにつき検討した.その結果,臨床効果は,有効率60.0%(20例中12例有効)であった.細菌学的効果は,除菌率69.2%(13株中9株除菌)であり,Escherichia coli 3株中3株,Streptococcus pneumoniae 2株中2株,methicillin-sensitive Staphylococcus aureus ,Serratia marcescense 各々1株中1株,Enterococcus faealis ,Pseudomonas aeruginosa 各々2株中1株が除菌された.副作用として,注射部位静脈炎が3例(15.0%)にみられ,臨床検査値の異常変動は8例(40.0%:肝機能障害4例,腎機能障害4例)にみられたが,いずれも軽度であった.以上より,TAZ/PIPC, PZFX 併用投与は,院内肺炎重症群(C群)に対して推奨できる治療法と考えられた.
2019.09.03
A Case of Metastatic Breast Cancer with Gastrointestinal Perforation during Bevacizumab Combination Chemotherapy
ベバシズマブはパクリタキセルとの併用でHER2陰性の進行・再発乳癌に対する有効性が示されており,無増悪生存期間を有意に延長させる.しかし,ベバシズマブ特有の有害事象も報告されており,投与の際には注意を要する.今回,再発乳癌に対しベバシズマブを使用し,腸管穿孔を起こした1例を経験した.症例は72歳女性.右乳癌術後5年目に多発リンパ節,肺転移を認め,化学療法で治療中に8次治療としてベバシズマブとパクリタキセル(BP)療法を開始した.1年ほど奏効したが,突然,腹痛を訴え受診した.CT で腹腔内にfree air を認めたため緊急開腹術を施行した.小腸に1か所の穿孔部位を認めた.病理組織検査では,穿孔部に乳癌の転移巣が認められた.乳癌に対するベバシズマブ併用化学療法中の消化管穿孔は報告が少ない.腹膜播種を認める症例やベバシズマブ投与期間の長い患者では,腹部膨満感や腹痛を訴えた際は消化管穿孔を念頭におく必要がある.
2019.08.23
Utilizing incident notebooks to decrease nursing staff communication errors in a mixed-department ward
2011年4月より合計12科の混合病棟となったことで,看護業務が煩雑化し,医療事故・過誤の高リスクとなっていた.その改善の目的で,当該病棟の看護師22名が,コミュニケーションエラーの回避・減少を目的としたインシデントノート(【ノート】と表記)を2011年7月10日から2011年12月31日まで使用し,記入されたデータから意図の共通性を分類した.さらに【ノート】使用の前後で実施した意識調査の結果を合わせて内容分析を行った.【ノート】の内容は,3つのコアカテゴリー(『コア』と表記),その下層に計9つのカテゴリー(≪カテゴリー≫と表記)に分類された.『意識付けによる安全行動への期待』では,≪発生したインシデントの状況の記述≫および≪確認不足による間違い≫から,具体的な事実を確認でき,病棟にある潜在的リスクが情報として表在化された.そして≪厳守規則≫として,情報発信,ルールづくり,遵守徹底が図られた.【ノート】の使用によって,それらの情報をタイムリーに,アサーティブな方法でエラーを指摘することができ,意識付け,チーム間で話し合うという安全風土の形成に有効であった.『潜在リスクの表在化』では,意識調査において,経験年数9年以下では10年以上のスタッフに比べ危険を察知する割合が低いという結果が得られた.≪不慣れ・知識不足からのインシデント情報≫から,知識・経験の豊富なスタッフやリスク感性の高いスタッフが情報を提供することが,相互サポートとして活用できたことが判明した.『医師からの知識情報』では,12科32名の医師の指示に対応する必要性があり,この項目もノートに記述されエラーの低減に有効であった.当該病棟では,混合病棟による環境に影響を受けた個人要因を一番高いリスク因子と捉えており,【ノート】の使用はリスク因子を表在化し,改善策に結びつけることができた.また,【ノート】をツールとした情報共有によるコミュニケーションが,患者安全を意識した風土作りに有効と考えられた.今後は必要に応じ【ノート】を使用することにより,更なる看護業務の改善を図りたい.