h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2019.05.30

A case of tuberculous peritonitis leading to diagnosis by laparoscopic examination

症例は63歳女性.元医療従事者であった.1ヵ月続く腹痛と38度の発熱で近医を受診し,腹水貯留を認め,腹水検査でヒアルロン酸とCA125が高値であったことから癌性腹膜炎を疑われ当院内科に紹介された.画像検査より癌性腹膜炎を疑われたが,原発は同定できなかった.細胞診はclassII であったが,卵巣癌,腹膜癌,悪性中脾腫を疑われたことから,腹腔鏡検査目的に当科紹介となった.腹腔鏡検査で黄白色粒状の病変を認め,病理組織検査にて類上皮細胞性肉芽腫を認め,結核等の感染症が疑われた.病歴聴取にて3年前の職務中に結核排菌患者に濃厚接触歴あり,腹腔鏡再検査にて,塗抹,培養,PCR 陰性であったが,腹水中ADA 高値より結核と診断し結核専門病院に転院した.抗結核薬開始され速やかに症状は軽快した.結核性腹膜炎は非常に稀な疾患であるが,腹腔鏡検査で診断に至った症例を経験した.原因不明腹水を認めた場合,癌性腹膜炎のみならず感染性腹膜炎の可能性も念頭に置き早期から同時に精査する必要がある.

2019.03.25

Transplantation-associated thrombotic microangiopathy and complicating diffuse alveolar hemorrhage successfully treated with romiplostim

造血幹細胞移植後に発症する血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy:TMA)は,治療法が確立されておらず,多臓器不全や重症出血をきたす予後不良な疾患である.今回,造血幹細胞移植後TMA と肺胞出血を発症し,ロミプロスチム投与が奏効した症例を経験したので報告する.症例は20歳代の男性.20XX 年6月節外性NK/T 細胞リンパ腫, 鼻型と診断し,化学療法後に母子間末梢血幹細胞移植を施行した.再発することなく経過し,移植1年後に,免疫抑制剤を中止した.治療による腎機能障害を呈していたが,高血圧に伴い腎機能障害が増悪した.高血圧緊急症と判断し,直ちに降圧剤を開始したが,腎機能障害はさらに進行し,血小板数は徐々に低下し,その後0.8万/μL まで急激に低下したため,精査治療目的に入院となった.貧血の進行,LD 高値,ハプトグロビン低値,破砕赤血球の出現を認め,ADAMTS13活性の低下やインヒビターは認めなかったため,TMA と診断した.血漿交換療法や新鮮凍結血漿(FFP)の定期輸注,rTM (recombinantthrombomodulin) 投与で治療したが,5週間経過しても血小板数や病態の改善を認めなかった。その後、入院38日目に肺胞出血を発症した.長期間のTMA 存在下での血小板輸血はリスクが高いと考え,ロミプロスチムの投与を開始した.その結果,血小板数増加により,肺胞出血は改善し,新たな臓器不全症状がでることなく治療し得た.移植後TMA における確立された治療法はないが,血小板減少に伴う出血症状に対してロミプロスチムが有害事象なく奏効する可能性が示唆された.ロミプロスチムの適応外使用については川崎医科大学附属病院医療倫理委員会にて承認されている.

2019.03.24

 

2018.11.09

Adult-onset Still’s disease as the cause of fever of unknown origin with hyperferritinemia

成人Still 病は弛張熱,関節炎,発熱時に増強する発疹(サーモンピンク疹)を3徴とする疾患で,白血球増加,血清CRP やフェリチン値の上昇などの強い炎症所見を認め,しばしば不明熱の原因となる.高フェリチン血症を契機に成人Still 病と診断した症例を経験したので報告する.患者は57歳女性,入院3週間前から発熱とともに咽頭痛,関節痛が出現し,近医にて抗菌薬治療が行われた.抗菌薬不応の発熱で当院を紹介受診し,不明熱精査目的に入院した.入院時より前胸部や背部に淡い紅斑が出現し,採血で,白血球増加(11,480/μL),CRP 高値(12.98 mg/dL),フェリチン著明高値(5,511 ng/mL)を認めた.胸腹部CT 検査では腋窩・鼠径リンパ節の腫脹と脾腫大を認めた.血液培養検査は陰性で,骨髄生検や皮膚生検にて造血器腫瘍を示唆する所見を認めなかった.感染症や悪性腫瘍を除外し,Yamaguchi らの分類基準を満たし,成人Still 病と診断した.プレドニゾロンとメトトレキサートの併用療法を開始したところ,速やかに全身状態は改善した.不明熱の原因検索を行う際に,フェリチン値の測定は有用であると考えられる.

2018.11.09

Hydrogen water shows the effect of improving bladder function in a rat model of bladder outlet obstruction

下部尿路症状(low urinary tract symptoms: LUTS)は,動脈硬化や前立腺肥大症に伴う下部尿路閉塞による膀胱血流障害が原因の一つとして考えられており,症状として排尿症状,畜尿症状,排尿後症状がある.ラットの下部尿路閉塞(bladder outlet obstruction: BOO)モデルは閉塞に伴い膀胱虚血を生じさせ,酸化ストレス状態を惹起し,LUTS を引き起こす病態モデルとして確立されている.近年,水素がもつ抗酸化,抗アポトーシス作用が注目されており,様々な臓器において組織の保護作用を示すことが解明され,様々な疾患の予防と治療に応用できることが多施設,多領域から報告されている.今回,ラットBOO モデルに対して,水素水(Hydrogen Water: H2)投与を行い,抗酸化作用の検証に加え,水素水が影響を及ぼす代表的メディエーターの探索を行った. BOO モデルの作成には,9週齢の雌性ラットを用いた.開腹し,尿道に19G 針を沿わせた状態で尿道を結紮し,尿道の部分閉塞を作成した.作成直後からsham群,水素水非投与(BOO H(2 -))群と投与(BOO H(2 +))群に分け,4週間後,膀胱機能検査と組織学的,生化学的および免疫組織学的検討を行った.なお,水素水は経口投与した. 膀胱重量および一回排尿量は,sham 群に対して BOO H(2 +)群で有意差はなかったが,BOO H(2 -)群で有意に増加していた(重量 p<0.01),( 一回排尿量 p<0.05).BOO H(2 -)群と BOO H(2 +)群では有意差は認めなかった(p>0.05).膀胱内圧測定では,BOO 群で排尿筋過活動が確認され,BOO H(2 -)群では,BOO H(2 +)群と比較して,排尿筋過活動回数は有意に増加していた(p<0.01).膀胱筋層部における膠原繊維の比率については,BOO H2 (−)群でsham 群および BOO H(2 +)群に比して,有意に上昇していた(vs sham p<0.01, vs BOO H(2 +) p<0.01).膀胱組織内8-OHdG の定量では,BOO H(2 -)群は BOO H2(+)群に比して高値を示しており(p<0.05),8-OHdG 染色ではBOO H2 (-)群のみ筋層で著明な発現が認められた.網羅的ケモカイン/サイトカイン解析ではTNF-αが,BOO H(2 -)群においてBOO H(2 +)群と比較してもっとも発現が亢進しており,免疫染色では,BOO H2 (-)群で膀胱上皮粘膜下の間質および筋層においての発現の増加が認められた.一方,BOO H(2 +)群では,筋層部においての発現が抑制されていた. 水素水は,慢性虚血に起因する下部尿路症状の治療の一つになり得る可能性がある.本研究において,膀胱筋層の酸化ストレスを抑制することにより,膀胱筋層のTNF-α を中心とした炎症性サイトカインの抑制が,その作用機序の一つとして考えられた.

2018.11.08

A case of Fournier gangrene developed from a bedsore occurring at the ischium

フルニエ壊疽は外陰部を中心に発症し,急速に進行する壊死性筋膜炎と定義される.早期の診断を行い,外科的デブリードマン,適切な抗菌薬の投与をはじめとした全身の集学的管理を要す,生命予後の不良な疾患である.症例は50歳代男性,脊髄腫瘍切除後であり胸部以下の感覚障害,対麻痺がある.2ヵ月前から左坐骨部褥瘡を認めていたが未治療であった.2日前からの意識障害を主訴に前医を受診し,CT にて褥瘡周囲の皮下に広範囲なガス貯留像を認めたため,当院に救急搬送された.外科的デブリードマンと抗生剤投与を行い,感染は消退したが,その後,臀部から肛門周囲に広範囲に組織欠損創が残ったため,薄筋皮弁での再建手術を行った.良好な経過を得たため経過に考察を加え報告する.

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