h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2019.08.23

Utilizing incident notebooks to decrease nursing staff communication errors in a mixed-department ward

2011年4月より合計12科の混合病棟となったことで,看護業務が煩雑化し,医療事故・過誤の高リスクとなっていた.その改善の目的で,当該病棟の看護師22名が,コミュニケーションエラーの回避・減少を目的としたインシデントノート(【ノート】と表記)を2011年7月10日から2011年12月31日まで使用し,記入されたデータから意図の共通性を分類した.さらに【ノート】使用の前後で実施した意識調査の結果を合わせて内容分析を行った.【ノート】の内容は,3つのコアカテゴリー(『コア』と表記),その下層に計9つのカテゴリー(≪カテゴリー≫と表記)に分類された.『意識付けによる安全行動への期待』では,≪発生したインシデントの状況の記述≫および≪確認不足による間違い≫から,具体的な事実を確認でき,病棟にある潜在的リスクが情報として表在化された.そして≪厳守規則≫として,情報発信,ルールづくり,遵守徹底が図られた.【ノート】の使用によって,それらの情報をタイムリーに,アサーティブな方法でエラーを指摘することができ,意識付け,チーム間で話し合うという安全風土の形成に有効であった.『潜在リスクの表在化』では,意識調査において,経験年数9年以下では10年以上のスタッフに比べ危険を察知する割合が低いという結果が得られた.≪不慣れ・知識不足からのインシデント情報≫から,知識・経験の豊富なスタッフやリスク感性の高いスタッフが情報を提供することが,相互サポートとして活用できたことが判明した.『医師からの知識情報』では,12科32名の医師の指示に対応する必要性があり,この項目もノートに記述されエラーの低減に有効であった.当該病棟では,混合病棟による環境に影響を受けた個人要因を一番高いリスク因子と捉えており,【ノート】の使用はリスク因子を表在化し,改善策に結びつけることができた.また,【ノート】をツールとした情報共有によるコミュニケーションが,患者安全を意識した風土作りに有効と考えられた.今後は必要に応じ【ノート】を使用することにより,更なる看護業務の改善を図りたい.

2019.07.16

Characterization of Mild Cognitive Impairment patients continuing long-term visits to a memory clinic

軽度認知機能障害(MCI)は認知症の前段階として注目されてきた.今回,認知機能低下のため当院もの忘れ外来を長期通院継続しているMCI 患者の特徴を把握し,MCI 患者の認知症への進展を予測する要因について検討した.対象は2003年4月~2017年4月に当科もの忘れ外来を受診した患者1,646人のうち,初診時Mini-Mental State Examination(MMSE)20/30以上ある40歳以上のMCI 患者125人.患者背景,神経心理検査,画像所見,薬物治療の有無を検討し,さらに,これらを認知機能維持群(MMSE の変化<5)と悪化群(MMSE の変化≧5)の2群に分けてその特徴を比較した.初診時平均年齢72.8±10.5歳,教育歴は平均11.1±2.1年,基礎疾患は高血圧症48.8%,糖尿病 23.2%,脂質異常症 47.2% と生活習慣病を併存している例が多かった.初診時の主訴が記憶障害であった例が92.8%と高かった.神経心理検査ではMMSE 24.2±2.8,長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)22.5±3.8,Test Your Memory 日本語版一部改変(TYM-J川崎医大ヴァージョン;TYM-J)37.4±6.4であった.画像検査では,アルツハイマー病(AD)に特徴的な側頭頭頂連合野や後部帯状回の集積低下を認めた患者は41.6% に留まった.2017年4月の時点での臨床診断は,AD 69%,MCI 12% であった.認知機能維持群と悪化群での比較では,悪化群は初診後1年でMMSE, HDS-R ともに有意に低下した.MMSE,TYM-J 下位項目での比較では,1年後にMMSE で注意と計算,遅延再生で,TYM-J では知識と想起で減点が多かった.以上から,初診時にMCI と診断しても,受診1年間の認知機能の変化で,ある程度,認知症への進展を予想できるかもしれない.

2019.05.30

A case of tuberculous peritonitis leading to diagnosis by laparoscopic examination

症例は63歳女性.元医療従事者であった.1ヵ月続く腹痛と38度の発熱で近医を受診し,腹水貯留を認め,腹水検査でヒアルロン酸とCA125が高値であったことから癌性腹膜炎を疑われ当院内科に紹介された.画像検査より癌性腹膜炎を疑われたが,原発は同定できなかった.細胞診はclassII であったが,卵巣癌,腹膜癌,悪性中脾腫を疑われたことから,腹腔鏡検査目的に当科紹介となった.腹腔鏡検査で黄白色粒状の病変を認め,病理組織検査にて類上皮細胞性肉芽腫を認め,結核等の感染症が疑われた.病歴聴取にて3年前の職務中に結核排菌患者に濃厚接触歴あり,腹腔鏡再検査にて,塗抹,培養,PCR 陰性であったが,腹水中ADA 高値より結核と診断し結核専門病院に転院した.抗結核薬開始され速やかに症状は軽快した.結核性腹膜炎は非常に稀な疾患であるが,腹腔鏡検査で診断に至った症例を経験した.原因不明腹水を認めた場合,癌性腹膜炎のみならず感染性腹膜炎の可能性も念頭に置き早期から同時に精査する必要がある.

← newer entries older entries →