h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2018.11.07

Response to combination therapy with rituximab and bendamustine for intestinal monomorphic PTLD

移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は,造血幹細胞移植後に免疫抑制剤を使用した結果として,T細胞機能が低下して生じる異常なリンパ球,または形質細胞の増殖で,移植領域において最も致死的で注意を要する合併症の一つである.PTLD は4つのカテゴリーに分類され,その中のmonomorphic PTLD は、悪性リンパ腫の形態を呈する.Monomorphic PTLD の治療には,免疫抑制剤減量,リツキシマブ(R)単独療法やR-CHOP 療法があるが,予後は不良である.今回,難治性PTLD に対してリツキシマブ併用ベンダムスチン療法が奏効し寛解をえることができた症例を経験したので報告する.症例は50歳代男性で、骨髄異形成症候群に対して臍帯血移植を施行し,GVHD 予防にタクロリムスを使用した.移植後,消化管GVHD を発症し,プレドニゾロンで治療中,monomorphic PTLD(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を発症した.免疫抑制剤中止後,リツキシマブ(R)単独療法,R-CHOP like 療法を施行したが効果不良であった.リツキシマブ併用ベンダムスチン療法に変更し4コース施行後,消化管内視鏡検査で病変は消失し,CT 検査で完全奏効を確認した.治療終了し約1年経過しているが,現在も症状増悪なく経過できており,難治性monomorphic PTLD に対してリツキシマブ併用ベンダムスチン療法が有効であった.

2018.11.06

Lubiprostone for opioid-induced constipation in patients treated with chemotherapy

当科において2014年10月から2016年2月に入院で化学療法を施行し,がん性疼痛に対して使用したオピオイドにより誘発された便秘に対してルビプロストンを投与した全症例を対象とした.対照群は,当院のルビプロストン採用以前の2012年4月から2014年9月まで,化学療法施行中にオピオイドを使用した患者に緩下薬を使用していた全症例とした.ルビプロストンを追加してからの排便回数と食事量の変化を後方視的に解析した.対照群の排便回数と食事量の変化は,新たな緩下薬(センノシド,ピコスルファートナトリウム,または大建中湯)の追加または酸化マグネシウムを増量した前後を基準とした.ルビプロストン使用群7人,未使用の対照群12人で,オキシコドン換算の使用量中央値(範囲)は対照群で10.0(10.0~62.9)mg,ルビプロストン群で39.3(10.0~125.7)mg であった(P=0.103).ルビプロストン群ではその投与翌日に7例中6人,対照群においては12例中3例で排便が認められた(P<0.05).ルビプロストン群においては排便があった翌日の食事摂取量は7例中6例,対照群は12例中3例で改善していた(P<0.05).化学療法施行中にもオピオイドによる便秘に対するルビプロストンが有用であることが示唆された.

2018.07.04

Relationship of health checkup data with mental health and sleep condition in specific medical checkups

特定健診・特定保健指導は生活習慣病(糖尿病,脂質異常症,高血圧)の対策として行われているが,メンタルヘルスや睡眠について十分な検討や対策は出来ていない.今回,我々は特定健診受診者の健診結果とメンタルヘルス及び睡眠について詳細を明らかにすることを目的に本研究を行った.本研究への参加を書面にて同意頂いた特定健診受診者76名(女性41名,男性35名)を対象に研究を行った.対象者には健診受診時に日本語版ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index, PSQI)及び一般健康調査票(General Health Questionnaire, GHQ)-12 項目版の回答を求めた.調査項目はPSQI とGHQ-12の及び特定健診の測定項目,精神健康の指標World Health Organization Well-being Index (WHO)-5を含む健診問診票の結果を対象とした.PSQI のスコアを6点以上と未満とで分け特定健診測定値を比較した結果は有意差を認めなかった.GHQ-12とPSQI のスコアはSpearman の順位相関係数で有意な相関を認めた (r=0.63, p<0.01).また,GHQ-12とPSQI の7つの要素と性別及び年齢で多変量解析を用いて検討した結果GHQ-12は睡眠の質 (β=0.32, t=2.96, p<0.01) と日中の眠気 (β=0.37, t=3.93, p<0.01) で有意な関連を示した.GHQ-12の代わりにWHO-5を用いた結果でも同様であった.今回の検討では特定健診受診者において睡眠の状態とメンタルヘルスに相関を認め,特に熟眠感の欠如と日中の眠気がメンタルヘルスにとって重要な症状であることを示唆した.

2018.07.03

Anti-cell growth and anti-cancer stem cell activity of the hedgehog inhibitor GANT61 in poorly and undifferentiated thyroid cancer cells

甲状腺分化癌は予後良好であるが低分化・未分化癌は予後不良であり,新規治療薬の開発が急務である.多くの悪性腫瘍でヘッジホッグ(Hh)経路の異常な活性化が起こっており,Hh 経路を標的とした治療戦略が有望視されている.Hh 経路の活性化は,腫瘍の生存・増殖・血管新生の促進ばかりでなく,癌幹細胞の制御との関与が示されている.我々は,甲状腺癌細胞を用いてHh経路を阻害するGANT61の抗腫瘍効果並びに癌幹細胞に与える影響を検討した.また,進行甲状腺癌の治療薬として用いられているタキサン系抗癌化学療法薬パクリタキセルとの併用効果も検討した.当教室で樹立された甲状腺低分化癌細胞株KTC-1及び甲状腺未分化細胞株KTC-2,KTC-3を用いてGANT61の細胞増殖,細胞周期,アポトーシス,癌幹細胞比率に与える影響を検討した.また,Hh 経路のeffector であるglioma-associated oncogene (Gli) 1,その下流にある癌幹細胞制御因子(aldehyde dehydrogenase [ALDH], Snail, Slug)や抗アポトーシス分子(survivin,Bcl-2)発現に与えるGANT61の効果を調べた.GANT61は,すべての甲状腺癌細胞株で細胞増殖を用量依存性に抑制した(50% 阻止濃度の平均値: KTC-1細胞は17.2 μM; KTC-2細胞は13.6 μM;KTC-3細胞は13.3 μM).GANT61は,KTC-1及びKTC-2細胞のsub-G1分画を増加したが,G1-Sブロックは起こさなかった.GANT61は,全ての細胞株において用量依存性にアポトーシス分画を増加し,survivin やBcl-2の発現を低下させた.GANT61は,すべての細胞株でGli1, ALDH, Slugの発現を低下し,癌幹細胞比率を低下させた.以上の結果は,GANT61が甲状腺低分化・未分化癌細胞のsurvivin やBcl-2発現低下を介してアポトーシス誘導し,細胞増殖を抑制し,さらに,Hhシグナル標的因子Gli1, ALDH, Slug の発現低下により癌幹細胞の自己再生能を抑制することを示唆している.さらにGANT61は,すべての甲状腺癌細胞株においてパクリタキセルの細胞増殖抑制効果を増強した.これらの基礎研究の結果は,GANT61が甲状腺低分化・未分化癌の新規治療薬として有望なことを示唆している.

2018.07.02

A case of drug-related rhabdomyolysis involving an onset of urinary tract infection

症例は74歳,女性.近医で糖尿病や脂質異常症,高血圧と診断され加療中であった.当院へ全身倦怠感や筋力低下を主訴に搬送された.搬送時の身体所見で全身倦怠感や筋力が低下しており,血中のCPK,ミオグロビンの著明な上昇を認めた.血中クレアチニンやBUN の上昇,乏尿を認め,急性腎不全を併発した.身体症状や血液検査,尿検査などから横紋筋融解症と診断し,入院1日目から持続血液透析を施行し,筋力や腎機能は徐々に改善した.横紋筋融解症の原因としては,外傷性要因と非外傷性要因に分類される.その中で薬剤性における脂質異常症治療薬の頻度が高い.他にも多くの原因があり,感染症を原因とした報告もある.また,多数の要因によって横紋筋融解症が生じると指摘されているが,詳細については明確にされていない.薬剤性横紋筋融解症の原因の一つに血糖降下薬が挙げられる.さらに感染症を併発することで横紋筋融解症を発症させた報告がある.しかし,発症機序として薬剤と感染症がどのように関与したかは明確でない.横紋筋融解症は,薬剤,外傷をはじめとして多くの原因によって発症する.そのため,それぞれ単一の要因では横紋筋融解が生じない場合でも,各々の要因が合併することでより発症しやすい状況になりえた可能性があり注意を要する.

2018.07.01

Utility of fulvestrant in patients with advanced or recurrent breast cancer

ホルモン受容体陽性の閉経後進行・再発乳癌患者に対する内分泌療法として,フルベストラントが本邦で臨床導入されて6年余りが経過した.本剤の有用性を検討するため,2012年1月〜2016年10月に川崎医科大学附属病院乳腺甲状腺外科において,フルベストラントが単独使用され,治療評価が可能であった51症例の電子カルテを後方視的に調査した.対象患者の年齢の中央値は70歳.進行例が9例,再発例が42例.臓器転移ありが23例.観察期間の中央値は18か月.前内分泌療法数の中央値は2.前化学療法歴ありは21例.治療効果は,完全奏効が3例,部分奏効が6例,安定が25 例(うち長期安定は20例),進行が16例であった.客観的奏効は9例(17.6%),臨床的有用は29例(56.9%)であった.無増悪生存(PFS)期間の中央値は8か月,全生存(OS)期間の中央値は34か月であった.治療効果の予測因子を調べるため,サブグループに分けてPFS及びOS を解析した.肝転移の有無では,PFS 期間の中央値は,なしが9.5か月,ありが5か月(P= 0.0386),OS 期間の中央値は,なしが41か月,ありが15か月(P = 0.0036)であった.前化学療法の有無では,PFS 期間の中央値は,なしが12.5か月,ありが3.5か月(P < 0.0001),OS 期間の中央値は,なしが41か月,ありが24か月(P = 0.0208).多変量解析では,前化学療法歴の有無が唯一のPFS の有意な予測因子であった.また,肝転移の有無が唯一のOS の有意な予測因子であった.有害事象は6例(11.7%)に認めたが,いずれも軽微であり治療が中断されることはなかった.要約すると,ホルモン受容体陽性の進行・再発乳癌の治療薬として,フルベストラントは17.6% の客観的奏効率,56.9% の臨床的有用性が認められ,既知の報告と同等の治療効果であった.フルベストラントは,化学療法歴のある症例,肝転移のある症例では,有用性が低いと考えられた.

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