h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2018.11.09

Adult-onset Still’s disease as the cause of fever of unknown origin with hyperferritinemia

成人Still 病は弛張熱,関節炎,発熱時に増強する発疹(サーモンピンク疹)を3徴とする疾患で,白血球増加,血清CRP やフェリチン値の上昇などの強い炎症所見を認め,しばしば不明熱の原因となる.高フェリチン血症を契機に成人Still 病と診断した症例を経験したので報告する.患者は57歳女性,入院3週間前から発熱とともに咽頭痛,関節痛が出現し,近医にて抗菌薬治療が行われた.抗菌薬不応の発熱で当院を紹介受診し,不明熱精査目的に入院した.入院時より前胸部や背部に淡い紅斑が出現し,採血で,白血球増加(11,480/μL),CRP 高値(12.98 mg/dL),フェリチン著明高値(5,511 ng/mL)を認めた.胸腹部CT 検査では腋窩・鼠径リンパ節の腫脹と脾腫大を認めた.血液培養検査は陰性で,骨髄生検や皮膚生検にて造血器腫瘍を示唆する所見を認めなかった.感染症や悪性腫瘍を除外し,Yamaguchi らの分類基準を満たし,成人Still 病と診断した.プレドニゾロンとメトトレキサートの併用療法を開始したところ,速やかに全身状態は改善した.不明熱の原因検索を行う際に,フェリチン値の測定は有用であると考えられる.

2018.11.09

Hydrogen water shows the effect of improving bladder function in a rat model of bladder outlet obstruction

下部尿路症状(low urinary tract symptoms: LUTS)は,動脈硬化や前立腺肥大症に伴う下部尿路閉塞による膀胱血流障害が原因の一つとして考えられており,症状として排尿症状,畜尿症状,排尿後症状がある.ラットの下部尿路閉塞(bladder outlet obstruction: BOO)モデルは閉塞に伴い膀胱虚血を生じさせ,酸化ストレス状態を惹起し,LUTS を引き起こす病態モデルとして確立されている.近年,水素がもつ抗酸化,抗アポトーシス作用が注目されており,様々な臓器において組織の保護作用を示すことが解明され,様々な疾患の予防と治療に応用できることが多施設,多領域から報告されている.今回,ラットBOO モデルに対して,水素水(Hydrogen Water: H2)投与を行い,抗酸化作用の検証に加え,水素水が影響を及ぼす代表的メディエーターの探索を行った. BOO モデルの作成には,9週齢の雌性ラットを用いた.開腹し,尿道に19G 針を沿わせた状態で尿道を結紮し,尿道の部分閉塞を作成した.作成直後からsham群,水素水非投与(BOO H(2 -))群と投与(BOO H(2 +))群に分け,4週間後,膀胱機能検査と組織学的,生化学的および免疫組織学的検討を行った.なお,水素水は経口投与した. 膀胱重量および一回排尿量は,sham 群に対して BOO H(2 +)群で有意差はなかったが,BOO H(2 -)群で有意に増加していた(重量 p<0.01),( 一回排尿量 p<0.05).BOO H(2 -)群と BOO H(2 +)群では有意差は認めなかった(p>0.05).膀胱内圧測定では,BOO 群で排尿筋過活動が確認され,BOO H(2 -)群では,BOO H(2 +)群と比較して,排尿筋過活動回数は有意に増加していた(p<0.01).膀胱筋層部における膠原繊維の比率については,BOO H2 (−)群でsham 群および BOO H(2 +)群に比して,有意に上昇していた(vs sham p<0.01, vs BOO H(2 +) p<0.01).膀胱組織内8-OHdG の定量では,BOO H(2 -)群は BOO H2(+)群に比して高値を示しており(p<0.05),8-OHdG 染色ではBOO H2 (-)群のみ筋層で著明な発現が認められた.網羅的ケモカイン/サイトカイン解析ではTNF-αが,BOO H(2 -)群においてBOO H(2 +)群と比較してもっとも発現が亢進しており,免疫染色では,BOO H2 (-)群で膀胱上皮粘膜下の間質および筋層においての発現の増加が認められた.一方,BOO H(2 +)群では,筋層部においての発現が抑制されていた. 水素水は,慢性虚血に起因する下部尿路症状の治療の一つになり得る可能性がある.本研究において,膀胱筋層の酸化ストレスを抑制することにより,膀胱筋層のTNF-α を中心とした炎症性サイトカインの抑制が,その作用機序の一つとして考えられた.

2018.11.08

A case of Fournier gangrene developed from a bedsore occurring at the ischium

フルニエ壊疽は外陰部を中心に発症し,急速に進行する壊死性筋膜炎と定義される.早期の診断を行い,外科的デブリードマン,適切な抗菌薬の投与をはじめとした全身の集学的管理を要す,生命予後の不良な疾患である.症例は50歳代男性,脊髄腫瘍切除後であり胸部以下の感覚障害,対麻痺がある.2ヵ月前から左坐骨部褥瘡を認めていたが未治療であった.2日前からの意識障害を主訴に前医を受診し,CT にて褥瘡周囲の皮下に広範囲なガス貯留像を認めたため,当院に救急搬送された.外科的デブリードマンと抗生剤投与を行い,感染は消退したが,その後,臀部から肛門周囲に広範囲に組織欠損創が残ったため,薄筋皮弁での再建手術を行った.良好な経過を得たため経過に考察を加え報告する.

2018.11.07

Response to combination therapy with rituximab and bendamustine for intestinal monomorphic PTLD

移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は,造血幹細胞移植後に免疫抑制剤を使用した結果として,T細胞機能が低下して生じる異常なリンパ球,または形質細胞の増殖で,移植領域において最も致死的で注意を要する合併症の一つである.PTLD は4つのカテゴリーに分類され,その中のmonomorphic PTLD は、悪性リンパ腫の形態を呈する.Monomorphic PTLD の治療には,免疫抑制剤減量,リツキシマブ(R)単独療法やR-CHOP 療法があるが,予後は不良である.今回,難治性PTLD に対してリツキシマブ併用ベンダムスチン療法が奏効し寛解をえることができた症例を経験したので報告する.症例は50歳代男性で、骨髄異形成症候群に対して臍帯血移植を施行し,GVHD 予防にタクロリムスを使用した.移植後,消化管GVHD を発症し,プレドニゾロンで治療中,monomorphic PTLD(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を発症した.免疫抑制剤中止後,リツキシマブ(R)単独療法,R-CHOP like 療法を施行したが効果不良であった.リツキシマブ併用ベンダムスチン療法に変更し4コース施行後,消化管内視鏡検査で病変は消失し,CT 検査で完全奏効を確認した.治療終了し約1年経過しているが,現在も症状増悪なく経過できており,難治性monomorphic PTLD に対してリツキシマブ併用ベンダムスチン療法が有効であった.

2018.11.06

Lubiprostone for opioid-induced constipation in patients treated with chemotherapy

当科において2014年10月から2016年2月に入院で化学療法を施行し,がん性疼痛に対して使用したオピオイドにより誘発された便秘に対してルビプロストンを投与した全症例を対象とした.対照群は,当院のルビプロストン採用以前の2012年4月から2014年9月まで,化学療法施行中にオピオイドを使用した患者に緩下薬を使用していた全症例とした.ルビプロストンを追加してからの排便回数と食事量の変化を後方視的に解析した.対照群の排便回数と食事量の変化は,新たな緩下薬(センノシド,ピコスルファートナトリウム,または大建中湯)の追加または酸化マグネシウムを増量した前後を基準とした.ルビプロストン使用群7人,未使用の対照群12人で,オキシコドン換算の使用量中央値(範囲)は対照群で10.0(10.0~62.9)mg,ルビプロストン群で39.3(10.0~125.7)mg であった(P=0.103).ルビプロストン群ではその投与翌日に7例中6人,対照群においては12例中3例で排便が認められた(P<0.05).ルビプロストン群においては排便があった翌日の食事摂取量は7例中6例,対照群は12例中3例で改善していた(P<0.05).化学療法施行中にもオピオイドによる便秘に対するルビプロストンが有用であることが示唆された.

2018.07.04

Relationship of health checkup data with mental health and sleep condition in specific medical checkups

特定健診・特定保健指導は生活習慣病(糖尿病,脂質異常症,高血圧)の対策として行われているが,メンタルヘルスや睡眠について十分な検討や対策は出来ていない.今回,我々は特定健診受診者の健診結果とメンタルヘルス及び睡眠について詳細を明らかにすることを目的に本研究を行った.本研究への参加を書面にて同意頂いた特定健診受診者76名(女性41名,男性35名)を対象に研究を行った.対象者には健診受診時に日本語版ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index, PSQI)及び一般健康調査票(General Health Questionnaire, GHQ)-12 項目版の回答を求めた.調査項目はPSQI とGHQ-12の及び特定健診の測定項目,精神健康の指標World Health Organization Well-being Index (WHO)-5を含む健診問診票の結果を対象とした.PSQI のスコアを6点以上と未満とで分け特定健診測定値を比較した結果は有意差を認めなかった.GHQ-12とPSQI のスコアはSpearman の順位相関係数で有意な相関を認めた (r=0.63, p<0.01).また,GHQ-12とPSQI の7つの要素と性別及び年齢で多変量解析を用いて検討した結果GHQ-12は睡眠の質 (β=0.32, t=2.96, p<0.01) と日中の眠気 (β=0.37, t=3.93, p<0.01) で有意な関連を示した.GHQ-12の代わりにWHO-5を用いた結果でも同様であった.今回の検討では特定健診受診者において睡眠の状態とメンタルヘルスに相関を認め,特に熟眠感の欠如と日中の眠気がメンタルヘルスにとって重要な症状であることを示唆した.

2018.07.03

Anti-cell growth and anti-cancer stem cell activity of the hedgehog inhibitor GANT61 in poorly and undifferentiated thyroid cancer cells

甲状腺分化癌は予後良好であるが低分化・未分化癌は予後不良であり,新規治療薬の開発が急務である.多くの悪性腫瘍でヘッジホッグ(Hh)経路の異常な活性化が起こっており,Hh 経路を標的とした治療戦略が有望視されている.Hh 経路の活性化は,腫瘍の生存・増殖・血管新生の促進ばかりでなく,癌幹細胞の制御との関与が示されている.我々は,甲状腺癌細胞を用いてHh経路を阻害するGANT61の抗腫瘍効果並びに癌幹細胞に与える影響を検討した.また,進行甲状腺癌の治療薬として用いられているタキサン系抗癌化学療法薬パクリタキセルとの併用効果も検討した.当教室で樹立された甲状腺低分化癌細胞株KTC-1及び甲状腺未分化細胞株KTC-2,KTC-3を用いてGANT61の細胞増殖,細胞周期,アポトーシス,癌幹細胞比率に与える影響を検討した.また,Hh 経路のeffector であるglioma-associated oncogene (Gli) 1,その下流にある癌幹細胞制御因子(aldehyde dehydrogenase [ALDH], Snail, Slug)や抗アポトーシス分子(survivin,Bcl-2)発現に与えるGANT61の効果を調べた.GANT61は,すべての甲状腺癌細胞株で細胞増殖を用量依存性に抑制した(50% 阻止濃度の平均値: KTC-1細胞は17.2 μM; KTC-2細胞は13.6 μM;KTC-3細胞は13.3 μM).GANT61は,KTC-1及びKTC-2細胞のsub-G1分画を増加したが,G1-Sブロックは起こさなかった.GANT61は,全ての細胞株において用量依存性にアポトーシス分画を増加し,survivin やBcl-2の発現を低下させた.GANT61は,すべての細胞株でGli1, ALDH, Slugの発現を低下し,癌幹細胞比率を低下させた.以上の結果は,GANT61が甲状腺低分化・未分化癌細胞のsurvivin やBcl-2発現低下を介してアポトーシス誘導し,細胞増殖を抑制し,さらに,Hhシグナル標的因子Gli1, ALDH, Slug の発現低下により癌幹細胞の自己再生能を抑制することを示唆している.さらにGANT61は,すべての甲状腺癌細胞株においてパクリタキセルの細胞増殖抑制効果を増強した.これらの基礎研究の結果は,GANT61が甲状腺低分化・未分化癌の新規治療薬として有望なことを示唆している.

← newer entries older entries →