h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2017.07.06

A case of miliary tuberculosis complicated with acute respiratory distress syndrome during the immunosuppressive treatment

症例は75歳,女性.MPO-ANCA 関連血管炎に対して半年間,ステロイド薬が投与されていた.4日前から発熱,呼吸困難が出現,意識障害も伴ってきたため,当院を受診した.画像上,両側肺にびまん性の中枢側に有意な浸潤影とすりガラス陰影を認め,急性呼吸促迫症候群(ARDS)の合併を疑われた.人工呼吸管理となり,挿管中に採取した喀痰抗酸菌検査で塗抹陽性,結核菌PCR陽性の結果が得られ,血液や尿からも結核菌が検出され,粟粒結核によるARDS と診断した.治療は入院後の第3病日からINH + RFP + EB による抗結核療法を開始し,人工呼吸管理および血液透析をしながら経過観察をしていたが,播種性血管内凝固症候群も併発し,第14病日に死亡した.ARDS を合併する粟粒結核の症例も散見されることから,鑑別診断に粟粒結核も念頭におきながら診療することが重要と思われた.

2017.06.21

Autopsy case of early lesion of PTLD after umbilical cord blood transplantation

移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disorders, PTLD)は,同種造血幹細胞移植後の生命を脅かす予後不良な合併症の一つである.臨床症状は非特異的であるが,PTLD を疑った場合はPCR 法による血中EB(Epstein-Barr)ウイルス-DNA 量を測定し,高値を示した場合はPTLD と判断する必要がある.今回,造血幹細胞移植後に高EB ウイルス血症を認め,急激な病状の悪化により死亡した症例を経験したため剖検所見を含め報告する.症例は,40歳代男性でフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病を発症し,治療にて寛解を得た後に臍帯血移植を施行した.移植後280日に高熱が出現し,胸部CT 検査から細菌性肺炎と診断し入院.抗菌薬治療を開始するも効果不良であり,呼吸状態の悪化と,意識障害が出現した.血液,肺胞洗浄液と髄液から,EB ウイルス-DNA 異常高値が検出された.PTLD と判断したが,急激に呼吸状態が悪化し死亡した.剖検では,肺胞内出血を認め,急激に悪化した原因と考えられた.そして,肺門部リンパ節や肺にはEBER(EBV-encoded small RNA)陽性細胞を多数認め,一部では大型多核細胞も散見され,early lesion of PTLD と判断された.Early lesion of PTLD であっても,本症例のように肺病変を認めた場合,出血による呼吸状態の悪化から急激な経過をたどることがあり,早期の対応が必要と考えられた.

2017.06.21

AITL suspected to have plasmacytoma by pleural effusion cytology

血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(angioimmunoblastic T-cell lymphoma: AITL)は新WHO分類において末梢T細胞 / NK 細胞腫瘍に分類されているT細胞性腫瘍である.その臨床像は,全身リンパ節腫大,肝脾腫,発熱,多クローン性高γ グロブリン血症など多様な症状を呈することが知られている.今回,我々は胸水細胞診で形質細胞腫が疑われたAITL を経験したので報告する.症例は80歳代の女性.近医にて気管支喘息治療中に,喘息症状が悪化し,全身の皮疹が出現.両側胸水貯留,CRP 高値が出現したため,精査治療目的で当院紹介となった.血液検査で貧血を認め,末梢血に形質細胞様の異型リンパ球を10%認めた.胸水には大小不同のCD138陽性形質細胞を多数認め細胞診で形質細胞腫が疑われたが,胸水セルブロックではκ・λ の軽鎖制限を認めなかった.骨髄検査では,形質細胞の増加を認めず赤芽球癆の状態であった.皮下腫瘤を生検した結果,AITL と診断した.AITL は,腫瘍細胞が直接的・間接的にサイトカインを産生し,それに起因した多彩な臨床像を呈する.そのため,AITL は反応性に形質細胞の増加を伴うことが多く,本症例は,反応性に胸水中に形質細胞の増加を伴ったと考えられた.また,AITL は赤芽球癆を合併することも報告されている.AITL では,反応性の形質細胞増多を伴う胸水貯留や赤芽球癆をきたす場合があることに注意すべきである.

2017.06.21

Analysis of wechsler intelligence scale scores and clinical features in patients with adjustment disorder

近年,職場ストレスにより抑うつ状態をはじめ心身の不調を来し休職したり,学校や社会に不適応を起こし不登校,ひきこもりになったりする適応障害患者が増えている.診断基準上,適応障害を引き起こす要因であるストレスの大きさは問われないが,一方でどのような人が適応障害になりやすいかという研究はこれまでない.本研究では,適応障害患者に対する成人用Wechsler 式知能検査第3版(Wechsler Adult Intelligence Scale Third Edition; WAIS-Ⅲ)の所見と臨床的特徴からそれらを検討した. 適応障害と診断されWAIS-Ⅲを施行された患者50名(14歳~48歳,男性29名,女性21名)を対象とした.IQ が70未満の精神遅滞と診断された者は除外した.臨床評価として,初診時年齢,発症年齢,精神主訴の有無,身体主訴の有無,初診時における社会参加の有無,初診時GAF(Global Assessment Scale)を用いた.WAIS-Ⅲは言語理解(Verbal Comprehension; VC),作動記憶(Working Memory; WM), 知覚統合(Perceptual Organization; PO), 処理速度(Processing Speed; PS)の4つの群指数に分類される.対象者を群指数パターンによってクラスタ分析を行った. その結果,3つのクラスタパターンに分類された.群指数に関しては,クラスタ1はWM がVCとPS よりも有意に低く,クラスタ2はPS がVC とWM よりも有意に低く,クラスタ3はPS がVC,WM,PO よりも有意に低かった.また,IQ に関しては,クラスタ3> クラスタ1>クラスタ2の順に高くそれぞれ有意差が認められた.クラスタ間の臨床的特徴を検討したところ,クラスタ3は身体主訴が有意に少なかったが,他の項目で有意差は認められなかった.さらに,対象者全体で見ると,GAF とWM において正の相関が認められた. 以上から,適応障害患者においてはWM とPS という認知機能低下が認められる可能性があり,特に社会適応の観点からWM に注目して診療を行うことが大切であると考えられた.

2017.06.21

Effectiveness of cognitive rehabilitation (NEAR: Neuropsychological and Educational Approach to cognitive Remediation) for schizophrenia, developmental disorder, and affective disorder

近年,様々な精神疾患において認知機能障害があることが分かってきており,それらは日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼしている.投薬によって精神症状が改善しても,認知機能障害の影響で家庭生活や社会生活に支障を来し,病前と同様の生活に復帰できないことが多い.それらを改善する方法として注目されているのが認知リハビリテーションである.なかでもNEAR(Neuropsychological and Educational Approach to cognitive Remediation)は,学習理論と教育原理を背景に,パソコンソフトを使用するセッションと,生活における認知機能を話し合うセッションから成る,統制のとれたプログラムである.著者は平成23年からNEAR を実施してきた.NEAR は元々統合失調症における認知機能障害のトレーニングプログラムとして開発されたものであるが,同時に発達障害や感情障害に対してもNEAR を実施してきた.本研究での解析症例は,統合失調症群12例,発達障害群13例(広汎性発達障害,注意欠陥/多動性障害,特定不能の学習障害),感情障害群5例(うつ病性障害,双極性障害)である.NEAR の前後で測定した認知機能評価尺度(BACS: The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia)を解析したところ,統合失調症群における運動機能,感情障害群における遂行機能などを除き,ほとんどの項目で改善傾向を認めた.各疾患別にNEAR 前後のBACS 下位検査平均値を比較すると,運動機能において発達障害群が統合失調症群に比べ有意に改善し,遂行機能において統合失調症群が感情障害群に比べ有意に改善した.NEAR 前後のBACS 下位検査のプロフィールも疾患ごとに特徴的であった.NEAR は発達障害など統合失調症以外の精神疾患に対しても有効であり,疾患ごとに効果の現れ方が異なることが示唆された.

2017.06.21

Achalasia treatment ―factors associated with the outcome of pneumatic dilation― (second report)

食道アカラシアは食道運動障害を呈する疾患で,良性疾患ではあるものの,QOL を大きく障害し,食道癌の発生リスクともなるため,適切な診断治療が重要である.一般的に,治療は内視鏡的治療や外科的治療が行われる.以前,我々は内視鏡的バルーン拡張術(pneumatic dilation:PD)を行った16例の食道アカラシアについて,PD の有効性に関する因子を検討し報告した.近年,新たな食道運動障害の診断基準(Chicago 分類)も策定されたことも踏まえ,アカラシア症例36例での検討を行ったため第2報として報告する.対象は当院で食道アカラシアと診断し加療した36例で,うち27例(男性8例,女性19例,平均年齢51.0±16.5歳)にPD を行った.対象をPD有効例と無効例とに群分けし,その2群間で患者背景,QOL,High-resolution manometry( HRM)所見,治療前後でのHRM 所見の差異について検討を行った.結果はPD 有効例は19例(70.4%)であった.有効群と無効群との比較を行うと,無効群で女性が多い傾向にあった(p=0.06).HRM所見では有効例でChicago 分類typeⅡアカラシアが有意に多く認められた(p=0.04).また,治療前後のHRM 所見の差異については,有効例で治療前後の下部食道括約筋(lower esophageal sphincter: LES)圧変化率が有意に大きかった.以上より,Chicago 分類typeⅡのアカラシアではPD の有効性が高く,また1度PD を行った症例でもLESP 変化率が大きい症例では有効性が高いことが示された.

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