h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2009.03.04

Influence of genetic reassortment on the progeny virus production of a novel influenza virus *

 A 型インフルエンザウイルスはヒトのみならず多くの鳥類や哺乳類を宿主として世界中に分布している.その抗原性はウイルス粒子上の2種類のスパイク:ヘムアグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)により決定されるが,それぞれの宿主動物には様々な抗原性のHA とNA を持った固有のウイルスが存在する.また,インフルエンザウイルスのゲノムは分節化されたRNA から成っているため,異なる遺伝子を持つウイルスが同一細胞に感染すると,そこで遺伝子RNA の交雑が起きて,容易に新しい遺伝子組合せのウイルスができると考えられている.それゆえ遺伝子交雑は新型インフルエンザ出現の最も重要な経路と見なされている.本研究ではリバースジェネティクスの手法を用いて,新しい遺伝子組合せを持つウイルスの産生効率を調べ,遺伝子交雑による新型ウイルスのできやすさについて検討した.その結果,インフルエンザウイルスWSN 株(H1N1亜型)のHA をH3亜型に入れ換えると子孫ウイルスの産生効率は約1/10に,HA に加えNA も入れ換えると約1/100に低下することが見出された.産生されたウイルスを電子顕微鏡で観察すると,オリジナルのWSN 株では大きさの均一な球形の粒子が観察されたが,HA を入れ換えたウイルスでは粒子径の増加が,HA とNA 両方入れ換えたウイルスでは径の増加に加え不定形粒子が多数観察され,HA とNA の入れ換えがウイルス粒子形成に影響を及ぼすことが示唆された.遺伝子交雑による新型ウイルスの出現には抗原性を担うHA とNA(少なくともHA)の入れ換えは必須であるが,それは必ずしも容易なことではなく,入れ換えによりウイルス産生効率が著しく低下する可能性があることが明らかとなった.そのような新型ウイルスでも感染と増殖を何回も繰り返すうちに,産生効率の高いウイルスに変異すれば,やがてパンデミックを起こすにいたると考えられるが,それまで従来のウイルスとの競争に打ち勝って生き延びるためには何らかの選択圧(従来のウイルスが感染増殖できない環境など)が必要であることを,本研究の成績は示唆している.(平成21年7月31日受理)

2009.03.03

Results of the putpatient chemotherapy center of Kwasakaki Medical School Hospital in 2007 *

 2007年1月29日,川崎医科大学附属病院に外来がん化学療法を専門に実施する通院治療センターが設置され運用が開始された.1年が経過し,その実績についてまとめた.年間利用件数は3,996件であった.その中で大過なく化学療法を実施できたことは,医師,薬剤師,看護師を中心とした安全管理が十分機能していることを示している.今後もがん診療に占める化学療法の役割は益々増大していくことが予想される.引き続き安全で正確な治療の提供と治療環境および管理体制づくりに邁進したいと考えている.(平成21年7月24日受理)

2009.03.02

Availablity of huma skin fibroblast cells for assessment of individual susceptibility to avian influenza virus infection *

 ヒト皮膚繊維芽細胞(HSF)が,トリインフルエンザウイルスのヒト細胞における感染増殖能を評価するための実験に使用可能かどうかを検討した.先ずHSF はヒトインフルエンザウイルスに対してヒト気管支上皮細胞と同様な感受性を示すこと,ウイルスレセプターに関しては大量のα2,3シアロ糖鎖(いわゆるトリ型レセプター)と少量のα2,6シアロ糖鎖(いわゆるヒト型レセプター)が存在すること,少量のレセプターにもかかわらずヒトインフルエンザウイルスはHSFで良く増殖すること,ウイルスの増殖性はHSF の継代歴(6~22代)に左右されないことが見出された.そこで15株のHSF に弱毒型トリインフルエンザA/teal/Tottori(H5N3)ウイルスを感染させ,それぞれの細胞培養系においてウイルスの感染がどれくらい拡がるかを測定した.その結果,HSF 株間でトリのウイルスの感染拡大効率に差があることが見出されたが,いずれの場合もヒトのウイルスと比較すると極めて限定された増殖しか起きないことが明らかとなった.本研究を通して,HSF がインフルエンザウイルスのヒト細胞における増殖能の評価に使用できることが分ったので,今後,他のトリインフルエンザウイルスの増殖能を調べることにより,それぞれのウイルスが持つ新型ウイルス出現の潜在的危険性について論ずることが可能となった.(平成21年7月6日受理)

2009.02.08

Phlebosclerotic colitis diagnosed by endoscopic biopsy: a report of tow cases and a review of the literature *

 静脈硬化性大腸炎は,静脈硬化症を伴うまれな虚血性腸炎であり,動脈硬化に起因する通常の虚血性大腸炎とは異なった特有の病像を呈する.今回我々は,内視鏡生検で静脈硬化性大腸炎の2症例を経験したので報告する.症例1は59歳女性.腹痛,嘔吐を主訴に受診.症例2は77歳,女性.胃部不快感,体重減少を主訴に受診.2症例いずれも腹部CTで上行結腸周囲に線状石灰化を認め,下部消化管内視鏡検査で右半結腸に粘膜の変色と小潰瘍の散在を認めた.病変部粘膜の生検組織では血管周囲に同心円状の膠原線維増生が認められた.静脈硬化性大腸炎の主要な臨床所見と病理所見について文献的考察を加えて検討する.(平成20年11月28日受理)

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