h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2009.02.05

NF-κB status nder operative stress in rats *

 NF-κB(Nuclear factor κB)は,生体のさまざまな機能に関与し,恒常性を維持するための重要な転写因子である.本研究では,消化器癌手術のなかで最も侵襲の大きい開胸開腹術という手術侵襲を受けた際の,ラット正常組織内NF-κB の変動について,対照群(麻酔のみ),開腹群(L群),開胸開腹群(T+L 群)の3群について比較検討した.検索対象組織には肝臓,肺,脾臓を用いた.免疫組織染色ではT+L 群のみでNF-κB 陽性細胞を認め,特に肺組織の術後60,120分で最も高い陽性率を示した.さらに,術後120分での肝臓組織において,ウエスタンブロット法によりNF-κB の活性化を確認した.Real-time RT PCR 法では,T+L 群がL 群に比べNF-κB mRNA の増加ピークが遅延していた.また,肺でのNF-κB mRNA 発現量が最も多かった.開胸開腹という過大な侵襲が加わることにより,特に肺におけるNF-κB の産生が過剰となり,さまざまな炎症反応を惹起するきっかけとなり,術後呼吸器合併症の誘因となると同時に,癌細胞の着床を促進する可能性が考えられた.(平成21年4月28日受理)

2009.02.04

Evaluation of the new EIA kit for detection of anti-mumps IgM antibody *

 ムンプスウイルスは,流行性耳下腺炎の原因ウイルスであり,無菌性髄膜炎,難聴,膵炎,睾丸炎,卵巣炎を併発することも少なからずあり,多彩な臨床症状を呈する.ムンプスウイルス感染症の確診には,保険診療の制約により,EIA 法による抗ムンプスウイルスIgM の検出のみを実施することが多いが,健常人において抗ムンプスウイルスIgM 抗体陽性例が観察されることや,ムンプスウイルス感染症回復後の長期にわたる抗体陽性者の存在が観察され,困惑をきたす例が報告されていた.今回検討したデンカ生研製の新しい抗ムンプスIgM 型抗体検出キット(ウイルス抗体EIA「生研」ムンプスIgM(Ⅱ))は,「IgM キャプチャー法」を測定原理としており,操作再現性は高いものであった.健常者でのIgM 抗体陽性率は,0.3%(1/336)と改善し,ムンプスウイルス感染症とウイルス学的に確診された症例では,IgM 抗体陽性率は,92.1%(128/139)であった.また,ムンプスウイルス感染症発症後,5ヵ月以上経過した症例については,IgM 抗体陽性と判定されるものは存在しなかった.このことから,今回検討したEIA キットは,現在,提起がされた問題を解決し,ムンプスウイルス感染症の診断を正確にするだけでなく,ムンプスウイルスの血清疫学に寄与するツールとなりうると思われる.(平成21年3月5日受理)

2009.01.11

a case of solitary metastatic tumor in the spleen after colonectomy treated by a laparoscopic-assisted splenectomy *

 横行結腸癌術後6年目に孤立性脾転移を来し腹腔鏡補助下で脾摘術を施行した1例を経験したので報告する.症例は69歳,男性.進行横行結腸癌に対し結腸右半切除術,D3郭清術を施行した.術後6年目にCEAが上昇し,全身F-18 fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG-PET)を撮影したところ脾臓のみに強い集積を認めた.大腸癌の孤立性脾転移と考え,腹腔鏡補助下脾臓摘出術を施行した.病理組織学的検査にて大腸癌の脾転移と診断された.大腸癌術後に孤立性脾転移を来した例はまれであり,更に腹腔鏡下で切除した例は本邦3例目の報告である.大腸癌術後の孤立性脾転移に対する脾摘術は,小開腹および癒着剥離を先行させて行えば,腹腔鏡補助下の術式も可能と思われた.(平成21年1月13日受理)

2009.01.09

Bibliographical studies on human cases of Hard Tick (Acarina: Ixodidae) bites in Japan (4) Cases of Ixodes nipponensis and I. monospinosus infestation *

 本邦で発生したタネガタマダニ(1953~2005年)およびヒトツトゲマダニ(1976~2005年)の人体寄生例の報文を通覧して疫学的に検討した.症例数はタネガタマダニが88例(男性32,女性44,性別不明12),ヒトツトゲマダニが32例(男性10,女性15,性別不明7)である.タネガタマダニは南西諸島を,ヒトツトゲマダニは北海道・四国・南西諸島を除く広い範囲に分布していた.患者の都道府県別発生数では,タネガタマダニは石川が11例(12.8%),ヒトツトゲマダニは長野が7例(22.6%)で最も多かった.タネガタマダニの患者は4~9月に発生しており,発生率は7月の30.6%をピークに,79.0%の患者が5~7月に集中していた.一方,ヒトツトゲマダニの患者は4~10月(8月を除く)に発生しており,発生率は6月の36.8%をピークに,63.2%が5~6月に集中していた.患者の年齢は,タネガタマダニが1~87歳で,70歳代(23.7%)が最も多く,ヒトツトゲマダニでは2~83歳で,50歳代(24.0%)が最も多かった.年齢と性別の関係は,タネガタマダニでは70歳代の女性(17.1%)が,ヒトツトゲマダニでは50歳代の女性(20.0%)が最も多かった.虫体の寄生部位は,タネガタマダニでは腹部が11.8%で最も多く,次いで胸部が10.5%の順で,ヒトツトゲマダニでは頸部・胸部・腕部が各12.5%で最も多く,次いで頭頂部・肩部・背部・大腿部が各8.3%の順であった.両種とも体幹部への寄生が多く,それぞれ50.0%と45.8%を占めていた.患者がマダニの寄生を受けた場所については,両種とも大多数が山岳地帯であった.(平成21年11月5日受理)

2009.01.08

Bibliographical studies on human cases of Hard Tick (Acarina: Ixodidae) bites in Japan (3) Cases of Ixodes persulcatus infestation *

 1962年~2005年に本邦で発生したシュルツェマダニ人体寄生例の報文を通覧して疫学的に検討した.症例数は248例(男性113,女性115,性別不明20)である.患者の都道府県別発生数では長野が137例(56.4%)で最も多かった.患者は11~3月を除く各月に発生しており,発生率は7月の41.9%をピークに,77.7%が6~7月に集中していた.患者の年齢は1~88歳で,50歳代と60歳代がそれぞれ17.6%で最も多かった.また,患者の年齢と性別の関係では,50歳代の女性が11.3%で最も多かった.虫体の寄生部位は,肩部が10.0%で最も多く,次いで腹部が9.5%,胸部・大腿部が各9.1%の順で,体幹部の寄生が57.7%(127例)を占めていた.患者が虫体の寄生を受けた場所は,大多数が山岳地帯であった.(平成20年10月31日受理)

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