2010.02.06
Bibliographical studies on human cases of Hard Tick (Acarina: Ixodidae) bites in Japan (7) Cases of inidentified Tick infestation *
本邦において,1941(第1例)~2005年に発生したマダニ類人体寄生症例の報文で,マダニの属種が未同定の症例を一括して疫学的に検討した.症例数は290例(男性126,女性149,性別不明15)である.患者の都道府県別発生数では,長野が116例(40.3%)で最も多かった.患者は年間を通して各月に発生していたが,発生率は6月の36.1%をピークに,91.2%の患者が5~8月に集中していた.患者の年齢は,1~88歳で,50歳代が18.2%で最も多かった.また,患者の年齢と性別の関係は,60歳代の女性が10.4%で最も多かった.虫体の寄生部位は,腹部が11.5%で最も多く,次いで胸部が8.4%,以下,眼瞼・大腿部がそれぞれ8.0%で,体幹部への寄生が52.7%(138例)を占めていた.患者がマダニの寄生を受けた場所は,多くが山岳地帯であるが,その他に自宅庭・草刈り・竹藪などがあった.(平成22年3月29日受理)
2010.02.05
Bibliographical studies on human cases of Hard Tick (Acarina: Ixodidae) bites in Japan (6) Cases in infestation with rare Tick species *
1942~2005年に本邦で発生したヒト咬着が稀な種類のマダニ人体寄生例の報文を通覧して疫学的に検討した.症例数は23例(男性9,女性11,性別不明3)で,マダニの種類は6属12種(チマダニ属が5種,マダニ属が3種,ヒメダニ属・ウシマダニ属・カクマダニ属・コイタマダニ属が各1種)および種類不明1である.患者の都道府県別発生数では,富山が4例(17.4%)で最も多かった.患者は2~10月に発生しており,発生率は5月の22.2%をピークに,66.7%の患者が5~8月に集中していた.患者の年齢は,1~80歳で,40歳代が25.0%で最も多かった.また,患者の年齢と性別の関係は,9歳以下の女児・10歳代の男性・40歳代の女性が各15.0%で最も多かった.虫体の寄生部位は,眼瞼が15.0%で最も多く,次いで脇腹・腰部が各10.0%の順で,体幹部への寄生が45.0%(9例)を占めていた.患者がマダニの寄生を受けた場所は,高原キャンプ・登山・ハイキング・自宅周辺などであった.(平成22年3月2日受理)
2010.02.04
Bibliographical studies on human cases of Hard Tick (Acarina: Ixodidae) bites in Japan (5) cases of Ixodes acutitarsus and I. turdus infestation *
本邦で発生したカモシカマダニ(1959~2005年)およびアカコッコマダニ(1990~2005年)の人体寄生例の報文を通覧して疫学的に検討した.症例数は,カモシカマダニが12例(男性7,女性3,性別不明2)で,アカコッコマダニが8例(男性3,女性5)である.患者の都道府県別発生数では,カモシカマダニは富山が4例(36.4%),アカコッコマダニは福島・東京が各2例(25.0%)で最も多かった.カモシカマダニの患者は4~10月に発生しており,発生率は4月の44.4%をピークに,66.7%の患者が4~6月に集中していた.一方,アカコッコマダニの患者は4~11月に発生しており,発生率は4月の50.0%をピークに,83.3%が4~6月に集中していた.患者の年齢は,カモシカマダニが3~65歳で,60歳代(30.0%)が最も多く,アカコッコマダニでは2~70歳で,9歳以下の児童(57.1%)が最も多かった.年齢と性別の関係は,カモシカマダニでは50歳代の男性と60歳代の女性(各20.0%)が,アカコッコマダニでは9歳以下の女児(42.9%)が最も多かった.虫体の寄生部位は,カモシカマダニでは胸部(30.0%)が,アカコッコマダニでは頭頂部(37.5%)が最も多く,カモシカマダニでは体幹部への寄生が60.0%を,アカコッコマダニでは頭部・頸部への寄生が87.5%を占めていた.患者がマダニの寄生を受けた場所については,カモシカマダニでは多くが登山で,アカコッコマダニでは竹やぶ・公園であった.(平成22年3月2日受理)
2010.02.03
Examination of allergen specific IgE antibodies by CAP-RAST in patients with allergic rhinitis between 2004 and 2008 *
国民病と言われ始めているスギ花粉症であるが,本邦においてアレルギー疾患は増加してきているのが現状である.日本国内でみても気候や風土が異なるために,本邦のなかでも有病率が高い地域もあれば,北海道のようにスギが生息しにくいために有病率が低い地域もある.このためにスギ花粉の感作率も地域ごとに異なるために,各地域での疫学調査は重要である. 川崎医科大学耳鼻咽喉科ではアレルギー性鼻炎の患者に対して特異的IgE 抗体検査 (CAP-RAST)を施行し,その結果を報告してきた.そこで今回は2004年~2008年まで5年間に当院で行ったアレルギー抗原検査について報告する.対象は2004年1月1日~2008年12月31日の5年間に当院を受診したアレルギー性鼻炎を疑う症例に対してアレルギー抗原検査に同意した683例であった.最も感作率が高かったものはスギで59.3%あり,続いてハウスダスト(46.6%),ダニ(46.5%),ヒノキ(36.4%)であった.また年齢別の感作率ではハウスダストやダニ,動物などの通年性抗原では19歳以下の低年齢層の感作率が高かった.一方季節性抗原ではスギ,ヒノキが20歳~39歳に感作率が最も高かった.カモガヤが19歳以下で最も感作率が高かった.(平成22年3月6日受理)
2010.02.01
Radiological results of Charnley total hip
川崎医科大学附属病院で施行したCharnley 人工股関節全置換術(Charnley THA) の15年以上の長期成績について検討した.X 線学的評価を中心にインプラントの15年累積生存率,術前の設置母床の評価,インプラントの設置状態,手術直後の骨セメントの充填状態とその後の変化,ステムの経年的沈下量,大転子偽関節の有無,ポリエチレンソケットの線摩耗量,の7項目について調査した.その結果,股関節の生物学的分類やインプラントの設置位置によって最終成績に有意差は無く,また大腿骨の髄腔形状とステムの沈下量(mm/ 年)との間にも相関は認められず,設置母床の状態やインプラントの設置位置は長期成績に影響していないと考えられた. 一方,手術直後のセメント充填が良好な群はソケット・ステムともに有意にインプラント生存率が高く,またステムの沈下量においても少ない傾向にあり, THA の長期成績におけるセメント充填手技の重要性が強く示唆された.また大転子偽関節群は術後早期より生存曲線の低下が認められ,大転子偽関節はインプラント生存率に悪影響を及ぼしていると考えられた.ポリエチレンソケットの摩耗に関しては,インプラントの弛みの有無やインプラント周囲の骨溶解の有無によってソケットの線摩耗量に有意差こそ無かったが,弛み群や骨溶解群は線摩耗量が多くなる傾向にあり,ポリエチレン摩耗粉の発生量が母床骨の脆弱化に少なからず影響しているものと考えられた.(平成22年1月12日受理)
2010.01.09
A case of peripheral osteoma of the mandibular condyle as the cause of mandibular dislocation *
顎関節前方脱臼は主に大開口した時に下顎が関節結節を逸脱して前方に転位し,閉口不能になることにより起こるが,稀に顎関節脱臼を契機に下顎頭腫瘍が明らかになることもある.今回,その一例を経験したので概要を報告する.症例は40歳,男性.2005年6月初旬の夜に閉口不能になり,左顎関節前方脱臼の診断にて前医の外来で徒手整復を試みたが困難であった.さらに全身麻酔下に整復を試みるも不可能であったために,次の日に当科を紹介受診した.パノラマXPおよび3D-CTでは,左下顎頭は関節結節直下付近に位置し,左下顎頭前方に鳥の嘴様の骨腫瘤を認めた.MRI 検査では,左顎関節の上関節腔にjoint effusionを認めた.また,左関節円板後方肥厚部は軽度肥厚していたが,前方脱臼した下顎頭と関節円板の関係は正常であった.徒手整復を試みたが整復できず,同日に全身麻酔下で徒手整復を試みたが整復されなかった.さらにピボットスプリントを併用した顎間牽引療法やパンピング・マニピュレーションも効果はなかった.下顎頭の骨腫瘤が整復困難な原因と思われたために,6月8日に全身麻酔下に下顎頭部分切除術を行った.摘出物の病理組織検査では,骨腫の診断を得た.術後経過は良好で,その後は脱臼や咬合異常はなく経過良好である.(平成21 年12 月14 日受理)
2010.01.07
a autopsy case of AIDS with small intestinal perforation caused by CMV enterocolitis *
サイトメガロウイルス(CMV)感染症はAIDS 剖検例では約60% に認められ,AIDS の日和見感染症の中で最も多い日和見感染症である.CMV 腸炎による小腸穿孔例を経験したので,剖検所見を含めて報告する. 患者は63歳男性.発熱,呼吸困難が出現し近医で抗菌薬を投与されるが改善なく,他院入院後間質性肺炎が疑われ副腎皮質ステロイド,ST 合剤の投与を受けるも増悪.気管挿管後に当院転院となり,転院時の胸腹部画像にて腹腔内にfree air を認めたため緊急手術となった.回腸に穿孔を認め,回腸4.2cm を切除し,切除標本の免疫染色でCMV 腸炎と診断した.術前検査でHIV-1抗体陽性を示しHIV-1 RNA 量 32,000 copies/mL で,CD4陽性細胞は6/μL と著減していた.気管支鏡検査ではBALF 中ニューモシスチスDNA が陽性を示した.AIDS と診断しニューモシスチス肺炎(PCP)とCMV 腸炎の治療を行ったが呼吸不全が進行し第11病日永眠された.剖検所見の主病変はCMV 肺炎とPCP で,副病変として腹水,胸水を認めた.CMV に関しては心筋,副腎,脾臓,食道,胃,小腸,大腸に存在を認めた.直接死因は肺炎による呼吸不全であった.本例は早期からHIV 感染症を疑うべき既往歴,現病歴であったことから,AIDS 発症前にHIV 感染症を診断する重要性を示した症例と考えられた.(平成21年10月16日受理)
2010.01.06
An investigation of the radiosensitization effect of indomethacin on tumor cells *
非ステロイド系抗炎症剤であるインドメタシンは,抗腫瘍作用を持つこと,放射線増感作用を持つことが知られている.今回,インドメタシンの放射線増感作用について,グリーンズメラノーマを移植したハムスターを対象として基礎的検討を行った. インドメタシンの正常組織に対する放射線増感作用は,ハムスターの皮膚反応から評価した.その結果,Skin reaction score で評価したインドメタシン投与群と対照群の皮膚反応は,インドメタシン投与群の方が高値を示す傾向が認められたが,両群間に統計学的な有意差は示されなかった.腫瘍に対するインドメタシンの放射線増感作用は,照射直後の腫瘍体積を基準として算出された腫瘍体積比で評価した.その結果,薬剤投与群と腫瘍体積比との対照群のそれとの間には,照射後11日以降では統計学的な有意差が認められた(11日目以降:p<0.05,25日目以降:p<0.01). これらの結果により,インドメタシンの放射線増感作用は,腫瘍細胞に対して明らかに認められるが,正常細胞に対しては影響しないことが示された.(平成22年1月6日受理)




