h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2009.01.04

Localization of nitric oxide synthedtase in nasal mucosa of mice with induced allergic rhinitit *

 一酸化窒素(nitric oxide : NO)は,L- アルギニンを基質として,一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase : NOS)により産生される.NOS には3種類のアイソフォーム(NOS1,NOS2,NOS3)が存在する.気管支喘息患者では,健常人と比べ呼気中NO 濃度が上昇しており,気管支喘息の病態にはNOS2が関与している可能性が動物モデルで示されている.また,アレルギー性鼻炎でも鼻腔内NO 濃度が上昇し,アレルギー性鼻炎モデル動物を用いた研究でNOS2がコントロール群と比べ有意に上昇していたと報告されているが,鼻粘膜におけるNOS の局在を示す報告はない.本研究では,アレルギー性鼻炎モデルマウスを用いて,鼻粘膜におけるNOS アイソフォーム(NOS1,NOS2,NOS3)の同定および局在,遺伝子発現量の変化について調べた.BALB/c 系雄性マウスにCry j 1とアジュバンドの混濁液をday 0(初回免疫日),day 3およびday7の3回,腹腔内投与した(1次免疫).さらに,day13からday26まで連日,Cry j 1を鼻腔内投与した(2次免疫).コントロール群のマウスには1次免疫も2次免疫も実施しなかった.免疫組織化学とリアルタイムPCR を用いて鼻粘膜におけるNOS1,NOS2,NOS3の発現を調べた.免疫組織化学的では,NOS1免疫陽性反応はアレルギー感作群,コントロール群ともに嗅上皮,嗅神経に認めた.NOS2免疫陽性反応はアレルギー感作群では嗅上皮,呼吸上皮,嗅神経,血管内皮細胞,鼻腺導管で,コントロール群では嗅神経,血管内皮細胞,鼻腺導管で認めた.NOS3免疫陽性反応は両群とも血管内皮細胞に認めた. リアルタイムPCR を用いてmRNA の発現量を検討したところ,コントロール群でNOS1,NOS2,NOS3の遺伝子発現を認めた.また,アレルギー感作群はコントロール群と比べNOS1は有意に発現量の低下,NOS2,NOS3は有意に発現量の増加を認めた(p<0.05).NOS2は誘導型NOS であるが,嗅神経,血管内皮細胞,鼻腺導管で恒常的に発現していることが明白になった.NOS2はアレルギー感作群で有意な遺伝子発現量の増加が認められ,コントロール群で認められなかった呼吸上皮および嗅上皮にNOS2の発現が認められた.アレルギー感作群はコントロール群と比べ,NOS1は有意な遺伝子発現量の減少,NOS3は有意な遺伝子発現量の増加を認めた.アレルギー性鼻炎の病態にNOS2だけでなくNOS1,NOS3も関与していると考えられた.(平成20年11月13日受理)

2009.01.03

effects of a free radical scavenger on spinal cord injury after transient ischemia in rabbits *

 胸腹部大動脈手術後の重篤な合併症に,対麻痺がある.大動脈遮断による脊髄への血液供給の途絶と,再還流によって発生するフリーラジカルがその発症に関与していると報告されている.本研究では一過性脊髄虚血動物モデルを用いて,再還流後にフリーラジカルスカベンジャーを投与し,運動ニューロン数,運動ニューロンの断面積と神経学的所見から脊髄保護効果を検討した.22羽の日本白色家兎を用いて,左腎動脈下大動脈を20分間閉塞した.再還流30分後にエダラボン 3mg/kg を投与し48時間後(E48H 群,n=6),7日後(E7D 群,n=6)のそれぞれの神経学的所見と脊髄運動ニューロンの組織学的所見より,その脊髄保護効果を虚血群(コントロール群,n=6)および正常群(シャム群,n=4)と比較検討した.コントロール群で全例,対麻痺となった.脊髄1横断面あたりの正常ニューロン数は,エダラボン投与群で有意に改善していた(コントロール群6±12,E48H 群 38.2±40,E7D 群 24±19).正 常運動ニューロン1個あたりの平均断面積は,E48H 群,E7D 群でそれぞれコントロール群と比較して有意に大きかった.しかし,E48H 群はシャム群より有意に大きかったが,E7D 群はシャム群より有意に小さかった(コントロール群113±117,E48H 群 408±298,E7D 群 267±159,シャム群 377±23).また,E7D 群の脊髄組織において正常運動ニューロンと虚血性運動ニューロンの混在が認められた.再還流30分後のフリーラジカルスカベンジャー投与は,コントロール群と比較して48時間後の神経学的所見は改善した.しかし,組織学的所見では運動ニューロン数はコントロール群よりも増加していたが,運動ニューロンの断面積はシャム群よりも大きく細胞性浮腫が確認された.7日後の神経学的所見でも改善がみられ,運動ニューロン断面積においても縮小がみられたが,虚血性運動ニューロンが混在しており,細胞浮腫より萎縮への進行が考えられ,エダラボン7日後での脊髄保護効果は不十分であると考えられる.この結果より,エダラボンは一過性脊髄虚血に対して神経保護作用を持つものの,遅発性神経障害を完全には抑制できなかった.(平成20年10月30日受理)

2009.01.02

Analyses of red cell membrane proteins and red cell morphology in50 patients with myelodysplastic syndrome *

 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome: MDS)における貧血の一因として,赤血球膜蛋白異常による溶血の関与を考え,その実態を明らかにする目的でMDS 50例の赤血球膜蛋白及び赤血球形態の評価を行なった.赤血球形態では,全症例に何らかの形態異常がみられ,90%の症例では複数の形態異常が混在してみられた.膜蛋白異常を有していたのは9例(18%)で,band 3単独部分欠損3例,P4.1単独部分欠損1例,P4.2単独部分欠損3例,band 7単独部分欠損2例であった.このうちband 3,P4.1単独部分欠損症例における膜蛋白異常と赤血球形態異常の関係は,先天性膜異常症のそれと同じであった.Band 3欠損症例3例についてband 3遺伝子検索を行なったところ,1症例に病因遺伝子変異と思われるミスセンス変異が同定された. 赤血球形態異常については,染色体異常20q-を有するMDS 症例でelliptocytosis を呈する症例が存在することが報告されていることから検討を加えた.20q-を有する症例は8例存在し,そのうちelliptocytosis を呈していたのは6例(75%)であった.一方,20q-を有さない症例は38例で,そのうちelliptocytosis を呈していたのは24例(63.2%)であった.20q-の有無と末梢血のelliptocyte の割合について検定を行なった結果,有意差は認められず,20q-がelliptocytosis の病因である可能性は低いと考えられた.(平成20年10月29日受理)

2009.01.01

Plasma ativity of the renin-angiotensin-aldosterone system, renal peroxidation, and effects of edaravone on suppressing peroxidation in puromycin-aminonucleoside-induced nephritis *

 puromycin aminonucleoside(PAN) 腎症における血中renin-angiotensin-aldosterone(RAA)系活性及び腎過酸化とedaravone(EDA) の過酸化抑制効果について検討した.対象は8週齢のウイスター系雄ラット30匹である.10匹ずつ3群に分け,それぞれに生理食塩水(C 群),PAN(P 群),PAN + EDA(E 群) を腹腔内投与した.血圧ならびに血清と尿中生化学検査および血漿レニン,アンジオテンシンⅠとⅡ,アルドステロン濃度を測定した.さらに共焦点レーザー顕微鏡で腎組織内一酸化窒素(nitric oxide:NO) と活性酸素種の分布強度をそれぞれの指示薬を用いて観察した.血漿レニン,アンジオテンシンⅠとⅡ,アルドステロン濃度はコントロール群に比べてP 群で有意に増加した.血漿アンジオテンシンⅠとⅡ濃度はP 群に比べてE 群で有意に低下した.糸球体内NO の蛍光輝度はC 群と比べてP 群で有意に増加した.活性酸素種の蛍光輝度はC 群とE 群に比べてP 群で有意に増加した.これらのことは,PAN 腎症で血中RAA 系と腎糸球体でのNO 産生及び過酸化が亢進しており,EDA にRAA 系と腎過酸化を抑制する作用があることを示している.(平成20年10月21日受理)

2008.04.09

A case of lethal systemmic embolization with colesterol crystals following coronary angiography *

 心臓カテーテル検査後に全身性のコレステロール結晶塞栓症を発症した1例を経験した.症例は69歳の男性で,不安定狭心症で緊急心臓カテーテル検査を受けた.冠動脈の#2,#9,#12に狭窄を認め,PCI(percutaneous coronary intervention)ステントを挿入された.その直後から腹痛が出現し,徐々に増強したため外科紹介となった.上腸間膜動脈塞栓症を疑い血管造影検査を施行したが,明らかな異常を認めなかった.汎発性腹膜炎との診断で緊急開腹術を施行したところ広範囲の消化管が斑状に壊死に陥っており,消化管の切除再建は不可能と判断し閉腹した.術後2日目に患者は死亡した.死後の病理解剖にて消化管を含む腹腔内多臓器のコレステロール結晶塞栓症と診断された.コレステロール結晶塞栓症はまれな疾患であり,血管造影,大血管手術,抗凝固療法を契機に発症することが多い.発症後の予後は極めて不良であるため、ハイリスク症例はこの疾患の存在を念頭に置く必要があると思われた.(平成20年10月21日受理)

2008.04.08

Hutchinson’s sign in trigeminal nerve zoster: an analysis of 35 cases *

 眼合併症に関連する特徴的な皮膚症状を確定するために,三叉神経第1枝,第2枝領域に生じた帯状疱疹の患者,計35名を検討した.1998年から2007年までに川崎医科大学附属病院皮膚科で診断・治療された患者がこの後ろ向き研究に含まれた.Hutchinson徴候が眼合併症の存在を示唆する有意な所見であることは明らかとなったが,上顎神経(三叉神経第2枝)領域の帯状疱疹でHutchinson徴候を伴う例では眼合併症を認めなかった.Hutchinson徴候を示さないが眼合併症を伴った例が数例あり,これらの症例では眼瞼に水疱・浮腫を認めた.さらに眼瞼に水疱・浮腫を伴う症例では結膜炎に加え,角膜炎を含む重篤な眼症状を合併している率が高い(66.7%)ことも判明した.これらの結果は三叉神経第1枝領域の帯状疱疹においてHutchinson徴候とともに眼瞼の水疱・浮腫も眼合併症の予知徴候であることを示している.(平成20年10月7日受理)

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