h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2008.04.05

Combined antitumor effects of a new molecular targeting agent lapatinib with chemotherapeutic agents in poorly differentiated and undifferentiated thyroid cancer cells *

【目的】治療に難渋する甲状腺低分化・未分化癌細胞における新規分子標的薬lapatinib(Lap)の抗腫瘍活性ならびに抗癌化学療法剤との併用効果を検討した.
【材料と方法】当教室で樹立された3種類の甲状腺癌細胞株(低分化乳頭癌細胞株KTC-1,未分化癌細胞株KTC-2,KTC-3)を用いた.Lap及び抗癌化学療法剤(5-fluorouracil[FU],doxorubicin[Dox],paclitaxel[Pac],SN-38,cisplatin[Cis],etoposide[Eto],Cis+Eto)を単剤または併用投与し,細胞増殖,細胞周期,アポトーシス誘導,アポトーシス関連因子発現に与える影響を調べた.
【結果】Lapは, いずれの細胞株においても用量依存性に増殖抑制 (50%増殖阻止濃度:KTC-1細胞株5.0μM,KTC-2細胞株3.4μM,KTC-3細胞株3.5μM)とアポトーシス誘導を起こした.Lapは,KTC-1細胞株ではSN-38,Cis,Eto,Cis+Etoと,KTC-2細胞株ではCis+Etoと,KTC-3細胞株ではDox,Pacと相加的な増殖抑制効果を示した.KTC-1細胞株においてCis+EtoとLapの併用は,相加的にsurvivinの蛋白発現低下とアポトーシス誘導を起こした.
【結論】新規分子標的薬Lapは,甲状腺低分化・未分化癌細胞に対して,アポトーシスを誘導し抗腫瘍活性を示した.Lapは抗癌化学療法剤の種類によっては,相加的な抗腫瘍効果が認められた.甲状腺低分化・未分化癌の治療にLapが有用なことが示唆された.
(平成20年9月2日受理)

2008.04.03

Three-dimensional analysis of the erythroblastic islands of mouse bone marrow *

 赤芽球島は骨髄造血部に存在する赤血球造血の形態学的な基本構造である.電子顕微鏡観察およびF4/80免疫染色厚切り切片からの三次元立体構築により,骨髄赤芽球島の島中心細胞の形態を生後早期のマウスで観察した. 島中心細胞は径0.2から0.7μmの細長
い索状細胞質突起を周囲の造血細胞間に多数伸展する.赤芽球は索状突起の周囲に集積し,突起はその先端が分岐して赤芽球を補足することが,三次元観察から明らかになった. (平成20年7月15日受理)

2008.03.08

A case of obstruction of the ileum resulting from spilled bezoar *

 症例は70歳代の女性.平成4年に糖尿病と診断され食事療法を行っていた.平成17年1月18日頃から胸焼けと上腹部痛が出現したため,1月25日に当科を受診した.上部消化管内視鏡検査にて,胃角から前庭部にかけて一部に露出血管を伴う多発性の潰瘍及び多量の凝血塊を認めたため,内視鏡的止血術後に当科に入院となった.止血確認の目的で上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃内に楕円形で暗褐色,表面粗造な胃石を3個認めた.精査中に嘔気と嘔吐が突然出現したため腹部単純X線検査を施行したところ小腸ニボーが認められ,腹部超音波検査では骨盤腔内小腸に音響陰影を伴う長径40mmと30mm程度の高エコー腫瘤を2個認めた.臨床所見および画像診断から落下胃石による腸閉塞と診断し,保存的治療で改善しなかったため開腹手術を行った.術中所見ではトライツ靭帯から約290cmの空腸内に嵌頓する胃石を認め,切開摘出後腸切除を行った.切除腸には胃石によるものと思われる潰瘍を認めた.胃石は2個で大きさは長径45mmと35mmであった.また,胃内の長径65mmの胃石も同時に摘出した.平成16年10月頃からしぶ柿の汁と搾りかすを摂取しており,結石の成分分析でタンニンが98%で柿胃石と診断した.
(平成20年5月19日受理)

2008.03.07

Percutaneous betamethasone injection for aspiration of a thick gelatinous systic fluid of the thyroid *

 甲状腺嚢胞性疾患は,外来診療においてよく経験する.診断と治療を兼ねて穿刺吸引細胞診をおこなうことが多いが,ときに嚢胞内容が非常に粘調なため,吸引できない場合がある.そのような症例に良性と診断を下し,経過観察でよいと判断しても,本人が違和感や圧迫感を訴え,手術を希望することもある.症例は,67歳女性.3.9×2.7×2.5cmの左腺腫様甲状腺腫に3.6×2.9×1.9cmの嚢胞を合併.穿刺吸引を行うも内容が非常に粘調で,ほとんど吸引できないため,嚢胞内容の希釈と自覚症状の軽減を目的としてリン酸ベタメタゾンナトリウム(4mg)を嚢胞内に注入.1週間後,外来において穿刺吸引を安全かつ容易に施行し,頚部の腫脹と圧迫感が軽減し,本人の高い満足を得られた.この方法は安全,簡単で費用がかからず,更に高い満足が得られたので報告する.
(平成20年5月9日受理)

2008.03.06

Application of a dental implant in a case of mandible reconstruction though a free vascularized fibular flap graft *

 広範な下顎骨区域切除後には著しい審美性および機能性障害が後遺するリスクは高く,この回復は患者のQOLの向上に必要不可欠な因子である.われわれは,口腔底癌に対する放射線同時併用超選択的動注化学療法施行後に下顎骨壊死を併発した症例に対し,下顎骨区域切除後,血管柄付遊離腓骨皮弁移植による下顎再建を行った.術後,咬合・咀嚼機能障害および下唇内転による審美障害に対し移植再建された腓骨に歯科用インプラントを埋入し,それを支持体とした義歯を作製装着し咬合回復が得られ,また審美的にも良好な結果が得られた.これにより顎骨切除後の再建症例に対しても歯科用インプラントの有用性を認めた.(平成20年4月23日受理)

2008.03.05

Bibliographical studies on human cases of Hard Tick (Acarina: Ixodidae) bites in Japan (2) cases of Haemaphysalis longicornis and H. flava infestation *

 本邦で発生したフタトゲチマダニ(1943~2005年)およびキチマダニ(1977~2005年)の人体寄生例の報文を通覧して疫学的に検討した.症例数はフタトゲチマダニが101例(男性37,女性49,性別不明15),キチマダニが57例(男性14,女性28,性別不明15)である.両種とも北海道と南西諸島を除く広い範囲に分布しており,患者の都道府県別発生数では,フタトゲチマダニは岡山が14例(14.1%),キチマダニは福岡が13例(26.5%)で最も多かった.年次別の症例数は,両種とも1990~1999年が最も多く,それぞれ49例(57.0%)と18例(48.6%)だった.フタトゲチマダニの患者は3~10月に発生しており,発生率は8月の28.2%をピークに,98.8%の患者が4~10月に集中していた.一方,キチマダニの患者は9月を除く各月に発生しており,発生率は4月の21.6%がピークで,29.7%が11~2月の冬季に発生していた.患者の年齢は,フタトゲチマダニが1~88歳で,60歳代(26.2%)が最も多く,キチマダニでは1~90歳で,9歳以下(42.9%)が最も多かった.年齢と性別の関係は,フタトゲチマダニでは60歳代の女性(19.0%)が,キチマダニでは9歳以下の女児(23.8%)が最も多かった.虫体の寄生部位は,フタトゲチマダニで大腿部が15.4%で最も多く,次いで外耳道が12.1%の順で,キチマダニで頭頂部が18.2%で最も多く,次いで頭部が15.9%の順であった.両種とも頭・頸部への寄生が多く37.4%と54.5%を占めており,特にキチマダニは頭部を選択する傾向がみられた.患者がマダニの寄生を受けた場所については,両種とも大多数が山岳地帯であった.
(平成20年2月26日受理)

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