h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2008.03.01

Assay system for mouse reprogramming factor *

 昨今,分化した体細胞を初期化したiPS細胞が再生医療の分野で注目されている.患者本人の細胞を利用するため,今まで問題となっていた拒絶反応や倫理上の問題が解決され,その臨床応用が期待されている.しかし,初期化を図る際に導入した遺伝子の相互作用や作用機序,また完全に初期化が起きているかなど不明な点も未だ多い.
 今回,一方のX染色体にGFP遺伝子を持つ雌マウス由来の線維芽細胞(テスター細胞)とマウス由来のES細胞を融合させることで,体細胞の初期化モデルを作成した.テスター細胞はX染色体の不活化によってGFP蛍光が無い状態のものを選別して使用した.テスター細胞と初期化作用のあるES細胞を融合した細胞はGFP蛍光を発現し,Western解析でもGFPタンパクが確認された.テスター細胞と融合細胞のGFP遺伝子のメチル化状態を比較すると,融合細胞で脱メチル化している率が高かった.未分化状態を維持できない培養環境下で融合細胞を培養すると,再びGFP蛍光は消退した.
 これらの結果より,X染色体の不活化,再活性化は体細胞の初期化と並行して起こる現象と考えられ,体細胞の初期化の検定系として用いられると考えられた.また,再活性化されたX染色体が再び不活性化される際に全ての細胞でGFP蛍光が消退したことから,ランダムに不活化されるのではなく,テスター細胞の時の記憶が残っていることも推察された.(平成20年2月28日受理)

2008.02.09

Clinical analysis of umbilical hernia in adults treated surgically – Emergency ppoperation cases of incarcerated umbilical hernia – *

 成人臍ヘルニアは本邦では比較的稀な疾患であるが,食生活の欧米化により増加傾向にある.
 1997年から2007年までの11年間に計13例の臍ヘルニア手術症例を経験したので報告する.年齢は28~78歳,男性2例,女性11例.12例に肥満,出産後,肝硬変による腹水,腎不全に対する腹膜透析等の腹圧亢進の原因となりえる既往症,合併症があった.嵌頓8例,非嵌頓5例で,術式は縫合閉鎖11例,Kugel patch使用例1例,腸切除・人工肛門造設1例であった.術後合併症は創感染1例,皮膚壊死1例であり,嵌頓腸管が虚血壊死となり,術後敗血症,呼吸不全,皮下膿瘍を併発した高度肥満症例を1例経験した.臍ヘルニア嵌頓例は,非嵌頓例と比較して,基礎疾患を有するものが多く,術後合併症併発率も高かった.ただし,ヘルニア嵌頓が整復できず緊急手術となった5例中,20時間以内に手術施行した4例は腸切除することなく,術後合併症もなかった.臍ヘルニアは,可能な限り早期に嵌頓を解除することが,術後合併症を回避する上でも重要と思われた.
(平成20年4月18日受理)

2008.02.08

A case of NSAIDs intolerance initially susupected to be Food-dependent exercise-induced anaphylaxis*

 NSAIDs不耐症はアスピリンを含むNSAIDsやCOX阻害作用を有する類似の物質に対する過敏症として知られている.臨床症状としては喘息発作,結膜刺激症状や全身の潮紅などI型アレルギーに類似するものが多い.皮膚症状は血管浮腫を伴う,もしくは伴わない蕁麻疹としてみられ,喘息が合併することは少ない.重篤な例では生命を脅かすアナフィラキシーショック症状も呈する.NSAIDs不耐症の病因はなお不明であるが,しばしばNSAIDsの容量および個体の感受性に依存性であることから非アレルギー性,IgE非依存性の機序により直接ひきおこされると考えられている.食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)は運動により誘発される食物アレルギーの特殊な病型である.多くの食物のうち日本では小麦が最も頻度の高いアレルゲンとして報告されている.私どもは食物摂取後に蕁麻疹,呼吸苦が出現し,当初,FDEIAが疑われた1患者を報告する.原因と推定される食物の摂取を伴う誘発試験をおこなった結果,診断はNSAIDs不耐症のIII型であることが確定した.本症例は原因不明の蕁麻疹,血管浮腫,呼吸苦を呈する症例ではNSAIDs不耐症を念頭におき,正確な診断がなされるべきであるということの例証となっている.
(平成20年4月7日受理)

2008.02.07

A case of actinomycosis of the ileocecal area caused by acute appendicitis *

 急性虫垂炎が発症の誘因となったと思われる放線菌症の1例を経験した.症例は17歳,男性.平成16年11月下旬から腹痛と発熱が続き,約3週間経っても改善しないため来院した.右下腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知し,発熱および白血球数の上昇も認めた.腹部CT検査,超音波検査では虫垂周囲の回盲部に膿瘍を疑わす像を認めたため,虫垂炎に起因する回盲部周囲膿瘍の術前診断で緊急手術となった.術中所見では,病変は手拳大で盲腸を中心に形成され,壊死に陥った虫垂と一塊となっていた.高度の膿瘍形成を伴った壊死性虫垂炎と診断し,手術は回盲部切除,膿瘍ドレナージ術を行った.術後,病理組織学的にて,回盲部放線菌症と診断された.術後経過は良好で,第11病日に退院した.放線菌症は稀な疾患であるが,膿瘍形成性虫垂炎と診断されている疾患には本症の併存も念頭におくべきと考えられた.(平成20年1月24日受理)

2008.02.06

The usefulness of FDG-PET in diagnosis head and neck cancer – report of two cases *

 2006年12月,当院にもようやくFDG-PET/CTが導入された.FDG-PET(2-[18F]fluoro-2-deoxy-D-glucose positoron emission tomography)は,腫瘍のグルコース代謝を反映し,一般に悪性度の高い腫瘍ほどグルコース代謝が亢進して強く集積する.頭頸部領域では2002年4月から,FDG-PETを用いての頭頸部悪性腫瘍の診断が保険適応となった.FDGを用いたPETは,頭頸部領域における癌の原発巣や,頸部のリンパ節転移を診断するのに,従来の画像診断に比べ早期に診断が可能である.またCTやMRIでは原発巣が判明しなかった,原発不明頸部リンパ節転移癌に対しても有用である.また同時に遠隔転移の有無も把握することができる.
 私達は当院にFDG-PETが導入されてまだ日が浅いにもかかわらず,臨床的に極めて有用であった症例を経験した.原発巣の診断にFDG-PETが有用であった症例と,局所再発の診断にFDG-PETが有用であった症例の2症例である.これらの症例は,いずれもCTやMRIなどの従来の画像診断では診断が困難な症例であった.
(平成19年12月19日受理)

2008.02.05

Familial MDS-overt leukemia patient treated with allogeneic cord blood stem cell transplantation in a graft-versus leukemia effect *

 症例は65歳,男性.28年前に長男,25年前に兄が急性骨髄性白血病で死亡.4月汎血球減少が出現し,9月白血化骨髄異形成症候群と診断された.芽球は表面CD13,CD33,CD34陽性.化学療法後に芽球消失するも不応性貧血は持続し,同種臍帯血ミニ移植術を受けた.移植後,皮膚のgrade Iの急性移植片対宿主病(GVHD)を合併するも重篤な合併症を認めなかった.しかし,移植6ヶ月後に血小板減少と肝機能障害を認め,骨髄穿刺で,CD4,CD13,CD33,CD56陽性芽球を46.5%認め再発した.皮膚慢性GVHDに対するFK506隔日0.5mg内服を中止したところ造血は回復し,4週後の骨髄で白血病芽球の消失とキメリズム解析でドナー型99.5%を確認した.本例は臍帯血ミニ移植後再発した白血化骨髄異形成症候群に対し,免疫抑制剤中止にてGVL効果を観察し得た貴重な症例と考えられる.
(平成19年12月6日受理)

2008.02.04

A resected case of esophageal cancer associated with a sarcoid reaction in regional lymph nodes *

 症例は71歳,男性.2003年11月,嚥下時痛を主訴に当院受診.食道造影,内視鏡検査にて胸部中部食道に全周性の狭窄認め,2型の食道癌と診断された.術前の胸部CTにて気管周囲リンパ節の腫脹を認め,転移が疑われた.12月,食道亜全摘と2群リンパ節廓清術を行い,胃管を用いて胸骨後経路で再建した.病理組織検査では中分化型扁平上皮癌で,pT3,ly2,v1,pN2(2a),stageIIIであった.郭清リンパ節ではNo.2にのみ転移を認めたが,腫大したリンパ節のほとんどに壊死を伴わない類上皮細胞からなる肉芽腫を認めた.術後サルコイドーシスの検索を行ったが,胸部X-p異常,眼病変,皮膚病変,表在リンパ節腫脹は認めず,食道癌に伴うサルコイド反応と診断した.本症例では術前所属リンパ節の転移が疑われたが,そのほとんどはサルコイド反応による腫大であったこと,またNo.2リンパ節では転移とサルコイド反応がともにみられたことより術前画像診断による判断は困難と考えられた.(平成19年11月26日受理)

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