h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2005.04.08

The consciousness of controversial medical treatments among university students in Japan *

 医療技術のめざましい発展は我々に多くの問題を課すことになった.その中でも最も重大なものの二つが,医療の質と,生命科学や先端医療技術の成果への対応の問題である.前者では心の医療,医療の目的とQOL(Quality of Life生命の質,生活の質),死生観などが問われる.後者には遺伝子操作,生殖技術,脳死,臓器移植などをめぐる倫理問題がある.そしてこの両者をめぐって,医療者・患者に関わる諸問題,例えばインフォームド・コンセント,告知などの問題がある.これらの問題に取り組むのが生命倫理学(Bioethics)である1).そして,先端医療における近年の飛躍的進歩と社会における価値観の変化により,医療の現場においても現行法や従来の常識では処理しきれない多くの問題を生み出している2).
 したがって,医療倫理を考える機会を持つことを目的として,社会生活の中で,また臨床,研究などの現場で,判断を下す時,どうすればよいかという考え方の基礎づくりのために,オムニバス教育方法で,生命倫理の授業が行われている3).
(平成17年12月8日受理)

2005.04.07

Clinicopathological study if Helicobacter pylori eradication in adult patients with idiopathic thrombocytopenic purpura *

 近年,Helicobacter pylori(H. pylori)感染を合併した成人特発性血小板減少性紫斑病(ITP)にH. pylori除菌療法が有効であることが報告されている.今回,当科において22例のH. pylori感染陽性のITP症例に対して除菌療法を行ない除菌成功例の56%に血液学的寛解が得られた.H. pylori除菌による血小板数増加機序の1つとして,抗H. pylori抗体の血小板に対する交叉反応が考えられているが,抗H. pylori抗体が除菌療法後に消失したにも関わらず血小板数の改善が認められなかった症例もあり,複数の因子が複雑に関与していることが示唆された.H. pylori除菌療法は重篤な副作用も認められず,H. pylori陽性ITPではまず除菌を行なうことが得策と考えられた.(平成17年11月22日受理)

2005.04.06

Rapid PCR diagnosis for cases suspected of H5 avian influenza virus infection *

 H5型鳥インフルエンザウイルスの感染が疑われる患者が川崎医科大学附属病院に来院した場合には緊急に鑑別診断する必要があるが,現行の迅速診断キットではA型インフルエンザとは判定できてもH5亜型かどうかは鑑別できない.本研究では,本院でも通常のPCR(polymerase chain reaction)法で簡便にH5亜型を鑑別できる体制を整えるために,H5亜型HA(hemagglutinin)遺伝子すべてに共通し,なおかつ現在のヒトのA型インフルエンザ(H1,H3亜型)ウイルスには存在しない塩基配列部分をターゲットにしたプライマー8種を作成してPCRを行なった.その結果,2ペアのプライマーがH5HA遺伝子を特異的に検出できること,その検出感度は検査材料中に3PFU(plaque forming units)相当のウイルスがあれば同定できることが分かった.検体採取から同定までに要する時間は約5時間で,通常のPCRサーマルサイクラーがあれば誰でもどこでもできる方法であるため,当院での緊急診断用として充分実用的であると考えられる.
(平成18年1月31日受理)

2005.04.05

Clinical and MRI study of patients with conservative treatment for TMJ anterior disc displacement *

 平成13年4月から平成14年7月までに片側性顎関節症の臨床診断のもとに顎関節MRIを撮像し,スプリント療法と薬物療法を中心にした保存的治療により加療し,終了後2年以上経過した27名(27関節)を研究対象とし,臨床経過とMR像との関係を検討した.それらをMRIにより関節円板に復位を伴うⅢa群12名(12関節),関節円板に復位を伴わないⅢb群15名(15関節)に分類した.対象の27名の内訳は男性8名,女性19名であった.年齢は平均40.6±19.2歳であった.患側は右側が22関節,左側が5関節であった.結果を以下に示した.
 初診時の最大開口度は,Ⅲa群は36.8±9.6mm,Ⅲb群は31.6±6.7mmであった.初診時VASは,Ⅲa群は28.5±19.9,Ⅲb群は39.0±27.6であった.治療を開始して平均3.9か月後の最終受診時開口度は,Ⅲa群は45.6±9.9mm,Ⅲb群は40.6±4.6mmであった.治療後は二群ともに初診時より有意に最大開口度は改善していた.最終VASは,Ⅲa群は4.9±9.4,Ⅲb群は7.1±8.1であった.治療後は二群ともに初診時より有意にVASは低下していた.予後は23名で改善したが,4名は改善が見られず,保存療法の奏功率は85.2%であった.改善のみられなかった4名のうち3名はⅢa群,1名はⅢb群であった.MR画像所見ではjoint effusionは,Ⅲa群ではgrade1は4例,grade2は2例,grade3は6例であった.Ⅲb群ではgrade0は5例,grade1は4例,grade2は3例,grade3は3例であった.円板後部組織の線維化はⅢa群の4例にのみ見られたが,二群間に有意差はみられなかった.また初診時ならびに最終受診時の最大開口度と各時期のVASの間には二群とも相関はみられなかった.初診時ならびに最終受診時の臨床診査項目とMRI診査項目間には,いずれの項目間にも関連性はみられなかった.(平成17年12月3日受理)

2005.04.04

Mechanistic analysis of pancreatic ductal carcinogenesis from pancreatic juice – Mutagenicity of pancreatic juice in animals treated with carcinogens – *

 膵癌は悪性腫瘍の中でも予後不良である難治性癌の1つである.その新たな治療戦略として,癌の発生及び進展の阻害,あるいは遅延させる化学予防法の開発が重要視されている.
 膵管上皮細胞は膵液に暴露されている事より,膵液中に発癌物質が分泌される事が,膵管上皮細胞由来である膵管癌の発生には重要であると考えられるが,膵液の発癌における役割に関する知見は乏しい.今回我々は,膵管癌の好発するハムスターと,膵管癌の発生が稀であるラットについて,強力な膵発癌物質であるN-nitrosobis(2-oxopropyl)amine(BOP),N-nitrosobis(2-hydroxypropyl)amine(BHP)を投与して採取した膵液の変異原性について,Ames test(微生物変異原性試験法)を用いて検索した.また,その膵液中の変異原物質をHigh-performance liquid chromatography(HPLC)を用いて検索した.
 その結果,ハムスターではBOP,BHPを投与後採取した膵液には強い変異原性が認められ,HPLC解析でも膵液中にBOP,BHPの代謝産物が認められた.一方,ラットではいずれの物質を投与しても膵液に変異原性は認めず,HPLC解析でも膵液中にBOP,BHPの代謝産物は認められなかった.
 以上の結果より,膵管癌の発生には膵液中に変異原物質が分泌されている事が重要な役割を果たしている事,膵液を用いたAmes testが膵管発癌物質のスクリーニング系になる可能性が示唆された.(平成17年10月24日受理)

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