h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1994.01.01

Therapeutic Effects of Interferon in Type C Chronic Hepatitis : Relationship to Genotypes of Hepatitis C Virus *

C型肝炎ウイルスのgenotypeとインターフェロン(IFN)治療効果との関連を検討するため60例のC型慢性肝炎にIFN投与を行い,その治療効果をみた. HCVgenotypeはRT-PCR法によりHCVウイルスのcore領域の塩基配列の違いからI -IV型に分類する方法を用いた.HCV-RNAの定量はnested PCR法により測定した.II型の著効は43例中8例(18.6%)であったのに対し, III型では11例中8例(72.7%)であった.IV型は4例中1例(25%)に著効を認めた.HCV-RNAは1 0 3.5~107 copy/ml と各型にわたり,その分布には一定の傾向を示していなかった. IFN治療効果はHCV-RNA量の低いものに多くみられる傾向はあったが, III型ではHCV-RNA量の多いものでも有効であった. HCV-RNA量が高値を示すII型でIFN投与中GPTの改善を認めず投与終了後GPTは低下し,HCV-RNAの陰性化を認める例があり, IFN治療効果の予測が困難な例のあることが注目される.                             (平成5年11月13日採用)

1993.04.15

A Case Report of Duodenal Diverticulum with Massive Hemorrhage ―with Incidence of Duodenal Diverticula at X ray Examinations― *

症例は75歳女性,下血で当科に入院となった.十二指腸造影で,十二指腸水平部内側にニッシェを伴う約6×6cm大の憩室が認められた.その他の消化管検査で出血源を疑う病変はなく,十二指腸憩室からの出血と診断された.憩室切除術が施行され,切除標本を組織学的検討したところ,憩室壁には筋層のある部分とない部分が混在しており,出血源と考えられるビランはその両者の境に多かった.これは,筋層の有無による壁運動のひずみが出血を引き起こしたことを推測させた.また,我々は当教室過去3年間, 1,881名の上部消化管造影検査における十二指腸憩室の頻度を調べ,男性8.5%,女性13.6%,全体平均10.7%という結果を得た.年齢別頻度では,男女ともに50歳代以上において,高齢になるに従いその頻度は増し,特に60歳代以上は著明な増加を示した. (平成5年10月23日採用)

1993.04.14

A Clinical Study on 4 Cases of IgD Type Myeloma *

1993年7月までの過去約20年間に,当科で経験したIgD型骨髄腫は4例で,全骨髄腫の約3.4%であった.これら4例を解析すると, IgD型骨髄腫の特徴のうち,全骨髄腫における発生頻度,軽鎖の頻度(全例λ鎖),血清総蛋白値(全例正常範囲内)については過去の報告と同様の傾向が認められた.しかしM蛋白量と血清IgD値は既報告より高値を示し,また,予後に関しては個体差が大きいという結果が得られた.(平成5年10月23日採用)

1993.04.13

High Detection Rate of Early Gastric Cancer by Gastric Mass Survey in a Small Town in Okayama Prefecture *

胃集検が胃癌の死亡率の低下に多大の貢献をしてきたことは周知の事実である.しかし,本邦では癌による死亡が死因の第一位であり,なかでも胃癌死亡数が癌死亡の約2割を占めており今後さらに胃集検の効率を高める必要があると考えられる.そこで,早期胃癌率が高率であった地域胃集検の成績をもとに,効果的な受診者を対象とした検診についての検討を行った.昭和59年度から平成2年度までの7年間の鴨方町胃集検受診者は10,405名で,発見胃癌22例(早期癌15例,進行癌6例,不明1例)で胃癌発見率0.21%,早期胃癌率68.2%であった.年齢別では胃癌発見率は60歳代で最も高く,40歳代の約10倍,50歳代の約4倍と高率であった.受診歴別では胃癌発見率は受診回数の少ない群ほど高く,早期胃癌率は逆に受診回数の多い群に高い傾向であった.したがって,胃集検の効率をさらに高めるためには,60歳代の受診拡大とともに,初回受診者のほりおこしが重要と考えられた.           (平成5年10月30日採用)

1993.04.12

A Study on Establishment of Suitable Mass Survey for Colorectal Cancer *

近年,大腸がんの罹患率,死亡率は増加傾向を示し,大腸がん対策は公衆衛生上も緊要な課題と考えられている.我々は便潜血検査(occult blood test : OBT)を第一次スクリーニング法とし,精密検査を全大腸内視鏡検査(total colonofiberscopy : TCF)で行う大腸がん検診の体制を確立するために, 1986年から1989年までの4年間の地域,職域及び人間ドックの受診者14,964名を対象にして種々の検討を行った.検討した4種のOBT(免疫法3種,化学法1種)の陽性率は3.4%から5.6%の間であった.発見大腸がんに対する感度では免疫法のRPHA法が早期がんには84.6%,進行がんには100%と最も良かった.全般に免疫法の方が化学法より優れていた.また陽性反応適中率はRPHA法9.3%で良好なスクリーニング法であると考えられた.精密検査はTCFが精度が高く,回盲部到達率は94.5%と高く,同法でスクリーニングした発見大腸がんは0.33%と高率であった.検討期間の大腸がん発見率は14,964名の受診者から30名, 0.20%であり,そのうち早期がんは21例,70%と良好な成績であり, OBTを第一次スクリーニング法とした検診が有用であると指摘することができた. (平成5年10月30日採用)

1993.04.11

Analysis of Human Erythrocyte Membrane Protein Band 4.2 on a Codon 142 (GCT-≫ACT : Ala-^Thr) Mutation *

ヒト赤血球膜蛋白band 4.2完全欠損症例の末梢血白血球より調製したDNAからPCR法(polymerase chain reaction)を用いて, band 4.2のexon 3を増幅し,2種の制限酵素(EcoR I とPst I)で消化後,M13mp 1 9ベクターに組み込み,その塩基配列を決定した.その結果, exon 3 codon 142 におけるGCT(Ala)→ACT(Thr)の1塩基変異を見出した.本症5家系6症例と,このうちの同家系内正常人について2家系6例とさらに健常人対照50例のDNAを,変異部分を含むASO (allele specific oligonucleotide)プローブを用いたdot blot法によって検索した.その結果,本症6例全例にこの点変異を認め,ホモ接合体であった.なおこの変異の遺伝形式は常染色体劣性遺伝と考えられた.健常人50例中1例にこの点変異が発見されたが,ヘテロ接合体であった.このcodon 142 変異はband 4.2完全欠損症および本症で見られる74 kDa 蛋白に,臨床的,蛋白化学的,遺伝学的に密接な関係があることを認めた.             (平成5年10月28日採用)

1993.04.10

Red Cell Membrane Disorders in Japan ―Clinical, Electron Microscopic, and Biochemical Studies― *

溶血性貧血諸疾患143例を検索対象とし,赤血球形態,膜蛋白,膜脂質,Na輪送能などの項目につき解析した.検索症例の中では遺伝性球状赤血球症(HS)の頻度が最も高かった(55例; 38.5%).HSと遺伝性楕円赤血球症(HE)については,検索前後の診断がよく一致していたが,遺伝性有口赤血球症(HSt.)に関しては診断不能例が多く,末梢血塗抹標本による形態診断での限界を示唆しているものと思われた.HS 55例のband 3含有量の平均値は健常人と差はみられなかったが,一部の症例でband3の含有量が低下(正常の20~30%減)しており,同時にband 4.2の含有量も低下していた. Band 3の含有量と総脂質量との間には明らかな相関は認められず,このことはband3含有量低下と膜脂質量低下が異なる機序によることを示唆していると思われた.HEに関しては,16例(8家系)中,13例(6家系)がband 4. 1部分欠損を伴っていた(家系でみると全HEの75%).これらの症例では, band 4. 1の含有量は正常の約70%であり,特にband 4. 1aのみが減少していた. Band 4. 1部分欠損症例の臨床像,生化学所見は比較的均一であった.                     (平成5年10月28日採用)

1993.04.09

α-adrenergic Vasoconstriction Reduces Systolic Retrograde Blood Velocity in Septal Artery *

拡張期優位に心内膜側心筋に流入した冠動脈血の一部は,心筋収縮により収縮期逆流として心外膜側へ搾り出される(slosh現象).このslosh現象は,心筋内血流分布を規定する重要な因子である.一方,運動時の交感神経活性,特にα受容体刺激を介する冠動脈収縮は,心筋内血流の均一性の維持に重要であり,心内膜側から心外膜側への血液の移動(transmural steal)を減少させて心内膜側血流の維持に寄与している.本研究では,α受容体刺激の心筋内血流動態,特にslosh現象に及ぼす影響について, anti-transmural steal現象と関連付けながら検討した.麻酔開胸犬(n=12)を用いて, 20MHz超音波ドップラ血流計を用いて左冠動脈中隔枝の血流を計測することにより,心筋内冠動脈血流パターンを評価した.α受容体刺激の効果をみるため,ノルエピネフリン持続静注状態で,α受容体遮断を行い,その前後での血流を比較した.α受容体遮断には,フェノキシベンザミンを用い,大動脈のバンディングにより冠灌流圧はα受容体遮断前後で一致させた.α受容体を遮断することにより,収縮期逆流は増加し,収縮期逆流の拡張期流入血流に対する割合(slosh率)も増加した.なお,α受容体遮断前後で左室のmaximum dP/dtに変化は認められなかった.ノルエピネフリン投与下にα受容体を遮断すると収縮期逆流が増大する機序としては,α受容体遮断により心外膜側よりの比較的太い冠動脈の拡張を生じ,心筋内冠動脈から心外膜側へ血液が移動した(transmural-steal)と考えられた.以上より,α受容体刺激は収縮期逆流を減少させることにより,slosh現象を抑制し,有効な心内膜側血流の維持に寄与し得ることが示された.           (平成5年10月26日採用)

1993.04.08

Dynamic Study of 201-Thallium Chloride and 99m-Technetium Pertechnetate Using Time Activity Curves per Volume of the Tissues in Patients with Thyroid Nodules *

甲状腺結節の良性と悪性の鑑別を核医学的手法を用いて行う目的で,集積機序の異なる201-Thallium chloride (以下201-Tl CI と略す)と99 m-Technetium pertechnetate (以下99m-Tcと略す)との時間・放射能曲線を解析した.著者は,乳頭癌では正常甲状腺,濾胞腺腫および腺腫様結節に比して201-Tl CIの集積が低く,しかもクリアランスが遅延するのに対して, 99m-Tcの集積動態は組織型による差が認められないことを既に報告している.本論文では,結節の厚さ,結節の前後に存在する正常甲状腺組織およびバックグランドの及ぼす影響を補正し,結節の単位体積当りの時間・放射能曲線を求め,組織型による差異を検討した.99m-Tcを用いた時間・放射能曲線では,いずれの結節性病変も99m-Tcの集積は低く,かつ時間の経過に伴う変化はほとんど認められず,良性と悪性の鑑別には有用でなかった.201-Tl CI の時間・放射能曲線を解析した結果, 1 ) 201-Tl CI の乳頭癌組織への集積は正常甲状腺,濾胞腺腫および腺腫様結節に比較して低いが,クリアランスが不良であるために腫瘍組織内に長く残存すること,2)濾胞腺腫組織では正常甲状腺組織と同程度の集積があり,正常甲状腺と同程度のクリアランスで結節内から排出されること,3)腺腫様結節の組織では正常甲状腺組織と同程度の集積があるが,クリアランスは比較的不良であることが確認され,良性と悪性の鑑別に有用であることが示された.(平成5年10月23日採用)

← newer entries older entries →