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Online edition:ISSN 2758-089X

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1993.04.07

Study for Bone Mineral Density in Males on the Complete Physical Checkup Measured by Dual-energy X-ray Absorptiometry : Special Reference to Clinical Study of Bone Loss *

加齢に伴う骨量減少は女性でしばしばみられるが,高齢者の男性にも生じる.今回,人間ドック受診の健常男性534例について橈骨,腰椎および大腿骨頸部の3部位の骨量を測定し,骨量減少の臨床的検討の横断調査を行った.また,69例に対しては経時的に骨量測定を施行し,縦断調査を行った.骨量は二重エネルギーX線吸収測定法を用いて測定し,指標として骨密度(bone mineral density, BMD)を算出した.なお,全例に腰椎単純X線撮影を施行した.横断調査の結果, BMDは橈骨では30歳代より徐々に低下した.腰椎では30~60歳代までほぼ一定であり,70歳代で低下する傾向が認められた.大腿骨頸部では40歳代にピークを示すが,60歳代まではほぼ一定であり,70歳代で低下を示した.骨量減少は腰椎を採用すれば高率に検出が可能であった.腰椎単純X線像の骨萎縮度1度は,腰椎の最大骨量の-2 S.D. (0.882 g/cm2)に相当した.生活様式に関しては,高体重,運動歴あり,および牛乳摂取は骨量を増加させる因子であり,適量の飲酒は骨量を減少させる因子とはならなかった.縦断調査から,橈骨のBMDは全年代で経時的に低下した.60歳代の腰椎では増加を示した.腰椎単純X線像上,骨硬化性変化を認めるものは経時的なBMDに増加がみられた.橈骨は測定の再現性あるいは骨硬化性変化等受けにくいことからも,経時的骨量変化の観察には最適の部位であった.骨量変化と初回測定時のBMD値または生活様式との間には一定の傾向は得られず,これらから将来の骨量減少を推測することは不可能であった.(平成5年10月23日採用)

1993.04.06

Red Cell Na+/Li+ Countertransport in Non-Insulin-Dependent Diabetes Mellitus (NIDDM) *

インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)において,本態性高血圧の遺伝素因として注目されている赤血球膜ナトリウム・リチウム対向輸送系(sodium-lithium countertransport :NaLiCT)を測定し,腎症発症との関連を検討した.対象はNIDDM 60名(男性32名,女性28名)のDM群と正常コントロール50名(男性38名,女性12名)のN群である.DM群は尿中アルブミン・クレアチニン比が15 mg/g Cr 以上の蛋白尿を伴う32名(男性18名,女性14名)を糖尿病性腎症蛋白尿陽性群,伴わない28名(男性14名,女性14名)を蛋白尿陰性群とした.赤血球を分離,洗浄後,塩化リチウム溶液内でincubateし,赤血球内にリチウムを流入させ,再度洗浄後,ナトリウム含有及び非含有の両mediumに浮遊させ, Li efflux の差をNaLiCTとした.NaLiCTは,DM群がN群に比し有意に亢進していた(0.32±0.12 vs 0.21±0.09 mmol/liter cells/hr P<0.001). DM群のうち蛋白尿陽性群と陰性群の比較では,陽性群が有意に高値であった(0.37±0.14 vs 0.28±0.08 P<0.01).しかしDM群のうち高血圧の有無による比較では有意差を認めなかった(0.32±0.11 vs 0.32±0.13).NaLiCTは,本邦のNIDDMの腎症発症予知の指標に成り得ると思われた. NIDDMにおけるNaLiCTの亢進には高血圧素因以外の多彩な因子の関与も示唆された.(平成5年10月23日採用)

1993.04.05

The Role of Schwann Cells and Macrophages in the Rat Sciatic Nerve after Axotomy *

前回,筆者は末梢神経の変性および再生過程におけるSchwann細胞のNGFR発現を免疫組織化学的に検索することにより, Waller変性におけるSchwann細胞の積極的役割を示唆した.今回,免疫組織化学的にラットmonocyte/macrophageに対する抗体,ED-1を用いて, Schwann細胞とmacrophageの役割を明らかにした.前回報告した通り,ラット坐骨神経に切断障害,または圧迫挫滅障害を加えると2日目からSchwann細胞は単独で既存の髄鞘の消化,吸収を開始した.5日目macrophageがED-1により免疫組織化学的に同定された.その後,ときほぐし標本で崩壊しつつある神経線維に付着または侵入したED-1陽性細胞が認められ,電顕的にもSchwann細胞が基底膜の外へ放出した髄鞘の崩壊産物を取り囲むmacrophageが観察された. macrophageはSchwann細胞が消化しきれなかった髄鞘の崩壊産物の吸収,除去に関与していた.軸索再生のWaller変性に及ぼす影響を検索するために切断障害と圧迫挫滅障害で出現した髄鞘の崩壊産物の量とmacrophageの数を比較した.圧迫挫滅障害では5日目から障害の近位部で軸索再生が観察されたが,同部では髄鞘の崩壊産物の量も免疫組織化学的に同定されるmacrophageの数も切断障害の近位部,遠位部,圧迫挫滅障害の遠位部にくらべて少なかった.再生軸索が存在すると,存在しない場合に比較してSchwann細胞の中で既存の髄鞘の消化,吸収能力が亢進することが示唆された.Waller変性が速やかに進行し,軸索再生を可能にするには再生軸索, Schwann細胞,macrophage間にサイトカインなどの因子を介して情報交換が行われていると推定された.(平成5年10月23日採用)

1993.04.04

The Usefulness of Serum Transforming Growth Factor fa Measurement in Chronic Liver Diseases *

各種肝疾患患者92例について血清TGF-β1値を測定し,検討を行った.正常人コントロールの血清TGF-β1値は0.90±0.31 ng/mlに対し急性肝炎1.92±0.66 ng/ml, 慢性肝炎1.57±0.65 ng/ml, 肝硬変1.98±1.76 ng/ml, 肝癌2.19±1.01 ng/ml と,いずれも有意に高値を示した.慢性肝炎について肝組織像別の検討を行った結果, CAH2A>CAH2B>CPHの順に高値であった.肝硬変では,非代償期の方が代償期よりやや高値を示した.肝癌では,2 ng/mlを越えるものが41.2%を占めていた.以上の結果から,血清TGF-β1値の測定は慢性肝疾患における肝硬変への進展や肝癌発生の指標となりうる可能性が示唆された.                             (平成5年10月22日採用)

1993.04.03

Immunoelectron Microscopic Studies on the Localization of Proinsulin and Insulin in the Pancreatic Islets of Patients with Non-Insulin-Dependent Diabetes Mellitus *

近年, proinsulinのRIA系が確立され糖尿病とくにインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)においても血中proinsulin値が高値を示す症例のあることが知られている.今回NIDDMの外科手術例3例の膵組織を用いて,イムノゴールド法を用いた免疫電顕によりproinsulin ,insulinの局在を検討し, NIDDMにおける高proinsulin血症の原因について考察した.3症例中2症例(Case 1 , 3)で血中proinsulin値は高値を示した. Case 1ではproinsulinの局在は幼若分泌顆粒のみでなく成熟分泌顆粒にも認められ, proinsulinからinsulinへの転換阻害が存在すると思われた. Case 3は,B細胞内におけるproinsulinの局在はほぼ正常であったが,一部に幼若分泌顆粒の増加をみとめ,血中に成熟分泌顆粒からだけでなく幼若分泌顆粒からも直接ホルモンが分泌される可能性も示唆されるものと考えられた. Case2は血中proinsulin値の増加はなく,免疫電顕ではproinsulin , insulinの局在には異常は認められなかったが染色性が低下していた.今回得られたproinsulinのB細胞内での合成,転換,分泌動態の異常所見は, NIDDMの病因を考える上で有用なものと考える.           (平成5年10月22日採用)

1993.04.02

Evaluation of an Inner Ear Anomaly in the Adult Golden Hamster *

数年前,無治療飼育群に,偶然に,発見された内耳奇形ゴールデンハムスターを継代飼育中である.これを使用し,成熟後の蝸牛に見られた所見を観察し,新知見を得,この奇形の原因が細胞の成熟障害に起因することを検証した.また,他に例を見ない,特異な水泳行動について検討した.中枢神経系に光顕では顕著な異常を認めないことから,前庭耳石器の異常であることが,強く示唆された.          (平成5年10月18日採用)

1993.04.01

A Study of Changes in SFEMG and Histochemistry During Disuse and the Recovery Period *

この研究め目的は,成熟ラットの膝関節を屈曲位に固定しハムストリングスに萎縮を生じさせて,廃用過程(1, 2, 4週)の経時的変化について単一筋線維筋電図(SFEMG)と組織化学的に検討することである.さらに4週間後に固定を除去し,自然回復過程(1, 2, 4, 8週)の経時的変化についても同様に検討した.対照群と比較して, SFEMGは,廃用の4週間後amplitudeは平均21%まで小さくなり, durationは152%まで延長し, muscle fiber conduction velocityは39%まで遅くなった.筋線維直径は76%まで減少した.回復の8週間後amplitudeは平均44%, durationは113%まで, muscle fiber conduction velocityは66%まで回復した.筋線維直径は94%まで回復した.筋線維Typeの構成比率の変化は,廃用および回復過程ともにType IIa とIIbに認めた.これらの結果から,SFEMGと組織化学の経時的変化は一致せず, SFEMGの回復が緩徐であることが示唆された.                          (平成5年10月14日採用)

1993.03.12

Angioblastoma (Nakagawa) *

8歳,男児の背部に生じた血管芽細胞腫(中川)を報告した.3年前より背部に軽度の圧痛を伴った紅斑が出現し,徐々に拡大するため当科を受診した.初診時,左肩甲骨下縁に手掌大の暗赤色浸潤性局面があり,局面の一部には丘疹を伴っていた.局所の発汗亢進は明らかではなかった.組織像では真皮上層から深層にかけて,惰円形の核を持った血管内皮細胞類似の細胞が巣状に増殖し,小管腔を多数形成していた.管腔内には赤血球を認め,腫瘍細胞には異型性や核分裂像は見られなかった.以上より本症例を血管芽細胞腫と診断し,無治療にて経過観察を行った.本症の予後と治療適応につき検討を加えた.                      (平成5年10月2日採用)

1993.03.11

A Case Report of Congenital Contractural Arachnodactyly *

Congenital contractural arachnodactylyの1例を経験した.症例は12歳,男性で生下時より存在する多発性関節拘縮,蜘蛛状指,細長い四肢,軽度の後彎および耳介変形を認めた.眼病変や心血管系の異常はなく,遺伝形式は不明であった.手術は右小指の屈曲拘縮に対してのみ施行,浅指屈筋腱の部分切開で拘縮は解除された.術後経過は良好である.                           (平成5年7月2日採用)

1993.03.10

A Case of Central Core Disease *

Central core病の1例を報告した.症例は15歳,男子で家族歴はない.乳児期, floppy infantで,頸定が1歳1ヵ月,処女歩行が2歳1ヵ月と運動発達遅滞を認めたが,知能面での遅れはなかった.徐々に階段の昇降が可能となり,筋力は改善傾向にあった.15歳の診察時,独立歩行は可能であったが,走ることはできなかった.骨格筋CTでは傍脊柱筋,大臀筋,中臀筋,小臀筋,大腿直筋以外の大腿四頭筋が低吸収域を示し,躯幹の支持筋が高度に侵されていた.筋電図では正常範囲のNMU (neuromuscular unit), short duration, low voltageのNMU, polyphasic, long durationのNMUが混在していた.筋生検ではHE染色のほかに, NADH, Gomori trichrome, cytochrome c oxidase, PAS染色で筋線維の中央部に染色性の低下したcoreを認め, ATPase染色ではほとんどすべての筋線維が1型筋であった.電顕的にはcore内でZ帯の乱れとミトコンドリア,グリコーゲンの減少がみられた.本疾患の発生機序としては筋線維の支配神経の異常,および筋小胞体,横行小管系の異常が示唆された.      (平成5年9月28日採用)

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