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Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1993.03.09

A Case of Acute Pancreatitis with a Pseudo-pancreatitc Cyst in a Patient Undergoing Long-term Hemodialysis *

長期透析中の慢性腎不全患者に合併した急性膵炎の1例を報告する.症例は39歳,女性.透析歴18年の透析患者が誘因なく腹痛,嘔吐を主訴に搬送された.臨床症状,血清膵酵素の上昇(アミラーゼ2450 IU/1, エラスターゼ1 , 3412 1U/I),及び膵腫大(腹部超音波検査, CT)より急性膵炎と診断した.発症1週間で約15×10 cm の膵仮性嚢胞を形成した.未移植の慢性腎不全患者の急性膵炎の報告は本邦では少ないが,文献的には発生率2.3%で,健常者に比して高いとされている.その原因として二次性副甲状腺機能亢進症や高カルシウム血症,あるいは高脂血症,動脈硬化などの関与が示唆されている.本症例は,発症前約2年間にわたり,Ca製剤,活性型ビタミンD製剤が処方されており,それが高カルシウム血症の原因となっていたと思われる.             (平成5年9月6日採用)

1993.03.08

A Case of Pneumatosis Cystoides Coli Observed in a Patient Chronically Exposed to Trichloroethylene with Emphasis on Trichloroethylene and its Metabolites in Gaseous Cysts, Blood, Urine and Bile *

腸管嚢腫様気腫症は,腸管壁内に多発性にガスの貯留した気腫が生じる比較的稀な疾患である.近年,三塩化エチレン慢性暴露が大腸嚢腫様気腫の発生に関与するという報告がある.著者らはその1例を経験し気腫内,血液,尿,胆汁中の三塩化エチレン及びその代謝産物についてマススペクトル分析を行った.症例は23歳男性,5年間の三塩化エチレン暴露歴のある旋盤工.3ヵ月前より便秘傾向となり下剤服用するも改善せず,注腸X線検査にて大腸嚢腫様気腫を認め入院となった.大腸内視鏡所見は直腸,S状結腸,下行結腸と上行結腸の一部に3~25 mm, 半球状で軟らかい隆起を多数認め,粘膜面に発赤,びらんを認めた.気腫と判断し,気腫内ガスを内視鏡下に採取しマススペクトル分析を行うと共に,血液,尿,胆汁の分析も行った.治療は50%酸素をベンチュリーマスクにて5l/分,1日5時間10日間吸入し,気腫は消失した.分析結果は,気腫内には1.51~3.16 ng/ml の三塩化エチレンを,尿中,血中,胆汁中よりそれぞれ最高12.2, 7.0, 1.9μg/mlのトリクロロ酢酸を検出した.(平成5年8月18日採用)

1993.03.07

A Report of Two Cases of Esophageal Intramural Pseudodiverticulosis *

食堂壁内偽憩室症Esophageal Intramural Pseudodiverticulosis (EIPD)の2例を経験した.症例1は46歳,男性で,主訴は食道のつかえ感.食道X線検査で中・下部食道に約3mm長の多数の憩室様突出像を認め,食道内視鏡検査で小さな多発性偽膜様変化と陥凹を認めた.生検組織からCandidia albicansを証明し,食道カンジダ症を伴うEIPDと診断した.糖尿病,高血圧症の合併に対する食事療法と,カルシウム拮抗剤,抗真菌剤の投与を行った.治療後,食道カンジダ症の治癒と偽憩室の開口部を確認した.症例2は53歳,女性で,進行性全身性硬化症(Progressive Systemic Sclerosis)のステロイド治療中,無症状で上部食道に少数のバリウムの突出像と偽憩室の開口部が発見された.本邦では自験例を含めて17例の報告がある.文献的にEIPDの発生には食道カンジダ症が密に関連していると思われた.                    (平成5年8月25日採用)

1993.03.06

Cronkhite-Canada Syndrome : A Case Report *

症例は54歳,男性.下痢,体重減少,味覚異常,脱毛,皮膚色素沈着,低蛋白血症及び消化管ポリポーシスを認め, Cronkhite-Canada症候群と診断した.近年,本症例の治療法としてステロイド投与が有効であるとされ,多く使用されているが確立されたものではない.われわれも当症例にたいし入院直後より,中心静脈栄養,プレドニン投与を開始したが,著明な改善は認められなかった.            (平成5年8月24日採用)

1993.03.05

Muscle Evoked Potentials of Trapezius Muscle Induced by Stimulation of the Ulnar Nerve and Median Nerve in Normal Man *

尺骨神経,正中神経の刺激による僧帽筋の誘発筋電図を,正常人14名について肘関節のレベルでそれぞれの神経を0.1 msec. 超最大刺激で刺激し,僧帽筋の電位は上部線維から表面電極により導出,50回連続記録を行った.誘発筋電図は24.4~33.9 msec の潜時を持つ早期に出現する波と56.4~73.6 msec の潜時を持つ遅く現れる波が区別でき,潜時はいずれも僅かな変動を示した.早期に出現する誘発筋電図を認めたものは尺骨神経刺激で14名中11名,全体を通じての出現率は0.48,正中神経刺激では7名, 0.17,遅く出現する波は尺骨神経刺激で9名,出現率は0.39,正中神経刺激で2名,出現率は0.079である.誘発筋電図の本態としては多シナプス反射,脊髄・延髄・脊髄反射等が考えられる.(平成5年9月22日採用)

1993.03.04

Influences of Joint Immobilization on Ligaments at the Early Stage ―A Study of Changes in Biomechanical Properties and Cross Sectional Areas― *

大腿骨一前十字靭帯一脛骨複合体の生体力学的特徴と,前十字靭帯の横断面積に対する関節固定の早期の影響を,ラットを用いて調査した.ラットの片側膝関節を1,2,4,6週間固定して得られた標本を,非固定側を対照群として評価,比較した.1週間の固定で,標本はすでにlinear load (直線負荷)とmaximum load (最大負荷)において,有意な減少を示し(72%, 77%), 6週目まで徐々に減少した.しかしながら,剛性は有意な変化を示さなかった.標本の破断形態は,ほとんど靭帯実質部の損傷であった.また,固定側の靭帯の横断面積は,非固定側に比べて1週目から有意に減少していた(87%).これらの結果より,関節固定は靭帯自体の生体力学的特性および横断面積に早期から影響を及ぼすことが示唆された.                    (平成5年9月30日採用)

1993.03.03

A Histopathological Study of Aberrant Peripheral Nerve Bundles in the Brain Stem *

Aberrant peripheral nerve bundle (APNB)は,中枢神経系における高度な病変,たとえば,梗塞,出血,また外傷などの後に反応性に出現してくるものであり,脊髄におけるものはこれまでに多数の報告があり,末梢性髄鞘を伴った末梢神経線維からなるとされている.しかし,脳幹部におけるものについては詳細な報告はほとんどない. 今回我々は多数の剖検脳より脳幹部に高度な病変をもつもの連続80症例を対象にAPNBの有無を検索した結果,4症例にAPNBを認めた. これら4症例を対象にさらに免疫組織化学的に検討した結果,脳幹部におけるAPNBも脊髄のそれと類似の性状のものではないかと考えられたが,その起源は,血管壁の自律神経である可能性が考えられた.    (平成5年9月30日採用)

1993.03.02

Microglial Reactions to Demyelinating Lesions Induced by Ethidium Bromide *

マウス脊髄後索内に臭化エチジウム(EBr)を注入して作成した脱髄病巣におけるミクログリア/マクロファージ系細胞の動態を,クラスⅡ MHC (la)抗原発現を中心として免疫組織化学的ならびに免疫電顕的に検索した.Mac-1およびF4/80免疫組織化学染色では,3日後円形の陽性細胞が主に障害周囲部に出現し,6~8日後病巣部で増加し,8~10日後ピークに達し,その後徐々に減少した.その形態は,病巣部ではplumpなマクロファージ様を,正常部では長い分岐した突起を有するramifiedミクログリア様を示した.Ⅰa免疫組織化学染色でも同様の経過をたどり,3日後円形および紡錘形の陽性細胞が障害周囲部に出現し,その後病巣部で増加し,10日以降減少した.また,2週後より障害周囲部に長い分岐した突起を有するramifiedミクログリア様のⅠa陽性細胞が出現した.免疫電顕では,Ⅰa陽性細胞の細胞体内にmyelin debrisが観察され,貪食能が示唆された.ミクロクリア/マクロファージの変化およびla陽性細胞の出現は,髄鞘崩壊以前より見られ,長期にわたり存続した.病巣部で見られたマクロファージ様のMac-1陽性細胞は,単球由来細胞と既存のミクログリア由来細胞の両方が存在していると考えられた.また, Ⅰa陽性細胞は,一部のMac-1陽性細胞が活性化されⅠa抗原を発現していると考えられた.EBr注入による脱髄疾患モデルは,非免疫性神経疾患におけるⅠa発現を検討するモデルとしても有用であると考えられた.       (平成5年8月28日採用)

1993.03.01

Expression of Low Affinity Nerve Growth Factor Receptors in the Rat Sciatic Nerve after Axotomy *

末梢神経障害の際,Schwann細胞が低親和性神経成長因子受容体(nerve growth factor receptor : NGFR)を発現する契機を検索するために,ラットの坐骨神経に切断障害および圧迫挫滅障害を加え,その末梢部で凍結標本を作成し,免疫組織化学的に低親和性NGFRとリン酸化ニューロフィラメント(phosphorylated neurofilament : P-NF),macrophageを同定し,エポン包埋ブロックの光顕ならびに電顕的観察と比較した.切断障害では,2日目免疫組織化学的にはコントロールと同様, NGFRは染色されず,P-NFが軸索に一致して染色された.電顕的には軸索内細胞骨格が崩壊し,一部の髄鞘の層板解離が始まった.3日目NGFRが一部で陽性となり, P-NFで染色されない軸索が認められた.以後, NGFRは次第に染色性を増し, P-NFの染色性は低下した.電顕的にはSchwann細胞の中で髄鞘の崩壊が進行し,吸収消化されていった. macrophageは5日目に初めて免疫組織化学的に同定された.圧迫挫滅障害では,7日目免疫組織化学的にNGFRの染色性が低下し, P-NFの染色性が上昇した.同日,電顕的に軸索のsproutingやSchwann細胞が再生軸索を取り巻き,髄鞘再生を開始しているのが認められた.低親和性NGFR発現の契機は,従来, Schwann細胞が軸索との接触を失うこととされていたが,今回の結果では低親和性NGFRはSchwann細胞の崩壊軸索の吸収,髄鞘の消化開始を契機として発現され,髄鞘再生開始で消失した.低親和性NGFRは, Schwann細胞から軸索への神経成長因子の受け渡しに関与していることが示唆され, Waller変性におけるSchwann細胞の積極的役割が注目された.(平成5年8月16日採用)

1993.02.10

A Case of Thoracoabdominal Aortic Aneurysm Complicated with Disseminated Intravascular Coagulation *

患者は陳旧性心筋梗塞・心房細動にて加療されていた75歳の男性.5年前Computed Tomography (CT)にて径4cmの胸腹部大動脈瘤を認めたが,保存的治療が行われていた.2年前より嚥下困難,食後の下腹部痛が出現し,今回,食後の激しい下腹部痛を主訴に入院した.胸腹部大動脈瘤の切迫破裂に播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発していた.CT上最大瘤径約8cmでMRI (Magnetic Resonance Imaging)で瘤内に著明な血流遅延信号が認められた.心合併症のため手術は断念し,安静と降圧療法にて下腹部痛は消失し,ヘパリン投与にてDICは改善をみた.大動脈瘤が上行大動脈より腸骨動脈分岐部までの全域で広範囲にわたること, DICを合併することは稀であり報告した.(平成5年5月20日採用)

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