h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2020.12.02

Combination of shear-wave elastography and liver fibrosis markers predicts severe fibrosis in patients with non-alcoholic steatohepatitis

非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)の中から予後の悪い線維化が進展した非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis:NASH)を非侵襲的診断法にて拾い上げることが重要である.今回,バイオマーカーやshear wave elastography(以下SWE)を組み合わせた非侵襲的診断における肝線維化進展症例の診断能の向上について検討を行った.肝生検およびSWE を施行し,肝線維化マーカーを測定したNAFLD 患者140名を対象とし,SWE 値と肝線維化マーカーの測定を行い線維化進展例(stage3以上)の診断の拾い上げについて検討した.各種線維化マーカーはstage3-4の線維化進展例で有意に上昇を認め,SWE においてはstage2の段階から上昇し,他の線維化マーカーより早い段階からNASH の線維化の診断ができた.SWE,Ⅳ型コラーゲン7S,WFA+M2BP,P-Ⅲ-P,ヒアルロン酸,FIB4 index におけるstage3以上のAUC はそれぞれ0.86,0.83,0.79,0.75,0.75,0.77であった.さらにSWE と線維化マーカーを組み合わせたところ,AUC はそれぞれ0.92,0.88,0.86,0.88,0.88で診断能の上昇を認めた.特にSWE とⅣ型コラーゲン7S の診断能が最も優れていた.NASH におけるSWE は簡便に線維化進展の診断が可能であり,バイオマーカーを組み合わせることで肝線維化診断能が上昇した.以上より線維化の軽度なNASH 症例や非アルコール性脂肪肝(Non-alcoholic fatty liver:NAFL)を識別し,肝生検を減少させる可能性があり,NAFLD の予後の改善に繋がると思われた.

2020.11.20

Characteristics and prognosis of adolescent and young adult (AYA) breast cancers at Kawasaki Medical School Hospital, Okayama

Adolescent and young adults(AYA)世代の癌は一般成人の癌に比べ,頻度は低いものの妊孕性の維持など複雑な問題を抱えている.AYA 世代の後半30から39歳では,乳癌の発生頻度が最も高い.今回我々は,AYA 世代の乳癌患者を後方視的に調査し,予後因子を解析した. 対象は2010年1月~2018年12月に川崎医科大学附属病院乳腺甲状腺外科で治療を行った40歳未満のAYA 世代乳癌患者123名(AYA 群).また同期間に治療を受けた40歳以上の非若年乳癌患者1,541名(非若年群)と予後の比較を行った.無病生存率(DFS),全生存率(OS)の予後因子は,単変量解析及び多変量解析で分析した. 両側性乳癌,非浸潤癌,データ不足例を除外した1,322名(AYA 群が99名,非若年群が1,223名)の乳癌患者が予後解析の対象となった.5年DFS はAYA 群で81.5%,非若年群は91.3%であり,AYA 群で有意に不良であった(P = 0.0007).臨床病期を揃えると,病期Ⅱのみで両群間に有意差が認められた(P = 0.0319).5年OS はAYA 群,非若年群ともに96.7% であり,差は認められなかった.AYA 群のDFS 予測因子は,単変量解析では,臨床病期Ⅱ期以上,腫瘍浸潤径2cm 超,血管侵襲陽性が有意の予後不良因子であった.多変量解析では,臨床病期Ⅱ期以上,血管侵襲陽性が独立した予後不良因子であった.OS では,単変量解析では血管侵襲因子のみがOS の有意の予測因子として抽出された.多変量解析では,血管侵襲因子とトリプルネガティブサブタイプが,独立した予後不良因子であった.妊娠関連乳癌は,DFS, OS ともに有意の予後因子とならなかった. AYA 群は非若年群に比べて5年DFS が有意に悪かった.AYA 群の予後因子として,血管侵襲因子が重要なことが示唆された.

2020.09.01

Diagnostic yield of transabdominal ultrasonography of pancreatic solid pseudopapillary neoplasm: a case report

症例は10歳代,女性.主訴は左上腹部痛.部活中に腹部を強打し,左上腹部痛が出現した.食物残渣様嘔吐も認め,当院に救急搬送された.当院搬送時,左上腹部に疼痛及び圧痛を認めたが,反跳痛はなかった.当院搬送時の血液検査は白血球8,950 /μl,アミラーゼ204 U/l と高値を示していた.体外式腹部超音波検査では膵体部に76.1×68.1 mm 大の境界明瞭な被膜を伴う類円形腫瘤を認めた.周囲臓器への浸潤所見は認めず,腫瘍内部は不整で一部無エコー領域を伴い,ペルフルブタン(ソナゾイド®)による造影超音波検査では腫瘍内部の血流は乏しい所見であった.超音波内視鏡検査所見も体外式腹部超音波検査と同様であった.以上より,腫瘍内出血を伴ったsolid pseudopapillary neoplasm(SPN)が最も考えられた.第10病日に膵体尾部切除術を施行し,術後経過は良好である.腹部打撲を契機に偶然発見され,体外式腹部超音波検査が質的診断に有用であった膵SPN を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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