h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2020.12.02

The angiogenesis and functional recovery effect after spinal cord injury by newly synthesized nucleotide analog, COA-Cl

2-chloro-carbocyclic oxetanocin A(COA-Cl)はアデノシン類似体合成化合物でありin vitro にて血管新生作用が報告されており,またラットの脳卒中モデルに対する投与で神経保護,血管新生および機能回復効果が示されている.本研究ではこれらの効果が脊髄損傷モデルにおいても発揮されるか否かを評価した.荷重装置によりT9レベルの脊髄損傷モデルラットを作製し,損傷直後からCOA-Cl を5日間腹腔内投与したCOA-Cl 群と,同量の生理食塩水を投与したvehicle 群に分けた.脊髄損傷14日後に運動機能をBasso-Beattie-Bresnahan Locomotor Rating Scale スコア(BBB スコア)と傾斜台試験にて,血管新生をラミニンの免疫染色により後索の血管数と血管面積を測定することで評価した.運動機能はBBB スコアと傾斜台試験ともにCOA-Cl 群でvehicle 群に比べて有意に改善した.血管新生はCOA-Cl 群で血管数および血管面積ともに有意に増加した.これらの結果から,COA-Cl の脊髄損傷後急性期における投与は運動機能改善および血管新生をもたらし,脊髄損傷急性期の新規治療薬としての可能性が示された.

2020.12.02

Combination of shear-wave elastography and liver fibrosis markers predicts severe fibrosis in patients with non-alcoholic steatohepatitis

非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)の中から予後の悪い線維化が進展した非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis:NASH)を非侵襲的診断法にて拾い上げることが重要である.今回,バイオマーカーやshear wave elastography(以下SWE)を組み合わせた非侵襲的診断における肝線維化進展症例の診断能の向上について検討を行った.肝生検およびSWE を施行し,肝線維化マーカーを測定したNAFLD 患者140名を対象とし,SWE 値と肝線維化マーカーの測定を行い線維化進展例(stage3以上)の診断の拾い上げについて検討した.各種線維化マーカーはstage3-4の線維化進展例で有意に上昇を認め,SWE においてはstage2の段階から上昇し,他の線維化マーカーより早い段階からNASH の線維化の診断ができた.SWE,Ⅳ型コラーゲン7S,WFA+M2BP,P-Ⅲ-P,ヒアルロン酸,FIB4 index におけるstage3以上のAUC はそれぞれ0.86,0.83,0.79,0.75,0.75,0.77であった.さらにSWE と線維化マーカーを組み合わせたところ,AUC はそれぞれ0.92,0.88,0.86,0.88,0.88で診断能の上昇を認めた.特にSWE とⅣ型コラーゲン7S の診断能が最も優れていた.NASH におけるSWE は簡便に線維化進展の診断が可能であり,バイオマーカーを組み合わせることで肝線維化診断能が上昇した.以上より線維化の軽度なNASH 症例や非アルコール性脂肪肝(Non-alcoholic fatty liver:NAFL)を識別し,肝生検を減少させる可能性があり,NAFLD の予後の改善に繋がると思われた.

2020.11.20

Characteristics and prognosis of adolescent and young adult (AYA) breast cancers at Kawasaki Medical School Hospital, Okayama

Adolescent and young adults(AYA)世代の癌は一般成人の癌に比べ,頻度は低いものの妊孕性の維持など複雑な問題を抱えている.AYA 世代の後半30から39歳では,乳癌の発生頻度が最も高い.今回我々は,AYA 世代の乳癌患者を後方視的に調査し,予後因子を解析した. 対象は2010年1月~2018年12月に川崎医科大学附属病院乳腺甲状腺外科で治療を行った40歳未満のAYA 世代乳癌患者123名(AYA 群).また同期間に治療を受けた40歳以上の非若年乳癌患者1,541名(非若年群)と予後の比較を行った.無病生存率(DFS),全生存率(OS)の予後因子は,単変量解析及び多変量解析で分析した. 両側性乳癌,非浸潤癌,データ不足例を除外した1,322名(AYA 群が99名,非若年群が1,223名)の乳癌患者が予後解析の対象となった.5年DFS はAYA 群で81.5%,非若年群は91.3%であり,AYA 群で有意に不良であった(P = 0.0007).臨床病期を揃えると,病期Ⅱのみで両群間に有意差が認められた(P = 0.0319).5年OS はAYA 群,非若年群ともに96.7% であり,差は認められなかった.AYA 群のDFS 予測因子は,単変量解析では,臨床病期Ⅱ期以上,腫瘍浸潤径2cm 超,血管侵襲陽性が有意の予後不良因子であった.多変量解析では,臨床病期Ⅱ期以上,血管侵襲陽性が独立した予後不良因子であった.OS では,単変量解析では血管侵襲因子のみがOS の有意の予測因子として抽出された.多変量解析では,血管侵襲因子とトリプルネガティブサブタイプが,独立した予後不良因子であった.妊娠関連乳癌は,DFS, OS ともに有意の予後因子とならなかった. AYA 群は非若年群に比べて5年DFS が有意に悪かった.AYA 群の予後因子として,血管侵襲因子が重要なことが示唆された.

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