h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2020.09.01

Diagnostic yield of transabdominal ultrasonography of pancreatic solid pseudopapillary neoplasm: a case report

症例は10歳代,女性.主訴は左上腹部痛.部活中に腹部を強打し,左上腹部痛が出現した.食物残渣様嘔吐も認め,当院に救急搬送された.当院搬送時,左上腹部に疼痛及び圧痛を認めたが,反跳痛はなかった.当院搬送時の血液検査は白血球8,950 /μl,アミラーゼ204 U/l と高値を示していた.体外式腹部超音波検査では膵体部に76.1×68.1 mm 大の境界明瞭な被膜を伴う類円形腫瘤を認めた.周囲臓器への浸潤所見は認めず,腫瘍内部は不整で一部無エコー領域を伴い,ペルフルブタン(ソナゾイド®)による造影超音波検査では腫瘍内部の血流は乏しい所見であった.超音波内視鏡検査所見も体外式腹部超音波検査と同様であった.以上より,腫瘍内出血を伴ったsolid pseudopapillary neoplasm(SPN)が最も考えられた.第10病日に膵体尾部切除術を施行し,術後経過は良好である.腹部打撲を契機に偶然発見され,体外式腹部超音波検査が質的診断に有用であった膵SPN を経験したので文献的考察を加えて報告する.

2020.05.22

A case of meningitis-retention sydrome

無菌性髄膜炎に尿閉や排尿障害が合併することがあり,髄膜炎尿閉症候群(meningitis-retention syndrome:MRS)と呼ばれる.我々は,尿閉を合併した無菌性髄膜炎の1例を経験した.患者は28歳男性.38℃台の発熱,頭痛の後,排尿困難が出現した.抗菌薬レボフロキサシン 500 mg/ 日を投与されたが解熱せず,当院を紹介受診した.受診した時点では頭痛は消失していた.血液検査,尿検査,頭部および胸腹部CT 検査では,発熱の原因となる異常所見が見られず,精査目的で入院した.入院後も排尿困難が持続し,尿閉となった.無菌性髄膜炎に尿閉が合併した症例報告があることから,髄液検査を施行し,単核球優位の細胞増加を認め,髄膜炎と診断した.単純ヘルペスウイルス性髄膜炎の可能性を考慮し,抗ウイルス薬アシクロビル 750 mg/ 日の投与を開始し,解熱を認めた.髄液単純ヘルペスウイルスのPCR 検査が陰性と判明したため,アシクロビルの投与を中止した.髄液の細菌培養検査で細菌は検出されなかった.髄液再検にて,細胞数の改善を認めた.髄膜炎の改善に伴って,徐々に自尿が増加し,最終的には完全に自力で排尿が可能な状態に改善した.無菌性髄膜炎に尿閉や排尿障害が合併する場合があることを認識する必要がある.原因不明の尿閉をみた場合は,MRS も念頭に置くべきと考える.

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