h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2020.12.28

Appendiceal mucinous neoplasm: a review of eleven surgical cases in our institution

虫垂原発粘液産生腫瘍はWHO 分類に基づき低異型度虫垂粘液性腫瘍(Low-grade appendiceal mucinous neoplasm,以下LAMN)と粘液癌に分類される.当科にて2010年4月〜2018年11月までに外科的切除された11症例を集積検討した. 11症例の内訳は年齢が27~88歳(中央値61歳)で男女比は男7人,女4人であった.主訴は腹痛が6人で無症状が5人であった.病理診断での腫瘍最大径は3〜12 cm(平均5.9 cm)であった.術前よりLAMN と疑われた症例は7例で,虫垂腺癌の術前診断に至った症例は1例であった.虫垂腫瘍との術前診断に至らなかった3症例のうち,虫垂炎の術前診断で虫垂切除術施行後に病理診断で判明したものが2例,十二指腸潰瘍穿孔で緊急手術を行った際に合併切除した虫垂組織より偶然発見されたものが1例であった.術式は虫垂切除のみが3例,回盲部切除が5例,右半結腸切除が3例であった.予定手術は6例で緊急手術が5例であった.最終病理診断(大腸癌取り扱い規約第9版に準拠)はLAMN が7例で虫垂腺癌が2例,粘液嚢胞が2例であった.術後入院期間は2〜47日(中央値12日)で,虫垂腫瘍切除に関連する術後合併症はなかった.LAMN は比較的稀な疾患であるが,腫瘍破裂により粘液が漏出することで腹膜偽粘液腫をきたす可能性がある.そのため,再発を引き起こさないためには①画像検査などでの術前診断(術中診断を含む),②術中に粘液漏出させない術式選択,③術後病理診断で判明した場合の追加治療の適否,についてその都度慎重に判断する必要がある. LAMN は低悪性度腫瘍にも関わらず再発の危険性があるため,画像検査で疑った場合は再発防止を念頭においた術前評価と治療方針の策定が必要であり,切除後の厳重フォローも重要である.

2020.12.02

The angiogenesis and functional recovery effect after spinal cord injury by newly synthesized nucleotide analog, COA-Cl

2-chloro-carbocyclic oxetanocin A(COA-Cl)はアデノシン類似体合成化合物でありin vitro にて血管新生作用が報告されており,またラットの脳卒中モデルに対する投与で神経保護,血管新生および機能回復効果が示されている.本研究ではこれらの効果が脊髄損傷モデルにおいても発揮されるか否かを評価した.荷重装置によりT9レベルの脊髄損傷モデルラットを作製し,損傷直後からCOA-Cl を5日間腹腔内投与したCOA-Cl 群と,同量の生理食塩水を投与したvehicle 群に分けた.脊髄損傷14日後に運動機能をBasso-Beattie-Bresnahan Locomotor Rating Scale スコア(BBB スコア)と傾斜台試験にて,血管新生をラミニンの免疫染色により後索の血管数と血管面積を測定することで評価した.運動機能はBBB スコアと傾斜台試験ともにCOA-Cl 群でvehicle 群に比べて有意に改善した.血管新生はCOA-Cl 群で血管数および血管面積ともに有意に増加した.これらの結果から,COA-Cl の脊髄損傷後急性期における投与は運動機能改善および血管新生をもたらし,脊髄損傷急性期の新規治療薬としての可能性が示された.

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