h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1983.04.07

The Ultrasound Therapy of Vascular Disorders of the Brain

かつて強すぎる超音波を使用して,脳の神経細胞の変性壊死を招いたため,その後,頭部の超音波治療は禁忌とされていた.しかしわれわれの動物実験によって,周波数0.8MHz,効率1.25W/㎠の超音波の移動法による, 1日1回20分間,連続10日間の照射では,ウサギの脳細胞には損傷を認めなかった. さらに100名の脳梗塞患者を無作為に50名ずつ2群に分け, 1群は内科的な薬物療法のみを行った群,他の群は頭部超音波治療のみを行った群とした.超音波治療群では, 1~3日間の加療で50名中20名に治療効果があり,薬物治療群では50名中6名しか効果が認められず,両群で統計学的に有意な差があった. (x2=8.7838, p<0.05).治療開始後20日目では,超音波治療群では18名が著効に対し薬物治療群では4名が著効であり,両者で統計学的に有意の差がみられた. (x2=9.8485, p<0.05). 今回の研究から,超音波照射は脳梗塞の有効な治療法である事が明らかになった.

1983.04.06

Method of the Histological Search for Cancer Lesions within the Punch-Biopsied Samples

病理へ提出された生検材料の検索方法,特に薄切方法に関しての報告は少ない。我々は胃鉗子生検材料を用いて,通常の薄切方法ではどれほどの見落とし例,つまりfalse negative(偽陰性)があるかを調べた.次にfalse negativeを最小限にとどめるための理想的な薄切方法を理論的に考察し,理論と実際が一致するか否かを検討した. 臨床的に癌が疑われている場合,生検組織の4分割相当の部分から切片を2~3枚ずつ作るようにし,その間の組織片は捨て去る.多数の組織片が同時に包哩されている場合には3/4分割目相当の切片を一番大きな組織片の厚さの半分以下の深さとするのが良いと考えた.直径4mmの生検材料中の1mmの癌病巣は,この方法でほぼ100%検出することが,理論的に可能である.

1983.04.05

Experimental Mouse Plasmacytoma and Murine Leukemia Virus

アジュバントの腹腔内投与でBALB/c nu/+マウスに誘導される形質細胞腫の発生に,Grossマウス白血病ウイルス(G-MLV)が影響を及ほすか否かを検討した.形質細胞腫はアジュバントを投与したAおよびB群に発生したが,対照として生理食塩水を用いたC群には認められなかった. G-MVLを接種したA群と,接種しなかったB群での発生率には有意差はなく, アジュバント腹腔内投与で誘発される形質細胞腫の発生にはG-MLVは影響しないものと考えられた.

1983.04.04

Lymphocyte Population in Hypersensitivity Pneumonitis

モルモットを用いた過敏性肺臓炎の実験モデルで,急性期から慢性期に至る経過に好中球が重要な役割を果たしており,その早期消退,肉芽腫形成にリンパ球がなんらかの関与をなしている可能性が考えられた.今回,このことを検討する一環として,過敏性肺臓炎各期における出現リンパ球の変動を肺から抽出したリンパ球のEおよびEACロゼット形成能を調べることにより T, B細胞の面から検索することとした. 結果は,いずれの時期でも正常肺に比べて,リンパ球は増加しており T,B-cellの両方の増加によるものだった.しかし B-cellの増加は,いずれの時期でも一定で,各時期での有意差を認めなかった. T-cellの増加は,1~2週間でピークに達し,以後減少していった.そこでB-cell系統の刺激は曝露時すでに完成されており,最終曝露では,形成されていた抗体と抗原とのimmune complex形成だけがひきおこされたと考えられ, T-cell系統への刺激は最終曝露後もさらに増強されていると考えられた. 肺内のTおよびB-cellの動態により,過敏性肺臓炎の発生には,体液性および細胞性免疫の連続的あるいは同時発現や,むしろ非独立的なT-cellとB-cellの相互作用が考えられ,今後, TおよびB-cellの作用,特にT-cellのsubsetについて検索していく必要性が考えられた.

1983.04.03

Reticulin Fibers in Hypersensitivity Pneumonitis

過敏性肺臓炎は,いったん形成された肉芽腫が時間的経過とともに線維化や瘢痕を残さずに消失していく場合が多い.線維化をきたさずに吸収される理由を明らかにするためには,胸隔炎形成ならびに肉芽腫形成からその吸収にかけての細網線維,膠原線維の形成,消失の動態をより詳しく観察する必要がある. 本報告は,モルモットでの過敏性肺臓炎で,細網,厚原両線維がいかなる変動を示しているかを調べたものである.膠原線維の形成は,いずれの時期にもみられなかった.急性期,胞隔炎形成期には細綱線維はいったん増加するが,膠原線維化を起こさず,次期の肉芽腫内では,むしろその破壊,消失がさかんであることがうかがえた.一方,細網および膠原線椎の消退を出現細胞とのからみあいの上から観察すると,好中球,マクロファージの浸潤が主体をなす炎症の時期では,細網線維の増加がみられるが,過敏性肺臓炎では,この期間が時間的に短く,軽微であり,細網線維の増生も軽度であることがわかった.また,細網線維の消失に先だってリンパ球,類上皮細胞の増加が認められた.本研究の結果から膠原線維化に至らずに細網線維が消退していく過程には,好中球,マクロファージの早期消失が重要な因子であると考えられた.ここには,リンパ球もなんらかの役割を果たしている可能性が推測される.

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