h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1983.04.02

The Alteration of Physicochemical Properties of Erythrocyte Membrane in Patients with Multiple Sclerosis – The Fragility of Erythrocyte Membrane for Saponin-

多発性硬化症患者8例(急性期4例,慢性期4例)およびその他若干の神経疾患においてサポニンテストを行い次の結果を得た. 1.急性期4例ではいずれもTO.5endの著明な短縮を認め,慢性期4例ではほほ正常パターンを示した.急性期4例中3例で症状寛解期に再検し,正常パターンとなった.  2.急性期ウイルス性脊髄炎2例および球後視神経炎2例は正常パターンを呈した. 3.筋緊張性ジストロフィー症3例で,多発性硬化症急性期例と同様のパターンを認めた. 以上の結果より,多発性硬化症急性期例ではサポニンに対する赤血球膜のfragility充進を認め,病勢に一致して赤血球膜動態が変化し得ることが示唆された.

1983.04.01

A Cause for the Misjudgment of Blood Grouping with Putrefied Human Blood by Elution Test

殺害された後,土中に約10日間埋められて腐敗した婦人の体液より5種類の汚染菌を単離した.単離菌はBacillus pumilus, Staphylococcus,および3種類のグラム陰性杵菌であった.これら単離菌を1種類ずつヒトA型血液に添加し, 37℃で10日間培養して5種類の腐敗血を作製した. 腐敗血の血液型活性は吸収試験と解離試験によって調べた.吸収試験で調べるとこれら5種類の腐敗血ともA型活性の低下やB型活性の付加は全く認められなかった.ところが解離試験で測定するとBacillus pumilusによる腐敗血においてA型活性の大幅な減少がおこっていた.他の4種類の腐敗血においてはA型活性の変化は検出されなかった.また, Bacillus pumilusによる腐敗血ではB型活性の付加は観察されなかったが2種類の腐敗血(N0. 1とNo. 3)においてごくわずかながらB型活性が付加していた. Bacillus pumilusによる腐敗血を用いて解離試験の各過程をくわしく観察した結果,吸着過程において固定した血球がサラシ布から遊出することが示された.このような血球の遊出が解離試験で血液型を判定する場合に誤った結果をもたらす一因となると思われる.

1983.03.14

Two Cases of Brainstem Encephalitis

脳幹に主座を有する脳炎の2例を報告した.本2例の臨床的特徴としては, 1)成人発症であり, 2)先行する上気道感染症状が存在し, 3)急速な経過と改善傾向を有しており, 4)髄液にてリンパ球優位の細胞増多と,蛋白増加などの炎症所見をみとめ, 5)脳幹部の病変が考えられた.したがって本2例は Bickerstaffの述べたbrainstem encepalitisの範疇に入るものとして呈示した. 脳幹にその主座を有する炎症性病変は,一般に脳幹脳炎と総称されているが,我が国と海外ではその概念に相異が存在する.これらの脳幹脳炎の成因は未だ明らかではないが,本2例においてはウイルス感染症に加えて,脱髄性疾患の可能性もあることを示唆した.

1983.03.13

A Case of Cardiac Amyloidosis Terminating in Sudden Death

労作時息切れと下腿浮腫を主訴に入院した66歳男性患者が,心電図上著明な左軸偏位,1度房室ブロックおよびV1~V3のQSパターンを,また心エコー図で心室中隔肥厚が特に高度な非対称性肥厚を呈した.脳卒中発作と肺炎を併発し,治療に抵抗する心不全の状態かつづいたが臨床経過は安定していたところ,原因不明の突然死を来たしたため剖検した.心臓は620gと腫大し,洞房および房室結節を含み,左右各心房心室壁の内膜下より心筋にかけ,間質血管・結合織を中心に高度なアミロイド沈着を広範に認めた.冠動脈は中等大以下が主に侵され,剖検心の造影でそれらの狭小化が示唆された.そのほか全身系統的に血管中心性のアミロイド沈着がみられ,小巣状気管支肺炎,右大脳硬塞等を伴っていたが,それらは直接死因とは考えられなかった.したがって急性心臓死が直接死因と考えられ,それはアミロイド沈着による伝導系の1次的・ 2次的障害に関連したブロックまたは不整脈に起因したものと推定した.

1983.03.12

Double Pylorus ; A Case Report and Review of the Japanese Literature

症例は68歳の男性である. 1年6カ月前にも内視鏡検査を施行したがboudle pylorusがすでに存在していたにもかかわらず,これを指摘し得なかった.今回,内視鏡検査にて,変形した幽門輪の前壁側にfistulaと考えられる開口を認めた.そこでポリエチレンカテーテルを開口部に挿入し,色素内視鏡診断用の0.2%インジゴカルミン溶液をカテーテルを通し注入した. 0.2% インジゴカルミン溶液は幽門を逆流して胃内へ流入した.十二指腸球部は変形し多発する十二指腸潰瘍瘢痕,十二指腸炎,胃潰瘍も認められた.これらの所見は, 2次的に形成されたdouble pylorusと診断しうることを示唆していると思われた. 本邦では, 1982年までに本例を含めると18例の報告があるが,このうち14例は,小彎側に交通が認められている.

1983.03.11

A Case of Splenic cyst

脾囊腫の1例報告と文献的考察を行った.症例は29歳男性,左季肋部痛,左季肋部膨隆を主訴として来院した.腹腔動脈造影,肝脾シンチ CT scanで脾囊腫と診断した.摘出標本は,脾上極より発生した単房性脾囊腫で,重さ3300g,大きさ24×19×13.5cmであった.囊腫内容液は,褐色,混濁しており,多数のコレステリン結晶を含んでいた.総内容量は2900mlであった.組織学的には,内皮細胞をもたない仮性脾囊腫であった.

1983.03.10

Bone Scintigraphy in a Case of Ollier’s Disease

Ollier氏病に99mTc-MDPによる骨シンチグラフィを施行し,骨Ⅹ-P所見と対比した.骨Ⅹ-Pに一致して肋骨,手指骨(特に左手),左上腕骨,左脛骨,左足に99mTc-MDpのactivityの増加を認めた.しかし,骨シンチグラフィによる経過観察では変化は認められず67Ga-citrateによる腫瘍シンチグラフィでも軽度の集積を認めるのみであり,悪性化は否定された.悪性骨腫瘍は99mfc-リン酸化合物の集積を認めるが良性腫瘍も時に高度の骨集積を認めるためその鑑別は困難である. Ollier氏病のように高頻度に悪性化をきたすものは骨シンチゲラフィによる経過観察が必要である.また,67Ga-citrateによる腫瘍シンチグラフィも良性,悪性の鑑別に役立つ.

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