h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1981.02.03

Mutual Availability of Protein and Fat in Infant Nutrition

乳児栄養における乳汁中の蛋白質と脂肪の相互利用性を検討する目的で, 6種類の人工乳(A乳:蛋白質1.60g/dl,ホエー蛋白質0.35g/dl,カゼイン1.25g/dl,脂肪3.72g/dl; B乳:1.60g/dl, 0.96g/dl, 0.64g/dl, 3.72g/dl; C乳:1.85g/dl, 0.41g/dl,1.44g/dl, 3.50g/dl; D乳:1.85g/dl, l.llg/dl, 0.74g/dl, 3.50g/dl; E乳:2.19g/dl, 0.61g/dl, 1.58g/dl, 2.60g/dl; F乳:2.19g/dl, 1.31g/dl, 0.88g/dl, 2.60g/dl)と人乳(G乳)で低出生体重児63名(AおよびF群10名宛, BおよびG群8名宛, C,D,E各群9名宛)を哺育した.各乳児について,体重が2,100~2,200g, 2,400~2,500gおよび2,700~2,800gに達した時の3回, 24時間中に排瀕した尿および屎を採取し,脂肪出納,屎中排泄脂質分画および窒素出納を比較検討し,つぎの結果をえた. 1.窒素の吸収量および蓄積量は摂取量とともに増加した.窒素蓄積率は高ホエー蛋白質乳哺育群(B,DおよびF群)の方が高カゼイン乳哺育群(A,CおよびE群)より高値であった. 2.脂肪吸収率は,B,D両群がA,C両群より高値であった. 3.屎中排泄中性脂肪量,遊離脂肪酸量,ケン化脂肪酸量はいずれもA,C,E群がB,D,F群より高値であった. 以上の成績から,高ホエー蛋白質乳はその構成脂肪の吸収を助長し,吸収された脂肪が蛋白質の異化をおさえ,同化作用に好影響をもたらすと結論した.

1981.02.02

Kinetic Studies on Protein Kinases in Human Red Cell Membrane with Exogenous Substrates

ヒト赤血球膜蛋白は,その膜結合酵素protein kinaseによりリン酸化を受ける.このkinaseには, cyclic 3′: 5’adenosine monophosphate (c-AMP)依存性及び非依存性の酵素が存在する.また,一方,ヒト赤血球膜にはhistone typeII及びa-caseinを外因性基質とするリン酸化酵素,即ち, histone kinase及びcasein kinaseの存在も知られている.そこで本研究では,ヒト赤血球膜ghostにおけるhistone kinase及びcasein kinaseの酵素学的性状を検討し,併せて病的赤血球における意義についても論及した.まず, histone kinaseはc-AMP依存性酵素で10-6M c-AMP濃度で最大活性が認められた.一方casein kinaseはc-AMP非依存性酵素であった.外因性基質の至適濃度及び至適pHは, histone kinase及びcasein kinaseともほほ同様でpH6.0~8・0で最大活性を示した.反応系に添加した5′-adenosine-triphosphate濃度はhistonekinaseにおいて500μMで最大活性が得られた.反応の経時的変化ではcasein kinaseでは2時間までほほ直線的にリン酸化の増大がみられるのに対しc-AMP依存性histonekinmase活性は, 20分まで著しく増大し,その後,脱リン酸化反応のため次,低下傾向を示した. Mg2+イオン濃度の影響についてはhistonekinase10-2Mで,また, caseinkinaseでは10-1Mで最大活性が得られた.次に,遺伝性球状赤血球症(HS)患者の赤血球膜において外因性基質を用いてcaseinkinase及びhistone kinase活性を検討した.本症患者の一部でc-AMP依存性の内因性膜蛋白リン酸化能が低下しているにもかかわらず外因性基質を用いたhistone kinase及びcasein kinase活性の低下は認められなかった.また,幼若赤血球比率の高いヒト臍帯血赤血球において,リン酸化能を検討したが, histone kinase及び(casein kinase活性は,正常対照群に比べ著差は認めなかった.以上,外因性基質を用いたヒト赤血球膜酵素protein kinase活性の測定及びその酵素学的性状について報告したが,本測定は内因性膜蛋白リン酸化能の検討と共に,赤血球膜代謝の研究に有用であろう.

1981.02.01

Studies on sodium transport in human red cells with abnormal shapes in various disorders.

ヒト赤血球のNa輸送能と血球形態変化との関係をみる目的で,諸種血液疾患及び赤血球形態異常を伴う諸疾患患者赤血球について, Na転入・転出能及び諸種ATPase活性を検討した.血球形態の異常を示すもののうち,遺伝性球状赤血球症,Spur cell anemiaではNa輸送能の亢進がみられたが,鉄欠乏性貧血ではNa輸送能の低下が認められた.また諸種薬剤により人工的に惹起したStomatocyteにおけるNa転入能は,同程度の形態変化を呈していたにもかかわらず,用いた薬剤によってかなりの差がみられ,形態変化とNa輸送能との間には,必ずしも相関はなく,むしろ異なる種々の機序で同様の形態変化を来たすものと考えられた.

1981.01.13

Two Cases of Cervicofacial Actinomycosis

顔頸部に好発する放線菌症は元来,板状硬結,多発性小膿瘍形成および開口障害などの定型的な臨床症状を呈していたが,抗生物質の繁用化に伴って定型的症状をもつ症例は少なくなり,またその発病頻度も低下しているといわれている.一方では菌体,菌塊の確認が困難となっているために本症と診断される症例が少なくなっているのではないかと考えられる.著者らの経験した最近の症例について臨床所見を中心に病理組織学的所見さらには治療について検討を加えた.

1981.01.12

A Esophageal Ulcer Associated with Cephalexin Capsule Ingestion

薬剤に起因する食道潰瘍が最近報告されてきている.今回我々は,セファレキシンカプセルの服用方法およびその時期的関係から本カプセル起因性と考えられる食道潰瘍を経験した.薬剤起因性食道潰瘍の発生機序及び臨床経過について文献的考察をし,本症例について検討を加えた.

1981.01.11

Adenocarcinoma of the Lung in 88 Year-old Man : A Natural Course of 51 Months

88歳男子に発生した肺の腺癌の症例を報告した.左上肺野に直径2cmの腫瘤影を持った無症状の患者で,その後51カ月生存した.本症例の胸部Ⅹ線写真における腫瘍の増大速度を経過を通して観察し,予測生存期間と比較した.そして,本症例で予測生存よりもはるかに長い生存が得られたのは,年齢因子によるところが大きいものと考えられた.

1981.01.10

A Case Report of an Adult Pertussis Patient with Rib Fracture

33歳男子に発症した百日咳の症例を報告した.約半月に及ぶスタッカート・レプリ-ゼを呈する激しい咳嗽と,肋骨骨折による胸痛を訴えて当科を訪れた.末梢血白血球数は10,500で58%がリンパ球であり,百日咳の流行株に対する抗体価は2,560倍と著明に上昇していた.本論文で私共は,成人においても百日咳が日常臨床の場において存在すること,ならびに,百日咳の診断には特徴的な咳嗽と白血球増多,リンパ球増多が有用であることを強調した.

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