2016.02.29
Two cases of Pneumoparotis
耳下腺腫脹は臨床でしばしば遭遇する症状であり,原因となる病態は様々あるが,稀な疾患として耳下腺気腫がある.耳下腺気腫とは口腔内圧上昇によりステノン管から逆行性に空気が迷入し耳下腺腫大をきたす病態である.今回我々は耳下腺気腫の2症例を経験したので報告する. 1症例目は6才男児で左耳下部の疼痛,腫脹を反復したため小児科から紹介.左耳下腺の圧迫でステノン管開口部から泡沫状唾液の流出があり,CT 検査でステノン管内に空気像を認め,左耳下腺気腫と診断された.経過中に頬を膨らませる習癖が確認され,習癖の禁止と抗菌薬処方で保存的に改善した.2症例目は43歳女性で左耳下部の腫脹と疼痛を主訴に当科を紹介受診.画像検査にて迷入した空気によるステノン管拡張と耳下腺内の空気像を認めたため,左耳下腺気腫と診断された.明らかな誘因は確認できず,抗菌薬処方で保存的に改善した. 耳下腺腫脹には様々な原因が挙げられ,日常診療でも散見される症状である.急性発症で感染が疑われる場合には,抗菌薬投与で経過観察され軽快している症例も多数存在すると思われる.上述の経過観察とされる症例中にも耳下腺気腫である症例がいくつか含まれている可能性が示唆された.doi:10.11482/KMJ-J42(1)25 (平成28年1月4日受理)
2016.02.29
Sensitivity and specificity of CT colonography for the detection of colonic neoplasia after positive fecal occult blood test in colorectal cancer screening in Japan
大腸がん検診におけるスクリーニング検査としての大腸CT(CT colonography: CTC)検査の有用性を検討するために,当院における便潜血陽性者に対するCTC と大腸内視鏡検査の精度比較を行った.2009年7月から2014年1月までに川崎医科大学附属病院で施行されたCTC 検査673件中,スクリーニング目的で行われた411件の中で便潜血陽性者に対して行われた183名を対象とした.全例CTC 検査と同日に全大腸内視鏡検査も行った.対象とする病変は内視鏡観察あるいは病理組織学的に腺腫,がんと診断されたものとした.CTC の前処置は,経口腸管洗浄剤に水溶性造影剤による標識(タギング)を付けて行った.CT 装置は16列Multi-slice CT (MSCT),腸管拡張は自動炭酸ガス注入器を使用した.CTC 読影は,まず仮想内視鏡(3D)で行い,後に多断面再構成像(Multi-planar reconstruction: MPR 像(2D))を行う3D primary 法で行った.183名(男性98名,女性85名,年齢40~86歳,平均年齢62.1歳±0.8歳)のうち,病変を認めなかったのは87名(47.5%)であり,病変を認めたのは96名(53%)であった.総病変数は191個であり,うち6mm 以上の病変は77個(40%)で,そのうち10mm 以上のものは46個(24%)であった.大腸癌は25例(全病変中13%)で,うち腺腫内癌16例(全病変中8%)であった.側方発育型腫瘍は8例(4%)(大きさ平均17mm)であった.病変のうち,内視鏡的切除が行われたものは34病変であり,手術が行われたものは22病変であった.病変形態別による描出率は隆起型病変80% で,平坦型病変65% であった.病変サイズ別の精度は10mm 以上の病変(n=46)で感度96%,陽性適中率98%であり,6mm 以上の病変(n=77)で感度83%,陽性適中率79% であった.CTC は便潜血陽性者において良好な精度を示し,大腸がんスクリーニング法としての可能性がある.doi:10.11482/KMJ-J42(1)15 (平成27年12月24日受理)
2016.02.02
A case of pulmonary Mycobacterium avium cimplex (MAC) disease presented a rapidly growing tumorous shadow
症例は66歳,男性.慢性閉塞性肺疾患とい草塵肺で経過観察をしていた.6カ月前の胸部CT では明らかな異常を認めなかったが,新たに左上葉の気腫性病変周囲に腫瘤性病変を認めた.気管支鏡検査にて,局所検体からM. avium が検出されたものの生検で肉芽腫病変を認めなかったため,CT ガイド下肺生検を実施した結果,肺MAC 症と最終診断した.近年,孤立性腫瘤形成型肺MAC 症の症例を散見するようになってきているが,本症例のごとく短期間で急速に増大することもあることから,抗酸菌を含めた肺感染症に対する積極的な検査が必要と思われる.doi:10.11482/KMJ-J42(1)11 (平成27年12月8日受理)
2016.02.02
A case of cervical tracheal injury following blunt neck trauma
鈍的外傷に起因した頸部気管損傷は比較的稀な外傷であり,一般的に緊急で気道を確保しないと致命的である.今回,我々はダッシュボード損傷による頸部気管断裂をきたした重症外傷の1救命例を経験したので報告する.症例は21歳の女性.車の助手席に乗車中,交通事故にて受傷した.心肺停止状態で前医に搬送され蘇生処置に反応したために当院紹介となった.来院時JCS 300,バイタルサインは安定しており,診察上は前頚部に擦過傷を認めたのみであった.その際の画像検査で頸部気管断裂と診断されたが,気道開通は得られており換気可能であったために早急に気管再建術を施行しなかった.その後,待機的に気管切開術と気管断端処理を行い救命できた.本症例を経験し,力学的作用の面から受傷機転を考察するとともに,頸部気管断裂に対する治療戦略について文献的検討を加えて考察したので報告する.doi:10.11482/KMJ-J42(1)1 (平成27年11月24日受理)
2015.12.10




