h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2014.02.02

The molecular mechanism by which the short-term intervention of anti-diabetic drugs preserves pancreatic β-cells in db/db mice: comparison of their straightforward effects between early and advanced stage of diabetes *

2型糖尿病の病態進展を抑制する上で,膵β 細胞機能保持は極めて重要な課題である.PPARγ作動薬やインクレチン薬は糖尿病モデル動物のβ 細胞機能保護に働くが,殆どが発症早期の検討であり,病態進展期での検討は十分でない.本研究では肥満糖尿病モデルdb/db マウスを用いて,病態の進展がPioglitazone(PIO)とLiraglutide(LIRA)によるβ 細胞保護効果に及ぼす影響を検討した.早期モデルに7週齢を,進行モデルには16週齢を用い,対照(CTL),PIO, LIRA,併用の4群に分けた.代謝改善による影響を排除し,薬剤の直接的なβ 細胞への効果を検討するため2日間介入とした.またlaser capture microdissection 法を用いて,膵島コア領域の遺伝子発現解析を行った.早期モデルのLIRA 群,進行期の併用群で空腹時血糖の改善傾向をみたが,インスリン値に有意な変動はなかった.進行期モデルでInsulin, GLP-1 受容体遺伝子発現が低下した.分化・増殖に関わるPdx1, NeuroD, ERK1 は早期モデルのみ上昇がみられ,インスリン転写因子Pdx1, NeuroD も同様であった.一方,アポトーシス関連遺伝子Caspase3, Bcl2 の発現は,両モデルでアポトーシス抑制方向に変動した.これらの効果は併用群でより顕著で統計学的に有意であった.脂質合成,炎症,酸化ストレス,小胞体ストレス関連遺伝子発現は,両モデルで変動しなかった.以上より病態早期ではPIO, LIRA は分化・増殖促進とアポトーシス抑制によるβ 細胞保護効果を発揮し,進行期ではその効果は限定的であること,その効果は膵への直接的作用であることが明らかになった.本研究成果は早期からの薬剤介入が糖尿病の病態進展抑制に有効であることを強く示唆する.doi:10.11482/KMJ-J40(2)77 (平成26年8月27日受理)

2014.02.01

Olfactory Brain Circuitry: Analysis of the odor deprivation effect using the naris closed mouse model *

匂いの情報は嗅細胞軸索を介して,嗅球表面の糸球体に入り投射ニューロンの樹状突起とシナプスし,さらに糸球体を構成する様々な神経化学物質を含有するニューロンによって調整される.臨床の場において,慢性副鼻腔炎や鼻茸等で長期間鼻が遮蔽されると症状改善後に嗅覚異常を認めることがある.また,げっ歯類の片鼻閉実験では,糸球体近傍ニューロンのtyrosine hydroxylase(TH)の発現が低下・消失することが知られている.そこで本研究では,マウス及びTH 発現をgreen fluorescent protein( GFP)でモニターした遺伝子改変マウス(TH-GFP マウス)を用い,機能的遮断を施したモデルマウスを作製し,入力遮断によるその他の神経化学物質に対する影響を調べた.方法は,縫合によりマウスの左鼻腔を完全に鼻閉させ,3週間~6ヶ月後に灌流固定し,左右嗅球の連続スライス作製後各種抗体を用いて免疫染色を行った.その結果,これまでの報告と同様3週間の鼻閉モデルマウスでは,鼻閉同側嗅球のTH 発現が著しく低下しており,左鼻腔の入力遮断がなされていたことが示された.また6ヶ月と長期の鼻閉モデルマウスでは,鼻閉同側だけではなく対側嗅球でも著しいTH 発現低下が確認された.TH-GFP マウスでは,TH の発現が低下しているにもかかわらずGFP 発現を維持する細胞が少数見られ,野生型鼻閉モデルマウスでも同様にTH 発現を維持するニューロンが稀に見られた.このようなTH ニューロンは発現低下を示すものよりも比較的大きい細胞体を持つ傾向にあった.以上の結果,TH ニューロンが示す入力遮断に対する反応の多様性は,TH ニューロンが入力刺激に対して異なる電気特性を生じるという我々の最近の研究結果を支持するものと考える.今後,多様性を示すTH ニューロンが匂い入力調節にどのように関わるか解析を進めていきたい.doi:10.11482/KMJ-J40(2)67 (平成26年4月14日受理)

2014.01.09

 

2014.01.08

2014.01.07

 

2014.01.06

A case of fibrous dysplasia of the temporal bone *

線維性骨異形成症は,骨の吸収,未熟な骨梁の新生を主病変とし,骨の形成異常を原因とする非腫瘍性骨疾患であり,四肢の長管骨,肋骨,頭蓋顔面骨に好発し,頭蓋顔面骨では上顎骨,下顎骨の報告はしばしば散見されるが,側頭骨発生の頻度は少ない.今回,我々は側頭骨に生じた線維性骨異形成症の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は53歳男性.20XX 年4月初旬,左耳痛・耳漏を主訴に近医を受診し,急性中耳炎と診断され治療を行われるも改善乏しく,5月中旬紹介となった.初診時,外耳道,鼓膜所見に異常は認めず,純音聴力検査では軽度の気導-骨導差を認め左混合難聴であった .CT 所見で左外耳道,鼓室内には軟部陰影は認めなかったが,左乳突蜂巣内に側頭骨の菲薄化,破壊像を認め,周囲にスリガラス陰影を呈する比較的低吸収域の軟部陰影を認めた.またMRI 所見では,左乳突蜂巣内に,T1強調像で小脳実質と等信号であり,周囲に造影効果を認め,T2強調像で周囲が高信号な辺縁整で境界明瞭な腫瘤性病変を認めた.これらから,組織学的検査目的で手術を行った.左耳後切開し,外耳道を剥離し,鼓室・上鼓室を明視下に置き,中耳腔全体を観察した.鼓膜は正常であったが,ツチ-キヌタ骨関節に軽度な肉芽組織を認めたが,アブミ骨の可動性は良好であった.乳突洞削開術を行うと,骨は脆弱でもろく,乳突蜂巣に肉芽病変が充満し,乳様突起先端部に直径1cm 以下の嚢胞病変を認めた.術中側頭骨及び,嚢胞を病理検査に提出した.中頭蓋底およびS 状静脈洞の骨膜が広範囲に破壊されており,この部位に,筋膜および骨を置き,手術終了した.病理組織検査では,形状が不整で骨芽細胞や破骨細胞をほとんど認めない未熟な骨を認め,周囲に間質の疎な線維性結合組織の増殖があった事から線維性骨異形成症と診断した.現在術後12か月になるが,再発なく経過良好である.doi:10.11482/KMJ-J40(1)49 (平成26年1月9日受理)

2014.01.05

A case of myeloma-related disorder detected by hypoproteinemia *

広義の骨髄腫関連疾患には,古典的なmyeloma を始めとして,plasmacytic leukemia,plasmacytoma さらにmacroglobulinemia,lymphoplasmacytic lymphoma などが含まれる.一般的には特徴的検査所見の一つに,血清総蛋白の高値がある.ところが,今回我々は血清総蛋白がむしろ低値であった骨髄腫関連疾患を経験した.症例は85歳女性.貧血軽度,黄疸( - ),肝脾腫( - ),リンパ節腫大( - ),骨病変は軽微であった.検査所見:末梢血 WBC4370/μl,RBC242万/μ l,Hgb8.1g/dl,Hct25.6%,PLT6.2万/μl,Neut70.7%,Lym23.6%,Mono5.0%,Eos0.2%,Bas0.5%.生化学:TP5.3g/dl,Alb2.0g/dl,Glob3.3g/dl そのうちIgG532mg/dl,IgA79mg/dl,IgM2,035mg/dl で,免疫電気泳動にて明らかなM-bow を認め,IgM-κ 型と判明した.骨髄:採取した標本では低形成で,Mgk10/μl,赤芽球15.6%,顆粒球系60.3%,リンパ球系23.8%,そのうち形質細胞1.9% であった.形態学的には,マクログロブリン血症の際にみられるリンパ・形質細胞様の所見であった.細胞表面マーカーの検索では,リンパ球全体ではCD7 33.5%,CD1380.7%,CD19 7.0%,CD20 32.8%,形質細胞ではCD7 21.8%,CD138 57.7%,CD19 21.1%,CD20 39.7% であった.病理検査では,N/C 比が高く異型性のある核を持つ細胞のシート状の集簇が認められた.腫瘍細胞の透過型電顕所見では,核は偏在し,大型のゴルジ野を有し,粗面小胞体はよく発達し,蛋白合成の盛んなことが推測された.細胞によっては,分化度が低く核クロマチンは繊細で明らかに芽球様の細胞も認められた.染色体分析:46,XX.末梢血生化学所見では総蛋白量の明らかな減少が認められたが,その病因は腫瘍細胞によるIgM の過剰産生にあり,その腫瘍性性質のため正常免疫グロブリン特にIgG およびIgA の著しい産生抑制を生じたものと考えられる.細胞学的にはマクログロブリン血症と多発性骨髄腫とにまたがる境界領域に位置付けられるB リンパ球系悪性疾患と推定される. doi:10.11482/KMJ-J40(1)43 (平成26年1月7日受理)

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