h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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2014.02.10

A case of mixed adenoneuroendocrine carcinoma of gallbladder with liver metastasis *

症例は50歳代,女性.20XX 年1月ごろより前屈での心窩部付近の疼痛と右季肋部違和感を認めていた.同年3月初旬に疼痛が増強したため近医を受診し,CT で胆嚢に造影効果のある腫瘤と肝内の腫瘤陰影が認められた.肝転移を伴う胆嚢癌が疑われ,精査加療目的に当院へ紹介された.当院での画像検査でも胆嚢底部から体部にかけて約4.5 cm 大の隆起性病変を認めた.胆嚢底部では漿膜面が腫瘤に引き込まれ陥入している像を認め,肝床と一部で接しており境界不明瞭ではあったが,肝実質内への浸潤像は認めなかった.肝S4に約2 cm 大のリング状に造影される腫瘤を認め,肝転移が疑われた.ERCP では胆嚢頸部,胆嚢管,総胆管への浸潤は認めなかった.胆汁細胞診はClass V であった.単発の肝転移以外には遠隔転移を認めず,主要血管への浸潤も認めないため肝S4a+5切除,胆嚢摘出術,リンパ節郭清を施行した.切除標本では,病変は約4.5 cm 大の乳頭・結節型であり漿膜外まで浸潤していた(T3).組織学的には腺管構造を呈する腺癌とシナプトフィジン, クロモグラニンA が陽性の内分泌細胞癌が混在していた.肝転移巣は約2 cm の結節・浸潤型であり,組織学的には同様にCD56強陽性, シナプトフィジン, クロモグラニンA 陽性となる内分泌細胞癌が認められた(M1).リンパ節転移は認めなかった(N0).病理診断は腺内分泌細胞癌,UICC Stage-IVB であった.本症例は孤立性の肝転移を伴った胆嚢癌であったが,肝転移がS4であり,通常の胆嚢癌手術の切除範囲内であり,大きなリスクもなかったため,切除手術を行った.術後,gemcitabine とcisplatin による補助化学療法を行った.doi:10.11482/KMJ-J40(2)145 (平成26年9月13日受理)

2014.02.09

Synchronous quadruple cancers: a case report *

近年,癌の診断技術の進歩や治療成績の向上に伴い重複癌の報告が増加しているが,同時性4重複癌の頻度は0.21% と稀である.超音波検査によるスクリーニングが診断に有用であった同時性4重複癌の一例を報告する.症例は69歳の男性で肝障害と高血圧で定期通院中であった.増大する無痛性頸部腫瘤を自覚し頸部超音波検査を施行し,転移性リンパ節腫大を疑い,同日に腹部超音波検査を行った.その結果,進行胃癌と進行大腸癌を疑い,消化管精査を開始した.精査の結果,中咽頭癌,食道癌,胃癌,直腸癌の同時性4重複癌であった.最も進行度の高い中咽頭癌から治療を開始し,現在外来通院中であるが,経過は良好である.1990年から2013年の間で医中誌による検索では同時性4重複癌の報告は自験例を含めて15例に過ぎない.その15例で検討を行うと男性に多く,罹患臓器は胃癌と食道(8.8%),または胃癌と直腸の重複(6.9%)と消化管領域での重複を多く認めた.重複癌の発生要因としては飲酒や喫煙などの嗜好品,遺伝的要因が報告されている.飲酒習慣については飲酒後の顔面の紅潮(フラッシャー)は発癌リスクが有意に高まるとされ,本症例でもBrinkman Index 1350,Sake Index 180と高値であり,更にフラッシャーであり複数のリスク因子を認めた.遺伝的要因については家族性大腸腺腫症やLynch 症候群での多臓器癌の発症が知られているが,本症例では病理標本での検討の結果,その可能性は否定的であった.癌の治療方針決定においては,進行度の評価が重要となるため,全身のスクリーニングが必要であるが,超音波検査は非侵襲かつ放射線被曝もないことから,スクリーニングに適した検査法と考えられた.doi:10.11482/KMJ-J40(2)135 (平成26年9月2日受理)

2014.02.08

A case of branch retinal vein occlusion after vitrectomy in a patient receiving tamoxifen *

タモキシフェンは主に乳癌治療薬として使用されているが,眼副作用の報告は非常に少ない.今回,タモキシフェン内服患者における,硝子体手術後に発症した網膜静脈分岐閉塞症(branch retinal vein occlusion,以下BRVO)の1例を経験したので報告する.症例は51歳女性,乳癌の術後1日量20 mg のタモキシフェンによるアジュバント療法を受けていた.2年後に左眼の黄斑円孔が発見され硝子体手術を行った.後部硝子体剥離を起こしている際にアーケード血管から出血を認めたため出血部位の圧迫及び眼内灌流圧を上げることで止血を行った.術翌日には黄斑円孔の閉鎖が確認されたが,術後15日目に出血部位を閉塞起点とするBRVO を認めた.視力は左矯正0.7 pと術前と比べほぼ変わりはなかったが,光干渉断層計で黄斑浮腫を認めたためベバシズマブ硝子体内投与を行った.同時にタモキシフェンによる副作用を疑い,内服を中止した.タモキシフェンの眼副作用として,BRVO も念頭におく必要がある. doi:10.11482/KMJ-J40(2)129 (平成26年7月23日受理)

2014.02.07

Surgical treatment for coronary-pulmonary artery fistula associated two aneurysms. A case report. *

症例は77歳男性.2ヶ月前より夜間の息苦しさと胸の締め付けを感じていた.冠動脈CT を施行したところ主肺動脈前面及び上行大動脈と主肺動脈の間に冠動脈・肺動脈瘻を伴った2個の瘤を認め,右冠動脈#2に90%狭窄を認めた. On pump beating 下に瘤を切開し,冠動脈側からの入口部及び肺動脈瘻を閉鎖した.また,右冠動脈の狭窄病変に対して大伏在静脈をグラフトとして用い冠動脈バイパス術を行った.術後経過良好にて退院となった. 今回我々は瘤を形成した冠動脈-肺動脈瘻に対して人工心肺下に手術を施行した1手術例を経験したので報告する.doi:10.11482/KMJ-J40(2)123 (平成26年6月28日受理)

2014.02.06

A case of ruptured gastrointestinal stromal tumor (GIST) found via acute peritonitis *

症例は57歳の男性で,近医より急性虫垂炎の疑いにて当院救急外来へ紹介初診の際の理学所見にて下腹部正中に圧痛を認め,血液生化学検査では炎症反応の上昇を伴っていた.腹部造影CT 検査にて圧痛部位に一致して小腸と連続した直径13 ㎝大の巨大腫瘍を認め,腫瘍内部及び周囲腹腔内に遊離ガスを認めた.小腸腫瘍破裂による穿孔性腹膜炎の診断にて緊急開腹手術を施行したところ,トライツ靭帯より約30 cm の空腸に連続した直径13.5 ㎝大の腫瘍を認め,空腸内腔との交通を有する粘膜下腫瘍の形態を示し,腫瘍表面が一部破綻して穿孔していた.腫瘍を含めて空腸を部分切除し,腹腔内洗浄ドレナージを行った.摘出組織を検索するに,空腸粘膜に5 mm 大の瘻孔口が開口し,瘻孔は腫瘍内部に通じていた.腫瘍表面には線維性被膜を有し,内容は白色充実性で出血や壊死巣が存在し,組織学的観察では紡錘形細胞が索状に錯綜しながら密に浸潤増殖していた.免疫組織学的検討において,腫瘍細胞は c-kit 陽性, CD34は一部陽性で,空腸原発のGastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.核分裂像は 3/50HPF 程度で,MIB-1は 約19%の細胞で陽性であった.術中の肉眼的観察及び術後のFDG-PET にて腫瘍の残存は認めなかったものの,小腸原発,腫瘍径,腫瘍破裂を伴うことから高リスク症例に分類され,術後補助化学療法の適応症例であった. 穿孔性腹膜炎を契機に発見されたGIST 症例は比較的稀ではあるが,小腸GIST は無症候で巨大化した後に発見されることが多く,他部位原発のGIST と比し予後不良である.本症例のような破裂を伴って診断される症例においては,再発の高リスク群に該当することから,術後補助化学療法の適応であり,また厳重なフォローアップを要する.doi:10.11482/KMJ-J40(2)115 (平成26年6月25日受理)

2014.02.05

A case report of congenital cataract surgery with 27 gauze vitrectomy system. *

先天白内障は,放置すれば弱視をきたし,永続的な視力低下を来す状態である.重症例では早期の白内障手術および術後の弱視訓練により良好な視力発達が得られる場合が多い.しかし,小児に対する白内障手術は成人のものとは異なり,難易度の高いものである.難易度が高い原因としては,従来法では,白内障手術時に後嚢切開および前部硝子体切除を行った後に眼内レンズを挿入するという難易度の高い手技にある.もし,後嚢切開が不完全に終われば,予定した眼内レンズ挿入もできなくなってしまう.今回我々は,白内障手術時に眼内レンズを挿入後に硝子体手術の手技を応用した手技を用い,27ゲージという極小の創からトロッカーという管腔構造をもつ器具を,経強膜的に毛様体扁平部へ刺入させ,トロッカーを介して硝子体カッターにて後嚢切開,前部硝子体切除を行い.合併症もなく安全に手術終了することができた.27ゲージの創は無縫合で終了可能であった.本方法は合併症も少なく,術後の炎症の軽減にも有用な方法であると考えられる.doi:10.11482/KMJ-J40(2)109 (平成26年5月22日受理)

2014.02.04

A case of spinal cord infarction *

症例は66歳男性で,30本/ 日の喫煙歴がある.両肩にピリピリしたしびれ感が出現し,その後両上肢と左下肢の動きにくさが出現しその後急激に四肢の筋力が低下し歩行できなくなり,自力で呼吸もできなくなったため緊急入院.気管切開を施行し,人工呼吸器の使用を開始した.頸髄MRI にてC3-6レベルに異常信号域を認め,脊髄梗塞が疑われた. 四肢麻痺(左上下肢は不全麻痺,右上下肢は完全麻痺)を認めた.腱反射は左上下肢および右上肢で消失しており,病的反射はみられなかった.両上肢および臍部以下の温痛覚低下を認めたが,触覚や深部感覚は正常であった.頸髄MRI ではC3-6レベルにT2強調画像で高信号域を認めた.急性の発症であることや頸髄MRI 所見から脊髄梗塞と診断し,オザグレルナトリウム,エダラボン投与とリハビリテーションを開始し,呼吸状態は改善し人工呼吸器から離脱した.左上下肢および右下肢の筋力はやや改善を認めたが,自立歩行できない状態が残存した.右上肢は手指の動きが出てきたが,挙上はできない状態が残存した.脊髄梗塞は稀な疾患であり,その原因としては動脈硬化が多く,その他として大動脈解離,血管奇形,腫瘍塞栓,血管炎,手術や血管造影による医原性,椎間板ヘルニアなどがある.本例では明らかな大動脈解離がなく,血液検査で炎症所見が見られず,頸動脈超音波検査で両総頸動脈のIMT(内膜中膜複合体厚)肥厚を認め,頭部MRI で左椎骨動脈より右椎骨動脈の血管径が細く,頭部MRA の原画像で右椎骨動脈の血流信号が欠如していたことから,原因としては喫煙による動脈硬化が考えられた.急激に発症した四肢麻痺を見た場合には,脊髄梗塞の可能性があることも念頭に置き脊髄MRI を施行すべきと考える.doi:10.11482/KMJ-J40(2)103 (平成26年5月20日受理)

2014.02.03

Ultrastructural analysis of serotonergic synapses in the mouse olfactory bulb *

嗅球は明瞭な層構造を持ち,少数のニューロン種から構成され,そこには豊富な化学物質を含むことがわかっており,脳神経回路の解析に有用な領域である.匂い情報を処理する嗅球は,脳の他領域から複数の遠心性ニューロンによる入力を受けており,この一つがセロトニンを含有するニューロン(セロトニンニューロン)である.セロトニンニューロンは,脳全体に広範囲に分布し様々な脳機能の調節を行っており,嗅球においては非対称性シナプスを形成し,嗅覚情報調節に関わっていると考えられている.しかし,このシナプスについては嗅覚調節機構と共に詳細な解析はなされていない.そこで,本研究ではセロトニンニューロンによるシナプスの微細構造を,免疫電子顕微鏡法と電子線トモグラフィーを用いて解析した.また,非対称性シナプスを示すことから,神経伝達物質としてのグルタミン酸の可能性を検討するため,セロトニンとVGLUT3(vesicular glutamate transporter 3)に対する多重蛍光免疫染色法で解析した.セロトニンニューロンによるシナプスは,多くは球形のシナプス小胞を持つが,扁平なものや有心性小胞も存在した.更に,既知のグルタミン酸作動性ニューロンによる非対称性シナプスと比べて,シナプス後肥厚の厚さの多様性が顕著で,シナプス間隙は狭く,シナプスの直径は小さかった.また,セロトニンニューロンの約半数はVGLUT3免疫陽性であり,神経タンパクを含有する有心性小胞を持っていることから,複数の神経伝達物質を含むことが示唆された.シナプス後肥厚は伝達物質であるグルタミン酸の刺激によって厚くなる.セロトニンニューロンは,グルタミン酸を含む複数の神経伝達物質を持つために,グルタミン酸だけを神経伝達物質として持つニューロンが形成する典型的な非対称性シナプスに比べて,多様性のある非対称性シナプスを形成していると考えられる.doi:10.11482/KMJ-J40(2)89 (平成26年9月22日受理)

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