2017.06.21
Analysis of wechsler intelligence scale scores and clinical features in patients with adjustment disorder
近年,職場ストレスにより抑うつ状態をはじめ心身の不調を来し休職したり,学校や社会に不適応を起こし不登校,ひきこもりになったりする適応障害患者が増えている.診断基準上,適応障害を引き起こす要因であるストレスの大きさは問われないが,一方でどのような人が適応障害になりやすいかという研究はこれまでない.本研究では,適応障害患者に対する成人用Wechsler 式知能検査第3版(Wechsler Adult Intelligence Scale Third Edition; WAIS-Ⅲ)の所見と臨床的特徴からそれらを検討した. 適応障害と診断されWAIS-Ⅲを施行された患者50名(14歳~48歳,男性29名,女性21名)を対象とした.IQ が70未満の精神遅滞と診断された者は除外した.臨床評価として,初診時年齢,発症年齢,精神主訴の有無,身体主訴の有無,初診時における社会参加の有無,初診時GAF(Global Assessment Scale)を用いた.WAIS-Ⅲは言語理解(Verbal Comprehension; VC),作動記憶(Working Memory; WM), 知覚統合(Perceptual Organization; PO), 処理速度(Processing Speed; PS)の4つの群指数に分類される.対象者を群指数パターンによってクラスタ分析を行った. その結果,3つのクラスタパターンに分類された.群指数に関しては,クラスタ1はWM がVCとPS よりも有意に低く,クラスタ2はPS がVC とWM よりも有意に低く,クラスタ3はPS がVC,WM,PO よりも有意に低かった.また,IQ に関しては,クラスタ3> クラスタ1>クラスタ2の順に高くそれぞれ有意差が認められた.クラスタ間の臨床的特徴を検討したところ,クラスタ3は身体主訴が有意に少なかったが,他の項目で有意差は認められなかった.さらに,対象者全体で見ると,GAF とWM において正の相関が認められた. 以上から,適応障害患者においてはWM とPS という認知機能低下が認められる可能性があり,特に社会適応の観点からWM に注目して診療を行うことが大切であると考えられた.
2017.06.21
Effectiveness of cognitive rehabilitation (NEAR: Neuropsychological and Educational Approach to cognitive Remediation) for schizophrenia, developmental disorder, and affective disorder
近年,様々な精神疾患において認知機能障害があることが分かってきており,それらは日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼしている.投薬によって精神症状が改善しても,認知機能障害の影響で家庭生活や社会生活に支障を来し,病前と同様の生活に復帰できないことが多い.それらを改善する方法として注目されているのが認知リハビリテーションである.なかでもNEAR(Neuropsychological and Educational Approach to cognitive Remediation)は,学習理論と教育原理を背景に,パソコンソフトを使用するセッションと,生活における認知機能を話し合うセッションから成る,統制のとれたプログラムである.著者は平成23年からNEAR を実施してきた.NEAR は元々統合失調症における認知機能障害のトレーニングプログラムとして開発されたものであるが,同時に発達障害や感情障害に対してもNEAR を実施してきた.本研究での解析症例は,統合失調症群12例,発達障害群13例(広汎性発達障害,注意欠陥/多動性障害,特定不能の学習障害),感情障害群5例(うつ病性障害,双極性障害)である.NEAR の前後で測定した認知機能評価尺度(BACS: The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia)を解析したところ,統合失調症群における運動機能,感情障害群における遂行機能などを除き,ほとんどの項目で改善傾向を認めた.各疾患別にNEAR 前後のBACS 下位検査平均値を比較すると,運動機能において発達障害群が統合失調症群に比べ有意に改善し,遂行機能において統合失調症群が感情障害群に比べ有意に改善した.NEAR 前後のBACS 下位検査のプロフィールも疾患ごとに特徴的であった.NEAR は発達障害など統合失調症以外の精神疾患に対しても有効であり,疾患ごとに効果の現れ方が異なることが示唆された.
2017.06.21
Achalasia treatment ―factors associated with the outcome of pneumatic dilation― (second report)
食道アカラシアは食道運動障害を呈する疾患で,良性疾患ではあるものの,QOL を大きく障害し,食道癌の発生リスクともなるため,適切な診断治療が重要である.一般的に,治療は内視鏡的治療や外科的治療が行われる.以前,我々は内視鏡的バルーン拡張術(pneumatic dilation:PD)を行った16例の食道アカラシアについて,PD の有効性に関する因子を検討し報告した.近年,新たな食道運動障害の診断基準(Chicago 分類)も策定されたことも踏まえ,アカラシア症例36例での検討を行ったため第2報として報告する.対象は当院で食道アカラシアと診断し加療した36例で,うち27例(男性8例,女性19例,平均年齢51.0±16.5歳)にPD を行った.対象をPD有効例と無効例とに群分けし,その2群間で患者背景,QOL,High-resolution manometry( HRM)所見,治療前後でのHRM 所見の差異について検討を行った.結果はPD 有効例は19例(70.4%)であった.有効群と無効群との比較を行うと,無効群で女性が多い傾向にあった(p=0.06).HRM所見では有効例でChicago 分類typeⅡアカラシアが有意に多く認められた(p=0.04).また,治療前後のHRM 所見の差異については,有効例で治療前後の下部食道括約筋(lower esophageal sphincter: LES)圧変化率が有意に大きかった.以上より,Chicago 分類typeⅡのアカラシアではPD の有効性が高く,また1度PD を行った症例でもLESP 変化率が大きい症例では有効性が高いことが示された.
2017.03.01
A case of protein-losing gastroenteropathy in association with steroid-resistant systemic lupus erythematosus which was successfully treated with cyclophosphamide pulse therapy
全身性エリテマトーデスは,全身の多臓器に炎症を起こし多彩な症状を引き起こす全身性自己免疫疾患である.消化器病変としては,ループス腸炎や腸間膜血管炎が多く,蛋白漏出性胃腸症を呈するのは稀である.我々はシクロホスファミドパルス療法が著効したループス関連蛋白漏出胃腸症の症例を経験した. 患者は20歳代女性.全身の浮腫と喉頭浮腫による呼吸困難感で当院に搬送され,血液検査で低アルブミン血症,抗核抗体陽性,抗SS-A 抗体陽性,低補体血症を認めた.99mTc 標識ヒト血清アルブミンによる消化管シンチグラフィにて,胃から小腸の広範囲で蛋白漏出が認められた.ループス関連蛋白漏出性胃腸症と診断し,ステロイドパルス療法を含め2週間以上のステロイド大量療法を行うも症状の改善を認めなかった.ステロイド治療に併用してシクロホスファミド700 mg の点滴を施行したところ,翌日より大量の尿排泄(5,000 ml/ 日以上)を認め,速やかに全身状態は改善した.ループス関連蛋白漏出性胃腸症は,ステロイドが奏効しない例も存在することを念頭に置き,免疫抑制薬を早期から併用することも重要である. doi:10.11482/KMJ-J43(1)9 (平成28年12月16日受理)
2017.03.01
A clinical study on breast cancer patients with sentinel lymph node micrometastases
N0乳癌において症例を選べば,センチネルリンパ節転移陽性例であっても,腋窩リンパ節郭清(ALND)の省略が可能であると報告されている.微小転移(pN1mi)乳癌においても,同様の結果が得られている.当科でセンチネルリンパ節生検(SLNB)を施行し,pN1mi であった66例を研究対象とした.SLNB の方法は,99mTc-フチン酸を用いたRI 法とインドシアニングリーンを用いた色素法の併用法で行った.SLNB 群52例とSLNB → ALND 群14例に分け,予後を中心に検討し,ALND 省略の可能性について検討した.結果は,1)SLNB 群とSLNB → ALND 群で無病生存率および全生存率に有意差を認めなかった.2)乳房切除症例でも同様の結果であった.3)スキップ症例や術後にpN1mi と判明する症例が存在する.pN1mi 症例では乳房の術式にかかわらずALND の省略が可能である. doi:10.11482/KMJ-J43(1)1 (平成28年12月12日受理)




