h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2011.03.03

Histological evaluation of composit tissue allograft survival in a rat model with FK506 (Tacrolimus) and mycophenolate mofetil *

 ラット同種四肢移植モデルを用い,FK506とMycophenolate mofetil(MMF)併用下での移植肢各組織の拒絶反応について組織学的に評価し,その有用性について検討した. ACI rat(RT-la)の後肢を,Lewis rat(RT-ll)の後肢に移植した(n=15).術後はFK506 1mg/kg/day,MMF30mg/kg/day を連日投与した.また,Lewis からLewis への同系移植モデルを作成し,コントロール群とした(n=15).両群ともに術後30,60,90日目に5匹ずつ,移植肢の皮膚,筋肉,軟骨,骨をButtemeyer らのrejection grading scale に従って組織学的に評価した. 同種移植肢は肉眼的に壊死を生じたものはなかったが,浮腫を認め,拒絶反応の存在を思わせた.一方,同系移植群では,浮腫はなく,非移植肢とほぼ同等の外観であった.同種移植群の各組織の術後90日でのrejection grading scale は皮膚が0.6,筋肉が0.4,骨が0.4,軟骨が0.3で,meanrejection score は0.43であった. FK506とMMF 併用下での同種移植肢は,免疫抑制剤投与中から各組織には軽度の拒絶反応を認めており,四肢同種移植の臨床応用には慎重を期すべきと考える.(平成23年8月8日受理)

2011.03.02

The traditional Japanese medicine (Kanpo) in treating functional dyspepsia *

 腹部不定愁訴患者は,近年,機能性ディスペプシア(functional dyspepsia: FD)と呼ばれるようになった.FD の病態には消化管運動異常,内臓知覚過敏,酸分泌異常,精神的因子などが関与しているため,治療には消化管運動改善薬,酸分泌抑制薬,抗うつ薬などが用いられることが多いが,治療に難渋する例も多い.一方,本邦ではFD に対しては漢方治療も古くから広く行われており,適切な証(症状や所見)の患者に使用すれば,著明な効果を発揮する.多因子疾患に“合剤”を用いる治療法は,高血圧でも見られるようになったが,複数の効果を持つ生薬の“合剤”である漢方方剤はそれを先取りしていたと言える.大きな欠点であったエビデンスの少なさは解消されつつあり,漢方治療は西洋薬が不得意とする分野をカバーする治療法として,今後さらに注目されると思われる.(平成23年6月23日受理)

2011.01.08

A case of acute HIV infection that merged with syphilis causing viral meningitis – Examination and treatment progress in the outpatient clinic of general medicine – *

 症例は20歳代の男性.X 年1月27日から39℃台の発熱と頭痛,咽頭痛,咳が出現したため近医および当院を受診した.口腔内アフタや皮疹も認めたが,ウイルス性の上気道炎と判断され対症療法を中心とした治療が行われた.しかし,その後も発熱は持続し,軽度から中等度の頭痛も持続していたため,炎症反応や他覚的所見に乏しいものの,髄膜炎を疑いX 年2月15日神経内科に紹介した.髄液検査でウイルス性髄膜炎と診断され入院となったが,後に梅毒を合併した急性HIV感染症と判明した. 本症例は髄膜炎の診断までに約2週間を要したが,短い間隔で受診させ続けたことが,想定外の疾患を2週間で診断できた理由とも考えられる.しかし,急性HIV 症候群や梅毒の十分な知識があれば,さらに早く診断できた可能性があり,総合診療科外来では特殊な疾患の知識も必要である.(平成22年12月16日受理)

2011.01.04

an immunohistochemical and ultrastructural study on the intrahepatic biliary system of fetal and neonatal mouse *

 胎子期から新生子期のマウス肝臓で免疫組織学ならびに超微形態観察を行い,肝臓造血終息期における造血系死細胞処理と肝内胆道系との関係を検討した.毛細胆管は径約1μm で内腔に微絨毛を持った細管として胎生14日に隣接する肝細胞間に形成される.胎生後期から生後早期の肝臓では,毛細胆管においてその径が1.5倍から3倍に拡張するのがしばしば観察される.生後早期の肝細胞は造血系細胞要素を食作用で取り込み,径3~5μm の大型封入体を形成し,その内に空胞状膜構造やミエリン像が含まれる.二次ライソゾームである大型封入体は最終的に毛細胆管壁と融合し,それによって毛細胆管が拡張,封入体の内容物が毛細胆管腔へと放出される.拡張毛細胆管壁で大型封入体に由来する部分は微絨毛を欠き,毛細胆管腔壁の微絨毛の分布に局在が生じる.出生直後から生後早期の肝臓において,造血系細胞は小葉間結合組織内で,特に小葉間胆管に隣接して残存し,小葉間結合組織内の造血細胞集団にはTUNEL 陽性の細胞が出現する.また,TUNEL 陽性封入体は小葉間胆管上皮細胞中にも観察される.小葉間結合組織内の造血細胞集団は成熟好中球および赤芽球で構成され,好中球の中には細胞死の徴候を呈するものも含まれる.胆管上皮細胞は,細胞死に至った好中球,赤芽球および脱核赤芽球核を貪食し,TUNEL 陽性封入体を形成する.骨髄造血の発達に伴い造血細胞は肝臓内より急速に消失する.その際通常は活発な食作用を示さない肝細胞や胆管上皮細胞が造血系死細胞の処理に加わる事が明らかとなり,毛細胆管をはじめとする肝内胆道が造血系死細胞の処理・排泄経路として生後早期に機能することが示された.(平成23年3月2日受理)

2011.01.02

The effect of ciclesnide on the airflow obstruction in the small airways and asthma-related quality of life in patients with asthma*

 近年,気管支喘息における気道炎症の場として末梢気道が注目されている.今回,粒子径が小さい吸入ステロイド薬の末梢気道病変に対する有用性を検討する目的で,シクレソニド投与前後におけるQOL 及び肺機能の変化について比較検討した.中用量以上の吸入ステロイド薬(DPI 製剤)を使用しても呼吸機能検査において末梢気道の閉塞所見が残存する中等症の気管支喘息患者の中で同意が得られた10例(男性5例,女性5例,平均年齢72歳)を対象とした.4週間の観察期間の後,吸入ステロイド薬を粒子径の小さなHFA-CIC に変更し,12週間使用した.薬剤変更前と12週後にQOL に関するアンケート調査,呼吸機能検査を行い比較検討した.HFA-CIC 吸入によりQOL が有意に向上した.HFA-CIC 吸入により1秒量には変化を認めなかったが,Vdot50が有意に上昇した.HFA-CIC の使用中に明らかな副作用は認めなかった.粒子径の小さな吸入ステロイド薬(MDI製剤)を使用することにより末梢気道の閉塞所見が改善し,QOL の向上が認められた.症例ごとに適した吸入ステロイド薬を用いることにより治療効果の向上が期待できると考えられた.(平成22年12月13日受理)

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