h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2011.01.01

questionnaire results refgarding the attitude of healthcare professionals toward a groupware system in Kawasaki Medical School Hospital*

 グループウェアはInformation Infrastructure functions をサポートするシステムであり,今日,広く利用されつつある.当院においても2006年よりサイボウズが導入されているが利用率は高くない.そこで医師,看護師,コメディカルあるいは事務職などその他の職種に分けて全職員を対象にサイボウズに関連するアンケート調査を2009年8月~9月に行った.ユーザの中心である医師がどのような意識を有しているのかについては既に報告したが,本報告ではコメディカルの調査結果を報告する.回収率は職種ごとに異なり,事務職が97.2%,看護職が89.0%,その他の職種が79.0%であった.医師と同様,サイボウズは事務職では78.9%,看護職では82.5%,検査技術職では62.8%に知られているが,よく利用している人は,事務職では36.0%,看護職では24.4%,検査技術職では15.4%に留まっており,有用なコンテンツがない,ID・パスワードが覚えにくい,画面が分かりにくい,端末が使いたい時に使えない,操作が難しいといった理由が回答されていた.今後はコメディカル職種ごとに求められる機能の追加と使いやすい環境整備をめざすことが大切である.(平成22年10月28日受理)

2010.04.09

The effect of intratracheal administration of a surfactant on mortality in a model of murine paraquat poisoning *

 パラコート中毒に合併する「パラコート肺」は組織学的にはintra-alveolar fibrosis を呈する予後不良の肺病変であるが,これまでのところ有効な治療法は開発されていない.我々はパラコート肺の発生機序として,肺胞上皮細胞により血液中から能動的に取り込まれたパラコートによりサーファクタントを産生する肺胞上皮Ⅱ型細胞が傷害されることが原因ではないかとの仮説を立てた.この仮説を証明するために人工肺サーファクタント(サーファクテンR,田辺三菱製薬株式会社,大阪)を気管切開下に投与した後3日後にパラコートを投与して生命予後と残存健常肺容積に及ぼす影響,並びに肺組織学的検討を行った.マウスはC57BL/6J 系とBalb/C 系を用いた.最初に,両系におけるパラコート筋注時のLD50を検討すると,C57BL/6J 系では約28mg/kg,Balb/C 系では約9mg/kg であった.次に,人工肺サーファクタントを事前投与した後にパラコート筋注を行った場合の死亡率を検討したところ,C57BL/6J 系とBalb/C 系の両系ともに有意に改善した.特にBalb/C 系ではパラコート20mg/kg 筋注によって,サーファクタント非投与群ではパラコート投与後7日以内に36匹が全て死亡したが,サーファクタント投与群では26匹中18匹が2ヶ月後も元気に生存していた.死亡するマウスでは,CT 画像から算出した健常肺体積が経日的に減少していった.肺組織学的検討では,パラコート投与後7日以内に死亡したものは肺胞出血の所見を認めるとともに,時間経過とともに間質に細胞成分の増加を認めた.1ヶ月後に死亡したものでは,H &E 染色では細胞成分の上昇を認め,正常な肺胞構造はほとんどなく,蜂窩織肺と呼ばれる所見を認めた.Masson-Trichrome 染色では線維化も確認された.一方,人工肺サーファクタントを事前投与した場合には,7日以内死亡はもちろんそれ以降まで生存する場合にも肺組織に線維化を認めなかった.今回の結果から,人工肺サーファクタント事前投与によりパラコート肺の出現が抑制されるとともに生存率も改善されることが明らかになった.今後は,人工肺サーファクタント事前投与によりパラコート肺が抑制される機序の解明と臨床的応用についての検討が必要である.(平成22年10月26日受理)

2010.04.08

The molecular mechanism of human glucagon-like pepetide-1 analog liraglutide on pancreatic beta-cell preservation in obese diabetic model db/db mice *

 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の膵β細胞保護作用の分子機構を明らかにするため,ヒトGLP-1アナログ製剤リラグルチド(LIRA)による糖尿病モデル動物への介入実験を行った.雄性10週齢のdb/db マウスに対し,LIRA もしくはリン酸緩衝液を2日間もしくは2週間皮下投与し,膵ラ氏島の形態学的,生化学的解析に加え,膵β細胞が主に存在する膵ラ氏島中心部の遺伝子発現の変化について,laser capture microdissection,real-time RT-PCR を用い検討した.LIRA の2週間投与は,db/db マウスの代謝パラメーター,インスリン感受性を改善した.LIRA の2週間投与後に採取した膵ラ氏島のグルコース応答性インスリン分泌反応(GSIS),インスリン含量は増加し,中性脂肪含量は減少していた.LIRA の2週間投与は,膵β細胞の分化増殖促進遺伝子,抗アポトーシス遺伝子,抗酸化ストレス遺伝子の発現を増加させ,分化抑制遺伝子,アポトーシス誘導遺伝子,小胞体ストレス遺伝子,脂質合成遺伝子の発現を減じた.LIRA の2日間投与は,僅かに代謝パラメーターを改善したが,膵ラ氏島のGSIS,インスリン含量,中性脂肪含量には影響しなかった.LIRA の2日間投与は,膵β細胞の分化増殖促進遺伝子,抗アポトーシス遺伝子の発現を増加させ,アポトーシス誘導遺伝子の発現を減じたが,酸化ストレス,小胞体ストレス,脂質合成に関する遺伝子の発現には影響しなかった.膵ラ氏島を用いた免疫組織染色(細胞増殖,アポトーシス,酸化ストレス)の結果は,遺伝子解析結果と一致した.LIRA は直接的な細胞動態調節作用とともに,糖脂肪毒性の改善を介した酸化ストレス,小胞体ストレスの軽減作用により膵β細胞量を増加させる.(平成22年10月22日受理)

2010.04.07

The physiological role of 3-phosphoinositide-dependent protein kinase 1 (PDK1) in vascular endothelial cells ~ Investigation by using vascular endothelial cell-specific PDK1 knockour mice *

 種々の成長因子によって支配される細胞内の分子機構にphosophoinositide-dependentprotein kinese 1(PDK1)シグナル伝達系は広く関わると考えられている.本研究では血管内皮細胞特異的PDK1欠損(VEPDK1KO)マウスを作製し,そのフェノタイプを詳細に解析して,血管内皮細胞におけるPDK1シグナルの生理的役割を検討した.その結果,通常食飼育下24週齢のVEPDK1KO マウスでは非欠損コントロール群に比し,耐糖能および全身のインスリン感受性増強を認めた.また血中アディポネクチン値上昇,肝での糖新生系酵素活性の抑制を認め,肝での糖産生の抑制が確認された.インスリン感受性亢進の機構の詳細解明のため生後4週齢から高脂肪食負荷をしたところVEPDK1KO 群では12週齢で既にコントロール群に比し,内臓脂肪量の減少,白色脂肪細胞におけるアディポネクチンmRNA 量は増加,monocyte chemoattractant protein(MCP)-1,レプチン,tumor necrosis factor(TNF)-α のmRNA 量は低下を認めた.その結果,肝でのAMP-activated protein kinase(AMPK)活性化がみられインスリン抵抗性の改善をもたらしたと考えられた.更にVEPDK1KO 群に認められた高脂肪食負荷による内臓肥満あるいは脂肪細胞肥大の抑制には,脂肪組織における血管新生の抑制が関与する可能性が強く示唆された.本研究によって,血管内皮細胞におけるPDK1シグナルが血管新生系調節による脂肪組織の形成に深く関与するとともに,ひいてはインスリン感受性や糖代謝にも影響を及ぼすことが明らかにされた.(平成22年10月22日受理)

2010.04.06

Histopathological effects of intratracheal administration of artificial lung surfactant in a model of murine paraquat lung *

 パラコート中毒に伴う肺障害は「パラコート肺」とも呼ばれており予後不良の徴候であるが,現在までのところ有効な治療方法は開発されていない.我々はパラコート肺の発生機序として,肺胞上皮細胞により血液中から能動的に取り込まれたパラコートによりサーファクタントを産生するⅡ型肺胞上皮細胞が傷害されることが原因ではないかとの仮説を立てた.この仮説を証明するためにマウスのパラコート肺モデルを作製し,人工肺サーファクタント(サーファクテンR,田辺三菱製薬株式会社,大阪)を気管切開下に片側肺へ投与して肺組織学的検討を行った.パラコート単独投与群では,パラコート投与2日後には肺胞内に多数の赤血球を認め,肺出血の所見であった.その後,次第に肺胞構造が破壊され,1ヶ月後には肺線維化が顕著となり,Masson trichrome 染色で線維化が確認できた.2ヶ月後には気腫状になっているものも認められた.サーファクタント片側肺投与群では,1ヶ月後の肺組織においては肺胞隔壁と思われる間質部分が肥厚し細胞成分の増加を認めたが,Masson trichrome 染色ではその部分に線維化の所見はなく肺胞構造も多く残存していた.また,サーファクタント注入側の肺は線維化の領域が明らかに減少していた.以上のことから,パラコート肺は,人工肺サーファクタントにより抑制できる可能性があることが明らかになった.今後は生命予後に及ぼす効果についての検討が必要であると考えられる.(平成22年10月14日受理)

2010.04.05

questionnaire results regarding the doctors’ attitude toward a groupware system in Kawasaki Medical School Hospital *

 グループウェアはInformation Infrastructure functions をサポートするシステムであり,今日,広く利用されつつある.当院においても2006年よりサイボウズが導入されているが利用率は高くない.そこで医師,看護師,コメディカルあるいは事務職などその他の職種に分けて全職員を対象にサイボウズに関連するアンケート調査を2009年8月~9月に行った.その中で,ユーザの中心である医師がどのような意識を有しているのかを報告する.回収率は89.8%であった.サイボウズは96%以上の医師に知られており,よく利用する人は44%であったが,有用なコンテンツがない,ID・パスワードが覚えにくい,画面が分かりにくい,端末が使いたい時に使えない,操作が難しいといった指摘がなされていた.電子カルテ導入以前に実装が望まれていた機能の多くは2010年1月稼働の電子カルテにより実現されたと考えられるが,今後は患者管理やe-mail など電子カルテにはない機能の追加と使いやすい環境整備をめざすことが大切である.(平成22年9月28日受理)

← newer entries older entries →