2012.03.01
Esophageal achalasia treatment – factors associated with the outcome of endoscopic balloon dilatation *
食道アカラシアにおけるバルーン拡張術の有効率と治療効果に影響を与える因子について検討した.対象は2006年1月から2009年5月に,当科で食道アカラシアと診断し,バルーン拡張術を施行した16例(男性5例,女性11例,平均年齢54.8±21.4才)である.食道アカラシアは,臨床症状,食道X 線造影検査, 上部消化管内視鏡検査および食道内圧測定結果により総合的に診断した.全例カルシウム拮抗薬 (アダラートLR(10mg)1~2T)の内服治療のみでは症状のコントロールが不良であったため,入院の上内視鏡的バルーン拡張術を施行した.同治療には,Rigiflex AchalasiaBalloon Dilator(ABD)(Boston Scientific Corp, Boston, Mass)(径30mm)を用い20psi×1分間の拡張を1.0±0.8回(平値±標準偏差)施行した.内視鏡的バルーン拡張術後,症状が消失し食道X 線造影検査にてバリウムの通過が良好な事を確認した後,外来経過観察とした.平均観察期間15.6か月における内視鏡的バルーン拡張術の有効率は62.5%(10/16)であった.また,治療効果に影響を与える因子として,年齢,治療前のLES 静止圧,治療前後のLES 静止圧が示された.(平成24年3月27日受理)
2012.01.06
Two cases of spindle cell carcinoma of the breast – Usefulness of immunohistochemical analysis
2012.01.05
Characteristics of outpatients with abdominal symptoms and functional dyspepsia in the primary-care unit of Kawasaki Medical School Hospital. *
器質的疾患を認めない上腹部不定愁訴患者は, 機能性ディスペプシア(functionaldyspepsia: FD)と呼ばれるようになったが,本邦の外来患者には,国際的な診断基準であるローマⅢ基準の病脳期間を満たす患者が少ないことが,以前から指摘されている.一方,当院総合診療科では,以前から腹部不定愁訴患者の診療を行ってきたが,昨年からは週1回のペースで,腹部不定愁訴外来を開設した.そこで,この3年間に総合診療科を受診した初診患者のうち,腹部不定愁訴患者についてレトロスペクティブにその特徴を検討した.対象は2008年4月1日から2011年3月31日までの3年間に,川崎医科大学総合診療科を受診した初診患者7,250名とした.初診患者のうち腹部症状を訴えた患者は1,184例であり,136例に上部消化管内視鏡検査が施行されたが,30例で器質的疾患が発見された.器質的疾患が除外された106例で,ローマⅢ基準を満たすFD 患者は15例(食後愁訴症候群5例,心窩部痛症候群10例)であり,病悩期間が基準を満たさない上腹部愁訴患者は66例(食後愁訴症候群15例,心窩部痛症候群51例)であった.(平成24年3月17日受理)
2012.01.04
Clinical efficacy of computed tomography and coronectomy for prevention of postoperative inferior alveolar nerve injury occurring after impacted mandibular third molar surgery *
パノラマXP 撮影で下顎埋伏智歯と下顎管(以下は管)が近接した時は抜歯後に下唇知覚障害が起こることがある.下唇知覚障害の発生をより確実に予見するために術前CT 検査を行い,またその発生を可及的に防止するためにcoronectomy(歯冠除去術)を導入し,それらの有用性について検討を行った.平成21年1月から平成22年12月の2年間に,下顎埋伏智歯の抜歯のために川崎医科大学附属病院歯科・口腔外科を受診した患者のうちで,パノラマXP 撮影で下顎埋伏智歯と管が近接した12例,16歯について智歯と管との関係を精査するためにCT 検査を行った.画像検査所見を踏まえて,処置内容ならびに起こりうる術後合併症を説明し処置法を決定した.パノラマXP 所見とCT 検査所見を比較し,埋伏歯と下歯槽神経との関係を検討した.また診療録より処置内容,術後の異常経過の有無を調べた.1)パノラマXP では管の陰影欠損が13歯,管の湾曲が2歯であった.2)C T 検査での管と歯根の関係はType2(歯根の管内への突出)が13歯で,3歯は突出がなかった.3)10歯(すべてType2)は経過観察が選択され,3歯は歯冠を分割した通法の抜歯術,3歯(すべてType2)は歯冠除去術を行った.4)異常経過はなかった.パノラマXP で下顎埋伏智歯歯根により管壁に陰影欠損もしくは湾曲が見られた時は,CT 検査で歯根の管内突出が確認された.このような場合は,通法の歯冠と歯根を同時に摘出する抜歯術により下唇知覚障害の可能性が高くなることが推測され,追加のCT 検査は患者の理解に役立った.下唇知覚障害の発生を防ぐことが可能な歯冠切除術は患者に納得の得られる有効な選択肢になると思われた.(平成24年1月25日受理)
2012.01.02
Preoperative pathological diagnosis of breast cancer *
乳房の病変に対する病理学的診断には穿刺吸引細胞診(FNAC)や,針生検(CNB)などの方法が用いられるが,FNAC はときに鑑別困難や検体不適正を生じ,診断に至らない症例が存在することが指摘されている.そのため,近年では低侵襲で組織学的情報が得られるCNB を最初から行う症例が増加しているが,組織型の推定や浸潤の有無の判断など,病変の一部分からなる診断であることに起因する問題もある. 今回,2010年1月から2010年12月の1年間に,当科で術前療法を行わずに手術を施行した原発性乳癌症例180例を対象として,FNAC およびCNB のそれぞれの検査法の精度を検討した. 術前にFNAC が施行された症例は59例で,「悪性」と判定された症例は39例,「悪性の疑い」7例,「鑑別困難」7例,「正常あるいは良性」4例,「検体不適正」2例であった.感度は66.1%で,非浸潤性乳管癌や腫瘍径の小さな乳頭腺管癌,硬癌がFNAC で診断されにくいことが示された. 術前にCNB が施行された症例は138例で,浸潤性乳管癌や特殊型はCNB 結果と最終病理診断の一致率が高い.しかし,CNB で非浸潤性乳管癌と診断された症例は62.1%が最終的に浸潤癌であった.また,CNB でのホルモン感受性の検索では最終病理診断との間に高い相関性を認め,癌の全体像を反映していると考えられた.HER-2過剰発現については,CNB 検体でのHercep testがscore3+ の症例では75%が最終的にHER-2陽性であった.しかし,CNB がscore2+ の症例のうち最終的にHER-2陽性であったのは16.6%であり,多くは最終病理診断でHER-2陰性であった.CNB 検体でのHER-2の評価は有用と考えられるが,さらに感度と陽性的中率を上げる努力が必要であり,必要に応じFISH 法を追加することが望ましいと考えられた.(平成23年10月31日受理)




