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Online edition:ISSN 2758-089X

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1994.05.21

Introduction of the Core Curriculum for the Department of Medical Informatics of Kawasaki University of Medical Welfare *

川崎医療福祉大学医療技術学部医療情報学科の開設に当たり教育課程の基本方針を次のように定めた.①プログラミング言語入門,②プログラミング技法の習熟,③病院情報システムの構築,④卒業研究の4項目を教育の主目標としてカリキュラム編成を行った.コア・カリキュラムを構成する専門教育科目は医学概論でPOSによるカルテの仕組みを学び,プログラミングI, IIおよび同演習ではC言語によるプログラミングの基礎を修め,医療情報学および同演習では病院システムの基礎と実際を学び病院現場で実行できるプログラムを完成させる.医療情報学科のカリキュラムはプログラム作成が自ら出来る能力を持った人材を養成することを目標としている.                  (平成6年6月10日採用)

1994.05.20

Diagnosis of Mycoplasmal Pneumonia ―Diagnosis by Scoring and Polymerase Chain Reaction― *

マイコプラズマ肺炎(マ肺炎)の診断について,自験例を基に以下の事柄を中心に述べた.スコアによるマ肺炎診断の試み:マ肺炎の臨床的特徴と考えられた流行期,年齢,基礎疾患,発熱,白血球数,胸部X線像の各項目に点数をつけスコア表を作製した.6点以上の場合,マ肺炎では83.9%を占めたのに対して,細菌性肺炎はわずか2.2%であった.スコア表は,マ肺炎以外の非定型肺炎との鑑別は困難であるが,初診時に細菌性肺炎と鑑別するのに有用であると考えられた.血清学的検査の検討:マ肺炎80例に施行した補体結合反応(CF)と粒子凝集反応(PA)についてretrospectiveな検討を行った.ベア血清で4倍以上の抗体価変動を評価するには,CFの場合onsetから3日以内と11日以後のペア血清を測定することが理想と考えられた.PAに抗体価変動なくCF4≧→16程度の抗体価変動を11例に認めた.これらは血清学的にマ肺炎と確定されるべきか迷う症例であった. PCR法を用いたマ肺炎の迅速診断:PCR法によるマ肺炎の診断は感度,特異度共に優れており,血清抗体価の上昇しないマ肺炎の診断にも有用と考えられた.  (平成6年5月2日採用)

1994.05.19

Current Status of Hospital Infection Control in Kawasaki Medical School Hospital *

川崎医科大学附属病院における院内感染防止委員会活動の現況と若干の問題点を報告した.MRSA感染・保菌患者は, 1987年10月26日始めて同定されてから1992年12月31日までに,総実数1,354人で,入院患者総数49,974人の2.7%に当たる.病棟別の検出頻度は,救急部のICUが圧倒的に多く1ベッド当り27.1人,次いで救急部4階が4.8人,10階南病棟が1.7人の順であった.中央検査部微生物検査室における1990~1992年の総検体数に対するMRSAの占める年度別割合は7.3%から9.5%と漸増していた.川崎学園職員課に届け出のあったHBV, HCV関連事故は, 1988~1992年において,年間64~111件,合計390件で,その中76%が針刺し事故であった.医療スタッフの肝炎感染率は,B型肝炎3.9%, C型肝炎1.7%であった.問題の解決には,感染管理医と感染管理専門看護婦の養成と配置,抗菌抗生剤使用に対する管理,当面の環境整備,1次消毒法の改善,医療スタッフの自覚のためさらなる教育が急務であり,クリーンルームと感染症病棟の設置,空調の整備など長期的な改善に加えて病院感染防止のための費用を公的に負担するシステムの導入が必要である.(平成6年4月4日採用)

1994.05.18

Changes and Advancements in the Medical Care of Breast Cancer *

川崎医科大学内分泌外科における乳癌診療・研究の変遷と進歩について述べる. 1975~1993年までに計11,965例の新患外来患者と計771例の原発乳癌患者の診断と治療を行った.外来新患患者数と乳癌症例数は徐々に増加し,ここ7年間は前者は年間約700例を超え,後者は年間50例を超えている.最近乳癌症例は早期例が増え,病期Iが約40%を占めるようになり,病期IIとほぼ同数となった.乳腺疾患の診断にはmammography, echographyのほかthermographyとfine needle aspiration cytology (FNAC)を取り入れている. 1984~1992年の乳癌312例におけるFNACの成績は陽性率85%, false negative rate 5%であった.手術術式については1985年よりmodified radical mastectomy がstandard radical mastectomyより多くなり,最近では約2/3の症例にmodified radical mastectomy が行われている.1986年よりbreast conserving therapyが開始され, 1992年までに65例にこの治療を行い,局所再発はなく,骨転移が1例のみで,良好な治療成績が得られている.再発乳癌に対しては定期的な画像診断と腫瘍マーカー検査による早期発見とquality of lifeを考慮した積極的な治療を行っている.さらにDMBAラット乳癌やMCF-7細胞にFGF-4遺伝子とlacZ遺伝子を組み込んだMKL-4乳癌転移モデルを用いた基礎的研究も行っている.   (平成6年6月6日採用)

1994.05.17

Up-to-date of Drug Therapy for Diabetes Mellitus *

近年,日本では糖尿病患者は非常に増加している.糖尿病治療の最終的な目標は急性および慢性合併症を予防することである.この小レビューでは,1)インスリンと経口血糖降下剤の進歩,2)血糖コントロールのための現代の戦略,そして3)薬物療法のいくつかの問題点を簡単にまとめた.                 (平成6年4月28日採用)

1994.05.16

Lymphoscintigraphy *

リンパ系の核医学診断の有用性および問題点について検討を行った.リンパ節シンチグラフィ製剤として各種放射性コロイドのリンパ節集積性を比較すると,粒子径が小さく,球状を呈するものほど集積は大であり, 99mTc-硫化アンチモンコロイドが優れていた.99mTc-レニウムコロイド(ReC)は一定の形状を呈さないものの,粒子径が小さくリンパ節シンチグラフィとして優れていた.リンパ節シンチグラフィは悪性リンパ腫や皮膚悪性腫瘍のリンパ節転移診断において有用であるものの,正常リンパ節でもvariationに富むため,早期診断よりも経過観察に優れていた.泌尿器科領域では内腸骨リンパ節,また乳癌においては胸骨傍リンパ節描出の重要性を強調した.またリンパ浮腫においては99mTc-MDPと99mTc-ReCの同時投与および99mTc-HSA・D の皮下法によるdynamic studyが有用であった.(平成6年4月23日採用)

1994.05.15

Studies of Several Types of Thermometers and Boby Temperature *

体温の異常は臨床的に重要な徴候であり,それを知るための体温測定法も進歩してきている.私共がBedsideで用いた体温測定法や,臨床実験,動物実験で用いた体温測定法とその結果について考察した.Bedsideにおいては水銀体温計から電子体温計に変った.これは1分間の測定でマイクロコンピューターの使用により平衡温を予測し,デジタル表示化をする方法で,簡便性に優れている.この方法では,健康若年者で37℃をこえる微熱を呈することがあるので,注意を必要とする.担癌動物における腫瘍熱を測定するために,18年前にはセンサー付き発信カプセルを家兎の項部に埋没し,アンテナで受信し,体温に変換するという,大がかりな装置を必要とした.小型の携帯用S型温度測定装置を用いれば,現在では簡単に測定できると考えられる.S型体温計は小型で約7日間の連続的な体温測定とその記録ができ,パソコンを介して図表化できる.この機器による体温測定方法の工夫や2,3の疾患における測定結果について報告をした.現在は深部温モニター装置(CORETEMP)で体温の連続記録の結果を検討中であり,その新しい臨床応用の有用性を探している.    (平成6年4月18日採用)

1994.05.14

Criteria for the Identification of Arteries *

動脈の同定ないし相同決定のための規準について,レマネおよびダイアモンドを参考にしながら次のように再整理した.すなわち,動脈そのものの特徴として分岐の起始,分枝,終枝,吻合,他枝との位置関係,分布領域があげられ,また静脈,神経,筋や臓器および骨との位置的関係が経路に関する同定の根拠となる.さらに時間的な要素を含むものとして入れ子の関係で,個体発生上の継続,種内変異上の連接,種間変異上の連接が順にあげられる.これらの分析によって動脈の相同性とその進化が明らかにされ,人体の特殊性や自然界におけるヒトの位置づけへの理解が深まるものと期待される.(平成6年5月9日採用)

1994.05.13

Gastroenterological Endoscopy and Observation *

近年,消化器内視鏡の機器と技術の進歩には目覚しいものがある.しかし,内視鏡学の基本は,よく視ること,詳細に観察することにある.内視鏡像を,正しく視知覚することが非常に重要である.このような観点から,われわれは脂肪肝とDubin-Johnson症候群の腹腔鏡的肝表面像について考察を加えた.       (平成6年4月30日採用)

1994.05.12

Clinical Applications of Thoracoscopy in a Field of Internal Medicine ―Pleural Biopsy for Pleurisy and Treatment of Idiopathic Spontaneous Pneumothorax― *

昭和62年7月に胸腔鏡を導入して,以降胸膜生検に際して胸腔鏡を用いた直視下生検および特発性自然気胸に対して肺嚢胞電気凝固治療を行って来た.近年の結核の発症年齢の高齢化に伴い鑑別診断が重要となり,かつ胸膜生検で確診が得られる癌性および結核性胸膜炎については,当科の胸腔鏡下胸膜生検の陽性率はそれぞれ85% (29/34), 67% (6/9),合わせて81% (35/43)であり,針生検法に比べて数段高いものになっている.特に癌性胸膜炎例では,他の検査法では診断されない比較的早期と考えられる症例の確診も可能としている.同時に胸腔内の観察により,さまざまな有用な肉眼所見も得られている.また,高身長やせ型の若年男子に発症し易い特発性自然気胸に対しては,初回発症時から胸腔鏡下肺嚢胞電気凝固が適応となり,当科で,も充分な症例とはいえないが本治療法を施行し成果を挙げている.この数年来いわゆる“胸腔鏡手術”が開発され発展したが,私たち内科医が行える胸腔鏡操作は,局所麻酔下に施行できる胸膜生検および自然気胸治療である.若干の技術修得は必要であるが,重篤な合併症はなく安全に行える有用な検査および治療法といえる.                              (平成6年4月21日採用)

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