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Online edition:ISSN 2758-089X

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1994.05.11

Photodynamic Activation of Macrophages and Cicatrization of Cancer by Treatment with a Cyanine Dye, Lumin *

化学構造式の明らかな増感剤でシアニン系ペンタチメン三核型感光色素であるルミンのマクロファージ(mφ)活性作用に着目し, BRMによる癌瘢痕化の実験を試みた.ルミンについては,古くから難治性潰瘍,創傷治癒の促進作用が知られているが,ルミンはB-細胞,T-細胞を介するmφの活性を促進することが分かり, BRMによる各種培養癌細胞をヌードマウスに移植して癌免疫療法の病理学的研究を行った.Xenografts, allograftsを作成し,ルミン50 ng/mouse 皮下注射と電気メスによる創傷治癒機転の誘発と共に光照射を行い,ルミンの活性を励起した.その結果,リンパ球増殖とmφ活性により癌巣をとりまく著明な線維芽細胞の増殖に次いで線維化がみられ癌は瘢痕化へと進行した.他方,肝癌治療,胃癌治療としてエタノールの癌巣内注射が行われているが,エタノールにエタノール可溶性のルミンを加え癌の凝固壊死を起こし,ルミン飲料を長期続けるとmφ活性とリンパ球増殖が起こり癌巣の瘢痕化が促進した.従来,免疫療法は免疫細胞よりのサイトカインによる殺癌細胞を目的としたものであるが,免疫細胞の活性化の恒常性を長期間維持することにより, BRMによる癌間質の線維芽細胞を増殖し, collagen増殖による癌封じ込め,転移を抑制し,さらに癌浸潤による組織傷害巣の修復を促し,終局的には非特異的な癌瘢痕化を起こし癌免疫療法として重視すべきものと考える.                      (平成6年2月10日採用)

1994.05.10

Teaching Attitude of Nursing Students and Physical Therapy Students in Patient Education *

リハビリテーションを嫌がる老人患者に対する指導態度を看護科と理学療法学部の学生について比較した.紙上ロールプレイの方法を用いて患者に対する応対のしかたを調べた.そして,個別回答分析法によって共感的態度を評価した.対象学生 川崎医療短期大学      川崎リハビリテーション学院第一看看護科1年 52    理学療法学部 1年 39第二看看護科1年 51            2年 35第一看看護科3年 51            3年 37第一看護科3年の学生が一番共感的態度を示し,看護科1年の学生がそれに続いた.理学療法学部の学生は訓練者中心の態度であった.リハビリテーションの訓練においては,看護婦は援助者,理学療法士は訓練者としての役割意識を持っているからであろう.             (平成6年4月30日採用)

1994.05.09

Study of Very Low Birth Weight Infants under 1500g in the Neonatal Intensive Care Unit of Kawasaki Medical School ―Results of 19 Years’ Experience― *

昭和50年1月から平成5年12月までに当院に入院した極小未熟児185名の保育成績が,新生児用人工呼吸器を使用できなかった前期(昭和50年~56年),人工呼吸器を導入した中期(昭和57年~63年)および人工肺surfactant投与を併用した後期(平成1年~5年)の3期に分けて検討された.生存児136名(生存率73.5%)の内訳は前期46名(64%),中期58名(78.4%),後期32名(82.1%)であった.中期,後期における出生体重1000g以上児の大多数は生存したが,800g未満児は35%しか生存できなかった.呼吸窮迫症候群などの急性呼吸障害はサーファクタント投与と人工呼吸器管理により著しく改善した.退院後2年以上経過した極小未熟児114名の長期予後をみると,10名(8.8%)に後障害が認められた.重症障害児4名,軽症障害児6名であった.中期,後期は前期より胎齢の若い,そして体重の小さい未熟児が多く出生したが,生存率は著しく伸び,その上,後障害児が増加する傾向は認められなかった.          (平成6年5月23日採用)

1994.05.08

Surgical Treatment for Hyperparathyroidism ―Twenty Years Experience in Kawasaki Medical School― *

川崎医科大学が創立して以来1993年12月31日までに内分泌外科教室が治療した上皮小体機能亢進症患者は142例である.そのうち原発性上皮小体機能亢進症は28例(女性16例,男性12例,平均年齢52.9歳)で, bone type 4例, stone type 17例, chemical type 7例であった.組織学的には腺腫26例(うち1例はdouble adenoma),過形成1例,癌との境界領域と診断されたものが1例である.二次性上皮小体機能亢進症は114例(女性50例,男性64例,平均年齢48.3歳)に手術が行われたが,原疾患はすべて慢性腎不全で,全例が血液透析療法を受けており,平均透析期間は11.7年であった.腺腫に対しては腺腫の摘出が,過形成に対しては上皮小体全摘および自家移植術が行われたが,6例に移植腺の再燃が認められた.術前に認められた骨関節痛や掻痒などの症状は術後速やかに消退し,術後数年にわたり骨量の経時的増加が認められた.            (平成6年6月10日採用)

1994.05.07

Transcatheter Arterial Embolization for Emergency Disease *

近年,経動脈的塞栓術(TAE)は救急疾患における大量出血に対する,初期治療として大きく位置付けられてきている.TAEの適応は外傷性臓器損傷,臓器動脈瘤や動静脈奇形の破裂,消化管出血,骨盤骨折による大量出血である.1)消化管出血患者における血管造影は診断および治療にもつながる手段として,広く認識されている.しかし血管造影の診断能に関する最も大きな限界は少なくとも0.5 ml/分以上の持続した出血しか描出できないことであり,また下部消化管出血では過剰塞栓は腸管壊死を惹起するため,慎重であらねばならない.2)臓器損傷による大量出血は救急領域では比較的頻度の高い疾患で,一般的に肝臓癌の自然破裂例以外は良性疾患が多く,かつ自然に止血することが多く,特に後腹膜腔出血では自然止血例が多い.これらの臓器損傷による大量出血に対し,CTや腹部超音波検査による出血部位および量の診断に基づき,我々はTAEか手術かの治療法の選択をせねばならない.外傷性副腎破裂は比較的稀な疾患であるが,時に出血性ショックを引き起こすことがあり, TAEは副腎破裂による大量出血に対しても有効な治療となる.3)骨盤骨折による大量出血に対するTAEは手術にも優る最も有用な手段として,重症例では第一選択となっている.Interventional Radiology と画像技術の進歩により,今後も救急疾患に対する緊急TAEは増加の一途をたどると考えられる.             (平成6年4月30日採用)

1994.05.06

The Neutrophil and Apoptosis *

細胞死の2つの形態がアポトーシスと壊死であることは,広く受け入れられている.アポトーシスの特徴は,ヌクレオソーム単位のDNA断片化,クロマチン濃縮,細胞質の分断が見られることであり,この過程の初期の段階では,ミトコンドリアやその他の細胞質内小器官に構造的な変化は,起こらない.一方,壊死は,アポトーシスとは形態学的にも生化学的にも異なった発現の仕方をする.壊死の開始から,細胞質内の構築は,完全に崩壊するが,核は,損なわれないで残る.アポトーシスによる細胞死は,生理的な過程のもとでも病理学的な状況のもとでも出現する基本的な死の様式である.アポトーシスは,老化好中球が死ぬ機序として認められている.多くの組織でアポトチック好中球は,細胞が溶解する前にマクロファージによって貪食される.そうすると,好中球の細胞質内の毒性の構成成分によって引き起こされる組織の損傷が妨げられることになる.アポトチック細胞が“老化自己”としてマクロファージの認識を受けるのは,ビトロネクチン受容体を仲介することが明らかになっている.しかし,アポトチック細胞のマクロファージ認識にかかわる機序は,それほど単純ではなさそうである.(平成6年4月18日採用)

1994.05.05

Pathologic Gross Specimens in Medical Education *

川崎医科大学現代医学教育博物館には約4000点もの貴重な病理肉眼標本(液浸標本,フォリオ型液浸標本,含浸標本,樹脂包埋標本,鋳型標本)が作製され,その約半分が展示されている.われわれはこれらの病理肉眼標本の特徴や作製方法を紹介するとともに,本学における医学教育のなかで病理肉眼標本がどのように利用されているかについて述べる.(平成6年4月19日採用)

1994.05.04

Role of Cytokines in Controlling Extracellular Matrix Gene Expression *

近年,サイトカインの細胞外マトリックス成分の遺伝子発現調節にはたす役割が注目されるようになってきた.本稿ではサイトカインの細胞外マトリックス成分,特に皮膚や骨の主構成蛋白であるI型コラーゲンの遺伝子発現に対する影響について述べた.TNF-αはα1(I)コラーゲンを転写レベルで抑制し,α1(I)コラーゲンプロモーター遺伝子の-107までの部分を介することが明らかにされた.           (平成6年5月2日採用)

1994.05.03

Two Questions Arising from Surgical Pathology of Thyroid Carcinoma *

甲状腺癌は不思議なことに組織によって全く性質が異なる.分化癌の予後は極めて良好であるが,これに反し,末分化癌の予後は極端に悪く,治癒することは稀である.我々の教室では1975年の開設以来現在までに448例の甲状腺癌手術症例を経験した.これらの症例を詳細に検討していくうちに,2,3の点について,現在病理学的常識と考えられている点について,疑問を持つに至ったのでその点について論じてみたい.1.乳頭癌と濾胞癌の組織学的分類は臨床的に有意義か?日本甲状腺外科検討会案の分類によると臨床的事実と一致せず有意義とは云えぬ.2.甲状腺の扁平上皮癌は稀な癌か?剖検例を検討すると28.4%に見られ,決して稀な存在とは云えない.むしろ,未分化癌とともに乳頭癌が長期の経過たどった際の自然な過程の1つとも云える.                    (平成6年6月11日採用)

1994.05.02

Progress and Clinical Application of Bone Mineral Quantifying Methods *

高齢化人口の増加とともに,退行性疾患のーつである退行期骨粗鬆症は医学的のみならず社会的にも注目されている.骨粗鬆症に基づく骨折は,「寝たきり老人」の原因として頻度が多いので,その診断や治療は重要である.骨の強度は硬度つまり骨塩量に専ら依存する.したがって,骨粗鬆症による骨折の危険性を予知するには,信頼性の高い骨塩定量法を用いることが必要である.本稿では,川崎医科大学 放射線(核医学)で施行している骨塩定量法の概要,基本性能,特徴,臨床応用および将来展望について概説する.本稿がより良い骨粗鬆症診療の一助として利用されることが期待される.(平成6年1月20日採用)

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