h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1994.05.01

Burning Mouth Syndrome *

舌に器質的な異常が認められていないのに,表在性で持続性の舌の痛みを訴える疾患が増加している.この疾患の原因については明らかでないため,心因性要素が指摘されている.しかし口腔は食物などにより常に温熱刺激や冷温刺激をうけているため,舌を詳細に観察すると些細な異常が存在している.また本疾患は比較的高齢者に多くみられるために,全身的基礎疾患に罹患していることも考えられる.これら要因について検討を行い舌痛発生の可能性について考察した.                 (平成6年5月6日採用)

1994.04.06

The Effect of Hypoxia on Ca2+ transient in Isolated Guinea Pig Ventricular Myocytes *

〔目的〕心筋虚血時の心筋細胞内Ca2+動態の異常を検討する目的でFura2-AMを用いてモルモットの単離心筋細胞で低酸素条件下でのCa2+ transient を測定した.また高頻度の刺激を与えてCa2+ transientを測定し,それらの変化について観察した.〔対象と方法〕4-7週齢(300~400 g)のハートレー系モルモットの心筋からcollagenaseを用いて単離心室筋細胞を得た.Ca2+ transientは, Fura2-AMを負荷した細胞を340 nm と380 nmの紫外光で励起, 510 nm の蛍光波長を測定し, NEC PC-9801を用いて両者の比を求めた.低酸素負荷下でのCa2+ transient (以下低酸素条件)は, 100% N2を通気したTyrode液を30分以上灌流することによって得た.また高頻度刺激は,細胞外より1 sec 間隔の基本刺激で駆動中に200 msec 間隔の高頻度刺激を3発加え,前後の変化を観察した.〔結果〕心筋細胞に高頻度刺激を加えるときCa2+ transient は加重して段階的に上昇する,低酸素条件に放置するときは,高頻度刺激時に段階的増加はみられなかった. Ca2+ transientが立ち上がりの時点よりピーク値の1/2まで減衰するまでの時間(1/2 decay time)は,低酸素条件で短縮していた.また,高頻度刺激を加えた後では,有酸素条件では刺激を加える前に比べて差がなかったのに対して,低酸素条件ではさらに短縮するのがみられた.しかし1/4まで減衰するまでの時間(1/4 decay time)を測定するとき, Ca2+ transient下降相の短縮は消失する. Ca2+ transientの振幅は,低酸素条件に2時間放置して初めて高頻度刺激により減少した.静止時のCa2+レベル(EDFR)は,低酸素条件において高頻度刺激を加えるときに次第に上昇した.〔考察〕低酸素状態では単離心筋細胞内のATPが減少し, ATP依存性のK+ channel の開口により活動電位持続時間が短縮することで1/2 decaytimeは短縮し,またATPの減少が筋小胞体のATP依存性のCa2+取り込みの減少をもたらしたために,1/4 decay time はむしろ延長し,さらに高頻度刺激によりEDFRが上昇したのではないかと考えられた.                (平成6年10月31日採用)

1994.04.05

Quantitative Analysis of Fibronectin and its Suppressive Effect on Collagen Gel Contraction, Using Scar Tissue-derived Fibroblasts *

同一症例より入手した瘢痕由来線維芽細胞(SF)と正常皮膚由来線維芽細胞(NF)を検体として, ELISA法を用い単層培養下の細胞とその培養上清についてフィブロネクチンの定量比較を行った.その結果,NF・SFでフィブロネクチン量に差はなかった.降圧剤であるMinoxidilをコラーゲンゲルに加えることで,SFのゲル収縮を抑制した.そして同一症例のNFのゲル収縮を対照とした場合,NFと同等の収縮に抑制するためには,SFに100~200μg/mlのMinoxidilを加えるのが適当であった. (平成6年10月29日採用)

1994.04.04

Collagen Gel Contraction by Human Fibroblasts Isolated from Normal Skin and Scar Tissue *

外科的治療時に得られた種々の瘢痕組織と正常皮膚を用いて,ゲル収縮実験と蛋白質パターンの解析を行った.ゲル収縮実験はI型コラーゲン溶液を用いたコラーゲンゲル培養法により,蛋白質パターンは2次元電気泳動法を用いた.同一症例から得られた瘢痕組織と正常皮膚からそれぞれの線維芽細胞を遊出させて実験を行った.コラーゲンゲル収縮実験では,今回実験した10症例すべてで正常皮膚由来の線維芽細胞より瘢痕由来のものの方が早期より収縮を始め,またその程度も大きかった.2次元電気泳動では,pI 5.4, 43kDのspotが瘢痕組織由来線維芽細胞で優位に存在していた.                                 (平成6年10月29日採用)

1994.04.03

Study for Epidemiological Evaluation of Mass Screening for Colorectal Cancer : Special Reference to Effectiveness of Examination by the Character of Detected Colorectal Cancer *

わが国では大腸がん死亡率の増加により1992年から大腸がん検診が国の施策としても実施されるに至っている.しかしながら免疫便潜血検査をスクリーニング検査とした大腸がん検診の有効性は充分な評価がなされていない.そこでこの検診の有効性を疫学的な立場からretrospectiveな観察的手法を用いて検討した. 1989年から1993年までにわれわれの大学病院において手術された大腸がん症例をもとに検診発見がん(検診群:61例)と外来発見がん(外来群:234例)に分け,大腸がんの性状および生存率を比較した.性別および年齢構成は両群に差はなかった.検診群では10 mm 以上mm未満の比較的小型のがんが27例(44.3%)と多かった.肉眼型分類では2型が33例(54.1%)で最も多く次いで0型(早期がん)が19例(31.2%)であった.進行度別ではDukes Aが28例(45.9%)で最も多かった.一方外来群では50mm以上の大型のがんが116例(49.6%)と多かった.肉眼型分類は2型が155例(66.2%)で最も多く0型は33例(14.1%)であった.進行度別ではDukes Cが105例(44.9%)であった.組織型は両群とも中・高分化型腺がんが多く有意差はなかった.次に累積生存率を比較すると5年生存率は検診群が88.9%,外来群が58.8%であり統計学的に有意差を認めた.以上発見がんの性状および生存率の検討からより早期で予後の良いがんが発見されており,免疫便潜血検査をスクリーニング法とした大腸がん検診の効果が示された.(平成6年10月26日採用)

1994.04.02

A Study of Prediction of the Malignancy of Hepatocellular Carcinoma Using Aspiration Needle Biopsy Tissues *

肝細胞癌(HCC)における組織学的分化度と生物学的悪性度の比較・検討と,さらに内科的治療例に対する予後判定の指標を得る目的で,種々の組織学的マーカー染色を経皮的吸引針生検組織を用いて検討した.マーカー検索は, Ki-67, PCNA(proliferating cell nuclear antigen)およびp53の免疫染色と, AgNORs(argyrophilic nucleolar organizer regions)染色を行った.材料は肝細胞癌60症例68腫瘤から経皮的吸引針生検によって得られたHCC組織の10%ホルマリン固定,パラフィン包埋組織標本を用いた.免疫染色ではそれぞれのLabeling Index (LI)を求め, AgNORsでは, Type l(核小体そのものを表す), Type 2 (Type l内の辺縁部にsmall black dot が集まったもの), Type 3 (核小体にcluster状に集簇したdot),とType 4((核小体外に孤立性に散在するdot)に分類し,Type 2~4の細胞100個あたりのcount数を計測して検討した.疾病対照としては肝硬変(LC, 25例),慢性持続性肝炎(CPH, 11例)を用いた.HCCのEdmondsonグレード(以下Ed)I~Ⅲの各グループ間での上記各マーカーの染色結果は, Ki-67, p53, AgNORs Type 3および4ではEdの上昇すなHCC細胞の分化度の低下にしたがってそれぞれの平均計測値が増大したので, HCCにおける脱分化と増殖能の増大ないし遺伝子変異との関連性が示唆された. PCNAはCPHで有意に低値であったが,LCとHCCの各組織型間の相関はみられなかった. AgNORs Type 2 はLCでもっとも高値で,HCCではEd l~Ⅲにしたがって漸減したので,今回の検索材料においては,それは細胞の脱分化に逆相関することが示唆された.肝動脈塞栓療法十経皮的エタノール局注療法を受けHCC症例のうち,単発性で境界明瞭な3cm径以下のEdl病変について,治療後1年以内の再発の有(n=13),無(n=15)により2群に分け,各種マーカーの染色性を比較すると, Ki-67, p53, AgNORs Type 3および4の平均計測値が統計的には有意差はなかったが,再発群でそれぞれ高値であった.また,これらのマーカーで非常に高い計測値を示すものはほとんど再発群に属していた.これらマーカー染色性による両群判別の意義を検討すると, p53染色性が両群を分けるのに有意な要素であった.                      (平成6年10月20日採用)

1994.04.01

US-guided Intratumoral Injection-Usefulness of Percutaneous Ethanol or Acetic Acid Injection for Hepatocellular Carcinoma *

1987年10月から1994年4月までの6年半の間にエタノール注入療法(PEIT)を行った肝細胞癌198例(559回)について検討した.また,酢酸注入療法(PAIT)による治療経験をあわせて報告した. PEIT後1年以内の生存者は26例中23例(88.4%)と良好であった. PEIT後2年~3年の間では30例中17例(56.6%)生存していた.径10mm以内のHCC 9例に対してPEITを施行したが,局所再発は1例のみ(11 .1%)で,小肝癌ではUS上ほぼ消失したと思われるものもあった.酢酸注入を行ったものは4例(15回)のみであるが,転移性肝癌の縮小を認めた.また, PEITが無効であったHCC例において, AFPの著明な低下とCT上強い壊死効果がみられた. PEIT無効例に対するPAITの有効性については今後検討する予定である.                  (平成6年10月8日採用)

1994.03.08

A Case of Pulmonary Dirofilariasis *

人畜共通感染症(Zoonosis)のーつである肺犬糸状虫症(Pulmonary dirofilariasis)の一例を経験した.症例は70歳,女性,家業は農業,集団検診にて胸部異常陰影を指摘されて来院した.胸部X線写真上,右上肺野S3に2cm大の銭型陰影を認めた.各種検査にて確定診断がつかず,増大傾向がみられ肺癌も否定出来ないため,胸腔鏡下肺楔状切除を行なった.摘出標本の病理組織学的検索で壊死性組織の中に犬糸状虫(Dirofilaria immitis)と思われる虫体を確認し肺犬糸状虫症と診断した.本症は比較的稀な疾患であるが,近年集団検診により異常陰影として発見される機会も増加しており,肺野の銭型陰影の鑑別診断の一つとして念頭におく必要がある.                   (平成6年9月13日採用)

1994.03.07

A Life Saving Case of Alcoholic Hepatitis with Fulminant *

劇症化を示したアルコール性肝炎を経験した.症例は,47歳男性で黄疸を主訴に来院した.患者は大量飲酒者で,特に入院前1ヶ月間は8~10合/日連日飲酒しており,入院時Ⅱ~Ⅲ度の肝性昏睡を呈しており, T-Bil. 22.4 mg/dlと高度の黄疸を認め,プロトロンビン時間も20.2秒と延長していたため,アルコール性肝炎の劇症化例と考え,治療を開始した.血漿交換,ステロイド,グルカゴンーインスリン療法,アミノレバン,ラクツロース,利尿剤などにより症状軽快した.腹腔鏡下肝生検を施行し,肝硬変の像が得られた.(平成6年9月13日採用)

1994.03.06

Muscle Evoked Potentials of the Trapezius Muscle Induced by Stimulation of the Ulnar Nerve and Median Nerve at the Level of the Elbow Joint in Normal Subjects and Cerebrovascular Disease Patients *

1.正常人36名,脳血管障害による片麻痺患者10名を対象に,尺骨神経,正中神経の刺激により僧帽筋上部線維から誘発電位を導出した.尺骨神経と正中神経は,肘関節のレベルで,別々に,電流の強さは超最大刺激,刺激の幅は0.1 msecで,心電図のR波をトリガーとしてT波の終了後に刺激が発生するようにdelayを設けて刺激した.誘発電位は表面電極により導出し,50回の連続記録を行った.2.誘発筋電図には,30~40 msec 前後に潜時を持つ波(S波)と60~70 msec前後に潜時を持つ波(L波)の二つの波が区別できた.3.正常人では,刺激と同側僧帽筋からの出現率(全被検者の刺激総数に対する出現総数の比率)は,尺骨神経刺激のS波0.45, L波0.32,正中神経刺激のS波0.12, L波0.07,刺激と反対側僧帽筋からの出現率は,尺骨神経刺激のS波0.01, L波0.001 ,正中神経刺激のS波0.02, L波0であった.一方,片麻痺患者では,刺激と同側僧帽筋からの出現率は,非麻痺側尺骨神経刺激のS波0.86, L波0.80,麻痺側尺骨神経刺激のS波0.52, L波0.40,非麻痺側正中神経刺激のS波0.81, L波0.67,麻痺側正中神経刺激のS波0.63, L波0.42,刺激と反対側僧帽筋からの出現率は,非麻痺側尺骨神経刺激のS波0.62, L波0.62,麻痺側尺骨神経刺激のS波0,33, L波0.27,非麻痺側正中神経刺激のS波0.49, L波0.51,麻痺側正中神経刺激のS波0.36, L波0.41で,正常人より出現率が高かった.4.正常人で,刺激と同側僧帽筋から得られた電位の平均振幅は,尺骨神経刺激のS波63.7±55.9μV (n=813), L波66.1±56.1μV (n=569),正中神経刺激のS波68.6±77.8μV (n=223), L波35.1±20.5μV (n=130)であった.一方,片麻痺患者では,刺激と同側僧帽筋から得られた電位の平均振幅は,非麻痺側尺骨神経刺激のS波335.3±354.5μV(n=43l), L波158.1±163.8μV(n=400),非麻痺側正中神経刺激のS波255.5±244.4μV (n=404), L波227.8±169.9μV (n=336)で,正常人より振幅が大きかった.5.正常人で,安静時の尺骨神経刺激の場合と手指外転筋随意収縮時の尺骨神経刺激の場合を比較すると,手指外転筋随意収縮時にL波の出現率が高くなった.6.この誘発筋電図の経路,機序の詳細は不明であるが,S波は spino-bulbo-spinal reflex, L波は大脳皮質を経由するlong-loop reflex と考える.(平成6年6月13日採用)

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