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Online edition:ISSN 2758-089X

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1992.04.09

A Case of Anorexia Nervosa Complicated by Pseudo-Bartter Syndrome *

従来より利尿剤,下剤などを濫用する思春期やせ症にPseudo-Bartter症候群が合併する症例が報告されている.今回われわれは,思春期やせ症で利尿剤や下剤の濫用中止後も低K血症が持続し,腎に不可逆的な器質的変化を来したPseudo-Bartter症候群の1例を経験したので報告する.症例は20歳の女性.主訴は体重減少,嘔吐,無月経.中学3年頃より体重減少,高校2年頃より自己誘発性嘔吐と利尿剤の濫用が出現.短大入学後当科へ入院.低K血症,代謝性アルカローシスを認めた.レニン-アンギオテンシン系検査と0.45% NaCI負荷試験の結果等よりPseudo-Bartter症候群と診断.嘔吐が消失し利尿剤や下剤の濫用中止後も低K血症が持続したため腎生検を施行し腎の傍糸球体装置の過形成を認めた.以上より, Pseudo-Bartter症候群でも長期に及ぶ嘔吐,利尿剤や下剤の濫用は腎の不可逆的な器質的変化を来し治療抵抗性の低K血症の一因となることが示唆された.(平成5年1月5日採用)

1992.04.08

A Case Report of a Parapharyngeal Abscess Arising from a Peritonsillar Abscess *

今回,我々は68歳の女性で内科医院より左耳下腺炎との診断にて紹介されたが,現疾患は左扁桃周囲膿瘍とそれに続発する左副咽頭間隙膿瘍および左耳介部の皮下蜂窩織炎であった症例を経験した,初発症状が咽頭痛と発熱で近医にて抗生剤を処方されたが症状が増悪し,悪寒戦慄,開口障害が出現したため入院となった.診察に際して口腔内の所見をとっていればその後の状態の悪化が予防出来たと考えられ,口腔内の診察の有無で診断が異なってくることを教えられた症例であった.扁桃腺炎および扁桃周囲膿瘍における起炎菌や発生機序および治療について若干の文献的考察を行ったので報告する.                (平成4年12月8日採用)

1992.04.07

Intravascular Ultrasound Evaluation of Great Vessels Using a 15 MHz Probe ■” Clinical and Experimental Model Studies *

大動脈を観察するために,15 MHz の探触子を装着した血管内超音波診断装置で,その有用性および画像診断上での問題点を剖検例,臨床例および実験モデルで観察検討した.対象は剖検例13例,臨床例22例および実験モデルで,壁構造と動脈硬化病変の観察を行った.全例で良好な画像が得られ,組織断面から測定された血管断面積は血管内超音波像から得られたものと良好な相関をみた(r=0.97, p<0.001).臨床例では安全に施行可能であり,大動脈解離の詳細な観察や動脈硬化の診断に有用であった.また,血管内超音波像で大動脈は1層の高輝度エコーとして描出され,腸骨動脈は3層構造として描出された.筋性動脈で見られる最も内側の高輝度エコー層は内膜エコーと考えられていたが,モデル実験も合わせ内膜側の高輝度エコーは血液と組織との境界エコーも含んでいることが判明した.(平成5年1月12日採用)

1992.04.06

Evaluation of Ultrasonic Mass Surveys for Pancreatic Tumor *

腹部超音波検査は無侵襲で多臓器のスクリーニングが可能であり,近年集団検診にも導入され,肝臓を主とする悪性新生物の早期発見に優れた成績をあげている.しかし,膵臓については,所見が少なくまた描出不良例が多いことなどの理由により,有用性が疑問視されていた.我々は, 1987年より地域集団検診の場において腹部超音波検査を導入し,膵臓についても積極的な観察を行ってきた.その結果, 1987年から1991年までの5年間に,19,184人の受診者のなかから3例(0.016%)の膵腫瘍を発見し切除した.腹部超音波検査で発見される膵腫瘍は切除可能例が多く,今後膵癌の早期発見にむけての有効なスクリーニング法として期待される.         (平成4年12月26日採用)

1992.04.05

A New DMO Extraction Method for GC and HPLC *

膵液,胆汁中に排泄されるジメタジオン(DMO)濃度をガスクロマトグラフ法(GC),高速液体クロマトグラフ法(HPLC)で測定する際の検体の抽出法を考察した.検体を酸性化し,クロロホルム/メタノール(2:1)を加え塩析することで二層に分離可能であった.また,その検体はGC, HPLC両者に使用が可能であった. (平成4年12月1日採用)

1992.04.04

Membrane Fluidity Studied by Electron Spin Resonance (ESR) in Red Cells of Various Membrane Disorders *

3種類のラベル剤を用いて, electron spin resonance (ESR)のスピンラベル法を施行した.対象は,遺伝性球状赤血球症,遺伝性楕円赤血球症,蛋白4.2分画欠損症,遺伝性高ホスファチジルコリン溶血性貧血,発作性夜間血色素尿素の患者赤血球とした.これらのうち細胞骨格分子異常を伴う症例では,健常者に比べ明らかな膜流動性の異常を認めた.また,この膜流動性の変化の度合いは用いたラベル剤によって異なっていた.的確なラベル剤の選択によっては,未だ不明な膜構成分子の機能も察知しうると思われた.(平成4年10月30日採用)

1992.04.03

Studies of Membrane Physico-chemical Properties on Human Red Cells by Ektacytometry and Electron Spin Resonance *

正常赤血球に種々の物理的・化学的修飾を加え,赤血球膜の物性の変化をelectron spin resonance (ESR)法(スピンラベル法)及びektacytometry法の両者を用いて比較検討した.今回スピンラベル剤として5-doxyl-stearic acidを用いたが,この脂肪酸ラベルによっても,細胞骨格の変化を察知することが可能であった.今回の実験の結果,スピンラベル法によって得られた膜流動性はektacytometryによる変形能とは必ずしも一致せず,ESR法では,部位特異性を有するスピンラベル剤を選択することによって,膜の変化をより鋭敏かつ的確に,部位特異性をもって検知しうると考えられた.(平成4年10月30日採用)

1992.04.02

Ultrastructural Study of Glomerular Epithelial Cells in a Strain of Spontaneously Diabetic WBN/Kob Rats *

自然発症糖尿病モデル動物における腎障害について糸球体上皮細胞を中心に超黴形態的に観察し,糖尿病性腎障害の初期病変の関与について検討した.雄性自然発症糖尿病モデル動物(WBN/KObラット)は生後9ヵ月齢から血糖値が上昇し,10ヵ月齢からは対照群に比して有意に尿蛋白排泄量が増加した.病理組織的には,光顕では14ヵ月齢まで形態変化を認めず,16ヵ月齢で限局性の糸球体係蹄硬化像が出現した.電顕的には,9ヵ月齢から糸球体上皮細胞の核およびGOlgi装置の発達等の微細構造の変化が出現し,以後は,足突起や細胞質の変性像が出現した.糸球体基底膜の肥厚やメサンギウム基質の増加は上皮細胞の形態変化に遅れて出現し,蛋白尿も次第に増加した.このことはWBN/Kobラットにおける糖尿病性腎障害の初期形態変化は糸球体上皮細胞の形態変化であり,上皮細胞の障害過程でボウマン嚢上皮細胞と係蹄壁の癒着が起こり,硬化病変が出現,進行する可能性を示唆していると思われる.     (平成4年10月30日採用)

1992.04.01

Role of Thrombospondin in Sickle Cell Disease *

鎌状赤血球貧血症にみる血流障害は赤血球と血管内皮細胞との間の異常な粘着性によるものであり,粘着蛋白である卜口冫ボスポンジン(TSP)がそれに大きく関与していることを明らかにする目的で鎌状赤血球貧血24人,網赤血球増多症8人,正常者24人からの赤血球を用いTSPの添加により粘着性がどう変化するかを赤血球・内皮細胞粘着試験法にて調べた.その結果,鎌状赤血球の粘着性はTSPの添加で高まり,この性質は抗TSP抗体,抗TSP receptor抗体,およびRGDS, CSVTCGのペプタイドにより明らかに抑制されることがわかった.また,自己多血小板血漿中では抗TSP抗体,抗TSP receptor抗体,抗ビトロネクチン(VN) receptor抗体およびRGDS, CSVTCGのペプタイドにより抑制された.さらに,比重分離によって得られた網赤血球による赤血球・内皮細胞粘着試験,免疫細胞学的検索,およびプラスチックプレート法による検索結果から鎌状赤血球貧血の網赤血球の膜表面にTSP receptorが存在することが示唆された,一方,非鎌状網赤血球増多症および正常の赤血球では内皮細胞への異常粘着性は明らかでなく, TSPによる粘着性への効果も認められず, TSP receptorの存在は証明できなかった.この研究の結果はTSPが鎌状赤血球の内皮細胞への粘着性に大きく関与することを示していると考えられた.今後さらにin vivoで検討し明らかにしていく必要がある.(平成4年10月29日採用)

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