h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1993.01.05

Management of Patients with Anastomotic Breakdown Following Anterior Resection for Rectal Cancers *

過去17年間に当科で経験した直腸癌前方切除術225例中,縫合不全を来した22例(9.8%)を対象として,縫合不全発生に関与する因子,手技上の問題点,進行度との関連性,治療法などについて検討した.縫合不全発生のrisk factorとして糖尿病,低蛋白血症,輸血の有無,手術時間などが注目された.全例の縫合不全発現時期は術後8.6日,このうちmajorleak群では5.6日, minor leak群のみでは9.3日であった(major leak とminor leakは腸内容の流出量及び全身症状の程度で判断した.)minor leak 群は全例保存的に治癒したが, major leak 群では5例中2例(40%)に再手術を余儀なくされた.死亡例はmajor leak群の5例中3例(60%)にみられた.全身管理とともに早期の人工肛門造設が重要であると思われた.   (平成5年1月22日採用)

1993.01.04

Effect of Tris-hydroxymethylaminomethane on Arterial Blood, Brain and Cerebrospinal Fluid Acidosis after Total Cerebral Ischemia in Dogs *

雑種成犬36頭を用いて,12分間の全脳虚血を作成し,血流再開後にみられる動脈血,脳,髄液の酸塩基平衡障害,特にpH, PC02, HCO3-,乳酸値に及ぼすtris-hydroxymethyl-aminomethane(THAM)の効果について検討した.コントロール群,1回静脈内投与群,点滴静脈内投与群の3群に分けて血流再開120分後まで比較検討し,以下の結果を得た.1.動脈血では,全脳虚血によりpH, HCO3の低下, PCO2の上昇がみられたが,血流再開後点滴投与群では, pH, PC02 , HC03-とも他の2群に比べ早期に虚血前値まで回復した.2.脳では,全脳虚血により動脈血と同様,pHの低下,PC02の上昇を認めた.pHは点滴投与群において他群に比し早期に回復したが,血流再開後のPC02は各群に差がなかった.3.髄液においても,全脳虚血によりpH, HCO3-の低下,PC02の上昇がみられたが,血流再開後各群間で差を認めなかった.4.動脈血中の乳酸値は, THAMを投与した両群とも全脳虚血後のpeak値の低下を認めた.特に点滴投与群では血流再開後,全経過において低値を示した.しかし,髄液中の乳酸値は血流再開後,3群間に差を認めなかった.以上の結果より, THAMの静脈内投与は,アシドーシスを補正するために必要な量を静脈内に投与すれば,動脈血および脳内における酸塩基平衡障害(アシドーシス)に対して効果があるが,髄液の酸塩基平衡障害に対しては,効果のないことが分った.このことはTHAMの細胞内移行,特に脳血液関門移行について更なる検討が必要と思われた.(平成5年2月15日採用)

1993.01.03

The Usefulness of Plasma Thrombomodulin Measurement as a Marker of Diabetic Complications in NIDDM Patients *

トロンボモジュリン(thrombomodulin,以下, TM)は血管内皮細胞膜上におもに存在する血管内抗凝固蛋白質である.糖尿病慢性合併症の存在下では,血管内皮細胞の障害が発生し,血中にTMが増加するため,糖尿病合併症の程度の指標として最近注目されるようになった.今回,著者らは血中TMをインスリン非依存型糖尿病患者(NIDDM)にて測定し,その有用性を検討した.TMの測定は酵素抗体法を用いた. HbAlcと血中TMの比較では,両者には有意な相関性は認めなかった.次に糖尿病性合併症それぞれについての検討を行った.腎症を表す尿中微量アルブミン,蓄尿中蛋白と血中TMとのそれぞれの相関係数はr=0.695, r=0.730と,ともに有意な正の相関を示した.網膜症との関連では,糖尿病性網膜症の増悪進展により,血中TMは高値を示す傾向を認めた.糖尿病性神経症ではMCV, SCV, QTCともに,それぞれ両者に有意な相関性は認めなかった.糖尿病性合併症を有しない群と糖尿病性腎症,網膜症,神経症の三大合併症を有する血中TMの比較では,それぞれ2.7±0.6 ng/ml, 6.7±3.8 ng/ml であり,合併症を有する群で有意な高値を示した.糖尿病性合併症における死因は血管合併症が多いと報告されている.このため血中TMを測定することは,糖尿病患者の経過観察に今後重要な検査項目の一つになると考えられる.  (平成5年1月8日採用)

1993.01.02

Clinical Aspects of 33 Cases of Drug-induced Liver Damage *

薬物性肝障害33例について臨床的検討を行った.年齢は平均55.1歳で男性19例,女性14例(男女比1.35:1)で起因薬剤は循環器薬13例(39.4%),抗生物質7例(21.2%),消炎鎮痛薬4例(12.1%)でこれら3種類で全体の72.7%を占めていた.臨床型では胆汁うっ滞型51.5%,肝炎型33.3%,混合型6.1%で3例に劇症肝炎型を示した.検査成績では好酸球増多は36.4%にとどまり,高度黄疸例(血清ビリルビン20 mg/dl 以上) 24.2%, GPT高値例(GPT 500 IU/1 以上)は27.3%であった.市販漢方薬松寿仙による肝障害例と,同一薬剤の再投与により2回とも同じ胆汁うっ滞型を示したアジマリン例を呈示する.(平成5年2月1日採用)

1993.01.01

Clinical Study of Pyrexia after Acute Myocardial Infarction *

心筋梗塞発症24時間以内にICUに入室した,感染症合併のない49例を対象とし,急性心筋梗塞発症による発熱の頻度や状態,梗塞巣との関連などを検討した.49例中39例79.6%に心筋梗塞発症4.3~51時間,平均23.4時間の間に37℃以上の,所謂発熱とされるものがあり,うち38例が2日以内に発熱を来していた.発熱のピークは1例を除き心筋梗塞発症3日以内であり, 37.0~38.4℃ , 平均37.2℃で1~2日間続き,平均発熱後3.8日間で解熱していた.49例中10例, 20.4%は心筋梗塞発症後発熱はなかった.発熱があった症例となかった症例との臨床上の比較において,高齢者で低体重症例やショック状態の症例では発熱を来しにくく,更に35℃以下の低体温を示す症例は心機能が重篤な症例と考えられた.発熱があった症例となかった症例の末梢血白血球数,血清CPK, GOT, LDH値の比較では,平均CPKピーク値のみが発熱があった症例で高く,心筋梗塞による発熱と血清CPK値との関連が示唆されたが,発熱の程度と心筋逸脱酵素値との相関係数による比較では,平均体温ピーク値と平均CPKピーク値とは相関がなく,前・ピーク値体温差とGOTピーク値およびLDHピーク値で僅かに正の相関がある傾向が認められた.急性心筋梗塞発症4日後以降に発現し,かつ4日以上持続する中等度以上の発熱は,心筋梗塞による発熱ではなく,感染症による発熱であった.               (平成5年2月10日採用)

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