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Online edition:ISSN 2758-089X

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1992.03.14

A Case Report of Liver Metastasis of Alpha-Fetoprotein (AFP)- Producing Gastric Cancer with Intratumor Deposits of Lipiodol *

Alpha-fetoprotein産生胃癌肝転移の1例を経験した.その放射線学的所見は肝細胞癌の所見と非常に類似していた.CT検査ではLipiodolの沈着を伴う多発性の低濃度を示す腫瘤として描出された.同時に上部消化管造影検査ではBorrmann l型の進行胃癌が認められた.血管造影検査では肝内に腫瘍濃染と門脈内腫瘍塞栓を伴うhypervascularな腫瘍が描出され,同時に左胃動脈により栄養される同様の所見が胃体上部に認められた.そこで5 FU, THP-ADM, MMCを用いた局所動注療法が行われた.治療終了14日後にAFPは著明に低下した.化学療法の終了40日後に,呼吸不全にて死亡し,剖検が施行された.剖検所見では肝臓の腫瘍はhepatoid adenocarcinoma cellより構成され,胃癌も同様の特殊染色にて確認されたAFP産生細胞で構成されていた. AFP高値を呈し,肝細胞癌と類似の放射線学的所見を示す肝臓の腫瘤性病変を発見した際には, AFP産生胃癌肝転移を除外する必要があると考えられる.               (平成4年9月8日採用)

1992.03.13

A Case Report of Postoperative Ethmoidal Mucocele *

今回,我々は60歳の女性で副鼻腔根治術後25年後に発症した右術後性篩骨洞嚢胞の症例を経験した.初発症状は右内眼角の腫脹と疼痛,複視,流涙および前頭部痛であった.最初に眼科を受診し,精密検査にて耳鼻科疾患と診断され当科に紹介となった.CTで右篩骨洞に嚢胞を認め,前頭洞にも液体貯留を認めた.右鼻腔内に中鼻甲介と下鼻甲介の間に隆起性病変を認め,その部位を開放すると諸症状は改善した.術後性副鼻腔嚢胞は上顎洞が殆どであるが,前頭洞,篩骨洞,蝶形骨洞にも少数ながら発生する.本邦の報告例を検討し,部位間での症状の違いや発生機序について考察し報告する.                                (平成4年8月20日採用)

1992.03.12

Cell-mediated Immunity in Experimental Hypersensitivity Pneumonitis *

BALB/CマウスおよびBALB/Cヌードマウスを用い,経気道的および経皮的感作後の経気道的長期曝露にて過敏性肺臓炎(HP)を作製した.ヌードマウスを含むいずれのグループにも同様の程度で肉芽腫の形成を認めた.マウスにおいては経気道的感作の頻回曝露では肺内リンパ球の増生巣,胸膜のリンパ球の増生巣が強く,またヌードマウスではマウスに比較して病変の程度は軽度で,経皮的感作においてより病変が強くなる傾向があった.この実験結果はよりヒトHPの感作,曝露状態に近いと思われる長期曝露感作でヒトHP類似の病変を作ることができ,肉芽腫の形成にはIV型アレルギーは必ずしも必要ではないが,HPの病理発生に細胞性免疫は何等かの関与があるものと考えられた.(平成4年10月20日採用)

1992.03.11

Experimental Demyelination and Remyelination Induced by Ethidium Bromide *

マウス脊髄後索内に臭化エチジウム(EBr)を注入して脱髄疾患モデルを作成し,その脱髄と髄鞘再生過程を光顕的,免疫組織化学的ならびに電顕的に検索した.EBr注入による障害は,障害中心部,障害辺縁部,障害周囲部の3領域に分かれた.障害中心部では,高度の脱髄が生じたが,脱髄はオリゴデンドログリアおよびアストロサイトの変性,壊死を主とするもので,軸索は比較的よく保持されていた.同部位では,主にSchwann細胞による末梢性髄鞘再生が認められ,このSchwann細胞は,血管壁の自律神経由来であることが示唆された.障害辺縁部では,脱髄後オリゴデンドログリアによる中枢性髄鞘再生とアストロサイトによる修復が認められた.このオリゴデンドログリアによる髄鞘再生にはアストロサイトの関与が示唆された.障害周囲部では,脱髄は観察されず,アストロサイトの反応性増殖のみが認められた.        (平成4年8月31日採用)

1992.03.10

The Effect of Lithium, Carbamazepine, and Methamphetamine on Intracellular Signal System in Rat Brain ―On Phosphatidylinositol Metabolism― *

臨床的に双極型感情障害の患者には一般的にlithium (Li)が使用されるが,近年,情動調節薬(mood stabilizer)のーつとしてcarbamazepine (CBZ)も注目をあびている.しかし,その作用機序についてはなお不明な点が多く,一致した見解が出ていない.以前からLiがイノシトールリン脂質代謝系に抑制的に働くということはいわれており,同様の作用機序がCBZにおいても推定できる.そこで今回,ラット脳内イノシトールリン脂質代謝系に及ぼすCBZの影響について比較検討し,同時に覚醒剤の一つで精神分裂病の病因研究にも用いられるmethamphetamine (MAP)の同代謝系に及ぼす影響も比較検討し以下の結果を得た.1)ラット脳内イノシトールリン脂質代謝系にa1-adrenergic receptorの関与が示唆された. 2) Liと同様, CBZにおいてもcontrolと比較してinositol 1-phosphate(IP1)の有意な蓄積を認め,Liと類似した作用機序でCBZも抗躁効果を有するものと考えられた.3)中枢神経興奮作用を有するMAPはラット脳内イノシトールリン脂質代謝系を亢進させる作用が示唆された. 4) MAPの作用機序を利用してLiとCBZを比較したところIP1inositol biphosphate (IP2), inositol triphosphate (IP3),の蓄積に違いがみられIP3からIP2へ,IP2からIP1へ,IP1からinositolへと代謝される時に作用するそれぞれのphosphataseに対する作用が異なっている可能性があることが推定された.(平成4年10月20日採用)

1992.03.09

Recent Trends in Radiological Diagnosis of Esophageal Foreign Bodies *

1980年から1992年9月までに,当院に入院した食道異物は49例で,男性26例,女性23例であった.年齢は1~6歳が27例,17歳が1例,38歳~88歳が21例であった.異物の種類は,硬貨26例(53.1%),食片7例(14.3%), PTP 7例(14.3%),魚骨4例(8.2%),義歯3例(6.1%),ビールの栓1例,缶ジュースのpulltop l例であった.異物の介在部位は,第一狭窄部が32例(65.3%),第二狭窄部が8例(16.3%),第三狭窄部が7例(14.3%),不明2例であった.確定診断は,単純X線撮影35例(71.4%),軟X線撮影1例,食道造影2例,食道造影と内視鏡1例,病歴とCT1例,病歴と内視鏡9例で行われ,放射線診断の占める割合が高かった.治療は内視鏡による摘出が37例(75.5%)と,大半を占めていたが, PTPの1例は,外側頸部切開,魚骨の1例と,ビールの栓の1例は,開胸手術になった.                              (平成4年10月20日採用)

1992.03.08

A Retrospective and Histopathological Study of Angiographic Diagnosis of Carcinoma in the Pancreaticoduodenal Region *

膵頭十二指腸切除の行われた,膵頭部領域癌25症例について,摘出臓器動脈造影像と,術前血管造影の動脈像とを比較し,その動脈の組織像の検討も行った.摘出臓器動脈造影では,全例に所見が存在していた.術前に,それと同様の所見を読影できていたものは,25例中14例で,膵頭部癌が11例中8例(73%),下部胆管癌7例中3例(43%),乳頭部癌7例中3例(43%)であった.造影方法別では, superselective angiography施行が14例中9例, selective angiography施行が11例中5例であった. retrospectiveな見直しでは,25例中23例で,摘出臓器動脈造影像と同様の所見を読影することができた.手術例に摘出臓器動脈造影を行い,術前動脈造影像と比較することは,読影診断能の向上につながると思われた.また,より正確な進展度診断のためには, superselective angiography を行う努力が,必要と思われた.組織学的には,膵頭部癌では,全例に,腫瘍内動脈の内膜の著明な肥厚が存在し,下部胆管癌と乳頭部癌では,膵もしくは,胆管や十二指腸の壁外への浸潤部位でのみ,同様の変化が見られた.癌細胞の動脈壁への直接浸潤は見られなかった.(平成4年10月6日採用)

1992.03.07

A Clinical Study of Adenoid Cystic Carcinoma in Our Clinic *

1977年から1991年までの15年間に当教室で経験した腺様嚢胞癌症例は9例で,頭頸部悪性腫瘍症例の中では1.34%に相当した.年齢は35歳から76歳までで60歳代に多く認められた.性別は,男性4名,女性5名で男女差は認められなかった.発生部位は上顎洞3例,口蓋2例,耳下腺,顎下腺,口唇,鼻中隔が各1例であった.全例に外科処置を行い,切除不能例に対しては放射線療法,化学療法を併用した.腺様嚢胞癌は局所再発,転移を起こし易いがその発育は緩慢であるために,10年余にわたる経過観察の必要性がある.                (平成4年8月7日採用)

1992.03.06

Scanning Electron Microscopic Study of the Capsular Lymph Capillaries of Liver by Chemical Digestion Method ― Observation of Cirrhotic Liver ― *

肝被膜を用手剥離した後に化学的消化法(HCl-collagenase法)を利用する被膜剥離後化学的消化法を用いて,硬変肝の肝表在毛細リンパ管を走査電顕で観察し,次のような結果を得た.1.肝硬変では毛細リンパ管が減少していることと強い線維化のため,本法では一部の毛細リンパ管を非自由表面から観察することができたにすぎなかった.2.内皮細胞の小孔はほとんど観察されず,一般的な毛細リンパ管の形態であった.3.内皮細胞間隙の近傍に存在するいわゆるアンカリングフィラメントを三次元的に観察することができた.それは,内皮細胞の表面から微細網目状の構造で,周囲の結合組織へ束を形成しながら移行していた.                (平成4年10月24日採用)

1992.03.05

Statistical Date on Pyrexia in Outpatients and Inpatients of Our Hospital *

発熱の頻度,発熱の原因を知るために平成3年11月から4年3月までの5ヵ月間の外来ならびに入院患者における実態調査を行い,次のような有用な結論をえた.健康医療従事者,男女100名の電子体温計による腋窩温の測定から,従来通り37.0°C以上を発熱と考えてよいものと思われた.ただし20歳台の若年者では例え健康人でも37.3°Cまでの腋窩温はあり得ることを知っておくべきである.内科初診患者1756例中発熱を愁訴として来院したのは313例, 18%であった. 1756例中初診時発熱の訴えもなく,発熱もなかった患者は1238例, 73%であった.発熱の愁訴はなく,発熱があった症例や,発熱の訴えがあるのに発熱のない患者もあった.救急外来受診患者4836名では, 1223名, 25%に発熱が認められていた.小児科,内科系患者で頻度が高く,外科系で少なかった.これら外来患者における発熱の原因は,急性上気道炎をはじめとする感染症が殆んどであった.病院全体の入院患者,内科病棟の入院患者でも2237名中483例(21.6%), 1112例中259例(23.3%)と高い頻度で発熱患者が認められた.しかし, 38.0°C以上の発熱患者は少なかった. 38.0°C以上の発熱を示した症例の原疾患は種々であった.発熱精査を目的として入院してきた患者も,全入院患者に2%に認められ,原因診断の難しい症例もあったことから,今後とも発熱に関する研究は重要と考える.(平成4年10月15日採用)

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