h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1992.03.04

Conflicting Urinary CPR and Serum CPR Data ―Evaluation by C-Peptide Clearance― *

糖尿病患者の膵島B細胞機能を測定するためにC-peptide immunoreactivity (CPR)の測定,特に尿中CPRが汎用されている.しかし,インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)では血中と尿中それぞれのCPRの解離があることをしばしば認める.この病態が如何なる原因であるか,また尿中CPRの有用性は如何なるものか,入院中のインスリン抗体陰性で腎障害を有しないNIDDMで検討した. 1) NIDDM 89症例の内,血糖コントロールの改善した81症例で尿中および血中CPRの変化率を求めたが,尿中CPRの変化率のほうが血中CPRのそれより大であった(69,31%). 2) NIDDM 89症例, 178検体における尿および血中CPRの相関性はr = 0.502で有意な正の相関を示したが,尿中CPR30μg/day以下の低値群で血中CPRは比較的高値を示した.尿中CPR低値群とそれ以上の正常群における尿中および血中CPRとの相関性は後者では有意な正の相関が認められたが,前者では相関性は認められなかった.この原因についてC-ペプチドクリアランス(CCPR)を用いて検討した.尿中CPRとCCPRの相関性はr=0.522と有意な正の相関を認めたが,尿中CPR低値群でCCPRはより低い値を示した.尿中CPR低値群と正常群でのCCPRの比較では,低値群で低値を示した(8.1±0.9, 12.6±0.6 ml/min).血糖値とCCPRはr = 0.288と有意な正の相関が認められ,血糖コントロール良好群と不良群でのCCPRの比較では,不良群で有意に高い値を示した(6.6±0.9, 9.6±1.6 ml/min).これらのことより,血中および尿中CPRの解離はCCPRが関与しており,高血糖状態によりCCPRは亢進することが考えられた.(平成4年9月24日採用)

1992.03.03

Origin and Cell Dynamics of M Cells in Peyer’s Patches of Guinea Pig Ileum *

M cellの起源,細胞動態を確認する目的でモルモットに〔6 -3H〕-thymidineを投与し光顕並びに電顕オートラジオグラフィーを行った.分割投与群では,初回投与後48時間でドームの陰窩付近のM cellに標識を認めた.これは吸収細胞の核に標識される時期と一致していた.72時間では成熟M cellにも標識された.一回投与群72時間において,ドーム形成する濾胞上皮細胞(FAE)層と絨毛上皮細胞層の基部から標識細胞の上端までの長さの比較と杯細胞の吸収細胞に対する割合の比較では,いずれもドームに隣接する絨毛はFAE層より高く,パイエル板絨毛よりも低かった.ドームに隣接している絨毛は, FAEを供給する陰窩からも供給されているためと考えられた.このドームに隣接している絨毛にもM cell様細胞を認めた.これらよりM cellの多くは,直接未分化陰窩細胞より分化すると考えられた.                            (平成4年9月24日採用)

1992.03.02

Results with Recombinant Interferon α-2b in International Trials for Viral Hepatitis *

カンヌ国際viral hepatitis Managementシンポジウムに出席し,以下の結論を得た.1)急性B型肝炎は自然治癒率が高いためインターフェロン(IFN)治療は不用である.2)慢性B型肝炎に対しては総量144~1120MUのIFN投与でseroconversion (SC)率30~56.5 %が得られるが諸国間の比較では総量とSC率は必ずしも相関しない.3)急性C型肝炎にIFN投与はあまり有効でなく,自然治癒率との差は乏しい.4)慢性C型肝炎に対してIFNは有効であり,1回量3MUかそれ以上を6ヵ月から1年間使うと投与終了時~6ヵ月後で約50%のGPT正常化が得られる.日本は大量短期間投与,欧米は中等量長期間投与の傾向がみられた.       (平成4年7月24日採用)

1992.03.01

Interferon Therapy for Type C Hepatitis *

23例のC型肝炎に対してインターフェロン(IFN)療法を行い,その有用性について検討した. GPT改善率からみた有効率は著効4例(21.1%),有効1例(5.2%),不変14例(73.7%)であった.著効例2例と無効例2例の臨床経過を呈示した.著効例ではGPTの持続的正常化とHCVRNAの陰性化を認めた.無効例ではIFN投与終了後GPTの再上昇がみられHCV-RNAは陽性のままであった.副作用は4例(21.7%)にみられ,脱毛,知覚異常,うつ状態等であったが,投与中止により寛解した. IFN有効性はHCV-RNA量,HCVサブタイプ等により違いのあることが明らかとなっており,今後HCV-RNAの定量法の普及が重要であると思われる.              (平成4年7月11日採用)

1992.02.13

A Case of Atrial Septal Aneurysm Caused by an Increased Gradient of Interatrial Pressure *

超音波断層法により発見された心房中隔瘤の1例を報告する.患者は慢性血液透析を受けている50歳の男性で,労作時呼吸困難と心拡大の精査目的で当科を受診した.心エコー図では拡張期に,oscillationを伴って左房から右房側へ突出する心房中隔瘤を認めた.右心カテーテル検査では両心房間に著明な圧較差がみられた.心房中隔瘤の真の成因は不明だが,その発症には卵円窩部の脆弱性に加えて心房間の圧較差が関与したと推測された.                 (平成4年5月11日採用)

1992.02.12

A Case of Mixed Mesodermal Tumor of Uterus *

子宮の悪性腫瘍のなかで,稀な子宮体部中胚葉性混合腫瘍(mixed mesodermal tumor)を経験した.症例は56歳,主婦.平成3年2月頃より不正性器出血を主訴に近医受診し,子宮の悪性腫瘍を指摘され精査,治療目的にて当科入院となった.診察所見では,子宮はやや腫大し,悪臭ある褐色帯下が多量に認められ,両側附属器は触知しなかった.超音波検査上は子宮内膜は過形成で,石灰化が認められた.子宮内膜審査掻爬では,子宮体部中胚葉性腫瘍が疑われたが,確定診断は得られなかった.胸部X線像およびCT, MRIでは転移を思わせる所見は認められなかった.外科的治療として単純子宮全摘術,両側附属器剔除術および骨盤リンパ節郭清術を施行した.摘出した子宮には内膜より突出する腫瘍が存在し,腫瘍は筋層方向に筋層の内側1/3まで浸潤していたが,両側卵巣,卵管およびリンパ節には転移は認められなかった.手術後11日目よりホルモン療法として, Medroxyprogesterone Acetate (MPA) 600 mg /day の投与を始め,6ヵ月間投与した.本腫瘍は確立された治療法がなく,予後が極めて悪い疾患であるが,局所,胸部等に再発の所見を認めず,約1年であるが比較的良好な経過を得ているのでここに報告する. (平成4年5月9日採用)

1992.02.11

A Case of Schwannoma of the Lingual Root *

神経鞘腫は小脳橋角部をはじめ,頭頸部領域に好発するSchwann細胞由来の腫瘍であるが,口腔内の発生頻度は比較的まれである.顎口腔内領域では舌に発生する率が高い.今回我々は25歳男性の舌根部に発生した神経鞘腫1例を経験したので報告する. (平成4年4月30日採用)

1992.02.10

A Case Report of Mycoplasma pneumoniae Pneumonia Complicated with ARDS *

マイコプラズマは若年成人における呼吸器感染症の病原菌としてよくみられ,通常軽症ないし中等症の感染を引き起こす.稀ではあるが,時に急性呼吸不全を伴う重症肺炎を引き起こすことがある.症例は40歳女性で乾性咳嗽・発熱を主訴に近医を受診.急性上気道炎の診断で経口抗菌剤にて治療された.3日間の治療にも拘らず症状はさらに増悪し,胸部レ線上肺炎像が認められたため入院の上セファロスポリン系の薬剤を点滴静注された.5日間の加療にも拘らず呼吸不全が進行したため当科へ紹介入院となった.クラミジア・マイコプラズマ・レジオネラ肺炎等を疑いエリスロマイシン(3日目よりミノマイシンに変更)にて加療開始し, ARDSに対してステロイドによるパルス療法と人工呼吸器による呼吸管理を行った.以上の様な加療により良好な経過を得,マイコプラズマ抗体価の上昇により確定診断を得た.肺局所における細胞性免疫過敏状態が惹起される事がマイコプラズマ肺炎の重症化の機序と考えられており,それにより全身的には細胞性免疫低下状態が生じると考えられ,本症例でツベルクリン反応が陰性であったことはそれを支持するものと考えられた.(平成4年3月18日採用)

1992.02.09

Two Cases of Delusional Depression with Rapid Response to Bromperidol *

抗うつ薬と抗精神病薬治療に対して抵抗性を示した妄想型うつ病に対し, bromperidolが速効性を示した2症例を報告した.妄想型うつ病は通常抗うつ薬に対して反応が悪く,そのため抗精神病薬が治療の選択となる.しかし多くの場合,長期の治療期間を要するのが通常である.これに対し,最近においては比較的新しい抗精神病薬であるbromperidolが速効性を示した.                       (平成4年3月11日採用)

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