h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1990.01.01

Basic Studies on Protein Kinase C Activity in Human Blood Cells *

Ca2+-リン脂質依存性protein kinase C 活性(PKC)をヒト血液細胞において測定した.細胞の種類によるPKC活性の差を検討するため,正常ヒト末梢血好中球及びリンパ球において測定し,総活性はそれぞれ, 187.3±97.9, 418.0±183.4 pmol/min/mg proteinであり,その99.6%, 94.7%を細胞質画分が占めていた.また,同系統の細胞においてその分化段階によるPKC活性の差を検討するため,慢性骨髄性白血病症例の末梢血白血病細胞をPercoll不連続勾配によって分画し,芽球層と,成熟好中球層のPKC活性を測定した.その結果,幼若な細胞が成熟細胞に比し,総活性は48.3±17.4%と低値を示し,膜画分比率は幼若な細胞では5.7%,成熟細胞では1.0%と幼若な細胞がより高値を示した.以上より,血液細胞であっても,その分化の方向によりPKC活性が異なり,また細胞の分化度によっても差異が認められた.                             (平成2年2月28日採用)

1990.01.01

Message from Gokei

1989.04.09

Clinical Studies on 30 Cases of Myelodysplastic Syndrome Observed within the Last 10 Years in Our Clinic *

当科で経験したMDS 30症例について,検査所見,鉄代謝,染色体分析,予後を中心に検討した.病型分類はFABの診断基準を用い5型に分類した.その内訳は, RA 7例,RARS 3例, RAEB 14例, CMML 1例, RAEB-T 5例である.年齢は28~79歳で,中央値は60歳であった.血液学的には,末梢血は造血細胞3系統ないしは2系統の異常を示し,数種の形態異常を伴っていた.鉄代謝では,特にRA, RARS において著明な無効造血の所見が認められた.30症例中,25例に染色体分析を行い,そのうち約半数の13例に核型異常を認めた.なかでも5, 7, 8番染色体異常を認めた症例が合計6例みられ,注目された.正常核型と異常核型を示す症例間では,生存期間に有意差は認められなかった.白血病への移行はRAEBで14例中6例, CMMLで1例, RAEB-Tで5例中3例にみられた.今回の我々の検討では, MDS各病型と臨床的特徴との間には相関関係がみられ,過去の諸家の報告と一致した.(平成元年12月25日採用)

1989.04.08

Chest X-Ray Findings of Pulmonary Squamous Cell Carcinoma *

肺扁平上皮癌37例(肺門型22例,末梢型15例)の胸部X線像を検討し以下の成績を得た.1.肺門型の胸部X線像は,浸潤型2例(9.1%),閉塞性肺炎や無気肺を呈する腔内ポリープ型9例(40.9%),肺門部腫瘤型11例(50.0%)であった.2.末梢型の胸部X線像は,陰影濃度は濃く, notchを認め,周囲への圧迫像やair bronchogramを認めないという所見であり,空洞や二次性変化を呈するものは少なかった.(平成元年10月9日採用)

1989.04.07

Magnetic Resonance Imaging in the Diagnosis of the Liver Diseases ―from CT to MRI― *

肝疾患におけるMRIの有用性を評価するため20例の肝疾患について検討した.MRは0.5 T超電導型SMT-50を用い,T1強調SE像とT2強調SE像を撮影した.CTについて診断のポイントを述べMRとの比較を行った。CTとMRはほほ同等の診断能力を有すると思われたが,MRは肝癌においてTAEやPEIT後の壊死の範囲の同定に特に有用と思われた.またMRは肝血管腫,鉄沈着症の診断,小肝癌と肝嚢胞との鑑別においてCTより優れていた.(平成元年10月6日採用)

1989.04.06

The Influence of Blood Transfusion on the Prognosis of Gastric Cancer of Advanced Stage *

胃癌(stageⅢ, IV) 238例について,輸血と予後の関係を検討した.1)stageⅢの治癒切除例では,輸血群が非輸血群に比べて有意に予後不良であった.2)治癒切除が可能であったstage IV 症例においても,輸血群が非輸血群に比べて予後不良の傾向であった.3)末梢白血球数及びリンパ球数の変動は,輸血の有無及び量いずれとも相関はみられなかった.4)ツベルクリン反応は変動が大きく,一定の傾向を示さなかった.5)輸血の種類及び量と予後との関係は明確にはできなかったが,輸血が予後に悪影響を与えている可能性が示唆された.(平成元年10月2日採用)

1989.04.05

Immunohistochemical Study of Progesterone Receptors in Normal Endometrium of Women of Reproductive Age and Endometrium of Functionally Sterile Patients *

ホルマリン固定パラフィン切片で,モノクローナル抗体を用いたPAP法による免疫組織化学的検索により,成熟婦人正常子宮内膜15例および機能性不妊症例の分泌期中期子宮内膜25例のプロゲステロンレセプター(PR)を観察し,正常内膜と不妊症例内膜との比較検討を行い,以下の結果を得た.1)検索したすべての症例において,腺管上皮細胞の核,細胞質の両者またはそのいずれかに,また全例ではないが間質細胞にも3,3′-ジアミノベンチジン(DAB)の発色を認めた.これらの発色は陰性のコントロールでは観察されずPRと判定された.またDABの発色の強さは,同時に行った酵素免疫学的方法によるPR値との間に相関がみられた.2)成熟婦人正常内膜では,腺管上皮細胞の核内PRは増殖期に著明にみられ,細胞質内のものよりも強く発色していた.分泌期には核内PRは陰性化したが,細胞質内PRは増殖期PRに比して著明な変化は認められなかった.3)分泌期中期の不妊症例内膜におけるPRの発現の局在と強度は,腺管上皮細胞核内にも強陽性から弱陽性の発色が5例認められた.このことは機能性不妊症例内膜は分泌期にもかかわらず,成熟婦人正常内膜分泌期の所見よりも増殖期に偏位していると考えられた.上記の結果より正常内膜増殖期腺管上皮核内に陽性であったPRが血中プロゲステロンが高値である分泌期に陰性化することの機序,および機能性不妊症例分泌期内膜でのPRが正常内膜分泌期よりも増殖期内膜のPR所見に偏位していることと,不妊症内膜のなんらかの異常とが関連している可能性の2点は今後解明すべき課題と思われた.(平成元年11月8日採用)

1989.04.04

Aromatization of A4-Androstenedione in Adult Oophorectomized Adrenalectomized Rats *

著者が新しく提唱した閉経婦人特発性高エストロゲン症における血清estrone (以下E1)高値及び健常閉経婦人へのACTHの投与による血清E1,estradiol (E2)値の増加が認められたことより,それらの生成機序を明らかにする目的で,卵巣・副腎摘出成熟ラットに⊿4-androstenedione(A)0.05mg腹腔内投与し, RIAで血清E1, E2値を測定した.血清値は,対照群(n=13)では,E1 83.0±32.8 pg/ml (mean土SD,以下同様),E2110.6±30.5 pg/mlで,両側卵巣・副腎摘出群(n=8)では,E1 29.3±19.8 Pg/ml, E236.8±19.5 pg/ml,で,両側卵巣・副腎摘出A投与群(n=17)では,E1 42.2±12.9pg/ml, E2 51.4±12.7 pgr/ml であった.以上から両側卵巣・副腎摘出成熟ラットでは,卵巣・副腎以外の末梢組織でAよりE1,E2がほほ等量転換生成されることが確認された.これらの成績は,末梢でaromatizationを通して転換生成されるのは,主としてE1であって末梢で転換生成されるE2はわずかで,ほとんど血清E2値に関与しないと指摘されている成績とは合致しないものであった.また,末梢におけるE2の生成について以下の二つの経路すなわち(1)A→EI及びA→T→E2 (2) A→E1→E2が考えられるが,今回の検索では血中testosteroneの測定が行われていないので,どちらの経路が実際に作動しているかは決定できなかった.これらの成績は,さらにヒトでのより詳細な研究が望まれるが,末梢においてAのaromatizationにより,E1のみならずE2も相当量転換生成されるという成績は,閉経婦人特発性高エストロゲン症での血清E1高値及び健常閉経婦人へのACTH剌激によってみられるE1,E2高値の生成機序を解明する上で,重要な知見と考えられる.(平成元年10月27日採用)

1989.04.03

Endothelium-Dependent Response to Acetylcholine and Noradrenalin in the Canine Basilar Artery *

イヌ脳底動脈のacetylcholine (Ach)およびnoradorenalin (NA)に対する内皮細胞依存性反応に標本摘出・装着時間がどのような影響を及ぼすかを等尺性張力測定法を用いて検討した.摘出イヌ脳底動脈リング状標本を, (1)超早期装着標本:脳摘出5分以内・標本装着15分以内,(2)早期装着標本:脳摘出6~15分・標本装着16~45分, (3)緩徐装着標本:脳摘出16分以上・標本装着46分以上の3群に分け実験を行った.超早期装着標本はAchに対し明らかな内皮細胞依存性弛緩反応を示した.この内皮細胞依存性弛緩反応は,標本摘出・装着時間の延長,弛緩反応の繰り返しや10分間のanoxiaにより減弱・消失した.平衡状態では,NAに対する収縮反応は標本摘出・装着時間が延長するにしたがい増強した.一方,収縮状態ではNAに対し,低濃度では内皮細胞依存性弛緩反応を,高濃度では内皮細胞依存性収縮反応を示した.弛緩反応は反応の繰り返しにより減弱したが,標本摘出・装着時間の延長やanoxiaによる変化は認められなかった.イヌ脳底動脈のAchおよびNAに対する反応は標本摘出・装着時間の延長により収縮反応優位に変化した.したがって,イヌ脳底動脈の血管反応性を検討する際は,内皮細胞の機能を保つために慎重かつ迅速に摘出した超早期装着標本を用いるべきであると考えられた.(平成元年10月26日採用)

1989.04.02

Measurement of the Charge on Red Blood Cells by Alcian Blue *

Alcian blueによる赤血球膜陰性荷電測定法の検討を行った. Alcian blue使用液は,精製Alcian blue を等張酢酸緩衝液(pH5.5)に完全に溶解したものを使用した.また,抗凝固剤入り静脈血は,生理食塩水で, 140 G,20分間,3回洗浄した.測定法は次のごとくまとめられる.すなわち, 1.0 mlの赤血球懸濁液と5.0mlのAlcian blue 使用液を混合後,直ちに, 140G,5分間遠心し,その上清の吸光度を650nmで測定し,赤血球膜へのAlcian blue 結合量を求めた.この方法を用いて行った同一対照例の反復測定の結果は, 124.8±2.6ng,正常コントロールの結果は, 123.6±7.8ngであった.これらの値は,従来行ってきた方法に比べて,SDを著しく小さくすることができ,赤血球膜陰性荷電測定の精度をあげるものであった.(平成元年10月24日採用)

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