h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1989.04.01

Transmission Electron Microscopy of the Marginal Pillar in Postnatal Golden Hamsters *

発育中のゴールデンハムスターにおける蓋謨の外側縁とmarginal pillar (MP)について透過電子顕微鏡で観察した.MPの成分は,生後3日目から第3列目のダイテルス細胞によって分泌された.MPは生後7日目から柱状を呈し,第3列目のダイテルス細胞の微絨毛の著明な延長を伴い,蓋謨の辺縁部の下面に接着した.MPは生後10日目に完成し,蓋謨が完成するまで,その外側縁を支持したが,第3列目のダイテルス細胞の微絨毛はMPの内側部で萎縮・消失し,辺縁部で残存した.MPは生後16日目に消失し始め,生後18日目に完全に消失した.(平成元年10月24日採用)

1989.03.24

Temporal Lobe Epilepsy Associated with Astrocytoma: A Case Report with an MRI Study *

近年MRIの導入によって従来のCTでは診断困難であった腫瘍も描出可能となってきた.今回我々は腫瘍診断上MRIが有用であり,全摘手術にて良好な結果を得た側頭葉腫瘍の症例を経験した.症例は27歳女性で1年前より突然の心窩部不快感を伴う意識消失発作が月に1~2回出現するようになった.2ヵ月前より発作がほとんど毎日起こるようになり,当科受診となった.単純CTにて右側頭葉内側部に石灰化病変を認め,造影CTでは増強されなかった. MRIではCTでみられた石灰化病変はT1強調像でisointensity, T2強調像でhypointensityと描出され,その周囲にT1強調像でisointensity, T2強調像でhyperintensityの境界明瞭なmass lesionを認めた.中心部に石灰化を伴った脳腫瘍と診断し,1988年10月右側頭葉切除術及び腫瘍切除術を行い,組織はlow grade astrocytoma であった.術後側頭葉てんかん発作は消失し,神経学的脱落症状もみられなかった.以上より側頭葉てんかんにてCT異常像を認めた場合は腫瘍の存在を疑い, MRIを施行し手術療法を考慮すべきものと思われた.(平成元年9月20日採用)

1989.03.23

Three Cases of Calcifying- Epithelioma with Granuloma Pyogenicum-Like Appearance *

症例1: 53歳女性.左後頭部に赤褐色の腫瘤が約1か月前に出現,増大してきた.症例2: 29歳男性.左鼻翼外側に赤褐色の腫瘤が約半年前に出現,徐々に増大してきた.症例3: 5歳女児.右耳前部に赤褐色の腫瘤が約半年前に出現,徐々に増大してきた.3症例とも血管拡張性肉芽腫様の外観を呈したが,触診上,腫瘤内にやや硬い小結節を触知した.組織学的には,いずれも石灰化上皮腫の所見を示し,腫瘍周囲には毛細血管増生を伴っていた.自験例の赤色調の外観は,毛細血管増生によるものであり,上方への突出は,皮下組織に乏しく,下床に硬骨が存在する部位に病変が出現した場合に機械的刺激を受けることにより肉芽腫性の反応を呈したものと考えた.触診上で腫瘤内に硬度の高い結節性病変を触知することは,本疾患の診断に際し,重要であると考えた.(平成元年6月14日採用)

1989.03.22

A Case of Rubella Meningoencephalitis Presented Interesting Findings on EEG *

風疹脳炎の発生頻度は約1/5000といわれている.従来,日本脳炎や単純ヘルペス脳炎などを除くと,ウイルス性脳炎では特徴的な脳波所見に乏しいと考えられているが,今回我々は急性期にFIRDA (frontal intermittent rhythmic delta activity)を呈した風疹髄膜脳炎の1症例を経験したので,ここに報告する.(平成元年8月21日採用)

1989.03.21

Repair of Double Outlet Right Ventricle *

100/50 mmHg の肺高血圧を有するsubaortic VSD 型DORV十ASD十鏡面像型右胸心の12歳女児に対し,ダクロンパッチによるVSDから大動脈へのトンネルパッチ作製及びASD閉鎖術を行った.術後合併症なく極めて順調に経過し,肺動脈圧は45/22 mmHgへ低下した.極めてまれなsubaortic VSD 型DORV, ASD,鏡面像型右胸心の合併例の外科治療に成功したので文献的考察も加えて報告する.(平成元年6月23日採用)

1989.03.20

A Case of Postpartum Graves’ Disease with Insulin Dependent Diabetes Mellitus *

出産後6ヵ月にバセドウ病とインスリン依存性糖尿病を同時に発症した1例を報告した.自己抗体では,抗ラ氏島抗体,抗核抗体,抗サイログロブリン抗体,抗マイクロソーム抗体, TSH受容体抗体が陽性であった.出産後の免疫学的変動が二つの疾患の発生に関与していると考えられた.(平成元年8月28日採用)

1989.03.19

Lipoma of the Large Intestine Resected by Endoscopic Polypectomy ―A Report of Two Cases and Review of the Literature― *

症例1は72歳,女性,右下腹部痛で本院を訪れた.注腸X線と大腸内視鏡検査で盲腸に亜有茎性の隆起性粘膜下病変が認められた.内視鏡的ポリペクトミーにて切除された標本の大きさは1.0×1.0×0.5cm大で,組織学的に脂肪腫の疑いと診断された.症例2は44歳,女性で左腹部痛を訴えて来院した.注腸X線と大腸内視鏡検査で横行結腸左側に黄色調で有茎性の粘膜下腫瘤が認められた.切除標本は1.5×1.5×2.3 cm大で割面は黄色だった.病理組織診断は粘膜下脂肪腫だった.我々の経験と文献から脂肪腫の大きさが3cm以下で,切断辺縁が直径1cm以下であれば,内視鏡的ポリペクトミーは治療的にも診断的にも有効な手段である.(平成元年7月21日採用)

1989.03.18

A Case of Hepatocellular Carcinoma Showed Metastasis to the Cervical Lymph Node *

肝細胞癌の他臓器への転移はしばしば経験される.なかでも血行性,リンパ行性転移が多いといわれている.今回我々は,比較的まれとされている頸部リンパ節転移を示したびまん型の肝細胞癌の1例を経験した.(平成元年6月22日採用)

1989.03.17

Chromosome Testing Carried Out at Kawasaki Medical School Hospital during 1988 *

1988年度は28例の染色体検査を行い,4例(全体の14.3%)の異常を見いだした.この4例のうち2例はクラインフェルター症候群でXXY,および,48,XXYYであった.他の1例はターナー症候群で, 46, X, i (Xq)を示し,残りの1例は慢性骨髄性白血病由来で, 46, XY, t (9:22) (q32 : q11, dUp(1)(q21 : q32)であった.(平成元年7日18日採用)

1989.03.16

Structural Study of the Distal Airways in Normal Lungs Ⅲ. Difference in the Architecture Formed by Collagen and Elastic Fibers *

肺末梢気道であるいわゆる移行帯は,結合線維束が作り出す組織学的支柱構造の面からみても,機能的単位である気道系と,気腔系との接点となっており,ひずみを生じやすいことが知られている.本報告は,線維成分の中でも膠原,弾性両線維について,走行,加齡変化を厚切り組織切片を用いて観察した結果を呈示し,そのひずみを生じやすい構造上の特徴をよりよく理解することを目的としている.我々の観察では,各年齡とも膠原線維は気道系を中心に分布し,気腔系には明らかでなかった.この線維は組織の構造,特に気道系の固定に関与している可能性がある.弾性線維は,謬原線維の分布しない肺胞壁にも存在するとともに,気道系,気腔系以外の弾性線維系とも連続性を有し,肺内組織全体にわたってのネットワークを形成していた.いずれにせよ,各線維の走行は,移行帯部分を境に大きく異なっており,この部が組織構築上,機能上変化の激しい重要な部分であることが推測された.既存の生理学的知識を基礎として,これら線維の構築上の特徴,利点,欠点について考察を加えた.(平成元年6月3日採用)

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