h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1989.03.15

Deep Fungal Infection in Autopsy Cases at Kawasaki Medical School Hospital *

開院から1987年までの14年間に本学附属病院,病院病理部で行った剖検例1985例を利用し,深在性(内臓)真菌症についていろいろな角度から検討を加えてみた.本学では,真菌感染症は剖検例の約10%に認められ,これは全国統計での出現率より低かった.菌種はCandida, Aspergillusが圧倒的に多かった.近年減少傾向にあるが,いったん減少傾向にあったCandidaは最近横ばいないし再燃してきている. 1984年よりTrichosporon感染症が出現した. Candida感染症は胃,食道などに発生しやすく経口感染を, Aspergillusは経気道的感染をTrichosporonは直接血行性に感染を引き起こすことが推測された.基礎疾患としては,白血病・悪性リンパ腫,肺癌など免疫力が低下したものに多かった(98%).(平成元年5月15日採用)

1989.03.14

Measurement of Ulnar Bone Mineral by Dual Energy X-Ray Absorptiometry *

新しく開発されたdual energy X-ray absorptiometry (DEXA)を用いて尺骨骨塩量の測定を行い,その臨床的意義を検討した.基礎的検討の結果,尺骨骨塩量の測定精度は大部分の測定部位において橈骨のそれよりも劣る傾向であった.尺骨骨塩量と腰椎骨塩量または橈骨骨塩量との間には,それぞれr=0.708-0.729とr=0.865-0.947の有意の正相関が認められた.また,尺骨と橈骨の骨塩量は,測定部位および性により若干異なることが示された.つまり,1/3遠位部では男性例で尺骨骨塩量が高値を示すのに対し,女性例では差がみられなかった.1/6および1/10遠位部位では男女例ともに尺骨骨塩量が高値せあった.ROCカーブにより評価した加齢および疾患に由来する骨塩量減少の検出能は,尺骨,橈骨ともに同等であった.(平成元年9月4日採用)

1989.03.13

The Usefulness of Bone Scintigraphy and 67Ga Scintigraphy in the Evaluation of Rib Lesions in Patients with Multiple Myeloma *

多発性骨髄腫の肋骨病変検出における骨・ 67Gaシンチグラフィの有用性を多発性骨髄腫症例13例について検討した.骨シンチグラフィ上,13例中10例(22か所)にhot spotsを認めた.骨シンチグラフィで肋骨にhot spots を認めたが, 67Gaで異常を認めなかったのは6例であった.うち5例は骨X線では明らかな異常を指摘し得なかったが,残り1例では溶骨性変化が認められた.骨・ 67Gaシンチグラフィがともに異常集積を認めた7例では,その3例に骨X線上溶骨性変化を認めた(1例は組織診にて確認).他の4例中2例は骨X線上骨粗鬆化の変化が主体であった.また残り2例中1例は67Gaシンチグラフィにて経過観察中に肋骨部を含めて全身骨に多発性のhot spots が出現した.以上,多発性骨髄腫の肋骨病変の評価に骨シンチグラフィと67Gaシンチグラフィの併用が有用であることが示された.(平成元年8月18日採用)

1989.03.12

The Usefulness of Nucleomedical Procedures in Diagnosis of Fibrous Dysplasia *

線維性骨異形成と診断された8例につき骨シンチグラフィ, 67Gaシンチグラフィを施行した.単発性線維性骨異形成は5例,多発性線維性骨異形成は3例であり,脛骨,下顎骨,上顎骨,肋骨に高率に病変が認められた.病変部位における99mTc-リン酸化合物の集積程度については,その放射能集積の3段階表示(++,十,-)において(++)が11か所,(十)が5か所であり(-)は認められなかった.骨X線像との比較では骨硬化像を呈した部位では骨シンチグラフィ上すべての病変で(++)を示したのに対し,のう胞様変化を呈した病変では集積程度は(十)が多く認められた. 67Gaの集積については,検査が施行された2症例3か所全例(十)を示した.以上,線維性骨異形成に骨シンチグラフィと67Gaシンチグラフィを併用することは,その骨病態を把握する上で有用な検査法と考えられた.(平成元年6月19日採用)

1989.03.11

Measurement of the Radial Bone Mineral Using- Monochromatic Dual Energy X-Ray Absorptiometry System: Comparison with That of the Vertebral Bone Mineral *

単色化されたエネルギーの異なる二つのx線を用いた骨塩定量装置(DCS-600, アロカ社)を使用して,健常女性および各種代謝性骨疾患患者の橈骨骨塩量を測定し,さらに腰椎骨塩量の測定を併せて行い,測定部位の違いによる骨塩定量の意義を検討した.測定対象には,健常女性および各種代謝性骨疾患(骨粗鬆症,腎性骨異栄養症,ステロイド剤投与)患者を用いた.測定部位の検討としては,①健常女性群および骨粗鬆症群の骨塩量の年齢分布,②健常女性群および各種疾患群における橈骨骨塩量と腰椎骨塩量との相関,③女性例における腰椎骨折の検出能および健常群の骨塩量を対象として慢性腎不全症に伴う骨塩量低下の検出能,の3項目について行った.その結果,橈骨1/3遠位部の骨塩定量を行えば,代謝性骨疾患の診断や骨病態の把握に,腰椎の骨塩定量と同等の情報を得ることができることが示された.(平成元年8月22日採用)

1989.03.10

Parotid Tumors ― A Clinical Study of 39 Cases *

1974年4月から1989年3月の15年間に当科で治療を行った耳下腺腫瘍39例について臨床的検討を行い次のような結果を得た.1.耳下腺腫瘍は同時期に当科で治療した全頭頸部腫瘍の8%を占めた.良性腫瘍26例,悪性腫瘍13例であった.2.良性腫瘍のうち多形腺腫が16例(61%)で最も多く,次いで腺り冫パ腫が8例(31%)であった.悪性腫瘍では粘表皮腫と腺癌が多く,粘表皮腫はいずれも中間型または低分化型であった.3.多形腺腫は女性に,腺リンパ腫は中年以後の男性に多かった.悪性腫瘍は男性に多く,様々な年齢層に発症していた.4.受診までの平均期間は,腺リンパ腫と悪性腫瘍ではそれぞれ約1年で,多形腺腫に比べると短期間であった.5.悪性腫瘍には顔面神経麻痺や疼痛及び癒着が高率に認められ,病期の進行した症例が多かった.6.治療法は腫瘍摘出術で,悪性腫瘍には放射線療法,化学療法を併用した.7.良性腫瘍では再発を認めなかったが,悪性腫瘍症例の多くは,局所進展や遠隔転移により不幸な転帰をとった.(平成元年6月14日採用)

1989.03.09

Surgical Treatment of the Pelvic Fracture *

骨盤骨折14例に対し観血的治療を行った.骨盤輪のみの骨折は3例,寛骨臼骨折を含むものが11例であった.骨盤骨折の治療は保存的治療か,観血的治療を行うべきか議論がわかれるところであるが,手術症例は非手術症例と比較し,早期離床が可能であり,特に寛骨臼を含む骨折は解剖学的整復が必要で,手術以外での完全な整復は不可能である.全身状態,手術器具などの条件がそろえばなるべく早期に手術的治療を行うべきであると考えている.(平成元年6月19日採用)

1989.03.08

Reconstruction for Canaliculus after Facial Injury ―Conjunctivodacryocystorhinostomy― *

内眼角部の外傷後に流涙を認めることは意外に多い.これらの涙道障害には結膜涙嚢鼻腔吻合術が多用されているが,いくつかの問題点を残している.それは, Jonesチューブが脱落しやすいことであり,また,チューブが埋もれたり位置が変わったりすることである.田辺らは,ヒト保存強膜やヒト凍結乾燥硬膜を使用し,これらの問題を解決している.1)私たちは,シリコンチューブの周囲にヒト凍結乾燥硬膜または凍結乾燥豚皮を用いJonesチューブの固定をはかっているが,とくに凍結乾燥豚皮は容易に手に入り,安価であることから有用であると思われる.私たちの結膜涙嚢鼻腔吻合による涙道再建術を,若干の文献的考察とともに報告する.(平成元年5月29日採用)

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