h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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2013.04.06

A case of Celiac Artery Compression Syndrome in which gastro-duodenal motility was seguentially assessed over the follow-up period *

 症例は40歳代の女性.X-1年1月頃より食後の心窩部や左季肋部の痛み,張り感などが出現し,上部消化管内視鏡検査で症状の原因となる器質的疾患は指摘されないため,X 年10月当科に紹介された.体外式超音波検査(US)で腹腔動脈(CA)の呼吸性変位が指摘され,CA の血流測定を行ったところCeliac Artery Compression Syndrome(CACS)と診断された.本人が手術を希望せず,約2年半経過した現在も上腹部症状に対して内服薬のみ投与している.症状に胃十二指腸運動機能異常の関与も疑われたため,US を用いた胃十二指腸運動機能検査は4回施行され,その結果は内服薬の選択に利用された.運動機能検査の結果は4回目が最も改善しており,同時に施行した症状問診票の腹痛症状は4回目が最も軽かった.比較的長期にわたり症状と消化管運動機能の推移を観察したCACS 症例の報告は過去になく,本稿が最初の報告である.(平成25年8月30日受理)

2013.04.05

Premenopausal breast cancer patient who developed amenorrhea after postoperative adjuvant chemotherapy despite a high serum estrogen level *

 ホルモン感受性乳癌患者においては,内分泌療法を選択する上で,閉経状況が重要である.また,先行する化学療法によって無月経になることがあり,閉経前・後の判断は難しい.今回,我々は化学療法後に無月経状態であったにも関わらず,高エストロゲン血症を呈した1症例を経験したので報告する.症例は診断時42歳の女性.左乳癌に対して左乳房切除及び腋窩リンパ節郭清術を施行した.病理検査結果は硬癌,核グレードⅢ,エストロゲン受容体陽性,プロゲステロン受容体陽性,HER2陰性,リンパ節転移2個であり,術後補助療法として複合化学療法施行後にタモキシフェンを内服していた.化学療法中より無月経であったが,化学療法開始後2年4ヶ月後にホルモン状態を確認したところ血清エストラジオール(E2)は567.2 pg/ml と高値であった.化学療法後に1年以上無月経であっても,卵巣機能は保持されている症例があり,定期的な血清中のE2およびFSH を測定し,閉経状況を評価する必要がある.(平成25年8月22日受理)

2013.04.03

Potential Utility of a Visual Inpatients’ Geographical Information System as a Consultation Tool in Advanced Treatment University Hospitals *

 医科大学附属病院は,医育機関であると同時に地域医療の一翼を担う役割を果たしている.しかしながら,一般的な地域の中核病院で述べられている「地域」の概念と特定機能病院である大学病院の「地域」の捉え方は,同じ地域医療を語る上でも異なっているのは当然である. 施設の医療提供体制や患者の受療行動などを踏まえた「実医療圏」を検討し,また将来の地域医療のあり方を論ずるに当たっては,様々な利害関係者に情報を可視化して提供するコミュニケーションツールの有効活用が求められる.そこで今回我々は,各施設の提供できる資源を定量化する際に,他の医療機関と比較可能な標準化されたデータであると同時に患者の受療行動を推し量るデータであるDiagnosis Procedure Combination(DPC)データを用い,そこに含まれる患者住所(郵便番号)を活用して,地理情報システム処理して地図上に疾病別患者分布を可視化する,つまりDPC データをGIS 処理した結果のもつ意味について検討、考察を行った.川崎医科大学附属病院では,入院患者の9割近くが岡山県内からの患者であったが,同病院の属する県南西部保健医療圏からの患者は約50%であり,患者分布は全県に渡っていた.また年齢区分や,診療科区分により,その分布が異なることも地図上にプロットすることによりわかりやすく明示された. 地域医療連携を進める上で関係者が議論するテーブルには,医療関係者だけでなく行政の担当者や患者(住民)代表なども含まれ,必ずしも全員が地域医療の実態を認識していない場合もある.今回の試みは,関係者間の協議におけるコミュニケーションツールとしても有用であると考えられる.(平成25年7月31日受理)

2013.04.02

Role of cell adhesion of neuroepithelium in the developing mouse cerebral cortex *

 哺乳類の大脳皮質は6層構造を形成するが,特に胎生期および新生直後に層形成が盛んに進むことが知られている.胎生期の脳室に面する脳室帯において,神経幹細胞は神経前駆細胞を経て神経細胞へ分化し,さらに神経細胞が脳表層方向に移動することで6層構造が形成される(insideout).このことから,胎生期の脳室帯は脳の形成に重要な役割を果たしていると考えられる.本研究は,大脳皮質の形成メカニズムの解析を目的とし,脳室帯の組織構造に変化を与えた場合に,どのように脳形成システムに異常を来たすのか,検討を行った. 脳室帯は上皮組織のため,細胞間結合が強固である.そこで,上皮細胞間のカルシウム(Ca2+)依存性接着分子であるカドヘリンに着目し,脳室面の細胞間結合の阻害が脳形成に与える影響を観察した.実験手法として,マウス胎生14.5日目の脳室内へ,Ca2+ を特異的にキレートするEGTA(Ethylene glycol tetraacetic acid)を注入したのち,胎生期および生後の脳組織構造について詳細な解析を行った. 解析の結果,高濃度のEGTA の作用により,一部のマウスは脳浮腫をきたした.また脳室の拡大および大脳皮質の菲薄化も認めた. さらに,大脳皮質各層のマーカーであるSATB2(2/3層), Ctip2(5層)を用いた解析から,脳室帯の細胞間接着構造の破壊により,それ以降の神経細胞の新生は減少するが,層構造のinside-out の法則は維持されていることが分かった.これらのことより,脳室帯構造および脳室帯での神経新生が,inside-out の原理に関与している可能性は低いことがわかった.(平成25年7月23日受理)

2013.04.01

withdrawn

2013.03.07

2013.03.06

A clinical, neuropsychological, and radiological study of a case with Primary Progressive Aphasia. *

 今回われわれは,発症4年目から6年間の経過を観察しえた原発性進行性失語(PPA)の1例を経験した.症例は63歳女性.55歳頃から言葉が出にくい,詰まる,速くしゃべれないことを自覚し,徐々に進行するため58歳時に当科を受診した.60歳時よりたどたどしい会話となり,電話では「外国の方ですか」と問われた.塩酸ドネぺジルを処方されたが,その後も症状は進行し,電話番号を暗記できなくなったため,62歳時に当科へ入院した.発話は非流暢で,音韻性錯語が目立った.また,プロソディー障害,失文法,Foreign accent syndrome,アナルトリー障害を認めた.本例の発話障害の特徴と123I-IMP SPECT 所見の検討から,縁上回病変による音韻障害と概念の音韻系列の実現障害が主体で,そこに中前頭回病変によるプロソディー障害,下前頭回病変による失文法とForeign accent syndrome,中心前回病変のアナルトリー障害が徐々に加わって進行していると考えた.本例では発症9年目の現時点でも意味システムが比較的保たれており,今後の経過が注目される.(平成25年2月12日受理)

2013.03.05

A case of myotonic dystrophy during the clinical course of non-alcoholic steatohepatitis *

 症例は42歳女性で,弟に筋強直性ジストロフィーがある.脂肪肝と診断され,外来通院していたが,肝生検を施行され非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)と診断された.一方,今回入院の数年前より歩行が遅く,神経内科外来に紹介され精査目的で入院した.斧状顔貌を認めたが,grip myotonia やpercussion myotonia は明らかではなかった.四肢の筋力は正常だが,歩行はやや緩徐であった.血液検査では総コレステロール,γGTP 及びHOMA-IR の高値を認めた.針筋電図では,刺入時に急降下爆撃音が聴取された.遺伝子検査にてDM プロテインキナーゼ遺伝子のCTG 反復配列が約1,300回と増幅を認めた.筋強直性ジストロフィーの家族歴,針筋電図検査,遺伝子検査から筋強直性ジストロフィー1型と確定診断した.筋強直性ジストロフィーは骨格筋の障害の他に,様々な臓器の障害をきたすことが知られているが,NASH を合併した報告例はごく少数である.近年NASH あるいは非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)患者は急増しており,それらの中に筋強直性ジストロフィーが合併している場合があることも念頭に置くべきと考える.(平成25年2月12日受理)

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