h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2013.03.02

Effects of antiestrogens and an mTOR inhibitor everolimus on the cell growth and regulation of cancer stem population in estrogen receptor-positive breast cancer cells *

 乳癌を含め多くの固形腫瘍において,癌幹細胞(CSC)が治療抵抗性や再発の原因となることが示唆されている.一方,エストロゲン感受性乳癌におけるCSC の制御機構に関する研究は少ない.そこで,エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌細胞におけるエストロゲンや抗エストロゲン薬(抗E 薬)の細胞増殖やCSC 制御に与える影響について検討した.さらに,内分泌療法抵抗性乳癌に有効性が期待されているmTOR 阻害薬エベロリムス(EVE)と抗E 薬との併用効果も検討した.ER 陽性乳癌の実験モデルとして,エストロゲン高感受性(HS)のMCF-7,T-47D 乳癌細胞株,エストロゲン低感受性(LS)のKPL-1,KPL-3C 乳癌細胞株を用いた.薬剤は,17β-estradiol(E2),4-hydroxytamoxifen(4-OHT),fulvestrant(FUL),EVE を用い, 細胞増殖,細胞周期,アポトーシス,CSC 比率に与える影響を検討した.CSC の同定には,CD44/CD24/EpCAM 抗体を用いたフローサイトメトリー法及びmammosphere assay を用いた.ER-α,PgRおよびER 関連転写因子(GATA3等)の発現は免疫細胞化学的に検討した.結果として1)LS 細胞株では,PgR の発現が認められなかった.それ以外のER 関連因子は,HS 細胞株,LS 細胞株ともに高発現が認められた.2)HS 細胞株はLS 細胞株に比べ,E2による細胞増殖の促進効果,CSC 比率の増加効果が,ともにより顕著であった.3)HS 細胞株はLS 細胞株に比べ,抗E 薬による細胞増殖の抑制効果,CSC 比率の低下効果がより顕著であった.4)EVE と抗E 薬の併用は,LS 細胞株において相加的な細胞増殖抑制効果を示した.両薬の併用により,一部の細胞株ではCSC 比率の減少効果が増強された.以上の結果は,LS 乳癌において,抗E 薬の増殖抑制効果ばかりでなく,CSC 比率の低下効果も減弱していることを示唆している.抗E 薬抵抗性獲得のメカニズムの一つとして,CSC 制御機構の異常が関わっている可能性がある.また,一部の乳癌細胞株において,抗E 薬とEVE 併用の結果から,内分泌抵抗性乳癌におけるEVE の有用性が示唆された. (平成25年2月12日受理)

2013.01.07

Acute renal failure with marked hyperuricemia due to mizoribine associated with methotrexate-induced myeloid suppression: a case report *

 症例は83歳,男性.近医で関節リウマチの診断で加療(プレドニゾロン2mg,メソトレキサート(MTX)4mg),他に高尿酸血症,高血圧で加療中であった.当院へ入院13日前にミゾリビン(MZ)150㎎が追加投与された.入院2日前に食欲不振と全身倦怠感で近医を受診,尿素窒素99.5mg/dl,クレアチニン7.8mg/dl と急性腎不全を認めたため当院へ紹介入院した.入院時の検査所見で尿酸26.5mg/dL と著明な高尿酸血症を認めMZ による急性尿酸性腎症と診断した.そのためMZ 及び尿酸の除去を目的に緊急血液透析を施行した.尿酸値及び腎機能は速やかに改善した.
しかし,入院後より血小板及び白血球数の減少を認めた.骨髄検査では骨髄異形成症候群様であり,MZ に加えMTX の関与を推測された.その後汎血球減少も改善している.本症例はMZ の血中濃度も高くMZ の排泄遅延による高尿酸血症のため急性腎不全を合併し更に腎機能の増悪がMTX による無効造血を発症した可能性が考えられた.MZ と尿酸も血液透析により体外への除去が可能でありMZ による急性尿酸性腎症の場合は早急な血液透析が有効である.
(平成24年12月25日受理)

2013.01.04

Our clinical experience with balloon assisted endoscopy for 325 patients with suspected small bowel diseases in Kawasaki Medical School Hospital. *

 バルーン小腸内視鏡(balloon assisted endoscopy; BAE)は,従来困難であった小腸の検査・治療に有用な検査法である.当院では,2004年にダブルバルーン小腸内視鏡(double balloon endoscopy; DBE)を導入し,2012年6月現在,234症例(延べ325症例;シングルバルーン小腸内視鏡 [ single balloon endoscopy; SBE ] 2例を含む)経験した.症例の内訳は,男性127例,女性107例で,平均年齢は62.6歳であった.主訴は,原因不明の消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding; OGIB)症例が143例(61.1%)と最多であった.基礎疾患は心血管障害47例(20.1%)が最多で,抗血小板・抗凝固療法を施行している症例は53例(22.6%)にみられた.経口的アプローチは325症例中158例で,経肛門的アプローチは167例,経口的,経肛門的アプローチを両方施行された症例は56例あった.病変は78例(24.0%)に検出され,その内訳は,びらん及び潰瘍性病変23例(29.5%),腫瘍性病変22例(28.2%),血管性病変21例(26.9%)であった.また,外科的切除,内視鏡的止血術等の治療を58例(74.4%)に施行した.BAE により小腸疾患の診断・治療が大きく進歩した.しかしながら,一方で手技が煩雑な点,患者の身体的侵襲も少なくなく合併症を有する点が欠点として挙げられる.そのため,各種小腸疾患の診断,治療に対しては,個々の患者の状況により,BAEとカプセル内視鏡(capsule endoscopy; CA)とを使い分けていくことが重要である.
(平成24年11月10日受理)

2013.01.01

Involvement of esophageal motility dysfunction present in several symptoms with pharyngeal or esophageal lesions *

 頭頸部領域および食道領域における各種症状に対する食道運動機能の関与を検討した.
2007年9月から2012年6月までに,咽喉頭異常感などの頭頸部領域の症状および嚥下困難感,胸痛,
胸やけなどの食道領域に関連した症状を主訴に,当科を受診した261例(男性138例,女性123例,
平均年齢56.8±17.1才)を対象とし,健康関連QOL(Health Related Quality of Life: HRQL)
の測定と食道内圧検査を施行した.健康関連QOL の検討では,咽喉頭違和感,嚥下困難感,胸
やけ等の各症状を訴えた患者で,身体的QOL,精神的QOL を表すPCS(physical component
summary)あるいはMCS(mental component summary)が低下し,健常者と比較して有意に
QOL の低下を認めた.食道内圧検査による食道運動機能異常は,全対象患者中62.0% に認めた.
各症状別に食道運動機能障害の内訳を見ると,咽喉頭違和感ではIEM(ineffective esophageal
motility)(31.8%),嚥下困難感は食道アカラシア(56.6%),喉のつかえ感は食道アカラシア(35.5%),
胸やけはIEM(39.4%),胸痛は食道アカラシア(50.0%),噫気はIEM(50.0%)を最も多く認め
た.咽喉頭違和感,嚥下困難感,喉のつかえ感,胸やけ,胸痛などの頭頚部および食道症状を有す
るものの,器質的疾患を認めない患者のQOL は障害されており,その病態の一つとして食道運動
機能異常の存在を念頭に置き,診療にあたることが重要である.
(平成24年10月5日受理)

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