h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2007.04.10

A case with writing disturbance due to cerebral infarction in the left parietal lobe *

 左頭頂葉梗塞により書字障害を呈した1例を経験した.本例の書字障害の特徴は運筆が緩慢であり近似反応が目立ったことである.そして言語性側面に問題はなく,書字の運動性側面に障害を認め,失行性失書に相当すると考えた.過去に報告されている失行性失書の症状や出現メカニズムは様々である.本例では書字の時だけ失行を認め,より純粋な失行性失書と言えると考えた. (平成19年9月27日受理)

2007.04.09

Bibliographical studies on human cases of Hard Tick (Acarina: Ixodidae) bites in Japan (1) Cases of Amblyomma testudinarium infestation *

 1960年~2005年に本邦で発生したタカサゴキララマダニ人体寄生例の報文を通覧して疫学的に検討した.症例数は108例(男性61,女性39,性別不明8)である.患者の都道府県別発生数では宮崎が14例(13.0%)で最も多かった.患者は2~12月の間に発生していたが,発生率は6月の20.5%をピークに,87.5%が4~9月に集中していた.患者の年齢は2~92歳で,70歳代が25%で最も多かった.また,患者の年齢と性別の関係では,70歳代の男性が17%で最も多かった.虫体の寄生部位は,大腿部が17.9%で最も多く,次いで肛門付近が8.4%,以下,腹部・陰嚢・趾間がそれぞれ7.3%の順で,下半身への寄生が69.5%(66例)を占めていた.患者が虫体の寄生を受けた場所は,多くが山岳地帯であったが,その他に昆虫採集・キャンプ・自宅庭・飼い犬との接触などがあった.
(平成19年9月20日受理)

2007.04.08

Two cases of necrotizing descending mediastinitis who underwent succesful mediastinal drainage by a thracoscopic approach *

 症例1は69歳男性.左下顎部蜂窩織炎から縦隔炎となり当科紹介.後咽頭間隙から右側上縦隔,そして左後縦隔に膿瘍を形成し両側胸水貯留を認めた.壊死性降下性縦隔炎と診断し右胸腔内から胸腔鏡下に縦隔ドレナージを施行した.まず,片肺換気に備えて左胸腔ドレーン挿入.胸水の色調は漿液性で反応性胸水と判断.引き続き右胸腔内を胸腔鏡で観察.上縦隔胸膜表面に白苔の付着を認め,切開したところ多量の膿が流出した.術後は右上縦隔胸膜切開部位から胸腔に連続して限局性膿胸となったため再手術を要したがその後経過良好であった.症例2は20歳男性.左副鼻腔炎から縦隔炎となり当科紹介.左傍食道間隙,後縦隔に膿瘍を形成し両側胸水貯留を認めた.壊死性降下性縦隔炎と診断し左胸腔内から縦隔ドレナージを施行した.まず,右胸腔ドレーンを挿入し,引き続き左胸腔内から胸腔鏡下で大動脈弓背側の胸膜を切開し膿を排出させた.術後経過良好であった.両側胸水を伴う壊死性降下性縦隔炎に対して胸腔鏡下縦隔ドレナージを行い,良好な結果が得られた2例を経験したので報告する.(平成19年8月14日受理)

2007.04.07

A case of ‘Giant’ aneurysmal fibrous histiocytome *

 aneurismal fibrous histiocytoma(AFH)は、大きな血液に満ちた空隙を有しその周囲に内皮細胞を欠く皮膚線維腫の特殊型である.今回我々は4ヵ月で急速に増大し,右大腿の伸側に無症候性の皮膚腫瘍を呈した32歳の男性の症例を報告する.臨床像は暗紅色の球状の腫瘍で表面平滑,わずかに角化を認める8×8cm大のものであった.カラードップラーエコーでは大きなhypoechoicな嚢腫に血流を認めた.病理組織学的所見では血液に満ちた内皮細胞を欠く大きな嚢腫と一部に泡沫細胞を認める紡錘形の組織球の増生と多くの拡張した血管の増生を認めた.免疫組織学所見では腫瘍細胞はCD34が陰性,第XⅢa因子陽性,vimentin陽性であった.AFHの組織学的特徴と他の悪性腫瘍との鑑別診断について考察した.(平成19年4月10日)

2007.04.06

Why do Japanese aphasics have difficulties in writing both Kana nonwords and words consisting of even two letters? *

 書き取りの二重経路モデルでは仮名非語は音素文字素変換で自動処理される.従って仮名1文字が書ける失語症患者は,正しく仮名非語を書けるはずである.にもかかわらず臨床的には,2文字語でさえ正しく書けない失語症患者をしばしば経験する.本研究の目的は日本人失語症患者において二重経路モデルが2文字語の書き取りの正確性を予測しうるかどうかを調べることである.我々は16人の日本人失語症患者に仮名1文字,仮名2~5文字からなる単語と非語の書き取りを行った.この結果,非語と単語ともに(1)仮名1文字の正答率から予測されるよりも2文字語の正答率は低く,(2)語の1番目の文字よりも2番目以降の文字は同程度に正答率が低かった.(3)非語を一枚の紙に全て書く場合に比べ,1文字ずつ別の紙に書く方が成績が良かった.以上の結果から,音素から変換された文字素を一時的に保持する正書法的バッファーの障害が示唆された.さらにこの正書法的バッファーの障害は語長効果を呈するワーキングメモリー障害ではなく,前後の文字の干渉作用によると考えられた.(平成19年9月20日受理)

2007.04.04

Additive antitumor effects of the HER1/HER2 tyrosine kinase inhibitor, lapatimib with antiestrogen, fulvestrant in breast cancer cells *

目的:増殖因子シグナル伝達の活性化が,エストロゲン受容体(ER)のエストロゲン非依存的な活性化を引き起こし,乳癌のホルモン療法抵抗性の一因になっていることが,最近の基礎研究により示されている.また,増殖因子シグナル伝達の阻害は,ホルモン療法抵抗性の克服に役立つことが示唆されている.この仮説を検証するために,3種類の乳癌細胞株を用いHER1/HERチロシン燐酸化阻害剤lapatinib(Lap)と抗エストロゲン剤fulvestrant(Ful)併用による抗腫瘍効果を検討した.さらに,その作用メカニズムも検討した.方法:3種類の乳癌細胞株は,すべて当教室で樹立した.KPL-1及びKPL-3C細胞株は,ER陽性であるがHER1/HER2の発現は弱い.KPL-4細胞株は,ER陰性であるがHER2を過剰発現している.細胞増殖はコールターカウンターにより細胞数を計測した.細胞周期の測定はpropidium iodide染色後にフローサイトメトリー(FACS)を用いた.アポトーシス測定はterminal deoxynucleotidyl transferase-mediated dUTP nick-end labeling(TUNEL)法を用いた.細胞周期やアポトーシス誘導に関わる因子の蛋白発現レベルは,ウエスタンブロット法を用い検討した.
結果:3種類の乳癌細胞株の中で,KPL-4細胞株がLapに対し最も感受性が高かった(50% 増殖阻止濃度[IC50],1.5μM). LapはKPL-4細胞のアポトーシスを誘導した(FACS
におけるsub-G1分画の増加やTUNEL陽性細胞の増加).KPL-1及びKPL-3C細胞株ではLapの抗腫瘍効果は弱かった(IC50は各々8.1μM and5.0μM).LapとFulの併用は,アポトーシスの増加を伴って,相加的な抗腫瘍効果を示した.LapはKPL-4細胞において,抗アポトーシス因子Bcl-2やsurvivinの蛋白発現を低下させたが,KPL-1及びKPL-3C細胞では有意の変化は認めなかった.一方,LapとFulの併用により,KPL-1及びKPL-3C細胞においてBcl-2やsurvivinの低下が認められた.さらに,Lap単独やFulとの併用により,これらの3種類の細胞株で,細胞周期関連因子p21やp27の増加が認められた.
結語:これらの研究結果から,LapはHER2を過剰発現する乳癌に対し強力な抗腫瘍効果が期待でき,さらに,LapとFulとの併用は,ER陽性乳癌に対し,相加的な抗腫瘍効果を示すことが示唆された. (平成19年4月18日受理)

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